――吾等の琉球人に贈る
遠い時と歴史が忘れて行つた一廓!
こゝは無人島か骸骨島ででもあるか
午顔の咲き乱れた白日と謂ふのに
古い石垣通りには蝙蝠の魂が飛び交ひ
昼の悪童の悲しき性交もあると謂ふ
印陀羅の幻図そつくりの
揺曳する妖しい影絵の国だ
ああ 何にかしら祈らねばゐられぬ福樹の
森厳な黙示図絵には
何んと謂ふ赤顔童子の
ほら 街衢の上の瞋火の干潟を
糸遊の様に痩せさらぼひて
魂ばかりのひよろ長い姿が
何にか喰ひたい願ひで
駝鳥の様に駈つてゐるではないか
それでも街は昔ながらの午睡の時刻なので
この圏環は今
微風と亡霊の遊歩場なのだ
古い世紀の母よ
古い世紀の父よ
そおして
古い世紀の王様よ
あなた達の偸安の

あなた達の創生期よりの夢に
こつそり忍び込み
あなた達を脅かす
宿命の赤顔童子は
ほんとうに饑じいんだ
この白日はほんとうに饑じいんだ
古い世紀の母よ
古い世紀の父よ
そおして
古い世紀の王様よ
遠い世界の七月のミンヌクーも
幻の五月の
青い酒火がチラ/\誘魂する
ムショウガリした幻の
妖しい喰気には
あなた達の世紀の魔術も又獏が食ふ悪夢に過ぎないんだ
ああ 饑じい
古い街は饑じがつてゐる
白日は饑じがつてゐる