十字架観音

野村胡堂





「あら松根まつね様の若様」
「――――」
 恐ろしい魅力のある声をあびせられて、黙って振り返ったのは、年の頃二十三四、色の浅黒い、少し沈鬱な感じですが、何となく深味のある男でした。
 不意に呼びかけられて、右手に編笠をげるうちにも、左手は一刀の鯉口を、こう栂指おやゆびで押えていようといったたしなみは、かたき持ちか、要心深さがさせるわざか、とにかく容易ならぬ心掛の若者です。
余吾之介よごのすけ様――ではいらっしゃいませんか」
「お前は?」
あき乳母うばもとの娘の秋でございます」
 嫣然えんぜんとした年増、隔てもなくニッコリすると、桃色の愛嬌が、その辺中へまきちらされそうな女でした。
 余吾之介はその魍魎あやかしをかきのけるように、思わず二三歩引き退きました。精々せいぜい二十二三、年増といっても、余吾之介より一つ二つ若いでしょう、その頃から流行はやりはじめた派手な模様の幅の存分に広い帯を少し低くしめて、詰め袖の萌えでたような鮮やかな草色を重ね、片頬をもたらせるように品を作ると、ほのかなえくぼが、凝脂ぎょうしの中にトロリと渦をまきます。
「お、なるほどお秋か、久しぶりであったな」
「お詣りでいらっしゃいましたか」
 浅草観音の仁王門をでたところへ声をかけられたのですから、これは間違いもなくお詣りです、まだ奥山に見世物も玉乗りもなかった頃――
「左様」
「お立寄り下さいませ、秋の家へ」
「さア」
「母がどんなに喜びますでしょう」
「この近所か」
「ツイ其処そこ、ほら、見えるでしょう」
 少しぞんざいな口をきいて、お秋はよりそうように伝法院でんぽういんの裏の方を指しました。桃色真珠のように、夕陽に透いてキラキラと光る指を見ると、目当ての家などはんでもよかったのでしょう。
 二人はそのまま田原町から蛇骨じゃこつ長屋へ、言葉少なにつれだって行きました。
 よく磨いた格子のなかには、御神灯がブラ下って、居間の長火鉢の上には、三味線が二挺――それを見ると、余吾之介は二の足をふみましたが、此処ここまで来るとお秋の方が帰してはくれません。
 お秋はその頃江戸の町に散在していた、町芸者の一人だったのです。
「元は?」
 座もきまらぬに、余吾之介は、うろうろ四方を見廻しております。
「母はあれにおります、余吾之介様」
 指した方には、ささやかな仏壇。
「何? 死んだのか」
「え、達者でいるとは申しませんでした、待っているとは申上もうしあげましたが、ホ、ホ」
「それは」
 余吾之介はそれっきり苦笑いを噛み殺しました。騙されて此処ここまでつれこまれたには相違ありませんが、お秋の悪戯いたずららしいずるそうな忍び笑いを見ると、腹をたてるのも馬鹿馬鹿しかったのです。
「それでも母は、死ぬまで申し暮しておりました。余吾之介様はお見かけは優しいが、お家中でも名誉のお腕前だから、キット悪人共に思い知らせて下さるに違いない――と」
「――――」
最上もがみのお家を取潰とりつぶしたのも、御先代が怪しい御最期を遂げられたのも、みんな山野辺右衛門やまのべえもん様をはじめ、楯岡たておかなどの仕業に相違ない、お家の潰れるのも構わず公儀に楯をついて、高野山こうやさんに登った方もあるが、江戸に踏みとどまって、日頃取込んだ不義の財で、栄耀の限りを尽しておる者もすくなくない。御父上松根備前びぜん様の思召おぼしめしを継いで、余吾之介様は屹度きっとあの悪人共を退治して下さるであろう、乳母は冥土めいどからそれを拝見いたします――とこう申しておりました、余吾之介様」
「――――」
 余吾之介は驚きました。こんな色っぽい女の口から、最上家の悪人退治などいうんでもない大望を聞かされようとは、思いもよらなかったのです。
 山形の城主最上源五朗義俊げんごろうよしとしが所領を召上めしあげられて、重臣を各大名に預けられたのは、元和げんな八年七月十八日、この物語から丁度ちょうど一年半ばかり前のことです。
 最上家の没落は領主源五郎義俊が酒色にふけって政治を顧みなかったのも一つの原因ですが、その顛落てんらくに拍車を加えたのは、藩中の一部に山野辺右衛門大夫義忠だゆうよしただの擁立運動があったためでした。義俊の父家親いえちかが、楯岡甲斐かいの家で毒を進められ、余吾之介の父松根備前が、幕府に訴えて黒白こくびゃくをつけようとしましたが、証拠がないために敗れて流され、幕府はそれを口実に、山形の所領を収めて、義俊母子を近江おうみ三河一万石に蟄居ちっきょさせてしまったのでした。


「余吾之介様、山野辺も、楯岡も、のめのめと江戸に帰っております」
「――――」
「向島の山野辺の寮で碁などを打って、気楽に暮しているという噂を聞くと、私は腹がたってなりません」
「――――」
「あの二人を斬って、御先代様の妄執を晴らし、一つは柳川に淋しい謹慎の日を送る、御父上様、備前様を慰めておやりなさいませ」
「いや」
 余吾之介はようやく顔をあげました。何時いつの間にやら日が暮れて、灯がついて、自分はお秋の側に、不本意な盃を舐めているのでした。
「俺はどうもその気になれない。訴訟を起して、お家の獅子身中のむしを退治するつもりだった父上の御心持はよく解るが、主君の亡びた今になって見れば、それは藪蛇であった。山野辺一味に御老中の息がかかっていることも知らぬでないが、この上お互に殺しあったところで、最上のお家が再興するわけでもなく、かえってお上の憎しみを加え、近江三河にあらせられる、御主君に迷惑を及ぼすだけであろう」
 余吾之介の述懐は、道理であったにしても、気が弱そうで、頼りないものでした。
「それでは余吾之介様、あんまりなお諦めじゃございませんか。最上の御家の仇、御父上の敵が、眼の前で栄耀な暮しをしているのを、黙って眺めていては、御刀の手前――」
「お秋、俺は随分両刀を投げだして、町人百姓にでもなりたい――とつくづく思うことさえある」
「余吾之介様」
 お秋は火鉢の向う側からにじりよると、余吾之介の膝に手をかけて、ゆすぶり加減に顔をのぞくのでした。江戸の町芸者らしい、英雄崇拝ヒロイズムと、色気エロチシズムが、お秋の全身の血を沸きたたせて、この素晴らしい偶像――松根余吾之介の心――に、好戦の口火を点けずにおかない様子です。
「いや、もう言ってくれるな、俺は臆病になったのだ」
「そんな事があるものでしょうか、余吾之介様。最上藩中、一番の使い手と言われた方が」
「いや、腕と魂は別物だ、俺はもう人を斬ることなど思いもよらない」
「――――」
 お秋は黙って男の肩へ手をかけると、そのたぎり返る全身を叩きつけて行くのでした。
「お秋、それでは又来る」
「あれ、余吾之介様」
 お秋のもたれかかる身体を宙に支えて、余吾之介はそっと立ち上りました。
「お秋」
「それはあんまりじゃございませんか余吾之介様。天にも地にも頼る者のない私、――乳兄弟に逢った嬉しさに、ツイとりのぼせて、何を申上げたか存じませんが、これっりの別れでは、心残りでございます。せめて今晩は此処ここで、昔の話でも致しましょう」
「又来るよ」
 お秋はこの上絡みつきもならず、やるせなさに身をもんで、涙ぐんでさえおりました。
「それではせめてお宿をおっしゃって下さいまし」
「本所番場町、市兵衛いちべえ店にささやかな浪宅を構えておる」
「私が参っても差支さしつかえはございませんか」
「いや、それは」
鹿様が御一緒でしょう」
「――――」
 松根余吾之介は、宵闇の路地の外に立っておりました。お秋のむせ返るような妖艶なとりなしもさることながら、本所番場町の浪宅に、淋しく留守をしておるはず許婚いいなずけ、――若くて気高くて、賢い鹿の子の、清らかさを思い出していたのです。


「お帰り遊ばしませ」
「大層遅くなった、――鹿の子も知っておるであろう、お元の娘のお秋に逢ってな」
「まア。――綺麗な方でした、何をしていらっしゃるでしょう」
「――――」
 町芸者――とはさすがに余吾之介も言いかねました。とって十九になったばかり、一年越し、狭い浪宅に差向いで住んでいても、祝言前の隔てを取去ろうとも、取去らせようともしない鹿の子は、お秋に比べると、あまりにも清らかな存在だったのです。
「先程遠藤えんどう様がお見えになりました」
「遠藤?」
「シモン遠藤様」
「えッ」
 四方あたりを見い見いささやく鹿の子の言葉を、余吾之介は霹靂へきれきのように聞いたか、灯の側に坐った顔が、サッと血の気を失った程でした。
「――当上様はことのほかあの宗教をお嫌い故、のような事があろうも知れない、くれぐれも気を付けるように――が、万一の場合は、卑怯の振舞ふるまいのないように、とのシモン様の御言葉でございました」
 慎ましく膝に置いた手をあげると、胸元でそっと十字を切って、鹿の子は余吾之介の顔を仰ぎました。
 まだ誠の神のおしえを耳に入れようともしない余吾之介ですが、それでも近頃は、鹿の子の敬虔な日常に引入ひきいれられて、何んとなく謙虚な心構えになって行くのをどんなに嬉しく眺めて来たことでしょう。
 シモン遠藤のような、江戸切支丹きりしたん宗徒の中でも、並ぶ者なき能弁の先達に説かせたら、許婚いいなずけの心を少しでも御心に近づけるすべもあるのでしょうが、近頃の禁制の峻烈さは、それさえも思うに任せぬ有様だったのです。
「隠さず言ってくれるのは嬉しいが――、シモン遠藤殿に逢うのは危い、気を付けるがよい」
「ハイ」
 妙な気まずさ、二人は別々のことを考えて居りました。
「お秋は妙なことを言うのだ」
 しばらくたって、継穂つぎほもなく余吾之介は口を切りました。
「――――」
 それを迎えて、静かに、慎み深く、またたく黒い瞳。
「山野辺、楯岡一味の者が、向島に栄耀の日を送っておる、最上家の仇、最上の怨み、あれをそのままに見過す法はない――と」
「マア」
「武道のため、斬ってしまえと言うのだ」
「私風情が申すまでもございませんが――それでは余吾之介様、争いに争いを重ね、血で血を洗うことになりましょう」
「されば」
「どうぞ、左様な事を思いわずらいませんように、鹿の子がお願いでございます」
「心配するな、俺はまだうしようという気もあるのではない、お秋の言葉にも一理はあると思っただけの事だ、が、俺はもう人を斬る気も血を見る気もない」
「余吾之介様」
 二人は手をとりあうでもなく、雛と雛のように、静かな顔を見合せるのでした。
「今晩は」
「ハイ」
 不意にとざしたばかりの表を叩く者があります。
「浅草から参りました。お秋さんが九死一生の大難で、放っておけばどんな事になるかわかりません、旦那様にお願い申してくれということで――」
「何? お秋がうした」
 余吾之介が格子から顔を出すと、外は冷たい月、人間のかけらも見えません。
「どうしたのでしょう」
 おろおろする鹿の子を押し退けるように、余吾之介は両刀を手挟たばさむと、雪駄を爪先探りに、パッと飛びだします。
「鹿の子、って来るぞ」
「あ、もし」
「心配するな、後を頼む」
 疾風のように男の姿は月のくまへ溶けこんでしまいました。
 元和九年十一月二十四日、イタリー人エロニモ師や、かつては千五百石をんだ家康の小姓、ヨハネ原主水もんどの党類をあさり尽すに、町奉行米津勘兵衛よねづかんべえ以下血眼ちまなこになっておる時のことでした。


「己れッ」
 飛込とびこんだ松根余吾之介、一刀の背を返して、あッという間に二三人叩き伏せました。
「な、何をしやあがる」
 囲みは自然に解けて、五六人の荒くれ男、手拭や風呂敷で面体を包んだのが、棍棒、匕首あいくちひらめかして、三方から競いかかりました。
「無礼者ッ」
 続けさまにもう一人二人、元より斬って捨てるほどの相手ではありません。キナ臭くなるように背打みねうちくらわせ、手近なのは、小手を取ってもんどり打たせると相手は、
「それッ」
 妙な合図を残して、蜘蛛の子を散らすように、逃げうせてしまいました。
 取残されたのは、縛られたままのお秋と、つままれたような余吾之介とたった二人、お秋のこの時の様子は全く言いようもない不思議なものでした。
 赤い長襦袢ながじゅばんが一枚、後手うしろでに縛りあげたまま、脛もあらわにほうりだされた様子は、眼に沁むような妖しい美しさ。余吾之介も暫くは手を下しかねて、茫然と見入るばかりです。
「あら、何時いつまで見ていらっしゃるおつもり、恥かしいじゃありませんか」
 一塊の赤い物が、くねくねと身を揉むのを見ると、
「――――」
 余吾之介は思わず顔をそむけて跳び退きました。
「縄を解いて下さいな」
「お」
 女が縛られていることに、漸く気がついた余吾之介は、後へ廻って、解こうとしましたが、女の怪しい姿態に魅せられたのか、指がなかなか言うことをきいてくれません。それにしても、何んという厳重ないましめでしょう。
「縄を切って下さいな」
「む」
 思い出したように、畳の上へ置いた抜身を取上げると、手首に絡む縄の間へ入れて、サッと切り解きました。
「あッ」
 血が、いや、血と見たのは、ほのおのように白い肌をめる、長襦袢でした。
「余吾之介様、私は、私は口惜くやしい」
 縄をとかれると、お秋は伸上のびあがって、余吾之介に絡みつくように、その胸に顔を埋めました。
うした秋」
「あれは楯岡の仕業しわざでございます」
「楯岡?」
「私にいやらしい奉公をさせようと、手を代え品を変え苦しめております」
「――――」
 妙な反感が、余吾之介の胸にこみあげます。
「余吾之介様、私は我慢がなりません、お願いでございます。せめて楯岡にだけでも思い知らせてやって下さいまし」
「よし、行ってやろう、向島の何処どこだ」
「御案内いたしましょう」
 お秋は立上たちあがると、小袖を取って投げかけるように着ました。キリキリと帯を締めると、小褄こづまをとって、二つ三つ足踏みを、
「さア」
 余吾之介はもう外に出ております。
「何んか持って参りましょうか」
「――――」
「鉄砲や脇差はありませんが、菜切庖丁か剃刀かみそりなり、よく切れるのならあります」
「馬鹿なッ」
「ホ、ホ、ホ」
 一陣の薫風を先だてて、お秋も戸の外へ、懐かしそうに押し並んで余吾之介の顔を振り仰ぐのでした。


此処ここか」
「シッ」
 二人は守宮やもりのように塀に吸付すいつきました。向島――と言っても諏訪神社の裏手、寺島の百姓家にまじって、寮造りのと構えへお秋は案内して来たのです。
「楯岡甲斐は此処ここにおります、山野辺は白鬚――」
「よし」
何処どこから入りましょう」
何処どこでも入れる――が、お前は危ない、帰るがよい」
 余吾之介は越せば越せる低い塀を見ながら、お秋を顧みてこう言うのでした。
「いえ、私は余吾之介様の勇ましいお働きが見たいのでございます」
「危ないぞ」
「大丈夫、危いところへは参りません」
「――――」
 余吾之介はその上争いませんでした。たった今日初めて逢ったばかりですが、この女の異常な物好みが、余吾之介にもよく解るような気がしたのです。
 塀は六尺そこそこ、手を掛けて何んの苦もなく飛越すと、厳重に締った木戸を開けて、
「入れ」
 お秋を引入れました。
 幸い月は隠れて、冷々ともやをこめた冷たい闇は、忍ぶ者にはあつらえたような晩です。
「余吾之介様」
「――大きな声を出して、中の人数をおびき出してくれ。人が出たら、木立の中に隠れるのだ、俺はその間に家の中へ入る」
「――――」
 お秋は黙ってうなずきました。女に取っては思いの外の大役ですが、お秋は見ん事やりとげて見せる積りでしょう、何んのこだわりもなく引受けると、余吾之介の側を少し離れて、
「火事だ、火事だ、火事、火事」
 打ちこわしにならない程に呶鳴って、サッと深い木立の中に身を隠しました。家の中は急にザワめいて、
何処どこだ、何処どこだッ」
 二三ヶ所雨戸が開いて、バラバラと人が飛出します。
 その隙を狙って余吾之介、パッと家の中へ――
 暫らくは他愛もない騒ぎが続きましたが、結局、何処どこも火事でないと解ると、一度起き出した多勢の雇人は、口小言を言いながら、温かい寝床へ帰って行きました。
 暫らくは何んの音も聞えません。
 ものの小半時もたつと、
曲者くせものッ」
んな起きて来い、曲者が入ったぞッ」
 家の中は又急に騒ぎ出しました。
 今度は棒を入れて掻きまわしたような大混乱です、悲鳴と、ののしりわめく声と、物の倒れる音とが一緒になって、雨戸を張り割くように、一団の人数が飛出しました。
 真ん中に刃を振りかぶったのは余吾之介でしょう。手燭の行灯あんどん覚束おぼつかない灯を便たよりに、四方から斬ってかかりますが、余吾之介の気組の激しさに暫らくは寄付よりつく者もありません。
「あッ、女もおるぞ」
「逃すなッ」
 木立に潜んでいたお秋、思わず庭に出たところを、多勢の者に見つかってしまったのです。
「あッ」
 逃げようとしたが及びません、飛付いた男の腕、後から無図むずとお秋の襟髪をつかみます。
「己れッ」
 それと見た余吾之介、二三人踏み倒して飛込みざま、お秋を引立てる男を、袈裟掛けさがけに斬って捨てました。
「わッ」
 最初の血潮が流れました。
「来い」
 血振いして構えた青眼、余吾之介の眼はすわって、好戦的な興奮が、カッと全身に燃え上ります。
「余吾之介様」
「お秋、楯岡は留守だ、引揚げよう」
 二人は何時いつの間にやら虎口をのがれて、向島の土手を駈けていました。


 余吾之介はそのままお秋の家へ引返しました。お秋に執着を感じたわけではありませんが、血汐に汚れた手も洗わずに、夜と共に静かに静かに祈っておる鹿の子のもと――番場町の清らかな浪宅へ帰る気にはなれなかったのです。
 一と休みして起きると、もう、陽は高く、狭い中庭に落ちておりました。
 顔を洗うともう酒。
「余吾之介様、嬉しいじゃございませんか」
 銚子を取って、お秋の眼が精一杯のこびを含みます。
「何が?」
 余吾之介の答は、思いの外の素気ないものでした。
到頭とうとう此処ここへ泊って下さいましたでしょう」
「――――」
「――――」
「もうどんな事があっても帰しはしません」
 お秋はそんな事を言いながら、一脈の物足らなさを紛らしておるとも知らぬげに、余吾之介は、黙って考え込んでばかりおります。
「お秋、山野辺右衛門大夫の寮は何処どこだ」
「白鬚橋の近所――よく存じております、そのうち折を見て御案内しましょう」
「今晩は?」
「昨夜の今日では」
 お秋の方がかえって二の足を踏むのは、昨夜の襲撃に懲りて、山野辺家が、どんなに厳重な防備を講ずるかも解らないと思ったからでした。
「それではもう少し折を待とう」
 それからは酒、酒、酒。
 すさみきった心持で、三日たってしまいました。お秋は稼業柄、時々外へも出掛けますが、それも精々せいぜい宵のうちだけで、神妙に帰って来ては相手をしてくれるので、余吾之介も大した退屈もせず、酒と、媚と、脂粉の匂いにひたって、うかうかと鹿の子のことを思い出す暇もなかったのでした。
 思い出さないわけではなく、正しく言えば、出来るだけ思い出そうとはしなかったのでしょう、とに角余吾之介の心はこうして、一日一日と血の雨を望む沙漠さばくのように荒んでゆくばかりでした。
 しかし、余吾之介にとって、お秋はどこ迄行っても乳兄弟でした。お秋の妖しい魅力は、まことに惜しみなく発散しますが、余吾之介はそのあやかしの中に三日も一緒にいて、嘗て膝も崩そうとはしなかったのです。
「余吾之介様、山野辺の寮の様子を見て貰いました」
 ある日お秋は、不思議なことを言い出します。
「ホウ、どんな様子だ」
「一時厳重に固めておりましたが、近頃は警固もすっかり緩んで、ろくな奉公人もいないということでした」
「それは有難ありがたい、今晩いよいよとりかかるとしようか」
「余吾之介様」
「なんだ」
「警固がないといっても、ずいぶん危い仕事じゃありませんか」
「そうかも知れぬ」
「間違えば命にかかわりましょう」
もとより生死は天に任せる」
「余吾之介様」
「何んだ」
「これっきりお別れになったらどうしましょう」
 何時いつの間にやらお秋は、余吾之介の膝に、その半身を投げかけておりました。折られた花のように、なよなよと重みがかかると、なんとも言えない香気が、男の嗅覚を悩乱させるのでした。
「何をつまらぬ」
 余吾之介は、その両脇に手を差し入れて、ソッと抱き起すと、少し退しざり加減に苦い顔をしました。
「こんなに思い込んでいるのに、余吾之介様、それはあんまり情無いというもの」
「待て待て。お秋は勘違いをしているのだ、俺には、鹿の子という、まだ祝言はせぬが、定まる配偶つれあいがある」
「――――」
「お前の気持はよく解るが、この上の罪を重ねるわけにはゆかぬ」
「それでは、どうして番場町へ帰りません」
「俺は鹿の子が怖いのだ、あの女は、あまりにきよらかだ、夜も昼も、祈りに暮れている」
「それじゃ鹿の子様は、もしや昔のままの切支丹の宗門を――」
「これ、つまらぬ事を言うな」
「あの頃は禁制といっても大したことはありませんでした。山形におる頃は、私も鹿の子様と一緒に、おいのりごっこをしたこともありますが、この節のようにやかましくなっては、うっかり真似まね事もなりません」
「もうそんな話は止めだ。それより、楯岡の家来共が、あれっ切り此処ここへ来ないのが不思議ではないか」
「ホ、ホホ」
「何を笑う」
「あれは皆んな私の細工とはお気がつきませんでしたか」
「何?」
「大急ぎで番場町へ帰った余吾之介様が憎らしいばかりに、町内の悪に少しばかり握らせて、あんな芝居を書きました」
「――――」
 そう聞くと思い当ることばかり、余吾之介も、今更いまさら開いた口がふさがりません。


 その晩、白鬚橋の襲撃は、余吾之介の方から言えば手違いだらけでした。
 何を感じたか、あんなに血を見ることの好きなお秋は行かず、余吾之介一人出かけたのですが、――それは、なまじ足手まといがなくて反ってよかったとしても、相手の警備の行届いきとどいているのに驚いている頃は、巧妙に作られた罠に陥込おちこんで、免れようもなく羽搏はばたいていたのでした。
 警固はない――という報告は、余吾之介をおびき寄せる為の詭計で、締りもない門に飛込むと、いきなり十人あまりの腕達者が、闇の大地から湧いたように余吾之介を取巻いてしまったのです。
「それ鴨がかかったぞ、逃すな」
 八方から取囲とりかこんで、なますになれと斬ってかかるのを、
「己れッ」
 余吾之介も血に餓えておりました。刃を舞わすと、近間の一人を斬って落し、二人ばかりに手を負わせて、サッと縁側に飛び上りました。其処そこには、主人の山野辺右衛門大夫が、蔭ながら采配をふるっていると睨んだのです。
 が、罠は到るところに用意されておりました。ふすまの蔭、縁の闇、およそ物のくまのあるところには、ことごとく人を配置したといってもいいほどで――
「逃すな」
 十人が二十人になり、三十人になり、最後には、飛道具や、さす又や、本職の捕物道具まで持出もちだして、一人の余吾之介を、手負猪ておいじしでも扱うように取詰めたのです。
 余吾之介は、続けざまに斬り立てました。嘗て、山形藩随一の使い手と言われた腕は、異常な興奮に冴え返って、触るる者悉く斬って、自分も満身の返り血に蘇芳すおうを浴びたようになってしまいました。
 幸い手傷はおいませんが、相手に用意があるだけ、闘争が長引けば、たった一人の方が負けに決まっております
 目ざす山野辺右衛門大夫は顔も見せません。
「卑怯な奴原やつばら、束になって来い」
 二度、三度、猛烈な襲撃をくれ、さっと身を引くと、辛くも血路を開いて、余吾之介の身体は元の庭へ――
「それ逃すなッ」
 追いすがる潮のような人数。
「あッ」
 余吾之介は張り渡した縄に足を取られて、思わず闇の中にもんどり打ちました。
「しめたッ」
 追いかぶさる二三人、拝み討に振りかぶったのが、そのまま屏風びょうぶのように前へのめりました。大地に這った余吾之介は、倒れながらも横に払って、二三人の向う脛を一ぺんに刈ってしまったのです。
「わッ」
 恐ろしい悲鳴、それを背後に聞いて、余吾之介は塀の上へじ上りました。
 外も一パイの人数、何時いつの間に手が廻ったか、真に水も漏らさぬ警備です。
 それから何処どこをどう逃げ廻ったか、余吾之介は土手の闇を拾って、関屋から、綾瀬川の方へ出てしまいました。
 山野辺一家の家来や奉公人なら多寡たかが知れておりますが、追手の半分以上は町奉行から差廻された、本職の捕方と判ると、余吾之介もさすがに安き心はなかったのです。
 木母寺もくぼじの方も、堀切道も塞がれて、余吾之介は川へ飛びこむより外に逃げ道がなくなってしまいました。
 が、十二月二十日過ぎの夜の寒さ、水に退路を求められる時候でもなく、その上困ったことに、山形城に育った余吾之介は、武芸百般暗きはない中にも、泳ぎの方だけは、まことに不得手だったのです。
 とある小屋を見つけて入り込もうとしましたが、意地悪く厳重に海老錠えびじょうが下りておる上、こんな中で、なまじ一方口の小屋に入るのも危険です。余吾之介はそのまま、小屋の後へ廻って、水面に臨んだ老樹の桜へ、ましらの如く攀登よじのぼりました。
 捕方は松火たいまつ提灯ちょうちんを振りかざして、十文字に飛びかいますが、相手が桜の梢へ掻き登ったとは思いも寄らず、それに、小屋の屋根が妨げて、余吾之介の姿は、道から全く見えないようになっていたのでした。
 幾刻かたちました。
 夜がほのぼのと明けめる頃、捕方や追手も、あきらめて白鬚の方へ引揚げてしまいます。堀切へかけて、眼を遮る物もない綾瀬の河岸かしっ縁に、人間一人隠れていようとは思いも寄らなかったのです。
「――――」
 枝の上の余吾之介は、ホッとした心持で、硬張こわばった四肢を伸ばしました。
 何心なく下を見ると、最初の朝陽に照らしだされた枝の上の自分の姿が、下の水へ、蔽うところもなく映っているのです。
「――――」
 何んというそれは凄まじい姿でしょう。満身紅に染んで、小袖も袴も破れに破れ、大童おおわらわに振り乱した髪は、まだらに碧血に染められた顔を半分程も隠して居るのです。
 藍のような真っ蒼な顔、貝殻のようにギラギラ光る眼、桜の枝にひしすがって下を臨んだ姿は、自分――余吾之介――が映っている姿とはうしても思えないほどの恐ろしいものでした。
 余吾之介はぞっとして身をひるがえしました。小さい時、山形で見た覗きからくりの血だらけな殺し場を思い出したのです。一人の武士が、血達磨ちだるまになって幾人も幾人も生きた人間を斬る絵は、小さい余吾之介をどんなに脅かしたでしょう。武士の子というほこりはあったにしても、幾日も幾月もの間、小さい余吾之介は、その物凄すさまじい幻に悩まされて、内証でふるえていたことを思い出したのです。
 余吾之介は滑るように桜の梢から降りると、幸い岸に繋ぎ捨てた船の中へ潜りこみ、朝の往来の始まる前に、血汐を洗い落して身仕舞いをしました。
 日の暮れるまで船の中に身を潜めて、番場町へ帰ったのは夜、余吾之介は血潮を浄めて、もう一度、鹿の子の浄らかな祈りの前に立とうとしたのでした。
 が、鹿の子の姿は浪宅には見えません。
 近所の衆がそっと、
「鹿の子さんは切支丹宗門に帰依した疑いがあるとやらで、縛られて行きましたよ」こう教えてくれたのです。
「えっ」
 空しく冷たい自分の家の中を覗いて、余吾之介はどんなに驚いたことでしょう。
「明日は札の辻でエロニモ師やガルベスフランセスコ師や、ヨハネ原主水様や、シモン遠藤様と一緒に磔柱はりつけばしらにかけられて、火焙ひあぶりにされるそうですよ」
 隣りの人はそう言って、そっと宵闇の中に十字を切りました。これもまた、切支丹宗門に心を寄せる一人でしょう。
 余吾之介は真暗な家の中に入ると、まだわずかに残る鹿の子の移り香を求めるように、彼方かなた此方こなたをよろめきましたが、最後に畳の上にドッカと坐って、
「鹿の子、許してくれ、鹿の子」
 ボロボロと涙をこぼしながら、当もなく首を垂れました。
 許婚いいなずけが殉教者として引かれたのも知らずに、町芸者の家に便々と暮した上、無用の血汐を流したことが、つくづく浅ましかったのでしょう。考えて見ると、最上家にはもう、争わなければならぬ程の事件が一つも残っていなかったのです。


 明くれば元和九年十二月二十四日(鮮血遺書によれば十二月四日、徳川実記は十月十三日)、原主水以下五十名の切支丹宗徒は三組に分けられて江戸中を引廻された上、東海道品川の刑場に到着しました。
 刑場は竹矢来を結廻ゆいめぐらし、その中に五十本の磔柱を立て並べ、柱の前三尺余り隔てて、たきぎを山の如く積み、見張の役人それぞれ床机しょうぎによって時刻を待ちます。
 見物の男女は竹矢来の外へ犇々と詰めかけ、その数幾千とも知れません、中には家光将軍宣下祝賀のため江戸表へ出た諸国大小名まで交っていると伝えられました。
 磔柱を後ろに、ヨハネ原主水は太く逞しき裸馬に乗ったまま「長の牢問いに指は断たれ足は萎えた、が、未来を助かる道を得たれば憂うる心はいささかも無い、今は天国に行く喜びに溢れて、基督キリストの為に死ぬ時ぞ、これぞ我が勝利、我が幸福――」と声高らかに演舌えんぜつしました。
 続いて、能弁の聞え高き遠藤シモンの演舌は、見物の群衆をすっかり熱狂させ、「私も信者だ」「俺も信者だ」「一緒に処刑して貰おう」と押し寄せた人数だけでも三百余名、さすが警固の武士達も、色を失ってこれを阻止しました。この上邪宗徒の数を増しては、新将軍家光のいかりの程も恐ろしかったのです。
 時を移さず、五十基の磔柱は、順々に火をかけられました。山と積まれた薪が焔々えんえんとして燃え上ると、天主にささぐる祈の声、サンタ・マリの讃歌は熱風を裂いて天にも届けと響き渡ります。
 その時、
「待って下さい、違った人が一人交りました、あの人を助けて下さい」
 う潜りこんだか、竹矢来を越えて飛込んだ一人の美女、五十基の磔柱の、まだ火を掛けない最後の一本に縋りつくと、髪を振り乱して、かき口説くのでした。
「これ、何をする、退さがれ」
 飛込んで来た役人、柱から引離そうとしましたが、蛇の如く絡みついて、男の力でもうすることも出来ません。
「この人を助けて下さい、私が訴人して磔柱に上げましたが、このまま火焙ひあぶりにしては、天主の御罰も恐ろしい」
 そういうのは、浅草の町芸者お秋、磔柱の上に静かに眼をつぶって、召される運命を待っているのは、言う迄もなく余吾之介の許婚いいなずけの鹿の子です。
「何を言う。さア、退かぬか、時刻が移る」
 二三人の武士、お秋を手取り足取り引離そうとしましたが、必死ひっしと絡みついて引剥がしても引剥がしても離れません。見ると両手の生爪は剥げて、手から腕へ流るる血汐、
「いえいえ、私こそ切支丹宗徒、――首にかけた十字架を見て下さい、この人の代りに、私を、処刑して下さい、この人を殺してはなりません」
「えッ、二人とも磔柱に上げるぞ」
「私が代ります、私が切支丹です、お願い、お願いでございます、訴人した私が言うのです」
 お秋は必死でした。大の男二三人の手も必死の女一人をどうすることも出来ません。
「これこれ、訴人した女が自分で言う事に嘘はあるまい、真実切支丹に相違ない者なら、囚人を代えても差支はあるまいとの仰せだ」
 同心が二人、奉行米津勘兵衛の旨をけて飛んで来ました。
 必死の運命を観念して、磔柱の上に夢心地に祈っていた鹿の子は、このとき始めて目を開きました。遠い国で起っているような騒ぎが、自分の身の上にかかわることと漸く気がついたのです。
「あ、お秋」
「お嬢様、私が悪うございました、訴人をしてお嬢様を縛らせたのは、余吾之介様を独りじめにしたいばかりの私の悪企わるだくみ、今日は余所よそながら処刑を見物する積りで、竹矢来の外から悪魔外道の眼を光らせていた浅ましい私でございます。シモン遠藤様の御話を聴いた上、五十人の宗門の方の、観念したお姿を拝見して、すっかり迷いの夢が醒めました。十年前には私も、エロニモ様北国御巡錫ごじゅんじゃくのとき、教を承って帰依したことがございます。お嬢様には、生きながらえて遊ばさなければならぬ御仕事がある筈、私は御同宗の方々と焼かれて、重い罪を償います、サンタ・マリ」
 お秋はふり落ちる涙を払いもあえず、磔柱の上の鹿の子をふり仰いで口説き立てるのでした。
「お秋、お秋、それは違います」
「いえいえ、私が切支丹に相違ございません。お役人様、聴いて下さい。私は醜い怨みのために、このお嬢さんを訴人しました。本人の私が申すことに何んの間違いがありましょう、此処ここには現に、私の訴人を受けた旦那方もいらっしゃる筈」
「お秋、私は何んにも怨んではいない、静かに召され――」
「いえいえお嬢様、それはなりません」
 燃えさかる焔は次第に近づいて、祈りの声は刑場一パイにうなり渡ります。


 余吾之介が駈けつけた時は、何もかも済んでおりました。五十基の磔柱には焼けただれた殉教者達の死体を遺して、まだ燃えさかる火を、多勢の人足が湿しておるところだったのです。
 あまりの残酷な姿に、見物は中頃から次第に散って、この時はもう、竹矢来の外に殉教者達の身寄の、悲しみに打ちひしがれた姿を残すだけでした。
「お願い申す、拙者も切支丹宗徒の者、御処刑を願いたい」
 余吾之介は焼け爛れた五十の死体に引寄せられるように、竹矢来の中へパッと飛込みました。
「これこれ、入ってはならぬ。何、切支丹宗徒だから処刑されたい」
如何いかにも」
 与力らしい立派な武家の前に、余吾之介は小腰を屈めました。
「これこれ、見れば武家のようだが、とりのぼせてはならぬ」
「何と言われる?」
「切支丹だから処刑されたいと望む者が三百人からあった、恐れ多い事ながら、上様は、お膝元に左様に多勢の邪宗徒があると聞かれたら、さぞお怒り遊ばすであろう」
「――――」
「火を見るとツイ誰でも取りのぼせるものだ、帰らっしゃい」けんもほろろです。
「お言葉だが――」
 余吾之介は一歩進みました。と、何処どこからともなく飛びついて来た一人の女、
「余吾之介様」懐へ飛込むように、顔を見上げるのでした。
「お、鹿の子、無事であったか」
「余吾之介様、お秋が代って死にました、私も処刑を願いましたが許されません、何事も思召おぼしめしでございます」
「鹿の子」
 二人は犇と、四方あたりの見る目も構わず抱き合いました。後には消え残る焔、その上にそそり立つ五十の殉教者達の死体は、
 活きよ、活きて教義の為に尽せよ――
 と言っているようです。

 間もなく島原の乱が起り、日本の切支丹は根を絶ち、枝も葉も枯らされましたが、それでも江戸三百年の峻烈無比な禁制を潜って一脈の教義は伝えられました。
 十字架を持った観音像を背負って、九州から松前まで、四十年の間巡礼に暮した夫婦者、――余吾とお鹿というのが、その江戸切支丹の源泉でもあり、守護者でもあったのでした。





底本:「野村胡堂伝奇幻想小説集成」作品社
   2009(平成21)年6月30日第1刷発行
底本の親本:「黄金を浴びる女」駿台書房
   1949(昭和24)年4月
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
※表題は底本では、「十字架クルス観音」となっています。
入力:門田裕志
校正:阿部哲也
2015年5月24日作成
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