うし

濤音




お冠船に帆をおろすさわぎはやんで、
はやお主加那志前しゆがなしいめへ お迎へか。
あれがくの音がかすかに微かに浮んでくる
どれ黒髪□□(不明)梳さなをさう。

黄金三つ星てり渡る北京フイキンの都。
そこからおす唐 按司すゐ、
まばゆいばかりの尊いみ姿を
今日こそは妾もをがみにいきます。

島には雲わき燕がすぢかひに飛ぶ。
鴛鴦のやうなお冠船はふわふわと
湾内にねむつて濃い夢をむさぼる。
森には福木 黄いなる花さく。

お冠船をどりの日はいつごろか。
うしイは夜もすがら胸にゑがいた。
あてやかな若按司がべにゝゆる振袖を、
または女躍 役者かこまやかな足どりを





底本:「沖縄文学全集 第1巻 詩※(ローマ数字1、1-13-21)」国書刊行会
   1991(平成3)年6月6日第1刷
底本の親本:「沖縄毎日新聞」
   1912(明治45)年1月22日
初出:「沖縄毎日新聞」
   1912(明治45)年1月22日
※初出時の署名は「濤韻生」です。
※「沖縄近代詩集成(※(ローマ数字2、1-13-22))沖縄毎日新聞(明治四十二年〜大正三年)篇」法政大学沖縄文化研究所、1988(昭和63)年9月20日発行では判読不可の文字を「がく□音」「黒髪□□」「唐□按司」「福木□貴い」と□で表示していますが、底本ではそれぞれ「がくの音」「黒髪□□(不明)」「唐 按司」「福木 黄い」となっています。
入力:坂本真一
校正:きゅうり
2019年10月28日作成
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