高館

―平泉の思ひ出より―

森川義信




草深きなかに訪ねし
夢跡の寒きかなしさ
朽ち柵に倚れば仄かに
胸にしむ旅のうれひよ

緑濃きなかに見出でし
人の世のさぶしさ
夢を皆遠く流せし
北上が瞳にしみる。





底本:「増補 森川義信詩集」国文社
   1991(平成3)年1月10日初版発行
初出:「学友 一〇一号」
   1935(昭和10)年
入力:坂本真一
校正:フクポー
2019年5月28日作成
青空文庫作成ファイル:
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