銭形平次捕物控

お民の死

野村胡堂





「親分、世の中はだんだん悪くなって来ますね」
 ガラッ八の八五郎は妙なことを言い出しました。鼻毛を抜いて、手の甲に一本ずつ植えて、それを、畳の上でプーッと吹くといった、太くて粗い神経の持主の言葉ですから、この――世の中が悪くなった――と言ったところで、大した真剣味はありません。
「たいそう考えちゃったね。何が一体悪くなったんだ」
 平次は日本一の機嫌でした。手掛けた事件は全部片が付いたし、女房のお静は若くて綺麗だし、秋の陽は申分なく晴れたし、一年三百六十五日、こんな好い心持の日は滅多にあるものではありません。
「第一に米が高え」
 ガラッ八は不器用らしく指を折りました。
可笑おかしなことを言うぜ。米の高えのを気にするようになれば、人間も一人前だ――手前てめえなんざ、たった一人口で、下の婆さんに炊いて貰っている身体だ。どんなに暴れ食いをやったって一日一升とは食う道理はねえ」
「仰せの通りだが、湯へへえっても、髪結床へ行っても、米の高え話を聴かされると、あっしのような不自由を知らねえ人間も、ツイ人付き合いに、同じせりふが言ってみたくなるじゃありませんか。――はばかりながら米なんざ、両に一升したって驚く八五郎じゃねえ」
「水ばかり呑んでいる積りなら気が強い――とね」
「交ぜっ返しちゃいけねえ。親分、ところで次の一つは」
「女房の来てのねえことじゃあるまいね。この節は女の子の相場も高くなったよ」
「そんな間抜けなものは要らねえ――憚りながら、女房と心張棒には当分用事のねえ世帯だ」
「合の手が多過ぎるよ。その――世の中が悪くなったという、もう一つの証拠は何だ」
 銭形平次も少し真剣でした。
ろくな御用がねえ事ですよ。ね親分、十手の錆なんざ、小唄にもならねえ」
「馬鹿野郎。世の中が良くなればこそ、こちとらに仕事がなくなる道理じゃないか。罰の当った言い草だ」
「だがね、親分。世間に悪人が根絶やしになる道理はねえから、銘々、人の目に付かないところで、そっと悪事を働いてるんじゃありませんか」
「たいそう考え深くなったじゃないか。――だが、そんな事を言った日にゃ、この世の中が恐ろしくて、一日も暢気のんきな顔をしちゃいられなくなるよ」
 平次は事もなげに言いましたが、八五郎の言うことが、長い間の経験で、間違っているとは言い切れません。平次は名御用聞と言われているだけに、この世の中には、どんなに悪事を企んでいる奴が多いことか、その中のほんの一部が実行され、そして、またその一部分だけが露顕することをよく知っていたのです。
 ちょうどそんな話をしている時、この世にも不思議な事件が、向うから飛び込んで来たのでした。
「おや、八、どうやら世直しが飛び込んで来たらしいぜ。朝っぱらから女の声だ。明神様にかこつけて、御用聞の家へ来る客は、きっと面白いネタを持込んで来るよ」
 そんな事を言っている平次は、やがてお静の案内した、四十前後の女――三崎町の桶屋、久兵衛の女房お夏というのを迎え入れました。
「銭形の親分さん。お上の御用の多いところへ、こんな事を持込んじゃお気の毒ですが、どうぞ聴いてやって下さい――実は」
 お夏は不安そうに四方あたりを見廻しました。縁側に近く八五郎のガラッ八が、まだ鼻毛を気にしているのです。
「あれですかえ。おかみさん」
「…………」
「御存じの八五郎で、一本立の御用聞には違いありませんが、何を聞かしたって大丈夫ですよ」
「親分さん、変なことがあるんですよ。――主人うちのへ言ったって、取り合ってくれませんから、明神様へお詣りをすると言って、出て来たんですが」
「…………」
 平次はガラッ八と顔を見合せました。ツイ今しがた話していた、同じ文句が、お夏の口から不用意に飛出したのが可笑おかしかったのです。
「変なことにもいろいろあるが、どんなことがあったんで、お神さん」
 促し顔の平次。人の話を引出したり、堅い唇をほぐすことにかけては、稼業柄のうまさがあります。


 桶屋の女房の話は雲をつかむようでした。が、とにかく、恐ろしい呪いが、桶屋一家の上を、黒雲のように覆っていることは疑いもありません。
「一と月ほど前から、変なことが続きます。最初は、井戸の中へ蛇や蛙の死骸をほうり込む者があって弱りましたが、近所の子供の悪戯いたずらだろうと、腹を立てながらも我慢をしていると、二十日ばかり前、主人が怪我をして来ました。もっとも、ひどい闇の晩で、下水へ突っ転んだとは言っていましたが、後ろから斬られた傷で、転がって出来た傷じゃありません。袷の肩先が、はすっかけに裂けて、背中へ二三寸浅傷あさでを受けたんですもの、勘平さんだって間違いっこありません」
 桶屋の女房は真顔で洒落しゃれを言っております。
「それから」
 平次はその先を促しました。
「隣町の外科に頼んで、塗り薬か何かで誤魔化し、幸い傷はなおりましたが、今度は――」
「…………」
 お夏はゴクリと固唾かたずを呑みました。
「一昨日の晩は、もう少しのところで一家焼き殺されるところでしたよ。――夜中過ぎになって、妙にキナ臭いと思って、起きてみると、ひさしの下に積んである、木っ葉や鉋屑かんなくずに火がついて燃え上がりかけてるじゃありませんか。飛出そうとすると表もお勝手も、外から薪で心張しんばりがして、動きゃアしません。便所の窓からい出して、稼業柄汲み置きの水をブッ掛けてようやく消しましたが、宵に一と雨来て、鉋屑が湿っていなきゃア、間違いもなく焼き殺されるところでしたよ」
「それをどうして放っておいたんだ」
主人うちのへお届けするように言いましたが、後が面倒だから――って聴きやしません」
「…………」
「三度目の正直で、今度は寝首でも掻かれるんでしょう。お願いですから、親分さん、主人には内証で、私ども一家に祟る人間を捜し、処刑おしおきをしないまでも、これからそんな事のないように、うんとおどかしてやって下さい」
 世帯摺れのした四十女は、遠慮のない調子で、こう言うのでした。
「素人のような事を訊くが――お前さんの家をうんと怨んでいる者は誰だい」
「数え切れないほどありますよ。主人があの通りだし」
 お夏は淋しそうでした。桶屋の久兵衛は、神田では人に知られたしたたか者で、お上の厄介にはなりませんが、ずいぶん諸方をいやがらせて歩くたちの男だったのです。
「そのうちでも一番、睨み合ってるのは」
「千三つ屋の佐七ですよ。あの人は、娘のお染を滅茶滅茶にされたって、ひどく怨んでいるそうですが、それは無理ですよ。出羽屋の若旦那が、佐七の娘のお染より、うちのお民坊が好きなら、仕方がないじゃありませんか」
「なるほど」
 三崎町の佐七と言う、野幇間のだいこのような千三つ屋が、とんだ良い娘を持っていることや、その娘が、同じ町内の千両分限、米屋では神田でも屈指と言われた、出羽屋伝右衛門のせがれ伝次郎に見初みそめられたとか、捨てられたとかいう話は薄々聞いております。
「ところで、一番親しいのは、――」
「主人と仲が善いと言っちゃ変ですが、何事も相談に乗って下さるのは、出羽屋の旦那ですよ。向うはあの大身代、こっちは店こそ持っていますが、いわば職人で、釣合わない事この上なしですが、妙に主人うちのとは気が合うものか、やれ来いそれ来いと言っちゃ、三日にあげず呼出されて、時々は世帯の方まで面倒を見て下さいます」
 お夏は少し得意そうでした。
「…………」
 平次は黙って先を促しました。お夏にとっては、物質的な援助までしてくれる出羽屋の伝右衛門は、神仏の次に有難い人だったのでしょう。
「現に、背中を斬られた時は、分に過ぎた見舞を下すったし、昨日きのうも主人が相談に行くと、焦がした羽目板を直せと言って、頂いたお金が五両――」
「…………」
「もっとも、娘のお民は出羽屋さんでお世話になって、奉公人と言っても、お客分同様、近いうちに、若旦那と娶合めあわせて下さるという、内々の話もあります。あの通り、歌舞伎役者のような若旦那ですから、娘はとんだ仕合せものですよ」
 平次はうなずきました。この女の口裏から察すると、よほど重大な秘密が、この事件の裏に潜んでいるような気がしたのです。
「お神さん。とにかく、後であっしが行ってみよう。久兵衛さんには、何にも言わない方がいい。お節介をして、お前さんが叱言こごとを言われても気の毒だから」
 こう言ってお夏を帰すと、平次は八五郎に何やらささやいて、その後から出してやりました。


「親方、小火ぼやか何かあったそうだね。町内で聞込んで来たが」
 平次がそう言って、ブラリと神田三崎町の桶屋の店先へ入ったのは、その日の昼過ぎでした。
「おや、銭形の親分さん。好い塩梅あんばいに上がって、秋らしい陽気になりました。まアどうぞ」
 日頃無愛想な久兵衛が、何を考えたか相好を崩して、上がりかまちの鉋屑をけて座を作ります。
「まアいい。店先へ御用聞が立ちはだかっちゃ悪かろうから小火の話さえ聴けばすぐ帰るとしよう」
 小火の話を聴かなければ、店先から立ち退かないとも取れます。平次でも、相手が容易でないとみると、時々はこんなを用いるのでした。
「町内では何と言ってるか知りませんが、つまらないことですよ。宵の口の小雨を避けて逃げ込んだ乞食か何かが、煙草でも吸って、火の不始末をしたまま、どこかへ行ってしまったんでしょう。あの通り、羽目板を一と坪ばかり焼きましたが、なアに、親分方のお耳に入れるような事じゃありゃしません」
 久兵衛は一向事もなげです。
「裏も表も、外から心張がしてあったとかいうが――」
「どこでそんな事を聞きましたえ。とんでもない、そうでなくてせえ、あっしにケチをつけたがる奴が多いんで、本当に困ってしまいますよ」
 久兵衛は頸筋くびすじを掻いております。奥の方からはチラリと人影、たぶん女房のお夏が、二人の話に気をもんで立聴きしているのでしょう。
「二十日ばかり前に、斬られたとか、突かれたとかいう噂もあるが」
「御冗談で――、そんな怨みを買うあっしじゃありません。酔っ払って、下水へ転がり落ちるはずみに、雨樋あまどいの先のとんがったところで、ほんの少し引っ掻いただけなんで――」
 この調子では、何を聴いても素直には言いそうもありません。五十男の我の強そうな久兵衛を相手に、平次の戦術でも、これ以上の事を手繰れようはなかったのです。
 家へ帰って来ると、ちょうどガラッ八も引揚げて来ました。
「驚いたの何のって、親分」
「どうしたんだ。八」
「三崎町に何かあると、真っ先に飛出す佐七だ。旦那衆の機嫌を取結んで、碁も打てば将棋もさし、手踊りが器用で、祭の支度、法事、祝い事の献立、庖丁まで使えるというんだから大抵の幇間ほうかん跣足はだしという佐七が――」
「それに煙に巻かれて帰ったのか」
「そんな事なら驚きゃアしませんがね。あんな陽気で口達者な男が、ろくに挨拶もしないんだから変っているでしょう」
「ハテね」
「佐七は、先月の末に自火を出して、五十日手錠の町内預けになっていますぜ」
「あッ、そんな事もあったようだね」
 平次もようやく思い出しました。千三つ屋の佐七が、自火を出し、物置一軒を焼いて、手錠をはめられたのは、もうかれこれ三十日も前のことだったのです。
 消防機関の完備しない、保険というもののない江戸時代は、火事に対しては恐ろしく神経質で、放火は大抵火焙ひあぶりか磔刑はりつけ、軽くて獄門、遠島、自火でも時代によれば、たちの悪いのは入牢、闕所けっしょ、極く手軽なので手錠の上町内預けぐらいにはされたのです。
 佐七は三崎町の裏の、空地に建ててある物置を焼いただけで、人騒がせをした割には大したこともなく、幸い風のない晩で、外に過ちがなかったために五十日間手錠という、その頃の自火にしては、軽いおとがめで済みましたが、町内を泳ぎ廻って、飲むことを仕事にしている佐七にしてみれば、五十日間の手錠は、首を切られるよりもつらい処刑しおきだったに相違ありません。
あっしが行くと、以ての外の機嫌で、ろくに茶も出しゃしません。佐七があんなにしおれているのを見ると、かえって可哀想になりましたよ」
「娘は居たかい」
「奥に寝ている様子でしたが、親父があんまり慳貪けんどんなんで、気を揉んで起きて来ましたよ。少しやつれてはいたが、好い女ですね、あれは。親分のめえだが――」
「親分の前だけは余計だよ」
「へッ、へッ」
「話でもしたかい」
「しましたよ」
「どんな事を」
「手錠の話から、磔刑の話、火焙りの話――」
「馬鹿だな。そんな心掛だから、いつまで経っても小色こいろ一つ出来る当はねえ」
「ヘエ――」
「せめて芝居の話とか、着物の柄の話とか、娘に逢ったら、それ相応の話があるものだ」
「だがね、親分。処刑おしおきの話ばかりしていると、あの佐七が怒りましたよ。――人の手錠を眺めながら、そんな話をするのは殺生だって」
「そうだろうとも。呆れた奴だ」
 口でそう言いながらも、平次はかなり面白そうでした。ガラッ八をやった目的は、案外その無法な調子を役立たせるためだったかも解りません。


 その晩、久兵衛の娘お民は、親の家の前で殺されました。
 出羽屋に奉公しているうち、主人伝右衛門と倅伝次郎の気に入り、近々祝言までさせようという話のあったお民です。
 晩のお仕舞が済んだ後で、つまらない用事を思い出し、いつものように、ツイ五六軒先の町裏の、自分の家へ駆けて行ったのが、町角を曲った薄暗がりで、後ろから頸筋を斬られてっ倒れたのです。
 恐ろしい悲鳴に駆けつけた人達、血の海の中に、のた打ち廻る若い娘を見て、しばらくは手の下しようもありませんでした。気管から頸動脈へかけて掻き斬られ、親の久兵衛夫婦が駆けつけた時は、もう口をきくどころの沙汰ではなく、下手人の名も言わず、半狂乱の母のお夏の膝に抱かれて、そのままこと切れたのでした。
 平次とガラッ八が駆けつけたのは、それから四半刻(三十分)ばかり経ってからで、取りあえず桶屋の奥へかつぎ込んだお民の死体を見せて貰いました。
 豊満な――むしろ妖艶にさえ見えたお民の顔は、すっかり血の気を失って、かえって美しく見えるくらい、母親のお夏は、線香を上げたり、涙を拭いたり、死体の髪を撫でてやったり、くどくど愚痴を言ったり、まるっきり他愛がありません。
 父親の久兵衛は店の方で何かやっておりました。御用聞が来ても、顔を出そうともしないのは、何か仔細があるのか、それとも、大の男の泣き顔を見せるのが嫌だったのかもわかりません。
 死体の傷は、後ろから出刃庖丁か何かで力任せにやっつけたもので、見るから凄まじい口を開いております。
「刃物は落ちていなかったろうか」
 平次はツイ、そんな事を言いました。傷口の恐ろしさに誘われたのでしょう。
「出刃庖丁が死体の傍に落ちていましたよ。誰が取り込んだろう」
 お通夜に来ている近所の衆が、二人までこんな事を言います。
 平次はガラッ八と一緒に、お民の斬られた場所へ出て見ましたが、そこには番所の提灯ちょうちんが一つ、番太が見張りをしておりますが、物凄い血潮の中にも、道の上にも出刃庖丁らしいものは見当りません。
「出刃が一挺落ちていたはずだが――」
 平次が訊くと、
「知りませんよ、親分」
「誰も拾ったはずはないね」
「この通り多勢の眼がありますからね」
 番太はそう言って四方あたりを見廻します。なるほど夜中ながら、町内総出と言ってもいいほどで、右も左も野次馬で一杯。
「この中に出羽屋の人は居ないだろうか」
 平次はそっと囁くと、番太は今さら気がついたように、キョトキョト四方を見廻しながら、
「不思議ですね。出羽屋の旦那や若旦那は顔を出さなきゃアならないはずなんだが、奉公人がチョイチョイ顔を出しても驚いたように逃げて帰りますよ」
「有難う。それだけ解りゃいい」
 平次はもう一度桶屋に取って返しました。
「親分、何か証拠がないものでしょうか。煙草入とか、手拭とか、せめて足跡でも――」
 ガラッ八はそろそろ気を揉み始めます。
「そんな気楽なわけには行かないよ。よっぽど混み入った理由わけがありそうだ」
「ヘエ――」
 二人が入って来ると、桶屋の久兵衛は相変らず店の中で、まとまりもつかぬ仕事をしておりました。娘が人手に掛って、非業の最期を遂げたと言うのに、これはまた何としたことでしょう。
「つかぬ事を訊くようだが、死んだ娘は、親方の本当の子だったのかい」
「ヘエ――」
「嘘のないことを言って貰いたいが――、本人は死んだから、知られて悪いほどの人もあるまい」
 平次は店先にある、伏せた桶の上に腰をおろしました。
わらのうちから育てたんで、実の娘も同様でしたよ。死んだ娘も本当の父親と思い込んでいました」
「お神さんの方は?」
「あれは生みの母親で――連れ子ですよ」
 ガラッ八の鼻は、きな臭い火元を嗅ぎ当てたようにうごめきます。そうでもなければ、父親が娘の死体を他所よそに、店先でゴトゴトやっているはずはなかったのです。
「ところで、外面おもてには多勢の人だかりだが、あの中に、親方の知らない顔が一人でも交っちゃいないだろうか。見て来て貰いたいが」
「ヘエ――」
「それが下手人かも知れない」
 平次が独り言のように言うと、久兵衛は猛然として飛出します。
 その後が見物でした。
「八、入口を見張れ。久兵衛が帰ったら合図をするんだ」
 平次はそう言いながら、店の中を引っくり返すほど捜しました。風呂桶、お鉢、汲み出し、手桶、洗い鉢、たらいに至るまで、本当に一陣の旋風が捲き起ったような大活躍です。
「親分、帰って来そうですよ」
 とガラッ八。
「そいつは弱った。ほんの煙草一服すううち外へ引留めてくれ」
「ヘエ――」
 ガラッ八が飛出すと、もう一度立上がった平次、額を押えて、グルリと店の中を見渡しました。今まで見なかったのは、何と何だったかを吟味しているのでしょう。
「そうだ」
 棚の上から、引摺り下ろしたのは、古い道具箱、――埃だらけの中に、のこぎりかんなのみもありますが、一と目で、捜している物がないと判ると、軽い失望の様子を見せましたが、すぐ取って返して、自分が今まで腰をおろしていた、新しい桶を起して見ました。
「あッ」
 何やら見つかった様子ですが、同時に、久兵衛とガラッ八が入って来ると素知らぬ顔をして、それを迎えます。
「居たかい。親方」
「一人も居ませんよ。皆んな町内の人達ばかりで」
 久兵衛は少し気抜けのしたような顔です。


「親分、町内じゃ、お民の殺されるのは、当り前だって言ってますよ」
「それはどういうわけだ」
 あくる日、ガラッ八はいろいろの情報をかき集めて、平次へ報告に来たのです。
「女は美しかったが、色っぽくて年寄り達の評判はさんざんでさ。伝次郎と約束のあった、佐七の娘のお染を放り出させて、自分から出羽屋に乗込み、伝次郎へ喰い下がったほどの達者な娘ですもの」
「佐七の娘はどうした」
「相変らずブラブラですよ。親父の佐七は名題の嘘吐きで、野幇間のだいこのような頼りない人間ですが、あのは評判ものだから不思議じゃありませんか。伝次郎に捨てられて、ブラブラ患いをしているから下手人と判っても、訴人するものはありませんよ。それにあのきりょうだ」
「馬鹿。誰がお染を下手人だって言ったんだ」
「三崎町中の評判ですよ」
「呆れた話だ。ブラブラ病の娘が出刃庖丁を持出して、自分の倍もあろうという、ふとじしの女を、たった一とえぐりに殺せるものかどうか、考えたら解りそうなものじゃないか」
 平次の言うのは尤もでした。が、
「でなきゃア、お民を殺したのは、出羽屋の伝次郎ですよ」
「何?」
 ガラッ八の言葉も予想外です。
「町内の人や、奉公人の口振りじゃ、伝次郎はお民をひどく嫌っていたようで」
「フーム」
「お民が乗込んで来たんで、好いた仲のお染と別れたんですぜ」
「だから、伝次郎がお民を殺したと言うのか」
「男なら、弱そうに見えても、あのくらいの事は出来ますよ」
「斬られたのは右の喉笛だ。――が左の頸筋には、黒血が溜っていた。倒れた時打ったにしちゃおかしい。恐ろしい力で左の頸筋を叩くように押え込み、右から出刃を廻して斬った傷だ。――伝次郎ではむずかしいな」
 平次は何やら考えております。
「伝次郎でなきゃア、親父の伝右衛門――」
「六十以上の年寄りがかい」
「年を取ったってやはり男で」
「まアいい。今晩は桶屋の近所に見張っていて、久兵衛が出たらその後をけてくれ」
 平次は気を変えたようにこう言います。
「出かけるでしょうか」
「きっと出る。それも夜中じゃない。更けると目立つから、お通夜の中から抜出して、宵のうちに行くに違いない」
「ヘエ――、八卦はっけみたいだね」
「これが当ったら、十手捕縄をお上へ返して、算木を持って辻へ立つとしようか」
「似合いますよ。銭形堂の平斎なんてえのは」
「ハッハッハッ」
 二人は声を合せて笑いました。


 日の暮れるのを待ち兼ねて、ガラッ八は、三崎町へ廻りました。
 間が抜けているようでも、稼業柄思いのほか忍びは巧みで、桶屋の前の路地に潜んで、木戸の蔭から、久兵衛の家の裏表を見張っているのを誰も気がつきません。
 お経や百万遍や、賑やかな通夜が始まって、あかりは往来までこぼれている中を、
「おや?」
 ツイと出た人影があります。四方あたりを見廻して表へ出ると、五六軒先の出羽屋の木戸へ、大きな鳥のように、ヒラリと姿を隠したのです。
 続いて入ろうとしたガラッ八は、
「…………」
 木戸の外へ、強い手でグイと押戻されました。
「あッ、親分」
「シッ」
 それは銭形平次の、同じく忍び姿だったのです。
「八卦は当ったが――人が悪いぜ、親分」
「黙っているんだ。もう少し経つと、面白いことが始まる」
「その八卦も当りゃいいが」
「無駄を言うな」
 それっきり、二人は黙ってしまいました。それから半刻ばかり――
「中から人が出て来るようだ――木戸を半分またいだところで捕まえろ」
「むずかしいね」
「シッ」
 平次の言葉の終ると同時に、裏口からそっと忍び出た曲者くせもの四方あたりに気を配りながら、木戸を押しました。
「御用ッ」
 正面から飛びついた八五郎。
「あッ」
 戻るところを、後ろからは平次。
「神妙にせい」
 ピシリ、十手が鳴ると、闇の路地に、ザクリと落ちたものがあります。
「何だ何だ」
 家の中からは、雇人達が飛出して来ましたが、手燭てしょくに照された、思いも寄らぬ光景シーンに、さすがに近寄りもなりません。
 縛られたのは、顔見知りの桶屋久兵衛で、縛ったのは、銭形平次と八五郎。それだけなら何でもありませんが、路地の中は、投出した風呂敷から溢れて、山吹色の小判で一杯だったのです。
「八、ここで縄付を見張っているんだぞ。誰が何と言っても、動いちゃならねえよ――小判なんぞに気を取られると、鳥が飛ぶぞ」
「大丈夫ですよ。親分」
 平次がガラッ八に縄付の久兵衛を托して、木戸の外へ出ます。
「どうなすったんで、――何? 銭形の親分さんが、久兵衛さんを縛った? とんでもない」
 裏口へ顔を出したのは主の伝右衛門でした。六十二三、一代にこれだけの身上をこしらえた、したたかな親爺ですが、喘息ぜんそくと年のせいで、近頃は、もうすっかり老込んでおります。
「…………」
 ガラッ八はそれに見向きもせず、平次に言い付けられた通り、久兵衛の縄尻を取って、落散る小判と、伝右衛門の顔とを見比べておりました。
「出羽屋の旦那。あっしは泥棒と間違えられましたよ。こんな馬鹿馬鹿しい事はあるもんじゃない。早く何とか明しを立てて、縄を解かして下さいよ」
 久兵衛の調子には、我慢のならぬ怒りがありました。
「それはもう。――ね、親分さん。お聞きの通り、久兵衛さんは後ろ暗いところはございません。娘が死んで葬いも出せないから、少しばかり用立てて貰いたいと言うから、有り合せの金を持たしてやったばかりですよ」
「有り合せ?」
 有り合せがざっと三百両。ガラッ八にも合点が行きません。桶屋の娘の葬いには、三両でも余るでしょう。
「八五郎親分、お聞きの通りだ。家では通夜の人達が待っていますよ。この縄を解いて下さい」
「…………」
 ガラッ八も弱りましたが、先刻さっき平次が言った事を思い出すと、この縄はうっかり解くわけに行かなかったのです。
「親分さん、久兵衛さんも可哀想ですよ。無事に帰してやって下さい」
「…………」
 ガラッ八、こんなに弱ったことがありません。久兵衛を泥棒と思い込んで縛ったのは、どうも、親分の平次が、一世一代の見込違いのような気がしてならなかったのです。
「娘の通夜だというのに――」
 久兵衛は大舌鼓を打って、ガラッ八を睨みます。解いてやろうかしら――そう思うガラッ八の眼は、思わず、伝右衛門の後ろ、出羽屋の裏に釘付けにされました。
「八、縄を解いちゃならねえぞ」
 親分の平次は、出羽屋の倅伝次郎の肘を取って、何やら片手に振りながら出て来たのです。
「親分」
「お民を殺した出刃庖丁が手に入ったぞ。血染めの柄には、小判型に「出羽屋」と焼印がしてあるんだ」
「あッ、それは」
 驚いたのは久兵衛と伝右衛門でした。が、しかし、銭形平次に指も差せるわけはなく、
「銭形の親分さん、倅じゃございません。とんでもないお間違いです。お民を殺したのは、この私に相違ございません。倅の代りに、私を縛って下さい。お願いです」
 路地の中へ、跣足はだしで追いすがる伝右衛門の姿。銭形平次も思わず顔をそむけましたが、この六十幾つの半病人が、どんなに奮発したところで、お民を殺せる道理はなかったのです。


 事件は非常に明快になりました。
 何か事情があって、伝右衛門親子は久兵衛に頸根っこをつかまれ、許嫁いいなずけのお染を捨てて、お民を嫁に迎えなければならぬ破目になり、伝次郎は我慢がなり兼ねてお民を殺したのでしょう。
 久兵衛はその事情を知り、証拠の出刃まで拾いましたが、お民は女房の連れ子で情愛も薄かったので、出刃を出羽屋に持込んで、お民の命の代りに三百両の金を強請ゆすったのでしょう。
 お民の殺された晩、店から動こうともしなかった久兵衛の様子に不審を抱き、平次はその間の事情を看破して、伏せた桶の中から、血染の出刃を発見し、わざとそっとして置いて、それを久兵衛が持込む先を突き止めたのです。
 ここまではトントン拍子に判りましたが、久兵衛が何のために出羽屋を脅かしたか、出羽屋にどんな弱い尻があって、あれほどまで久兵衛に強請られたか、その大事な点は少しも判らず、久兵衛や伝次郎を責めても、その事となると断じて口を割りません。
 それから、もう一つ困った事に、お民が殺された時刻には伝次郎は確かに家に居たことです。これは雇人下女一同の口が揃って、少しの疑いもないのです。
「八、弱ったな。――伝次郎を縛ったのは、俺の一代の失策しくじりかも知れないよ」
「親分、あっしもそう思いますよ」
「倅の嫁まで変えさせられるという弱い尻は何だろう」
「…………」
「これが知れると出羽屋の身代にも、伝右衛門か伝次郎の命にも、関わるほどの大事だとすると――」
「出羽屋が昔大泥棒か人殺しだったとしたら」
「そんな事があるものか、出羽屋も桶屋も生え抜きの神田っ子だ」
「…………」
「桶屋のお神さんには気の毒だが、あの家を捜してみよう。あれほどの強請なら、きっと、証拠があるはずだ」
 その頃でもやはり家捜しは手続が要りました。翌る日与力笹野新三郎に立ち会って貰って、桶屋の家中を捜しましたが、証拠らしいものは一つもありません。
「平次、気の毒だが引揚げようか」
 笹野新三郎も、この事件は、平次の敗北と覚悟した様子です。
「お待ち下さいまし」
 平次は神棚の御神酒徳利おみきどくりから、壁の下張りまで見ましたが、やはり何にもありません。
「お神さん、気の毒だが、お前さんの身体を調べさして貰いたいが――」
「さアさアどうぞ」
 お神さんのお夏は勝誇った心持で、平次の前へ衣紋えもんを直しました。
 帯にも、襟にも、裾にも、何にもありません。帯留おびどめにも財布にも――。
裸体はだかになりましょうか、親分さん」
 お夏は悪たれた年増らしくニタリとしました。事件の口火は自分がつけましたが、亭主を縛った平次が憎くて憎くてたまらなかったのです。
「いや、それには及ばない」
 平次はそう言いながら、お夏の丸髷まるまげから、まがい物の鼈甲べっこうに、これも怪しい銀の帯をしたこうがいを取って、スッと抜きました。
「おや?」
 少し緩いので、足に巻いた反古紙ほごがみ、方三寸ほどのをしわを伸して見ると、桝形ますがたの図を引いて、外囲そとのり内囲うちのりから、深さの寸法まで、書き込んであるのです。
「八合判だ」
「何?」
 笹野新三郎も愕然としました。それは不正な米屋が、量を誤魔化すために使った、寸縮すんづまりの桝の寸法を書いたものだったのです。
 量目桝目の不正は、今も昔もやかましい問題ですが、江戸時代はことにこの種の不正商人を憎んで、藩によっては、八合判の桝を使った商人は、米屋でも、酒屋でも、必ず磔刑はりつけの極刑に処せられたことさえあります。
 江戸の商人には、そんなのは滅多にありませんが、たまたま発見されると、これも重罪を以て処せられ、主人や番頭の命は勿論、家財までも闕所にされた例は沢山あるのでした。
 桶屋が桝を作るわけはありませんが、これは、出羽屋伝右衛門に頼まれて、久兵衛がこしらえたものでしょう。
 その寸法書を保存しておいて、数年にわたって出羽屋を強請ゆすったのは、前後の事情から、火のように明らかになりました。
 それを久兵衛に突きつけると、久兵衛は一も二もなく恐れ入って、背後うしろから斬られたのも、羽目を焼かれたのも、娘を殺されたのも、出羽屋のせいと思い込み、その度毎に強請っていたことまで、一気に申上げてしまいました。
「それッ」
 捕方は出羽屋に向いました。が、それとさとって主人の伝右衛門は、一と足違いで井戸に身を投げて死に、勢い込んだ捕方の人数も、その死体を引揚げて、スゴスゴと帰って来る始末だったのです。


「八、またとんだ手柄になったな。八合判を見つけたのは、我ながら驚いたよ。――だが、お民を殺したり、久兵衛を斬ったり、桶屋へ火をつけたりしたのは、誰だろう」
 平次はもう一度考え直さなければなりませんでした。
「お染じゃありませんか。一番最初にうたぐったのは、あの娘だが」
「いや、女の仕業じゃない」
「それじゃ、千三つ屋の佐七?」
「手錠をはめられて、あんな事が出来るかえ、佐七は町内預けだ」
 そう言いながらも、一脈の不安があったものか、平次はその足で、三崎町の町役人、大家を兼ねた、重左衛門のところへ行きました。
「いらっしゃい。――これは、銭形の親分」
 六十を越した重左衛門は、世馴れた物わかりのよい親仁おやじです。
「佐七は手錠で町内預けになっているそうだが、鍵は町役人のお前さんが預かっているでしょうね」
 平次はいつもに似ぬ厳しい調子でした。
「へえ、この通りで」
 重左衛門は大巾着から、鉄の鍵を出して見せました。
「いや、とんだお邪魔をしました」
「どうなすったんで、銭形の親分」
「なアに、何でもないんで、――御存じの桶屋のお民を殺したのは、佐七でなきゃアお染、お染でなきゃア佐七と判ったんで。――佐七の手錠に間違いないとすると可哀想だが、あの娘を縛らなきゃアなりません。町役人のお前さんも立ち会って下さい」
「えッ、お染が下手人? そんな事があるものですか。ちょっと、ちょっと待って下さい」
 重左衛門は泡を喰って飛出そうとします。
「どっこい、出られちゃ困る。おめえさん、佐七のところへ行って教える積りだろうが、そんな事をして大事の下手人を逃がしゃ、お前さんの首へ縄がつきますよ」
「と、と、とんでもない。そんな事になってたまるものか。大丈夫、佐七やお染を逃がすような事はしません。ちょいと待って下さい」
しっかり頼みますよ」
「だ、大丈夫」
「自首は罪が軽くなる。――お上にもお情けというものがあることは、町役人のお前さん、知らないはずはない」
「…………」
 重左衛門は横っ飛びに飛んで行きました。物蔭に隠れていた八五郎のガラッ八が、そっとそれをけて行ったことは言うまでもありません。四半刻ばかり経つと、重左衛門は、千三つ屋の佐七を、手錠のまま引連れて来ました。
「親分さん、お手数を掛けて相済みません。お民を殺したのは、この佐七でございます」
 佐七は悪びれた色もなく、平次の前に小腰をかがめました。
「手錠のままでやったのか」
「ヘエ――、手錠があっても、それくらいのことは出来ます」
「久兵衛を斬ったり、外から心張をして、火をつけたのは、お前じゃあるまいな。あれは手錠のままじゃ出来ない芸当だ」
「それは存じません」
「よし、よく自首してくれた。笹野の旦那にお願いして、悪くは計らわない、安心するがいい。――それから、お染は俺が引受けてやる。それも心配することはないよ」
「有難う存じます」
 佐七は大地の上へ、ヘタヘタと崩折れました。その後を慕って来て、戸口へそっと顔を出したのは、若い娘、これも柱につかまって、身も浮くばかり泣いている様子です。

     *

「手錠のままで、お民を殺したとは、どうも腑に落ちねえ」
 ガラッ八のこう言う独り言を、平次は聞きとがめました。
「町内預けはお上のお情けだ。牢の中で掛ける本手錠と違って、自分の家に居る者の手錠は、食事、用便、その他、夜寝る時は外しても穿鑿せんさくはしないことになっているのだよ。町役人が親切で、別懇の間柄だと、時々は錠を外したまま、手頸に巻きつけておくことさえある。――」
 それは全く、徳川時代の刑罰の面白い裏でした。
「なるほどね」
「手錠――と聞いて、それを外せないものに思い込んで、疑ってみる気にもならなかったのはこっちの手落さ。佐七は千三つ屋だが、町内で可愛がられている。町役人の重左衛門はあの通りお人好しだ」
「…………」
「佐七は物置を焼いて町内預けの手錠になったのを幸い、娘の怨みを酬いる気になったんだ。何かの都合で出羽屋の庖丁が手に入ったので、疑いをそっちへ向ける気になったのだけは憎いが」
「久兵衛を斬ったのや、羽目を焼いたのは?」
「みんな佐七だよ。――久兵衛はそれを、強請っている出羽屋のする事と勘違いをして、ひた隠しに隠したんだ。うっかり明るみへ出ると、縛られるのは出羽屋ばかりでなく、その上、大事な金蔓かねづるがなくなるからな」
こうがいに桝の寸法書を入れたのは?」
「お神さんのお夏は何にも知らない。亭主の久兵衛は、護符まもりだから大事にするようにと、だましたんだ。自分の身につけておくと、出羽屋の者に狙われると思ったんだろう」
「なア――る」
「何もかも済んだ。が、恐ろしい事だったよ。いつかお前が言った通り、世の中が悪くなったね」
 平次はつくづくそう言いました。

 余事を少し書添えると、出羽屋は取潰し、番頭二人遠島。佐七は自首したのと娘の仇討という事情があったので、手錠の事には触れずにこれも遠島。五年後ゆるされて帰った後は、娘のお染と婿の伝次郎に養われて貧乏ながら安らかに送りました。
 久兵衛は獄門。可哀そうにお夏は行方知れず。平次はずっと後まで、そればかり苦労にしていたということです。





底本:「銭形平次捕物控(二)八人芸の女」嶋中文庫、嶋中書店
   2004(平成16)年6月20日第1刷発行
底本の親本:「銭形平次捕物百話 第二巻」中央公論社
   1938(昭和13)年12月7日発行
初出:「オール讀物」文藝春秋社
   1935(昭和10)年10月号
入力:山口瑠美
校正:結城宏
2017年6月25日作成
2019年11月23日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。




●表記について


●図書カード