濡れる展望

仲村渠




北方に何ごとぞ
雲 雲を引具して空を急いだ

街は雨の喪服
街はとほい
街は沈む
アンテナは潜望鏡をまねて雲を観た
北方に何ごとぞや?
欅は丘で街を観た
欅は終日いちにち 雲を迎へて雲を送つた
欅は終日 濡れる街を眺めてゐた





底本:「沖縄文学全集 第1巻 詩※(ローマ数字1、1-13-21)」国書刊行会
   1991(平成3)年6月6日第1刷
入力:坂本真一
校正:良本典代
2016年9月9日作成
青空文庫作成ファイル:
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