錢形平次捕物控

路地の足跡

野村胡堂





「錢形の親分さん、お助けを願ひます」
 柳原土手やなぎはらどて、子分の八五郎と二人、無駄を言ひながら家路を急ぐ平次の袖へ、いきなり飛付いた者があります。
「何だ/\」
 後から差覗さしのぞくガラツ八。
「何處か斬られなかつたでせうか、いきなり後ろからバサリとやられましたが――」
 遠灯とほあかりすかせば、二十七八の、藝人とも、若い宗匠とも見える一風變つた人物。後向になると、の羽織は肩胛骨かひがらぼねのあたりから、帶の結びつ玉のあたりへかけて、眞一文字に斬り下げられ、大きく開いた口の中から、これも少しかれた單衣ひとへが見えるのでした。
「大丈夫、紙一枚といふところで助かつたよ。ひどいことをする奴があるものだね。辻斬にしちや不手際だが――」
 平次はさすがに、斬口のまがつた工合から、刄先の狂ひを見て取りました。
「辻斬なら仔細は御座いませんが、――この間から、時々こんなことがありますので、油斷がなりません」
 男は眞夏の夜のねつとり汗ばむ陽氣にも拘はらず、ぞつとした樣子で肩をふるはせました。町のあかりの方へ向くと、青白い弱々しい顏立ちで、色戀の沙汰でもなければ、命をねらはれさうな柄ではありません。
「そいつは物騷だ。命を狙はれちや、いゝ心持のものぢやあるめえ。――送つて行つてあげよう。お前さんの家は何處だえ」
「横山町まで參ります」
「横山町?」
「遠州屋の者で」
「遠州屋は大分限だいぶげんだが――店の者にしちや」
 平次はくびひねりました。絽の羽織、博多はかたの帶、越後上布ゑちごじやうふ單衣ひとへ、――どう見ても丁稚でつちや手代の風俗ではありませんが、仔細あつて、横山町の遠州屋の主人はツイ先頃非業ひごふの死を途げ、跡取あととりはまだほんの子供だといふ話を聞いて居たのでした。
をひの金之丞と申します」
「それぢや、能役者をしてゐた好い男てえのはお前さんかい」
 ガラツ八の八五郎は、ツケツケしたことを言つて、金之丞と名乘る男の顏を差しのぞきました。
「お耻かしいことで御座います」
「耻かしがることはねえが、命なんか狙はれるやうぢや、好い男に生れつくのも考へ物だね」
 と八五郎。
「安心しろよ。手前なんかは、生れ變つたつて、財布さいふや命の狙はれつこはねえ」
 平次はツイ口を容れました。金之丞の恐れ入つた調子と、それに對照して、八五郎のトボケた調子が、たまらなく平次の好謔心かうぎやくしんそゝつたのでせう。
「お蔭樣でね」
「怒るなよ、八。その方が無事でいゝぜ」
 平次はなほも追及しました。
「全くで御座います、親分さん。命を狙はれるのが、こんなにイヤなものとは、思つても見ませんでした。二階から突轉がされたり、知らない人から喧嘩を吹かけられたり、食物たべもの石見銀山いはみぎんざんが入つてゐたり、――」
「そんな物騷な身體を、なんだつて亥刻よつ過ぎの柳原なんか持つて歩くんだ」
 平次の調子は少し腹立たしさうでした。辻斬りと夜鷹よたか跳梁ていりやうする柳原を、眞面目な人間が通るにしては、全く遲過おそすぎました。
「いやなことばかり御座いますので。明神樣へ七日間の日參を心掛けました。――今日滿願といふ日、意地の惡いことに、朝から客と用事が立て込んで、どうしても出られません。今考へて見ると、それも私を狙ふ者の細工だつたかも知れませんが、兎に角、身體が明いてホツとしたのは、戌刻いつゝ半過ぎぢや御座いませんか」
「――」
「お詣りを濟まして、明神みやうじん坂を下ると、變な男が、後ろからヒタヒタといて來るぢやありませんか。此方が急げば向うも急ぎ、立ち停れば立ち停り、怪しいとは思ひましたが、往來の人をとがめるわけにも參りません。筋違すぢかひを入つて此處まで來ると、いきなり後ろから、一太刀ひとたちあびせられたやうな氣がしましたか、振り向いて見る氣もしません」
「――」
「親分さんをお見かけした時は、本當に夢中で飛付いて了ひました」
「こんなに暗いのに、よく私といふことが判つたね」
「それはもう、助かりたい一心で――」
 そんな話をしてゐるうちに、三人は横山町の遠州屋の前に來て居りました。
「お禮と申しちや何ですが、お茶でも入れて、ゆつくり申上げたいことも御座います」
 しきりに引止める金之丞の手を振り切つて、平次とガラツ八は夜の街を家路に引返しました。


 翌日は、金之丞は手土産を持つて平次のところへ顏を出しましたが、さすがに身にぢたものか、自分を狙ふ者の心當りについては、何にも打明けません。
「これからのこともあるだらうから、自分にうらみを持つ者の心當りだけでも話して置いちや何うだ。親分はそんなことを人に言ふ氣遣ひはねえ――」
 ガラツ八は見兼ねていろ/\すゝめましたが、
「いえ、人樣を疑つてはすみません。親分さんが蔭ながら付いて居て下さると解れば、どんな者だつて滅多に手を出しやしません」
 金之丞はたしなみ深く口をつぐんで、そのまゝ歸つて了ひました。
 それから三日目。
 夏の凉みの賑ひも今宵あたりは頂上と思はれる晩、平次はお靜やガラツ八を相手に、縁側へ煙草盆たばこぼんを持出して、兩國で揚げる遠花火を眺めて居ると、
「親分さん、た、大變なことになりました。直ぐ御出で下さるやうに――と、金之丞樣からのお願ひで御座います」
 六十年輩ねんぱいの爺や――遠州屋の仁助といふのが飛込んできました。
「大變なことと言ふと、金之丞といふ好い男が怪我けがでもしたのかい」
 とお先つ走りのガラツ八。
「いえ、お内儀さんが花火を見て居なすつて、屋根の上の物干から落つこちなすつたんで――」
「それぢや外科げくわへ行くがいゝ。親分の畠ぢやねえ」
手摺てすりを越して落つこつたのが不思議でならねえと、金之丞樣が申しますんで――」
「何? 手摺を越して落ちた、――怪我は?」
 平次はもう立ちかけて居ります。
「お氣の毒なことに金之丞樣が駈け付けて、いろ/\介抱なさいましたが、軒下に積んだ石材いしに頭を打ちなすつて――」
「さうか、――そんなこともあるだらう。遠州屋には惡いことが起りさうだと思つて、この二三日氣を付けて居たが、到頭やりやがつたか。八、大急ぎで行つてみよう」
「へエ――」
 三人はちうを飛びました。いや、二人は宙を飛んで、一人は大地を這つたと言つた方が穩當をんたうかもわかりません。兎に角、平次とガラツ八が横山町へ着いた時は、遠州屋の上下は、壓迫された恐怖が、不氣味に立ちこめて、その邊に居る者をみん窒息ちつそくさせて了ひさうでした。
「あツ、親分さん」
 金之丞は早くも二人を見付けて、救はれたやうな聲を出しました。
 誰に案内されるともなく入つて見ると、すつかり息の絶えた遠州屋のお内儀お安の死體は、奧の一間に運び込まれて、血汐を拭ききよめられて居ります。
「變死に違ひありませんから、お役人方や親分さんの見えるまで、手を付けちやならないと申しましたが、支配人の佐吉が聽き入れません。――物干から落ちて亡くなつたのは、外科が言ひ開くだらう――此方から望んで檢屍けんしを受けるわけはねえ、佛を路地へはふり出して置くのはよくないことだ――と申して、到頭此處へ運び入れましたが、私にはどうもに落ちないことばかりで御座います」
 金之丞の言葉を聽きながら、平次は女共を退かせて、一應死體の傷所をしらべました。
 四十前後といつても、大家たいけのお内儀でまだ充分若くも美しくもあつたお安ですが、柘榴ざくろのやうに頭を割られた上、かう血汐ちしほに汚れては見る影もありません。
「おや?」
 平次は一寸眉をひそめました。頭に受けた傷が命取りだつたに相違ありませんが、その他、肩に打撲うちみが一ヶ所、これは背中へかけて大きく青痣あをあざになつて居ります。
「私が駈け付けた時は、石を枕にして、横つ倒しになつて居りました。何分石の多い所で、――一應見て置いて下さいませんか、素人の私にも、あやまつて落ちたとは思へないことばかりで御座いますが」
 女のやうな物優しい口をきく金之丞は、恐る/\平次の頭をのぞきます。
「何? 岡つ引を呼んで來た。飛んでもねえ、誰が、そんな細工をしやがつたんだ。物干ものほしが惡きア大工でも呼んで來るがいゝ」
「シツ、六さん、聲が――」
 隣の部屋で無遠慮にわめくのを、若い女が一生懸命止めて居る樣子。それが手に取る如く聞えるので、金之丞は立つたり坐つたりして居ります。
「金之丞さん、あれは?」
「へエ、親分さん、少し醉つて居るやうですから、御聞捨を願ひます」
「品川へ沖釣おきづりに行つて、自分だけ助かつて來たといふ、亡くなつた主人の義弟おとうとの六郎さんといふのだね」
「へエ――」


「親分さん、外廻りを御覽下さいませんか、土藏と母家おもやの間の路地は、その儘にしてある筈ですが」
 バツの惡くなつた金之丞は、六郎の不遠慮な蔭口かげぐちふうずる爲には、平次を外へ引張り出す外にはなかつたのです。
「いや、物干から先に見せて貰ひませう」
「それぢや」
 平次とガラツ八は、金之丞の後について二階へ昇りました。
 梯子段はしごだんを昇る時、何心なく隣の部屋を覗くと、三十二三の遊び人風の男を、十八九の可愛らしい娘が、一生懸命なだめて居るのが見えます。道樂者で、小博奕こばくちを打つといふ持て餘し者の六郎が兄の死んだ後、この家へ入り込んで來て、支配人の佐吉や、をひの金之丞がイヤな顏をする中に、我儘一杯に振舞つて居ることは、平次はこの騷ぎの前に調べてゐたのです。
「あの娘さんは?」
「お里と申します。亡くなつた叔母の妹で」
「成程、好い縹緻きりやうだ。お前さんと一緒になるとかいふ」
「飛んでもない。――そんな話もないぢやありませんでしたが、二人はどうもしやうが合ひません」
 金之丞は大急ぎで平次の口を封じました。
 二階へ昇ると、支配人の佐吉が、駈け付けた分家や親類の人と應對して、何やら重大さうに囁いて居ります。見たところ四十七八、立派な白鼠しろねずみで、月代さかやきの光り工合も、分別らしさも、全く申分はありません。
「錢形の親分さん、――飛んだ御苦勞樣で。なアに、物干の手摺てすりが何うかしてゐたんで御座いませう。金之丞さんが一人で騷ぎますが、――人を殺さうとする程の太い料簡の者が、物干から人を投り出す筈は御座いません。首尾よく死ねば本望をげるでせうが、二間や三間のところから落ちたところで、人間は滅多に死ぬものぢや御座いません。お内儀かみさんが死なゝかつた日には何うなります」
 支配人の佐吉は、さけがに老巧らうかうな物の考へやうをします。
「番頭さん、その通りですよ。私も疑つてなんか居ませんが、金之丞さんがあんまり騷ぐから、手摺の工合だけでも見て置かうと思つてネ」
 と平次。
「それはもう、どうぞ御覽下さいまし」
「ところで番頭さん、お内儀さんが物干へ上がつた時、側に誰がゐなすつたえ」
「お里さんが附いて居ましたが、一寸用事を思ひ出して、階下したへ降りたさうです」
「二階には?」
「私と、六郎さんが居ましたが、私はこの部屋で、六郎さんは縁側から花火を眺めて居たやうで御座いました」
「すると、物干に居るお内儀さんを突き落せるのは、六郎さんとお里さんと、お前さんと三人だけといふことになるネ」
「へエ――さう仰しやればその通りですが、親分さん」
「まアいゝ。誰も、番頭さんが突き落したとは言やしない」
 平次の言葉の裏にひそむ意味の恐ろしさにおびえたものか、佐吉はサツと顏色を變へて口をつぐみました。
「ところで、お内儀さんは平常ふだん眩暈めまひなどのすることはなかつたでせうか」
 平次は改めて靜かに問ひかけます。
「女の四十二三と申しますと、よく頭痛や眩暈に惱まされる年頃で、お内儀さんもよく立ちくらみがすると申して居りました」
「そんなこともあるだらうね。ところで、お内儀さんが落ちた時、聲を出した筈だが」
「それはよく聞えました。アツと言ふと、どしん、と來ましたので、何をしたのかと縁側へ飛出すと、向うの縁側から、六さんが顏を出して居りました」
「聲はたつた一度きりだね」
「いえ、下へ落ちてからも又、きやつと言つたやうで」
「その通りだね、金之丞さん」
 平次は後ろにしよんぼり立つてゐる金之丞を振返りました。
「へエ、落ちる途中で、聲を出したかもわかりません。兎に角、私が聞いたのはたつた一聲だけで、驚いて母家おもやから飛出して抱き起すと、もういけませんでした」
「有難う、それぢや、物干を見せて貰ひませう」
 平次とガラツ八は、縁側へ出ると、戸袋の後ろに取付けた段々を幾つか昇つて、思ひの外岩乘がんじような物干に出ました。
 屋根の端つこまで乘り出した造りで、下までは三間足らずでせう。三方にめぐらした手摺は丁度大人おとなの腰の下まで屆くほど。眩暈めまひがした位では、これを乘り越して下へ落ちさうな樣子はありません。その上、恐ろしく嚴重げんぢうな造りで、かすがひまで打つてありますから、一方がはづれたのでないことは、たつた一目で判ります。
「成程、これは可怪しい。殺されたんでなきア身投げだ」
 と平次。
「物干から身投げつてことはないぜ、親分」
 ガラツ八は鼻の下を長くして、物干の下、母家と土藏の間の狹い路地を見下ろして居りました。
「其處から飛降りてみな、八」
 平次は妙なことを言ひます。
「下の石材いし腦天なうてんつぶされるのは有難くないぜ、親分の前だが」
石材いしを除けて飛降りたらどうだ」
「二間半もあつちや、足をくじきますぜ」


 それから平次は、階下したへ降りて、石材いしを置いてある空地の闇をめるやうに見廻しました。
「八、提灯を借りてくれ」
「いえ、私が持つて參りませう」
 金之丞は母家へ入ると、直ぐ提灯に灯を入れて持つて來ました。
「これは大變だ」
 石材いしの山を染めて、斑々はん/\たる碧血、全く眼も當てられません。
 土藏の修復に使つた殘りで、大小二三十の石は、何の意味もなく積んでありますが、そのうちの幾つかはひさしの下にハミ出して、それが、お安の頭を打つたのでせう、わけても、澤庵たくあんの重しほどの三四貫もあらうと思はれる御影みかげの三角石は、蘇芳すはうを塗つたやうにあけに染んで、提灯を近づけて見ると、髮の毛らしいものが二筋三筋ねばり附いて居ります。
「ひどいことをするぢやないか」
 平次は獨言を言ひながら、尚も四方あたりを見廻しました。母家と土藏の間で、滅多に陽が當らないせゐもあるでせう、その邊は散々踏み荒されて、何れが誰の足跡とも判りませんが、あわてたせゐか、大抵は素足で、中に一きは深いのもまじつて居ります。
「金之丞さん、死體を抱き上げたのはお前さんだね」
「へエ――」
「この足跡がその時のだらう。金之丞さんのでないと話が面倒になる。一寸足を合せて見て下さるまいか」
 金之丞は不氣味さうでしたが、それでも素直に下駄を脱いで、深い足跡の上へ、自分の足を重ねます。
「おや? 金之丞さんの足より少し大きいやうだが」
「これや違ひますよ、親分」
 提灯を振りかざしたガラツ八も、足跡と足との間に、かなりの隙間があるのに氣が付かずには居ません。
「これや可怪をかしい。すると金之丞さんが死體を抱き上げた時の足跡は?」
「これで御座いませう」
 金之丞は三角石の側、半分血にひたつた足跡へ、自分の足を持つて行きました。成程それもかなり深く印されたもので、金之丞の足にピタリと合ひます。
「こんなことでよからう。――お内儀さんは物干から投落された。下手人は、大きい聲では言へないが、番頭の佐吉か、亡くなつた主人の義弟ぎていの六郎か、妹のお里か、この三人のうちだ。――金之丞さん、よく氣を付けて下さい」
「へエ――」
 平次はこんなことを囁くと、先に立つて、其處から一番近い下男部屋を覗きました。
「爺やさん、お前さん何とか言ひなすつたね。先刻は御苦勞」
「仁助と申しますよ。へエ、一生懸命駈けましたが、若い人の足にはかなひません」
 平次の家から歸つて、もう四半刻はんとき以上も經ちますが、爺やはまだ打ちのめされたやうになつて居ります。
「お内儀さんが物干から落ちた時、お前さんは此處に居たんだね」
「へエ、此處には居りましたが、入口は向うですから、見えません」
「聲位は聞いたらう」
あツと仰しやつたやうですよ」
「落ちてからか、落ちる前か」
「落ちてからで御座います。ドシンと音がして、それからあツと、――恐ろしい聲で御座いました」
「よし/\、それだけ判ると大助かりだ」
「左樣で御座いませうか」
 爺やは何となく奧齒に物のはさまつたやうな物の言ひやうをします。
「爺やさん、何か考へて居ることがあるやうだね。言つてくれないか」
 と平次。きたない下男部屋の上りかまちに腰を下ろして了ひました。
「いえ、何にも考へてなんか居りません」
「さうぢやあるまい。――この家で、主人とお内儀が死んで、まうかるのは誰だらう?」
みんな損で御座いますよ。御主人は釣道樂つりだうらくがあつただけで、本當に良い方で御座いました。お内儀さんは情け深くて、これも申分のない――」
「それは判つてゐる、後はどうなるだらう、この大身代は」
「坊ちやまが御座います。尤もまだ五つになつたばかりですが――」
後見こうけんは?」
「六郎樣か、金之丞樣といふことになりませう、尤も永年勤めた、忠義な支配人ばんとうさんが居りますが、――これは奉公人ですから、帳場だけをお預りして、内輪のことは矢張り身内の方が見て下さることでせう」
「すると、儲かるのは、六郎さんか、金之丞さんか、番頭の佐吉さんといふことになるネ」
「飛んでもない、親分さん」
 爺やはあわてて乘出しました。平次の後ろに、金之丞がすつぱい顏をして立つてゐたのです。


 もう一度家の中へ取つて返すと、後取の徳太郎といふ五つになるのが、家の中の騷ぎに眼をさまして起き出したのを、叔母のお里が一生懸命なだめて居る最中でした。母親の痛ましい姿を見せないためでせう。
 平次が佐吉に逢つて、二言三言、爺やに訊ねたやうな事を繰り返して、ガラツ八と二人遠州屋の裏口から出ました。
「大層遲くなつたな、八」
子刻こゝのつでせう。――ところで親分。矢張りあれは殺されたんでせうか」
「お前の言ひ草ぢやないが、物干から身投をする者はないよ。だが、殺した證據は一つもないんだから檢屍にも及ぶまい」
「誰がやつたんでせう」
「それが判りや」
 二人はそんな事を言ひ乍ら柳原へかゝらうとすると、後ろからヒタヒタとけて來た男が、
「親分さん、ちよいと、お待ちなすつて」
 いきなり聲を掛けました。
「爺やさん。お前さんが跟けて來るのは知つてゐたよ、何か言ひたいことがあるんだらう」
「へエ、おさつしの通りで、私は遠州樣には、先々代樣から三十年も御厄介ごやくかいになつて居ります。みす/\御主人夫婦が惡者の手に掛つてくなられたのを知りながら默つちや居られません」
 仁助爺やは、ハアハア息を切り乍らも一生懸命でした。
「心當りがあるとでも言ふのかえ、爺やさん」
「心當りどころぢや御座いません、――泳ぎの御自慢な御主人がおぼれて、徳利とつくりの六郎さんがノコノコ生きて歸つて來た時から、私はもうこんな事になるだらうと思つて居りました」
「フーム」
「物干から御内儀さんの身體を逆樣さかさまに投げ落すほどの力のあるのは、あの家の中にはたつた一人しか居りません。坊つちやまはまだ五つですから、後見人となれば、あの何十萬兩の身代は六郎さんの自由になります。金之丞さんも身内には相違ありませんが、縁が遠くなりますし、それに、あの通り弱いかたで、大店おほだなを切り廻す方ぢや御座いません。支配人ばんとうの佐吉さんは六郎さんには一番の苦手ですが、これは奉公人ですから、いざとなれば暇をやるもあります」
 爺やは意氣込みました。その言ふことは一と通りも二た通りも條理が立つて、さすがの平次も承服しないわけには行かなかつたのです。
「親類方や分家の主人などは、六郎の後見を承知するだらうか」
 これが殘るゆゐ一の疑ひでした。
「承知するもしないも御座いません。少し厭な顏をしても喧嘩を吹つかけられます。あの六郎さんといふ人は狂犬やまいぬのやうな人間で――」
「それぢや、後見人になつたところで、肝腎かんじんの子供が、いやがつて寄り付かないだらう」
「ところが、不思議なことがあるもので、坊つちやんは、荒つぽい六郎叔父さんが大好きで、叱られても、時々はからかひ半分に打たれても、あの恐ろしい叔父さんへばかり付いて居ります。角力すまふだの撃劍げきけんだの、喧嘩だの勝負事だのと、荒つぽい碌でもない事を教へるからで御座いませう。私はそれが心配でなりません」
 仁助爺やの言ふ事は豫想外なことばかりです。
「お里とかいふのは、何んな事を考へてゐるんだ」
「若い女の心持などは私にわかりませんが、あれも變り者で、あんな優しい綺麗な顏をしてゐるくせに、飛んだ氣性者で御座いますよ。一緒にするやうにと話のあつた金之丞樣を、――役者のやうな男は嫌ひだ――と申して、どうしても承知しません。近頃は坊ちやんの相手をしながら、お勝手向を切り廻して居ります」
番頭ばんとうさんの身持は?」
「よく存じませんが、大店おほだな支配人ばんとうのことですから、一人や二人かこひ者があつたところで、文句を言ふ方が間違つて居ります。それにあの年まで女房も持たず、暖簾のれんを分けて貰ふあてもないのですから」
「成程、さうしたものだらうな、爺やさん有難う、お蔭でいろ/\の事が判つたやうな氣がするよ」
 平次は爺やをなだめて歸すと、ガラツ八を促して、默々と家路を急ぎました。


 平次はそれから二三度遠州屋へ行つて見ました。仁助と金之丞はいろ/\親切にしてくれますが、六郎をはじめ、佐吉もお里も、店の者も白い眼を見せるので、稼業柄かげふがらとはいつても、あまりいゝ心持はしません。
 一方、遠州屋の空氣は、何時からとなく、はつきり六郎にそむいて行きました。金之丞や仁助が疑ひ始めたのへ、佐吉も、他の奉公人も從いて行つたのでせう。
 一つは、商人の家の空氣の中に住むと、六郎は全く始末の惡い存在で、その荒々しい氣風と、喧嘩早い太々ふて/″\しさは、みんなから反感を持たれるのも無理のないことだつたのです。
 やがて、主人を海へ沈めたのも、お内儀かみを物干から投げ飛ばしたのも、六郎に相違ない――といつた疑ひが、家中の者を始め、親類の人達まで支配しました。
 初七日が濟んで直ぐ開いた分家や親類方の相談で、六郎は此家から立退いて貰ふこと、後取には相違なく徳太郎を直し、十七歳になるまでは、從兄弟いとこの金之丞が後見人になり、佐吉は相變らず支配人ばんとうとして、店の方を萬事取締つて行くことに決めてしまひました。
 これは大勢の力で押し切つたことで、六郎はカンカンに腹を立てましたが、どうすることも出來ません。
 越えて三日目。
「親分さん、坊ちやんが見えなくなりました。お願ひですからさがし出して下さい」
 遠州屋の死んだお内儀の妹、若くて美しいお里が、泣きながら平次の家へ飛んで來ました。
「それは大變だ、心當りは探したらうな」
 草履を突つかけ乍ら、平次。
「お友達の家は申すに及ばず、御近所から、親類方を殘らずきました」
「何時から見えないんだえ」
昨夜ゆうべ、――夕方から宵のうちで御座います。寢かし付けようと思ふと、何處にも見えなかつたので、大騷ぎになりました」
「晩飯は?」
「頂かせました」
平常着ふだんぎのまゝだね」
「え」
「坊ちやんが一番嫌つて居るのは誰だい」
 平次は妙な事を訊きます。
「金之丞さんで御座います。あの方は外へ出ると土産を山ほど買つて來て御機嫌を取りますが、どうしてもなついてくれません、――商人もたしなみだからと言つて、仕舞しまひなどを教へようとなさるからでせう」
「そんな事もあるだらうな、――ところで、一番坊ちやんのなついて居るのは?」
「私で御座います」
 お里は、ほこらしい顏をあげました。やくそこ/\の年ごろでせうが、苦勞をしたせゐか、美しいうちにも、何となく凛々りゝしいところのある娘です。
「それは間違ひもあるまい、その次は」
「さア――」
 お里は言ひよどみました。
「遠州屋から退轉した六郎のところを搜したらうな」
「それが、行方ゆくへがよくわかりません」
 困惑が美しい顏を曇らせます。
「六郎が坊ちやんを手なづけて困る、――と店中の者が言つてゐたぜ。劍術ごつこや喧嘩や勝負事は、子供には仕舞しまひうたひより面白いだらう。大急ぎで六郎の行方を搜して見るがいゝ、俺の方でも手配してみる」
 平次はガラツ八をかへりみて顎をしやくりました。かう言つただけで、この鼻の良い男は、八丁堀へ飛んで、六郎の行方を探す手配をしてくれるでせう。
「親分さん、――六郎さんは、そんな惡い方ぢや御座いませんが、私は反つて、あの番頭さんが」
「何?」
「いえ、何でも御座いませんが、六郎さんは、坊ちやんを誘拐かどはかすやうな方ぢやないと思ひます」
「お前さんも六郎組か、そんな事もあるだらう」
 平次は大して氣にもしない樣子で、兎に角お里と一緒に遠州屋へやつて行きました。
 家の中は、お内儀さんが死んだ時よりも一段の騷ぎ。
「親分さん、何うしませう、あの子に間違ひがあつてはこの店がつぶれます。たつた一粒種ですから、何とかして探して下さい」
 金之丞はさう言ひ乍ら、本當に泣き出しさうです。
 徳太郎の部屋といふのを見ると、成程お里が言つた通り玩具おもちやだらけ。
「これが皆なお前さんが買つてやつたのか。可愛がるのはよいが、子供にこんなに澤山玩具を買つてやると、馬鹿になるぜ」
「へエ――」
「が、心配しないがいゝ、坊ちやんの命に別條はないよ、萬一のことがあると、後取りは親類方が分家から次男坊でも連れて來るだらうから、お前さんが疑つてゐる六郎だつて、大事の玉を殺すものか」
 平次の言ふのは全くでした。後見人の位置や、この遠州屋の財産ざいさんを狙つての細工とすれば、よしや六郎が連れ出したにしても、徳太郎を殺すやうな事は萬に一つもないでせう。
「そんなものでせうか、親分さん」
 金之丞もやうやくホツとした樣子です。
 一應くだけは訊いた平次、引揚げようとして裏口へ承ると、仁助爺やが呼止めました。
「親分さん、大變な事を見付けましたよ、今晩參ります。何處へも出ずに待つてゐなすつて下さい」
「――」
「下手人は判りました、動かぬ證據をお目にかけませう」
「シツ」
 誰か立聽してゐる樣子に感付いて、平次は其儘裏口から外へ出て了ひました。


 其日のうちに六郎の隱れ家が見付かりました。平次の見込通り、徳太郎は三河町の叔父の家で、劍術ごつこをして遊んで居るところを、ガラツ八とその又手下の諜者てふじや發見みつけられたのです。
 その時ガラツ八の八五郎は、六郎へ繩を掛けようとしたばかりに、
「何をしやがる、をひが好きで叔父の家へ遊びに來てゐるのに不思議があるか、安岡つ引などに縛られる覺えはねえ」
 六郎に暴れ出されて、大組打が始まり、六郎もガラツ八も少しづつですが怪我をして了ひました。
 六郎は其處から直ぐ擧げられ、徳太郎は嫌がるのを無理に遠州屋へ引取られたことは言ふ迄もありません。
「何だつて六郎を縛つたんだ。つまらねえ事をしやがる」
 平次はプリプリしましたが、今となつては何うすることも出來ません。
 併し事情はその晩最後の飛躍ひやくをして、到頭恐ろしい結末カタストローフまで運んで了ひました。
「八、――氣になることがあるんだ」
 と平次、浮かない顏をして外ばかり氣にして居ります。
「何です、親分。六郎をしばつたのが、そんなに惡い事でせうか」
「いや、今晩此處へ來る筈の仁助爺やが來ないのが心配なんだ、――もう亥刻よつだらう」
「仁助爺やがどうかしましたか」
「どうもしなきアいゝが、――行つてみよう、行き違ひになつたら。此處で待つて貰ふとして」
 平次はお靜に言ひふくめて、腕に繃帶ほうたいをしたガラツ八と一緒に出かけました。
 行先は横山町の遠州屋。
「仁助爺やはゐるかい」
 店から入つて訊きましたが、宵から誰も仁助の姿を見た者はありません。
 下男部屋を見ましたが、其處も空つぽ。
 念の爲裏口の方を探しに行くと、裏木戸の内、建物と板塀の間にはさまつて、ボロ切れのやうに倒れて居たのはまぎれもない仁助爺やです。
 引起して見ると、
「あツ」
 左の背中、肩胛骨かひがらぼねの下から匕首あひくちを突き刺されて、冷たくなつてゐるのでした。
 後ろから心臟をやられたのですから、多分聲も立てずに死んだのでせう。それにしても恐ろしい手練で、匕首を拔かなかつた所爲せゐか、ろくに血も出て居りません。
「この匕首は?」
 平次は死體の背から刄物を拔いて見せると、五六人いて來た人々は、互に顏を見合せて口をきく者もありません。
「親分さん、やられました。それは私ので――」
 恐る/\出たのは、青い顏をした金之丞です。
「本當にお前さんの品に相違あるまいな」
「へエ、間違ひ御座いません。さる御屋敷からの拜領はいりやうの品で、自慢の短刀で御座います。それが私の品といふことは店中で知らないものは一人も御座いません」
「親分」
 八五郎は懷の捕繩を爪繰つまぐりました。
「八、早まるな、それほど皆なに知れて居る短刀で人を殺す馬鹿はない。おまけに、殺して二た刻も經つのに、その目印の刄物を拔かずに置くといふことがあるものか」
「へエ」
「これを見るがよい、これは誰のだ」
 死體の側から拾ひ上げたのは、金唐革きんからかは洒落しやれた懷煙草入れが一つ。
「あツ」
 今度は支配人の佐吉が青くなりました。
番頭ばんとうさんの品だらう」
「イエ、へエ――」
 何といふみじめな返事でせう。
「八、これが出るのを待つて居たんだ」
「すると、親分」
「待て/\、早まつちやならねえ、――仁助爺やはお内儀さんを殺した相手をさとつてその證據を見付けた。今晩俺のところへ言ひに來ると聞いて、下手人は此處に隱れて仁助を刺した」
「親分」
「俺も長い間お上の御用を聞いていろ/\の事に出つ會はしたが、こんな手數の掛つた、恐ろしい惡黨を見たこともねえ。八、よく見て置くがいゝ、俺は今やうやくそのからくりが解つた、いゝか、俺の指の先に居る野郎を縛るんだよ」
 平次はさう言ひ乍ら、靜かに手を擧げました。その指の向く先にゐたのは、佐吉? いな、お里? 否。
「それツ」
 平次の指が向く前に、サツと逃出した男。
「野郎ツ」
 八五郎は飛付いて、恐ろしい格鬪かくとうが始まりました。腕に怪我をして居るガラツ八には、手に餘る捕物ですが、平次の加勢で漸く縛り上げ、あかりの先へ顏を持つて來ると、
「あツ」
 何とそれは、あの女のやうに優しいのう役者崩れの金之丞ではありませんか。


「今度ばかりは見當が付かなかつたよ」
 平次は、二三日經つてから、つく/″\述懷じゆつくわいしました。
「下手人はどうしても六郎だ、理詰に考へると、外に疑ひの持つて行きやうはねえが、五つになる子供が金之丞を嫌つてあの荒つぽい六郎になついて居るのが不思議でたまらなかつた。――大人はだませる、子供は騙せるものでない」
「――」
「あんなに玩具を買つて來て、一生懸命御機嫌を取る金之丞より、叱つたり打つたりする六郎が好きだといふのは、子供は神樣のやうなものだから、人の腹の中まで見拔くんだね。俺は考へたよ」
「――」
「その六郎が縛られると、本當の下手人は爺や殺しの疑ひを直ぐ誰かに持つて行かなければなるまい。今まで六郎を疑はせるやうに細工をしてゐたんだから、筋書は又すつかり新しくなる。わざと自分の匕首あひくちで爺やを刺したのは金之丞の喰へないところで、錢形平次の智惠の底の底まで見破みやぶつたつもりの細工さ。あれだけだと、俺も金之丞を疑ふ氣にはならなかつたかも知れないが、死體の側へ佐吉の煙草入れを落したのが、細工過ぎてかへつて惡かつた。俺が、下手人が解つた、今指さしてやる――と言つた時は、さすがに金之丞も顏色が變つたよ」
 平次の話は明快ですが、まだ八五郎には解らないところだらけです。
「遠州屋のお内儀を殺したのは誰でせう、あの時は金之丞は確かに階下したに居た筈だが」
 と八五郎。
「俺もそれが判らなかつたが、金之丞ではあるまいか――と疑つて居た。第一、柳原で俺達へ飛付いた時、あの闇の中で、不意に俺と氣の付いたのが可怪をかしい」
「なアる」
「羽織の背を切つたのも、刀で斬り下げたのではなくて、小刀こがたなで靜かに破つたのだ。切り口が曲つて居る――と俺はあの時言つたらう。金之丞は、自分が狙はれて居るやうに見せかけたのだ」
「へエ、成程ね」
「それから、物干から遠州屋のお内儀を突落した人間は、お内儀に續いて、物干の柱を傳はつて飛降り、半分氣をうしなつたお内儀の頭を、三角石で叩き割つた」
「――」
「お内儀は突き落された時と、石で頭を打たれた時と、二度悲鳴を擧げた。それは番頭の言ふ通りだ。上から落ちた勢ひで頭を打つて死んだものなら、落ちる音がしてから悲鳴を擧げたといふ爺やの言ふ事がうそになる。それから、お内儀の肩に青いあざになつた打撲うちみは、落ちた時の本當の怪我で、三角石へ眞つ逆樣に落ちて死んだものなら、あんな傷はつく筈はない」
「――」
 ガラツ八はもう口もきけないほど驚いて居ります。平次の明察は、あの時もうこんな事まで見拔いてゐたのです。
「金之丞は能役者のうやくしや崩れで身が輕いから、物干からお内儀を突き落して、すぐ自分も飛降りたのだよ。深い素足の足跡はその時ついたのだ」
「少し足跡の方が大きかつたぢやありませんか」
「二間半も高いところから飛降りるんだ、どんな身輕なものでも足元がよろける、足跡の方が少し大きくなるのは當り前だ。ピタリと合ふ方が不思議だらう」
「へエ――恐れ入つたね、親分」
「物干から飛降りて、半分氣をうしなつて居るお内儀を殺して、それから母屋おもやから駈出したやうな顏をしたんだ。あんな恐ろしい惡黨はない。その上、六郎が縛られると、爺や殺しの疑ひを番頭の佐吉へ持つて行かうとした」
「遠州屋の主人がおぼれたのは、六郎のせゐぢやありませんか、親分」
 ガラツ八は取つて置きの疑ひを持出しました。
「あれは全くのあやまちだつたんだ、船が引くり返ると、どうかすると、泳げるのが死んで、泳げないのが船底にかじり付いて助かるものだ、――遠州屋の主人が死んで、疑ひが六郎の方へ掛かるのを見て金之丞は細工を始めたのだよ。六郎は荒つぽい人間だが此上もない善人さ、徳太郎がしたつて後を追つかけるのも、お里がよい男の金之丞を嫌つて、六郎に心を寄せるのも無理はない。人間ははらが綺麗だと良いことがあるものだ。なア、八、そのうちに、八五郎さんでなくちやと言ふ娘が飛出すかも知れないぜ」
「親分、冗談ぢやねえ」
 八五郎も、此時ばかりは惡い心持ではなかつたやうです。





底本:「錢形平次捕物全集第十三卷 焔の舞」同光社磯部書房
   1953(昭和28)年9月5日発行
初出:「オール讀物」文藝春秋社
   1934(昭和9)年9月号
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
※題名「錢形平次捕物控」は、底本にはありませんが、一般に認識されている題名として、補いました。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:門田裕志
2014年5月25日作成
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