街
※[#始め二重山括弧、1-1-52]或る友に※[#終わり二重山括弧、1-1-53]
森川義信
枯れ葉は足につつかかり
街燈はぬれてまたたき
霧さへ降つてゐた おそい街の夜だつた
お前は人の歌をそつと歌ひ
お前は思い出したやうに歩いた
僕たちの街と本当に言へただらうか
美しい愛情の破片が
そこに花咲いてゐただらうか
あきらめたやうに枯れ葉をふみ
街燈の下を深海魚のやうに
なぜ歌つて歩かねばならなかつたのだらう
そんな僕たちの街ではなかつたか――
底本:「増補 森川義信詩集」国文社
1991(平成3)年1月10日初版発行
入力:坂本真一
校正:フクポー
2020年7月27日作成
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