かの日の歌【三】

漢那浪笛




     ※(蛇の目、1-3-27)

温たかき玉は、君が手より、
すべり落ちぬ。
その玉は他人の手に握られ、
楽しき夢路をたどるなり。
   あゝ君は淋しき人なり。
   君はいや更に悲しめ!
   もだへ、苦しむは君のさがなり。
ぬめらかなる玉は、すべり安く、
ふしくれだちし手には、
あまりに痛ましく、たへがたく――
すべり落つるも、ことわりなり。
   あゝ君は淋しき人なり。
   君はいや更に悲しめ!
   もだへ、苦しむは君のさがなり





底本:「沖縄文学全集 第1巻 詩※(ローマ数字1、1-13-21)」国書刊行会
   1991(平成3)年6月6日第1刷
初出:「琉球新報」
   1911(明治44)年12月3日
※初出時の署名は「浪笛生」です。
入力:坂本真一
校正:良本典代
2016年12月9日作成
青空文庫作成ファイル:
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