錢形平次捕物控

女辻斬

野村胡堂





「又出ましたよ、親分」
 八五郎は飛び込んで來るのです。
 一月も末、美しく晴れた朝でした。平次はケチな盆栽ぼんさいの梅をいつくしみながら、自分の影法師と話すやうに、のんびりと朝の支度を待つて居たのです。
 プーンと味噌汁の匂ひがして、お勝手では女房のお靜が、香の物をきる音までが、さはやかに親しみ深く響いてゐるのでした。
「何が出たんだ。お化けか、山犬か、それとも――」
「辻斬ですよ、親分。暮からこれで五人目だ。――秋から數へると何人になりますか」
「矢つ張り、辻斬か。憎いな」
 平次はこの意味のない殺戮者さつりくしやを、心から憎む一人だつたのです。
「今朝になつて、新し橋のたもとで死骸を見付けましたがね。毎々のことだから、富松町の直吉兄哥あにいあつしが立會つて、お屆けは濟ませましたが、殺されたのは武家でもあることか、豐島としま町の酒屋の隱居で、虫も殺さないやうな、太左衞門といふ六十過ぎの年寄だ」
むごいことをするぢやないか」
「それに憎いぢやありませんか。太左衞門が無盡で取つた五十兩を、人が危ないととめるのも構はず、氣丈な爺仁おやぢで、――小判が喰ひ付きやしめえ。――かなんかで、内懷へ入れて持つて歸つたのを、財布ごと死骸から拔いて居るんで」
「それぢや追剥おひはぎぢやないか。辻斬よりも尚ほ惡い」
「この樣子ぢや、柳原を通る人がなくなりますよ。名物の惣嫁そうかも、陣を拂つて姿を消してしまひましたぜ」
「御愁傷樣見たいだ。差當り御客筋のお前は淋しからう」
「冗談言つちやいけません。あつしはそんなものを口惜しがつてるわけぢやありませんが、新し橋を渡ると向柳原で、あつしのお膝元でせう。あんなところで辻斬を開帳されちや、あつしばかりでなく、親分の名前にもかゝはるぢやありませんか」
「おや、ゆすりがましくやつて來やがつたな。柳原の辻斬が、俺にまでたゝるとは思はなかつたよ」
 輕口であしらつて居りますが、柳原の辻斬の惡どさには、橋一つ越した明神下に住んでゐる平次も、煮えこぼれるやうな憤懣ふんまんを感じて居るのです。場所は筋違すぢかひ御門(今の萬世橋)の籾御藏跡もみおくらあとあたりから、片側町の柳原を、和泉橋から新し橋を經て、淺草御門前の郡代屋敷あたりまで、かなりの長丁場ですが、昔は恐ろしく淋しいところ。夜鷹よたかと辻斬が名所で、つい先頃までの、櫛比しつぴする古着屋などがあるわけもなく、空地と少しばかりの屋敷と豐島町寄りになつて、いくらか町家があつたに過ぎません。
 しかし、兩國から本郷神田への要衝で、人通りは引つきりなしにあり、見附と見附に挾まれて、ろくな辻番もなかつたので、辻君と辻斬には、結構な職場であつたに違ひなく、その地勢を利用して、人を斬ること人參にんじん牛蒡ごばうの如き惡鬼が、秋から春へと跳梁てうりやうし始めたのです。
 最初は人を斬るのが面白かつたらしく、武家から始まつて町人に及び、暮近くなると、これは少ない例ですが、女子供まで斬られました。江戸の町人達の中には、女や子供が、暗くなつてから、獨り歩きするといふ習慣はなかつたのですが、小買物や錢湯などには、隨分一人で出かけることもあり、柳原の辻斬はその無抵抗むていかうな女子供まで狙ふといふ、驚くべき殘酷振りを發揮したのでした。本筋の辻斬は、刄物を持たない、町人をおそふのさへ耻とされて居ります。まして、女子供を斬る如きは、殺人鬼の仕業しわざとしか思へません。
 尤も、最初のうちは、手當り次第に人を斬るだけでしたが、後には斬つた上に懷中を拔くやうになりました。因州いんしうの不良少年白井權八が、腕に慢じて人を斬り始め、後には遊びの金に詰つて追剥を始めたと同じやうに、柳原の辻斬も、人を斬る樂しみから金を奪ふ樂しみに轉じたのでせう。
「何んとかして下さいよ、親分。あんな怪物えてものにのさばられちや、こちとらの耻ばかりでなく、神田つ子一とうの耻ぢやありませんか」
 八五郎は此處を先途と肩肘かたひぢを張るのです。
「お前に言はれるまでもなく、暮から隨分骨を折つて辻斬野郎をあさつたが、現場をつかまへなきや、何うすることも出來ない。相手はどうせ武家だらうから、神田中を歩く武家を呼びとめて、友切丸の詮議見たいに、一々御腰の物を拜見するわけにも行かないぢやないか」
「何んとか手はないものでせうかね、親分」
しやくにさはることに、俺が出かける晩に限つて、辻斬はない。此方の出入りを見張つて居るやうだ。御用聞が惡者の出入りを睨んで居るならわかつて居るが、惡者が御用聞の出入りを見張るやうになつちや、お仕舞ひだね」
「口惜しいぢやありませんか」
 八五郎が口惜しがる以上に、平次も齒ぎしりして居たのです。
「尤も、辻斬野郎を縛る手は一つだけはある。これは確かなだが」
「そのを教へて下さいよ。親分一人で手に了へなきや、あつしが手傳つてきつとやりますよ」
 八五郎は一生懸命でした。全く柳原に辻斬がある毎に、向柳原の住人八五郎は、人樣に顏を見られるやうな氣がして、天道樣の下をヌケヌケとは歩かれないやうな氣がするのでした。
「わけはない、をとりを使ふのだよ」
「へエ、囮をね」
「誰か、斯う、金がありさうで、弱さうな人間に化けるんだな。――大きな財布で懷ろをふくらましてよ。頭巾か何んかで顏を隱して、筋違すぢかひ[#「筋違すぢかひひ」はママ]から兩國までを、二三度歩くんだな――いや二度で澤山だ、往きと歸りだ。――よく晴れた、月のない晩といふと丁度今頃だ。亥刻よつ(十時)から行つて、子刻こゝのつ(十二時)前に戻るが宜い。そのをとりには、きつと引つ掛かるに違ひない。其處へ俺が出て取つて押へるのはどうだ。囮がよく出來さへすれば、先づ間違ひはあるまいよ」
「宜いですね、その囮には誰がなるんで?」
「お前だよ、八。打つて付けぢやないか、何處かのんびりとして居るし、柄が大きくて斬りでがありさうで」
「ブルブル、御免かうむりませうよ。辻斬と霍亂くわくらんは大嫌ひで」
 八五郎は肩を縮めて、ブルンブルンと身顫ひしました。
「丁度はまり役だがな、いけないかな」
「そいつはいけませんよ、ガン首だけは掛け換へがないんで」
「そんなあごの長い雁首がんくびは滅多にあるまいな。仕方がない、もう一つのをやらう」
「どんな術で?」
「俺が囮になつて、お前が捕方に廻るのさ。去年の暮の素人芝居の與一兵衞の拵へだ、飛んだ似合ふぜ」
「それはいけませんよ、親分。首を斬られたらどうするつもりです」
「お前が嫌で、俺が嫌ぢや、何處へも頼みやうはないぢやないか」
「やりますよ、親分、あつしがやりや宜いんでせう。なアに、んな雁首なんか、絲目をつける代物ぢやありませんよ。たゞ、ちよいとその、へツ、與一兵衞の拵へぢや、役不足なんで。花川戸の助六かなんか、女の子の喜びさうなをとりぢやいけませんか」
 斯う言つた八五郎です。
「安心しなよ。辻斬がそんなに怖かつたら、首へたがをはめて行くんだ。箍も鐵か眞鍮しんちゆうが宜いな。唐犬そつくりだぜ」
「そんな間拔けなものを、首へはめられますかてんだ。――大丈夫ですよ。唐犬の首輪を用意するくらゐなら、ガン首の掛け換へを安く仕入れて來まさア」
「その氣持だよ」
 八五郎がようやく臆病風を吹き飛ばした樣子を見て、平次はニヤニヤして居ります。
「親分が見張つて下されば、なアに、辻斬野郎が二三十人來たつて驚くこつちやありません」
 親分錢形平次といふ、荒神樣が付いて居ることを、八五郎は漸く思ひ出したのでせう。


「辻斬のよく出るのは何處だ」
 平次はいよ/\作戰に取りかゝりました。
「何んと言つても、新し橋から和泉橋の間ですね」
「あの邊に、お前の懇意こんいな家はないのか」
「呑み屋と髮結床なら門並知つてますが」
「それから場所柄、夜鷹も皆んな馴染だらう」
「そんなものを相手にやしませんよ。あつしの相方は入山形に二つ星とまでは行かないが、仲町なかでも名の通つた――」
「わかつたよ、もう。惚氣のろけを聽き度いわけぢやない。その夜鷹をみんな狩り出して、水もらさぬ陣立てをし度いが、お前の馴染が居ないやうぢや、さうもなるめえ。手一杯に土地の下つ引を集めて郡代ぐんだい屋敷から和泉橋の柳森稻荷まで、一パイに見張らしてくれ。面を出しちやならねえ、曲者が逃げ出したら一ぺんに飛び出すやうに」
「へエ、やつて見ませう。神田から日本橋へかけての下つ引を集めると、二十人くらゐにはなります」
「誰にも言ふな、この辻斬退治は、俺とお前と二人だけといふことにして、仲間にも人數を洩らしちやならねえ」
「承知しました」
「それから、新し橋の邊に足場がほしい。床屋や呑み屋は人の目に立つだらうから、しもたやが宜いな。辻斬狩りをやるんだから、辻斬なんか屁とも思はない人間でなきや、騷いだり、あわてたりすると困る」
「お玉ヶ池が近いから、あの邊は妙に浪人者の多いところですよ」
「そのうち、お前の懇意こんいなのはないか」
「三人や五人はありますよ。先づ、腕の良いのでは、大路地の九頭龍求女くづりゆうもとめ、九州浪人でこいつは強いの強くねえの――」
「あんまり強いのは、自分が飛び出さうとするから困るぜ。――それに辻斬の本人だつたりしたひにや、此方が引つ込みがつかなくなる」
「さうですか、――岩井町の桃谷もゝのや鬼一郎といふのは、どうです」
「聽いたやうな名だが」
「金があつて、ちよいと好い男で、洒落しやれに浪人して居るやうな人ですよ。酒が強くて、洒落がわかつて」
「大層肩を持つぢやないか――そんなのは辻斬野郎と因縁いんねんをつけるのを嫌がるだらう」
「訊いて見なきやわかりませんが」
「外に手頃で、貧乏で、あんまり強くなくて、喜んで家を貸してくれさうなのはないのか」
「あ、ありますよ。すつかり忘れて居たが、豐島町の手習師匠進藤孫三郎先生、若くてわけ知りで、學があつて、足が惡い。これなら申し分はないでせう。その上貧乏で、妹の毬代まりよさんが滅法可愛らしい」
「八五郎らしいな。よく、そんなところへ目を付けやがる」
「それに、葉賀井兼齋はがゐけんさいといふ養ひ親も居るが、これは身動きも怪しいほどの年寄りだ。そこに極めませうよ、親分」
 八五郎は獨りできめてしまひます。


 それから二三日、平次は柳原の地勢と、あらゆる條件とを調べ拔きました。大路地の九頭龍求女くづりゆうもとめと岩井町の桃谷鬼一郎は、充分疑はれていゝ浪人者ですが、何一つ證據があるわけではなく、九頭龍求女は容易ならぬ使ひ手だといふことと、桃谷鬼一郎は金を湯水の如く使ふのが、をかしいと言へばをかしいくらゐのもので、甚だたよりない疑ひです。
 三人目の進藤孫三郎は、如何にも柔和な學者でした。平次が八五郎を案内にやつて行くと、豐島町一丁目の深々とした路地を入つた奧、寺子を歸して妹の毬代まりよと二人、養父の兼齋を介抱して居るといふ、貧し氣な浮世劇の一とコマでした。
 兼齋けんさいといふのは七十を越した枯木のやうな老人で、何處が惡いといふのでもないやうですが、燃えきつた蝋燭らふそく見たいに、次第に生命の灯の消えるのを待つやうな哀れな姿でした。
「それは/\。親分がわざ/\のお出で、かへつて恐れ入りますよ。私は武家とは名ばかり、子供達に孝經や中庸ちゆうようの素讀を教へるのが關の山の、御覽の通りの痩浪人で、何んの役にも立ちませんが、家を足場代りにお貸しすることなら出來ます。どうぞ御自由にお使ひ下さい」
 若い進藤孫三郎は、へり下つた態度で斯う言ふのです。二十七八にもなるでせうか、青白くて骨細で、如何にも柔々よは/\しい若侍ですが、眼の大きい、鼻の高い、智的な感じのするのはさすがです。
 妹の毬代といふ娘は、十七になつたばかり、これは八五郎が言ふやうに、全く素晴らしい娘でした。陰影の多い細面で、頬から顎へかけての丸味が、僅かに十七娘の柔かさを持つて居りますが、多年の貧苦にしひたげられたか、いかにも痛々しい感じで、美しいだけにそれが強調されるといつた處女姿でした。この痛々しさのうちから、非凡の美しさを見出した、八五郎の眼の高さに、平次はむしろ敬服したくらゐです。
「それでは、何彼の掛け引きに、お宅を拜借いたします。第一八五郎の奴が、家から與一兵衞の姿なんかでは出たくないと申します。萬一町内の若い娘達にでも逢つちや、引つ込みがつかないと申すのです」
「無理もありません。此處を樂屋がくやにして出る分には、誰にもわかるわけはありません」
「さう願へると有難いので」
 それは正月の晦日みそかでした。月がない上に、滅法冷たくて、樂屋がなくては、往來で着換へも出來ません。
「こいつを着るんですかね、へツ」
 八五郎は文句を言ひながら、野暮つたいドンツクを着て、高々と尻を端折り、顏を包んで首から財布を下げました。中に入れたのは破れ鍋を碎いたのを一と抱へほど。
「これだけありや、小判にすると大した身上しんしやうだよ、――怪しいのが來たら、投げ出して、命乞ひをするが宜い。――命だけはお助け下さいとな」
「辻斬は掛け合ひ事ぢや間に合ひませんよ。闇から飛び出して、いきなりサツと――宜い心持ぢやありませんね、十手だけは持たして下さい。いざとなれば」
「安心しなよ。お前が十手を振り廻す前に首の方が先に飛ぶ」
おどかしちやいけません」
 支度が出來上がると、八五郎は早速この仕事に取りかゝりました。頭巾を冠つて、綿入を重ねて、少し猫背になつた姿は、平次の拵へが良かつたので、なか/\金のありさうな隱居に見えるのでした。
「此處から兩國の方へ行つて、すぐ引返して來い。そして新し橋を通り拔けて、籾御藏跡もみおくらあとへ行つて引つ返すのだ。誰にもこの仕掛は言はないから、途中で仲間に逢つても口を利くな」
「へエ、それぢや行つて參ります」
「親分はどうなさるんで?」
 進藤孫三郎は心配さうに平次に訊ねました。をとりとは言ひながら、八五郎を一人出してやるのが何んとなく心細かつたのでせう。
「私が一緒に歩いちや、いかな辻斬野郎でも遠慮をするといけません。私は八五郎の行つた方とはアベコベに、筋違見附の方へ行つて、あの邊で八五郎を待つとしませう」
「私もお手傳ひすると宜いのだが、浪人と言つても、ろくに劍術も知りません。その上、足が惡くて、却つて御迷惑でせうから」
「いや、もう、その斟酌しんしやくには及びません」
「御免をかうむつて、休んでお待ちして居ります。外から聲を掛けて下されば、妹が起きて參りますから」
 平次の出て行く姿――八五郎と反對に、もみ御藏の方に向ふのを送つて、進藤孫三郎は奧へ退きました。奧と言つても六疊が一つに四疊半が一つ、平家の四疊半には、美しい娘の毬代まりよが起きて居て、せつせと父親の肌着らしいものを縫つて居ります。
 遠くの方から、火の用心の拍子木、近頃は物騷なせゐか、この邊は按摩あんまの流しも廻つては來ません。


 八五郎はその扮裝なりで、兩國の方へ行つたが、郡代屋敷の前から引つ返して、新し橋へかゝる前に、大路地の九頭龍求女もとめの浪宅をヒヨイと覗きました。
「誰だい、其處から覗くのは」
 この寒空に格子の中では雨戸を少しかせて、主人の求女は酒呑しゆてん童子のやうになつて居りました。
 その側には、妾のおくめが、九頭龍求女と差しつ差されつ、同じやうにベロンベロンなつて居ります。女だてらに酒が強くて、その上小太刀の名人だといふ噂はありますが、世を狹めて居る浪人者などは、自分の意氣地のなさをカバーする爲に、身内の者の自慢をする癖があるのであまり當てにはなりません。
 求女の側に引つ付いて、横つ坐りになつて、赤い裾をチラチラさせる風情は、劍術よりは色事の方が達者さうで、二十三四のこれは大した年増です。
「向柳原の八五郎でございますよ」
 八五郎はヌケヌケと名乘るのです。
「何んだ、あごの長げえのか。入つて一杯附き合へ」
「そんなわけには行きません。今晩は辻斬狩りで」
「何? 辻斬狩り? そいつは怖いぞ。あの辻斬は餘つ程の腕きゝだ」
「それを生け捕つて、御褒美にあり付かうと思ひましてね。――懷ろへ、五十兩といふ大金が入つてますよ。笹野の旦那から、軍用金を拜借したんで」
「アラ、まア素敵ねえ。――少し貸してらつしやいよ」
 女はくちばしを容れました。
あきれた男だ。そんな事をベラベラしやべつて歩くと、俺でも辻斬をやり度くなるぜ」
「九頭龍の旦那なら斬られても本望で」
「馬鹿な奴だ」
「ぢや御免下さい。これから柳原を一と廻りしますから」
 八五郎は言ひ度いだけのことを言つて筋違見附の方へ辿たどるのです。
 暫らく經つて岩井町の桃谷鬼一郎の家へも、をとり姿の八五郎は聲を掛けました。桃谷鬼一郎はもう寢て居りました。この家は裕福で召使も居り、奧では若い女共も二三人ジヤラジヤラして居る樣子、鬼一郎に逢はなくとも、言傳ことづてだけでも用事は濟んだわけです。
 それから、柳森稻荷の後ろに出て居る、夜鷹蕎麥よたかそばに首を突つこんで、熱いところを一杯キユーとやり、鼻唄交りで出て來たのは、やがて亥刻よつ半過ぎだつたでせう。
 晦日みそかの空は眞つ暗で、柳原土手はこの間からの辻斬の噂で人つ子一人通りません。和泉橋のところから新し橋近くなると、八五郎の足は蹣跚まんさんとして居ります。
 細川長門樣の屋敷前へ來ると、人通りは全く絶えました。八五郎はこの邊まで來ると、先刻の醉ひが大いに發したらしく、一歩は高く一歩は低く、何やら調子の外れた小唄も出て來ます。
「あツ、危ねえ」
 八五郎は飛び退りました。闇の刄が、柳の蔭から、サツと浴びせて來たのです。氣合をかけるとか何んとか、斬るにも突くにもきつかけのあるものですが、斯う不意をくらつては、大醉した八五郎、ひとたまりもあるまいと思ひきや、實に器用に、サツと身をかへしました。空に流れる刄、二三度追つかけて斬つて來るのを、八五郎日頃に似合はなく、實にたくみにかはします。
「名乘れツ、卑怯だぞツ」
 八五郎の聲は寒天をつんざきさう、颯爽として今までの醉つた樣子などは拭つたやうになくなつて居ります。
「――」
 曲者はしかし、それには應へず、刄を引いてサツと逃げ出すのです。
「待てツ」
 八五郎は恐ろしく活動的です。褞袍どてらほどの厚い着物に、頭巾まで冠つて、進退甚だ不自由さうですが、曲者の足が早く、ツ、ツ、ツと闇を潜るやうに逃げて行く後ろから、懷ろの財布を取つてサツとはふりました。中は古鍋の破片で一パイ。それが飛んで曲者の後ろ膝を叩くと、曲者は驅けて行く膝を折られて、ガツクリ大地に崩折れてしまひます。
「親分、つかまへましたか」
 後ろから飛んで來たのは、これがまぎれもない八五郎です。
「八、提灯を持つて來い。顏が見度い」
 なんと、曲者を押へて居る頭巾にドンツク姿は、八五郎ではなくて、親分の錢形平次ではありませんか。
 平次と八五郎は、途中で身扮みなりを交換して八五郎の變裝を平次が着て、曲者に油斷をさせたのでせう。くはしく言へば、進藤孫三郎の家を出て、左右に別れた二人は、和泉橋の先の柳森稻荷の蕎麥屋そばやのれんの中で、人知れず身裝みなりを變へたのを、さすがの曲者も氣が付かなかつたのでせう。
 平次が曲者を押へて居る間に八五郎は何處かへ飛んで行きました。その間に平次は、懷中の捕繩を出して曲者を縛らうとしましたが、曲者の身體が、如何にも無抵抗なのと、その手足の柔かいのに首をひねりました。
 暮から始まつて、幾人かの人を斬つた曲者――その中には相當の腕のある武家もあり、ヤハな腕前では、あのすゑ物斬の凄いわざが、出來る筈もありません。
 曲者の刀は何處へ抛つたか、それは見當もつきませんが、もう得物も何んにも持つて居ないことは、平次の手さぐりでもよくわかります。それにしても、この曲者の手の柔かくしなやかなこと、ギユツと掴んだ平次のの中に、そのまゝ溶けてしまひさうな凝脂ぎようしは全く唯事ではありません。
 それに、曲者は、平次の膝の下に敷かれて泣いて居る樣子です。數人とも知れぬ人を斬つて、泥棒まで働いた、兇惡無慚むざんな辻斬が、平次の膝の下に敷かれて、シクシク泣いて居るのも受取れないことです。頭の樣子、髮形ちなど、手さぐりでも見ようと、頭巾に手をかけると、さうはさせまいと身を揉んだはずみに馥郁ふくいくとして處女をとめが匂ふのです。
「親分、ようやく借りて來ましたよ」
 一丁も先から提灯を振り照して八五郎が我鳴るのです。
「八、急げツ」
 八五郎は平次に聲をかけられると、急にはずみが付いて驅け出すと、
「あア、危ねえ」
 八五郎は尻餅をついて、折角の提灯ちやうちんを二三間先に投げ飛ばしました。
 提灯は燃えなかつたのは仕合せでしたが、その代り一ぺんに消えてしまつたのです。
「あツ」
 平次も油斷でした。――いやわざと油斷をしたのかもわかりません。曲者を押へた手がゆるむと、膝の下に敷いた曲者の柔かい身體はスルリと拔け出して、それを追ふ平次の手が伸びる前に、豐島町一丁目の町の闇へ、スルスルと隱れてしまつたのです。
「何んといふことだ。八」
 平次はもう小言を言ふ張合ひもありません。少しの油斷で、折角手捕りにした、辻斬の曲者を逃してしまつたのです。
「親分がはふつたんぢやありませんか。小判の入つて居る財布を」
 八五郎は照れ隱しに、財布の中の錫の破片かけらをザクザクさせて居ります。
「俺が同志討をするものか。最初の財布を抛つたのは俺だが、曲者が倒れる時、自分の身體の下敷にしたんだらう。提灯を持つて來られちやかなはないから、膝の下に引据ゑられながらも、お前の提灯を目當てに抛つたんだらう」
「大變な曲者ですね」
「尤も、思ひの外弱い曲者だつたよ」
「へエ、あの辻斬野郎がね」
「お前に萬一のあやまちがあつちやならねえと思つて、新し橋にかゝる前に身扮みなりを變へたが、こんな弱い曲者なら、お前でも樂に扱へたかも知れない」
「へエ、そんな事があるんですかね。十人近くも人を斬つた辻斬野郎が、このあつしより弱いなんて。へエ、――さうして見ると、あつしの腕前も滿更ぢやありませんね、親分」
「誰もお前を褒めてはしないよ。曲者は、若い女だつたのさ」
「女?」
「あの辻斬野郎が、若い女だつたのさ。間違ひはないよ。お前見たいに嗅ぎ廻したわけぢやないが」
「へエ、驚いたな。どうも」
「灯が欲しいな。――提灯に蝋燭らふそくがあるだらうから、その邊で灯を貰つて來い」
「駄目ですよ。辻斬騷ぎが始まつたと見ると、掛り合ひが怖いから、近所の家は田螺たにしのやうに閉めきつて、叩いたくらゐのことでは灯を貸してくれません」
 少し遠くから灯を借りて來ると、平次は暗い往來へ四つん這ひになつて、曲者の殘した品々を集めて居りました。
「何があるんです? 親分」
「小判と見せかけたすゞの破片の財布。これは曲者のぢやねえ、此方の品だ。外に拔刄ぬきみが一本、あまり長くはない。脇差だが、相州物で、なか/\のワザ物らしいよ」
「おや、此處にかんざしがありますよ」
 八五郎は道の端つこ、雜草の中から銀の華奢きやしやな平打の簪を拾ひました。
「良いものが手に入つた。――定紋だとモノを言ふが、九葉牡丹ぼたんか何んか――役者の紋ぢや仕樣がない」
 曲者の落したのはそれつきり。でも、少ない得物ではありません。
「誰でせうね、親分。女の辻斬は?」
「考へて見よう。――曲者は淺草橋から、筋達すぢかひ見附の間に限つて出て來る。橋を越したこともなく、辻番や町木戸を通つたこともない」
 平次はさう言ひながら、新し橋の欄干らんかんもたれて居りました。傍には八五郎が、これも仔細しさいらしく小首をひねつて居ります。
「それに、少しも遠走りをしないのはどう言ふわけです。辻斬の居職なんてのは聽いたこともない」
「辻斬の居職は良いな。――ところで、あの腕前だ。十人も斬つて居るが、皆んな一と太刀でやられて居る。据物斬の名人だ。女や子供に出來る藝ぢやない。町木戸をけ、辻番や見附けを除けると、ひどく狹い場所になる」
「だからあつしは、手習師匠の進藤孫三郎と、二人の浪人者が怪しいと言ふんで。九頭龍求女もとめなどといふ男は、隨分臭いと思ひますが」
「だが、先刻さつき出た辻斬は女だぜ。膝の下に組み敷いたんだ。女と男と間違へる筈はない」
「あの九頭龍求女の妾のおくめなんか、辻斬くらゐはやり兼ねませんよ。そりや好い女だが、小太刀の名人ださうで」
「男をなで斬りといふ洒落しやれぢやないのか」
あつしだつて撫斬りされ度くなりますよ。膝を崩して、求女と一緒に大ヘベレケになつて居る圖なんてものは?」
「酒を呑んで居たのか」
「大分醉つて居ましたよ」
「では、その女は辻斬ぢやない。辻斬は醉つて居なかつた」
 平次はその辻斬女の頭巾を脱がせようと爭つたとき、酒の匂ひの代りに、馥郁ふくいくとして處女むすめらしい花やかなものが匂つたのです。
「でもね、親分。醉つた振りをして、實は酒なんか呑んで居なかつたといふもありますよ」
 八五郎はひねつたことを言ふのです。
「――」
あつしが行くのを前から知つて居て、酒を呑んだやうな顏をして、頬に紅なんか塗つて、芝居をして來たとしたらどんなもので」
「待つてくれよ、八。お前にしては行屆いた考へだが、お前が行くといふことが、前からわかつて居るわけはなし、酒の好きな人間が、當てのない人間の覗くのを待つて、頬に紅まで塗つて、呑まずに醉つた振りをして居るなんてことは、一寸出來ない藝當だせ」
「さうでせうか」
「もう少しモノを當りまへに考へることだな。――もう一人の浪人の桃谷鬼一郎といふ人のところには女は居ないのか」
「三四人居ますよ。ヤツトウのうまい女が居るといふ話はきかないが――」
「三四人も居る中から、辻斬が一人脱け出して俺に斬りかけるのも變だ。手習師匠の進藤孫三郎さんのところは?」
「あの通り、可愛らしくて綺麗な娘が居ますが、あのがねえ、まさか」
「そのまさかが危ない。行つて見ようか」
 二人はようやく新し橋の欄干を離れました。


「あれは何んだ、八」
 平次は路地の中ほどに立止りました。突き當りの進藤孫三郎の家から、聲は殺して居りますが、容易ならぬ凄まじい物音がするのです。
「開けて見ませう」
 八五郎は飛び付きましたが、雨戸は釘付けにでもされたやうに、八五郎の馬鹿力でもビクともしません。
「何をマゴマゴして居るんだ。ドンと體當りを喰はせろ」
「合點」
 八五郎は、こんなときには、恐ろしく役に立ちます。肩肘かたひぢを張つた十六貫近い巨躯きよく
「アリヤ、リヤ」
 と突き當ると、雨戸は二枚モロに飛んで、恐ろしい情景が、二人の眼の前に展開するのです。六疊の眞ん中には、若い主人の進藤孫三郎が、紅に染んで倒れ、その傍には、隱居の葉賀井兼齋けんさい、大肌脱になつて、自分の皺腹に短刀を突つ立てんとするのを、娘の毬代まりよが、必死となつてすがり付いてゐるのです。
 老いたると若きと、皺だらけの白髮と、張りきつた若い娘と、その爭ひは深刻でした。
 が、平次と八五郎が飛び込むと、隱居の葉賀井兼齋も、力及ばずと觀念したか、短刀を娘に任せて、ガツクリと疊に手をつくのです。
「これは、親分達、見苦しいところを」
 さう言つた聲は激情と爭ひにかわいて、喉から出るのは、唯のうめきのやうです。
「どうなすつた、御隱居。――これは」
 平次も呆氣あつけに取られて、此處の樣子を見るだけ。後には續く言葉もありません。
「生恥をさらすのも、いたし方はない。繩を打つて下さい。養子孫三郎を手に掛けて殺したのも、私。暮からの辻斬もこの私、――葉賀井兼齋」
「いえ、お父樣ぢやございません。辻斬は現にこの私。先刻さつき、新し橋で八五郎親分に組み敷かれ、危ないところを逃げ歸りましたが」
 娘の毬代は、必死となつて、父の言葉をさへぎるのでした。
「止して下さい、御隱居。いや、お孃さんも、つまらない細工さいくだ。――孫三郎さんも足は惡かつたが、新し橋へ行つて辻斬が出來ないほどの不具かたわではなかつた。御隱居はそれにくらべると、身動きも御自由ぢやない樣子だ。それにあの手際は女子供に出來ることぢやない――」
「――」
「言ひ難ければ、あつしから申しませう。進藤孫三郎さんは、本當の子ではなく、御隱居の養子でしたな? その養子の孫三郎さんは、据物すゑもの斬の名人で、足は不自由だが、大した腕前であつた」
「――」
「その腕に慢じて、人を斬つて見度くなつた。わざに優れた人は、その業で身を亡ぼすことがある」
「孫三郎は、大變氣性のはげしい若者でありましたよ。身體が惡い爲に、朋輩ほうばいにも馬鹿にされ、祿を奪はれて浪人したのを口惜しがり、裏の空地を道場にして、獨りで業を勵んで据物斬の名人になつた。相手のない劍術は外に行く道はない。足萎あしなえの毛利まうり玄達が、手裏劍しゆりけんの名人になつたやうに」
 隱居の兼齋は、ほぐれるやうに話し始めたのです。
「業が上達すると、ツイ人を斬つて見度くなる。一と通りの學問をさせた筈だが、孫三郎は氣性が激しい上に、足が惡くて出世の途を絶たれ、世をのろふ心持だけが増長して、私に隱れてそのやうな惡業を始めた。――娘毬代まりよは、孫三郎のをさな馴染でもあり、許婚でもある。折を見てはその惡業を止めようとしたが、血に狂つた孫三郎は、少しもそれを聽かうとしないばかりか、――到頭斬つた人の懷中まで拔くやうになつた。この通り」
「――」
 葉賀井兼齋は押入から手文庫を取出すと、それをグワラリと開けて、二三百もあらうと思ふ、小判を疊の上に並べるのです。
「孫三郎の惡業は果てしもありません。が、本人は少しも惡いことをして居るとは思はず、無用の殺生を、遊びのやうに思つて居るのです。この世に生きて居ても、大した役にも立たぬ人間――無用の祿をむ武家も、金儲けのことしか知らぬ町人も、この世から、そつと掻き消しても、大した罪とも思はない樣子でした。私がどんなに口をくしても、生學問と生理窟の達者な孫三郎は、人を斬る樂しみと、金を集める慾に目がくらんで、益々その惡業が募るばかりです」
「金は何をするつもりでした」
「私もそれを申しました。金のいやしむべきことを、くり返して申しましたが、この世に金で買へないものは一つもない。今に私も高い役目を金で買つて、昔の朋輩ほうばいを見返してやると――斯う申しました」
 人の血を流すことを、何んとも思はない殺人鬼、背に迫る八大地獄も知らずに、進藤孫三郎の増長は目に見えるやうです。


「それが、今晩。八五郎親分。が、をとりになつて辻斬を退治すると聽かされて驚きました。孫三郎はケロリとして寢てしまひましたが、娘の毬代まりよ、なまじ劍術の一と手も心得て居るだけに、錢形の親分は、孫三郎を辻斬の本人と睨んで樣子を見に此處へ來たに違ひない。今夜のやうな、よく晴れて眞つ闇な晩に、しかも晦日みそかといふ日を休んでは、矢張り孫三郎が辻斬の本人に違ひないとさとられ、それでは孫三郎が可哀想と、若い娘の癖に、男姿になつて飛び出しました。八五郎親分を斬るなどといふ、それほどの考へがあつたわけでなく、今夜も確かに辻斬が出たとわかれば、孫三郎にかゝる疑ひも消えようと、私が止めるのも聽かずに新し橋まで行つてしまひました。そのあとのことは親分方が御存じの通り」
 平次の膝に組み敷かれたのは、世にも可愛らしい娘の毬代が、許婚の孫三郎を救ふためとわかつて、八五郎は妙に感に堪へて、首をひねつたり膝を叩いたりして居ります。
「――」
 その傍でシクシク泣いて居るのは、今はどうにもならない毬代の哀れな姿でした。
「親分、もう戻りませうよ。――あつしはもう、腹がつて、腹が減つて」
 などと、八五郎もすつかり平次のやり口を呑み込んで、腹の減つたことにして平次に引揚げをせがむのでした。
「待てよ、八。辻斬の始末はどうなるんだ」
「辻斬の曲者は、腕の良い人に斬りかけてあべこべにやられて死んでしまつたことにして、それで市がさかえるぢやありませんか」
「いえ、腕の良い人に斬りかけたわけぢやございません。私もこの通り足腰の不自由な年寄りですが、この上に孫三郎に惡業を積ませ、娘にも苦勞をさせ度くないと思ひ、高鼾たかいびきで寢たところを、一と思ひに刺しました」
 兼齋が重ねて言ふのを、
「もう宜い。八五郎が折角、あんなに言ふんだから、あつしはこのまゝ歸るとしませう。――辻斬が押し込んで、孫三郎を殺したとでも屆けなさるが宜い。――盜みためた小判は、こいつは不義の寶だ。斬られたり盜られたりした人の身内に返させませう――御隱居さん、短氣を起しちやなりませんよ。お孃さんが可哀さうだ」
「有難い、親分」
「お孃さんもあきらめなさるが宜い。若いうちは、相手がどんな惡人でも、諦めきれねえ樣子だが、人參にんじん牛蒡ごばうのやうに人を斬る奴だけは、人間扱ひにしちやならねえ。どんな念佛をとなへても、こいつだけは極樂へ行けねえ人間だ」
 平次は八五郎をうながしながら、深夜の街へ出て行くのです。腰の立たない兼齋と、娘の毬代はその後ろを伏し拜んでゐる樣子。
「親分、斯う若い娘に拜まれると惡い氣持はしませんね」
「馬鹿野郎、俺を與一兵衞にして、良い心持になりやがつて」
 二人は明神下へ寒々と急ぐのでした。
「親分、この辻斬は、わけもなく片付いてしまつたが。――こいつばかりは明けつ放しの、なぞ解きのない事件でしたね」
 トリツクのない事件、それは八五郎にしては物足りなかつたに違ひありませんが、
「人間の心といふものは、解いても解ききれない謎だらけぢやないか。無暗に人を斬り度くなる奴も謎なら、惚れた男の惡業まで助けようとするのも女心の謎だ。お前なんざ、その謎が解けねえから、何時までも獨りで居るのさ」
 平次は年寄り染みたことを言ふのでした。明神下の家で、夜つぴて平次を待つて居る、女房の心持も、八五郎から見ると謎のやうなものです。





底本:「錢形平次捕物全集第三十四卷 江戸の夜光石」同光社
   1954(昭和29)年10月25日発行
初出:「オール讀物」文藝春秋新社
   1954(昭和29)年2月号
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
※題名「錢形平次捕物控」は、底本にはありませんが、一般に認識されている題名として、補いました。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:門田裕志
2016年12月24日作成
2017年3月4日修正
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