寧日
山口芳光
母、吾が為に
鼠の子虫籠に入れて与へぬ
病間の徒然なる
吾指もて小づき戯れ
心明るう時を経にけり。
あはれ鼠の子まこと子なれば
耳孕
[#「耳孕」はママ]桃色に
血管の脈打つも
生物らしく
今は前肢を捧げ餌食みゐるも

たけし。
やがて夕べの風出でぬ――時を経ぬ間に
何時か
牛乳の時間となりぬれば
吾鼠の事も忘れ
青葉繁れる窓に
牛乳を飲みゐたり。
●表記について
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