森川義信




渡り鳥の様に旅をしてみたい時がある
雲の様に旅をしてみたい時がある
風のままに漂々と旅をした俳人芭蕉を憶ふ
病の床にあれば一人旅を欲する――
  束縛された人生を思ふからである
  葬り去られた夢を思ひ出すに耐へられないからである
  そして吾今いたつきに泣く明日のない人間だからである――
旅を想ふ渡り鳥を思ふ雲を芭蕉を……





底本:「増補 森川義信詩集」国文社
   1991(平成3)年1月10日初版発行
初出:「ながれ」
   1935(昭和10)年4月、5月
入力:坂本真一
校正:フクポー
2019年6月28日作成
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