銭形平次捕物控

和蘭カルタ

野村胡堂





「親分、子さらい流行はやるんだってネ」
「聞いたよ、憎いじゃないか」
 銭形平次は苦い顔をしました。
「赤ん坊ならどこへ連れて行かれても、それっきり判らなくなるかも知れないが、さらわれるのは大概七つ八つから十二三の子だからどんな場所に売られたにしても、土地の役人なり御用聞なりに、名乗って出られそうなものじゃありませんか。江戸だけでも何人あるか知れないが、一人も行方ゆくえが判らないとは変だねえ、親分」
 ガラッ八の八五郎も、時々はこういった上等の智恵を出すこともあったのです。
「だから俺は考えているのさ、相手の見当だけでも付かなきゃア、うっかり手は出せねえ、――だがな八、金や品物をられたのなら、働いて取返すすべもあるだろうが、子供をさらわれた親の身になってみれば、あきらめようがあるまい。悪事の数も多いが、信夫しのぶ藤太とうたの昔から、人の子を取るほど罪の深いものはないなア」
 銭形平次も妙に感傷的でした。女房のお静が身重で、暮までには、平次も人の親になるはずだったからでしょう。
「女の子だけをさらうなら解っているが、時々男の子を誘拐かどわか料簡りょうけんが解らないじゃありませんか」
 八五郎はまだ首をひねっております。
 ちょうどその時、
「御免下さい、銭形の親分さんはこちらで――」
 門口かどぐちから年配の女の声、平次の女房お静は取次に出た様子です。
「八、また誘拐かどわかしらしいぜ」
「どうしてそんな事が判るんで、親分」
「女が二人連れで、こんなに早く御用聞の家へ来るのはよくよくの用事さ」
「へッ、当るも八卦はっけという奴で」
 八五郎はガチャガチャをやる真似をしました。
「金座の勘定役石井平四郎様の御召使が二人でお出でになりました」
 お静が取次ぐのを待っていたように、
「とうとう俺の縄張内へやって来たのか、よしよしこの辺が乗出しの潮時だろう、丁寧に通すんだよ」
「ハイ」
 引返したお静、間もなく二人の女を案内して来ました。
「始めて御目にかかります。私は金座の役人石井平四郎の雇人、しもと申します。御坊っちゃまの乳母うばをいたしておりました、これはお付きの小間使、春でございます」
 挨拶をしたのは、四十二三のいかにも実直そうな女、その後ろに小さく控えたのは、十七八の大商人の召使らしい美しい娘です。
「平次は私で、――どんな御用でしょう」
「大変な事が起りました」
「坊っちゃんが誘拐かどわかされたんでしょう」
「えッ、ど、どうしてそれを」
「お前さんの顔に書いてある」
「えッ」
 お霜の驚きは大袈裟おおげさでした。
「まア、そんな事はどうでもいい、――坊っちゃんの見えなくなった、後前あとさきの事を詳しく聴こうじゃありませんか」
 平次の調子には、いろいろの意味がこもっていそうです。
「こうなんですよ、親分さん、――昨夜ゆうべ戌刻いつつ(八時)少し過ぎでした。あんまり暑いんで、お春さんが坊っちゃんを表の縁台で遊ばせていると、昼買った花火が箪笥たんすの上にあったはずだから、持って来いとおっしゃるんだそうです。店には多勢おおぜい人が居るし、まだ往来もある頃だから、何の気なしにお家へ入って、花火を捜して持って出ると、ツイ今しがたまで遊んでいた、坊っちゃんの姿が見えないんです」
「手間は取らなかったろうな、お春さん」
 平次は乳母の饒舌じょうぜつを少し持て余したように、そばで黙って俯向うつむいているお春を顧みました。
「いえ、ほんの煙草たばこなら三服吸う間でした」
 お春は、多い毛を重そうに、こう顔をふり仰ぎました。申分なく美しい器量ですが、何となく弱々しいうちに、肉体とは没交渉に強い魂を持っていそうな娘です。
「そんなちょっとの間に、どこへもいらっしゃるはずはございません。それから大騒動をして、町中を捜しましたが、どこにも見当らず、奉公人や、御近所の衆や、お出入りの人達が八方に手をわけて、一と晩寝ずに捜しても悉皆かいくれ行方ゆくえが解らないんです」
「…………」
「もしや、神隠しにでも逢ったんじゃないかという方もありますが、神隠しなら三年五年経って出て来ることもありますが、――あの、この節江戸中の騒ぎになっている、子さらいの手に掛ったら、どうしましょう」
 お霜は大きく眼を開いて、ゴクリと固唾かたずを呑みました。忠義者には相違ないまでも、お春に比べると、何となく神経の鈍そうな女です。
「大事なことを訊かなかったが、坊っちゃんは幾つで、名は何と言いなさるんだ」
「七つでございますよ。勇太郎様とおっしゃって、それはそれはお可愛らしいお子さんでございますよ」
 お霜は自分の子の事でも言うように誇らし気でした。少し動物的かも知れませんが、とにかく、自分の育てた子を、この上もなく可愛がっていることは確かです。
「お霜さんは江戸に家があるんだろうね」
「ヘエ、大根畑(本郷新花町)に世帯を持っていましたが、亭主の文七ぶんしちやくざで三年前に別れてしまいました」
「お春さんは?」
木更津きさらづでございます」
「とにかく、やってみるとしよう。子さらいも、長崎や堺や、大坂から流行はやって来たことで、江戸では品川寄りと深川にあっただけだが、俺の縄張うちへ来ちゃ放っておけまい。八、一緒に本町ほんちょうまで行ってみるか」
「ヘエ――」
 平次とガラッ八は、お霜、お春の二人に案内されて、本町の石井平四郎の家まで行きました。金座の勘定役というと、今の日本銀行の重役で、その住居すまい、調度、奉公人の数など、目を驚かすばかりの豪勢さです。


「銭形の親分、――とんだ骨を折らせるが、捜し出せるものなら、何とかして無事な顔が見たい、子供は多勢あるが、あれは総領で、生れてすぐ母親に死に別れただけに不愍ふびん一入ひとしおだ、――金ずくで済むことなら、――」
 石井平四郎はそういった男でした。金座の御金改役後藤庄三郎の片腕と言われた利け者で、元は吹屋町ふきやちょう手前吹てまえぶきをしておりましたが、後、後藤庄三郎の配下になって、その辣腕らつわんを勘定奉行に認められていたのです。
「御存じの通り、日本の津々浦々で大騒ぎをしている子さらいの仕業でしたら、容易にお請け合いは出来ませんが、平次の縄張へ来た以上は、何とか眼鼻だけは付けるつもりです」
 せがれの命を助けるのまで、金ずくで済ませようといった、成金根性がしゃくにさわったものか、銭形平次は日頃に似気にげない奥歯に物の挟まった物の言いようをします。
「宜しく頼みますよ、銭形の」
 平四郎はさすがに打ちしおれておりますが、仕事が繁多なので、そのまま役所の方へ出かけてしまいました。
 新造しんぞうのお君は二十七八のい女で、男女二人の母親とも見えぬ若さです。
「銭形の親分さん、お願いです。勇太郎はさぬ仲で、そうでなくてさえ、私は世間から白い眼で見られます。どんな事でもしますから、無事に救い出して下さい」
 一生懸命に、平次の袖にもすがり兼ねない勢いです。
「なにぶんあの子さらいに逢って、無事に帰ったのは一人もありません。出来るだけの事はやってみますが――」
 平次の自信のなさ。お君はおろおろしておりますが、銭形が見放すほどの事件をどこへも持って行きようはありません。
 ともかく、奉公人に一応引合せられ、お霜とお春の案内で家の裏表を見廻りましたが、余程たくらんだ仕事と見えて、手掛り一つ残ってはいません。
「お前さんはその時どこに居なすったんだ」
 平次は責任者のお霜に問いかけました。
「坊っちゃんのおやすみの仕度をしておりました。お春さんの声を聞いて、御新造様と一緒にびっくりして飛出したようなわけで――」
「その時、外の縁台には誰も居なかったんだね」
「誰か見ていたら間違いはなかったんでしょうが、折悪しく誰も居なかったそうです」
 これでは手の付けようがありません。ほかの奉公人や、近所の人にも当ってみましたが、お春が花火を取りに家へ入ったのは知っていますが、勇太郎の誘拐かどわかされた姿は誰も見た者はなかったのです。
 勇太郎のよく知っている者が、遠くから誘いをかけて呼寄せたか、でなければ、煙のような姿のない曲者くせものが、声も立てさせず、反抗もさせずにそっさらって行ったと見る外はありません。
「まるで神隠しだ」
 ガラッ八の八五郎もっぱい顔をして見せました。
「八、ここではこの上の手掛りはない。笹野の旦那にお願いして、縄張外だが、他の方を当ってみよう」
 平次はそこからすぐ数寄屋橋すきやばしの南町奉行所へ廻り、子さらいの記録を一応見せて貰いました。それによると江戸では昨今ですが、長崎や堺や大坂は随分前からあった事らしく、曲者がどうしても挙がらないばかりでなく、誘拐された少年少女が、それっきり死骸さえも現われないので、長崎奉行その他から、曲者の手口から、一切の始末書が、かなり詳しく公儀へ来ております。
 平次は笹野新三郎に会って、その了解を得た上、その足ですぐ芝浦から品川へ廻りました。最初に子供をさらわれたのは、車町の酒屋で、お村という九つの娘、子柄の良いので評判だったのが、去年の秋のある日、浜へ行って遊んでいて行方不明になりました。その時は、大分争ったものと見えて、その辺中さんざん荒らした上、痛々しく血までこぼれていたと近所の者が多勢で言っております。
 次は田町の鋳掛屋いかけやの倅藤吉とうきち、これは十二になって、たくましい子でしたが、夕方使いに出た帰り、近道をして浜で曲者に襲われ、持物も着物も滅茶滅茶に千切って捨てて、それっきり姿を見せません。
 三番目は芝口の御家人ごけにんの子、四番目は飛んで深川大島町の大工の娘、五番目は熊井町の船頭の倅、六番目は――。
 平次もガラッ八もこの曲者のやり口の残酷さに、腹の底から義憤のようなものがコミ上げました。さらわれたのは、美しい女の子か、丈夫そうな男の子で、武家も町人も見境はありませんが、一致した点は、いずれも嫌がるのを力ずくで、無理に連れて行った形跡のあることです。金座の石井平四郎の倅のように、何の抵抗もなく、だまされて、連れ出されたのは一人もありません。
 もう一つ変っているのは、あとの六人は町内の評判になるほどの綺麗な娘か、賢くて身体の逞しい男の子に限られておりますが、金座の石井の倅勇太郎だけは、乳母のお霜は可愛い子のように言いますが、外の奉公人や近所の人は、容貌きりょうも悪く、身体も弱く、心持まで少し発育が遅れて、七つといっても、せいぜい五つぐらいにしか見えなかったと言っております。


 銭形平次一代のうちに、この時ほど大手柄を立てた事はありませんが、平次自身に言わせると、この時ほどの失策はなかったと言います。
 とにかく、石井平四郎の倅と、他の六人の子供の行方不明の関係には、何かしら、重大な不一致点がありましたが、今さらそんな事を詮索してもいられません。ガラッ八を督励して、品川から深川一円をあさっていると、誘拐かどわかされた子供は、ごとごとく暴力で連れて行かれた事の外に、日中も、夕方も、時刻かまわず人をさらっているくせに、場所だけは例外なしに、海か河か、とにかく水に近いところでやっている――という特色をつかむことが出来ました。
「泣きわめく子供を連れて、町の中を逃げるわけには行くまい。やはり、船かな」
 平次の最初の手掛りはこれでした。
 それにしても、さらわれた子が、一人残らず、かき消すように見えなくなるのは容易なことではありません。江戸の子を長崎へ連れて行っても、大坂の子を江戸へ連れて来ても、言葉遣いだけでもすぐ身許が露顕しなければならぬはずです。
切支丹きりしたんがさらって行って、生胆いきぎもを取るんじゃありませんか――世間ではそう言っていますよ」
「馬鹿な」
 ガラッ八の疑いを一笑に付しましたが、物を理詰めに考えることの出来ない人達は、生胆伝説と結び付けて考えるのも無理のないことでした。
「近頃の流行物はやりものというと何だろうな、八」
 平次は妙な事を訊きます。
「解っているじゃありませんか、堺町の中村座に、吉原の繁昌――」
「そんなものじゃない」
豆蔵まめぞうの人寄せに言う――うんすんカルタ繻子しゅすの帯、ビードロ細工に人さらい――などはどんなもので」
「それだよ、八」
「ヘエ――」
うんすんカルタじゃいけない、オランダカルタがあったら、一と組欲しいな。御禁制品だから容易には手に入るまいが、これだけ持って行って、江戸中の船着き場をあさってみてくれ」
 平次はお静を呼んで財布を出させると、中から小粒をひとつかみ、二三両もあろうと思うほどへ、小判を二枚添えて、ガラッ八に渡しました。
「これだけありゃ、人参にんじんでも沈香じんこうでも買えるぜ親分」
「その人参や沈香の方も気をつけてくれ、近頃はから天竺てんじく和蘭オランダあたりの品がよく入るようだから、――抜かりはあるまいが、どこからそんな品が手に入って来るか、突き止めるんだよ。もっとも抜け荷や禁制品を扱う者は口が堅いから、うっかり用心させると、田螺たにしみたいになるぜ」
「心得たよ、親分」
「言うまでもないが、抜け荷や和蘭渡りの禁制品を扱う問屋を嗅ぎ出すのが第一だよ。金に糸目は付けねえ、それで足りなきゃア、八所借やところがりをしても工面してやる。沈香や人参は手におえないが、和蘭カルタとギヤマンの品のいいのがあったら逃がすな」
「ヘエ――、少しぐらいなら、あっしも持っていますよ」
「大層な心掛けだな」
「男が敷居をまたげば、八人の敵――って言うじゃありませんか」
「七人――の間違いだろう」
「一人ぐらいは多くたって驚きゃしません」
「いくら持っているんだ」
「小粒が一つ、四文銭が三枚」
「馬鹿だな」
「へッへッへッ」
 ガラッ八は面白そうに笑って出て行きました。屈託を知らない男の気楽そうな後ろ姿が、ともすれば神経質になる平次を、どんなに力づけてくれるかわかりません。


 それから三日、石井平四郎夫妻はせっせとお春やお霜を使いによこして、その後の様子を訊ねますが、平次の方からは何の報告もありません。
 なまじ金座などをうろついて、世間の耳目を聳動しょうどうさせるより、ほかの方で動きの取れぬ証拠を集め、一挙にして曲者を縛ろうというのでしょう。
 石井の家では、主人の平四郎よりも継母のお君の方が気をんでいるとお春は言いますが、平次に言わせると、それよりも、勇太郎失踪しっそうの直接の責任者と思われているお春の方が気を揉み、お春よりはまた、七年間勇太郎を育てたお霜の方が大きな打撃を受けている様子です。
「坊っちゃまが無事で救い出されなければ、私は生きてはいられません」
 と勝気らしいお春が泣くのを、平次はどれほど持て余したことでしょう。お霜の方はあまり愚痴を言いませんでしたが、だんだんせて憂鬱になって行くのは、心の悩みが一段と深いせいでしょう。
 そのうち人さらいがまた活躍を始めました。春から二た月ばかり休んでいましたが、石井平四郎の倅を皮切りに、だんだん大川筋を溯上さかのぼって、本所、浅草あたりまで荒らすようになったのです。
「親分、とうとう手に入れましたぜ」
 ガラッ八が飛んで来たのは、それからまた二日も経ってからでした。
和蘭オランダカルタか」
「それがいけねえ、うんすんカルタならどこにもあるが、和蘭カルタとなると滅多にありません」
 うんすんカルタは和蘭カルタ(トランプ)の禁制後それを模造した和製品で、平次には意味がありません。
「…………」
薬種屋やくしゅやか、唐物屋とうぶつやで訊くのが一番だと思って、沈香か古渡りのギヤマンでも買うような顔をして、日本橋の問屋筋を一軒残らず歩きましたよ」
「それは御苦労だった」
あっしはお上の御用を勤める人間とは見えないでしょう」
「そうともそうとも、そんな目出たい顔をした御用聞が居ようとは、どんな人だって気が付くめえ」
からかっちゃいけません」
「ところでどうした」
「長崎町の大野屋に和蘭物がいろいろありましたよ。金銀細工物、羅紗ラシャ、ビードロ、それから見たこともねえ飾りや織物――、いっそみんな買い占めるような顔をして、手付が五両」
「呆れた野郎だ、手付を置いただけで身上しんしょうがみんなになったろう」
「和蘭カルタの事を切出すと、心当りがあるから、明日になったらもう一度来て貰いたい、今晩中には手に入れておく、もっとも禁制品だから、五両より安くはむつかしいという話で、それは構わないが、明日また大野屋へ行くとなると、五両の手付を置いた品をみんな引取らなきゃなりません、金高きんだかにして、ざっと七八十両がものはありますぜ」
「心配するな、どうせ半分は抜け荷だ、俺が行っていいようにしてやる。ところで今晩は命がけの仕事をするんだが、付き合ってくれるかい、八」
「へッ、付き合ってくれるかい――は水臭いね、親分の前だが、はばかりながら命には糸目をつけねえ」
「豪儀だね、もっとも、金には糸目をつけたくも、御同様百も持っちゃいめえ」
ちげえねえ」
 気が揃った二人、それから仕度をして、薄暗くなる頃から長崎町、川口町一帯を張りました。
「親分、何にも来ませんね、もう亥刻よつ(十時)過ぎましたぜ」
 蒸暑い晩でした。八五郎はすっかりうだって、愚痴を言い始めます。
「静かにしろ、あッ、煙草入などを出しちゃならねえ」
「驚いたね、どうも」
「手前は銀町しろがねちょうの方を見ているんだ、俺は東湊町ひがしみなとまちの方を見張ろう、松平越前守まつだいらえちぜんのかみ様御屋敷などはどうでもいい」


「あッ、船」
「シッ、その船が怪しい」
 二人は物蔭に隠れました。銀町二丁目、三の橋の橋詰に着けた小舟が一そう、中から二人の人間が無提灯むぢょうちんで大きな荷物を背負しょったまま、長崎町一丁目の方へ入って行ったのです。
「捕まえましょうか、親分」。
「逃がしちゃ大変だ、――それ、大野屋の裏へ入ったろう。今に出て来るに決っているから、舟の中に隠れていよう」
「そんな事をしても構いませんか」
「構わねえとも、どうせ抜け荷を積んだ舟だ」
 二人は曲者くせものの出た小舟の中へ、音もなく潜り込みました。
「隠れる工夫はないか、八」
「こんな小さい舟じゃどうすることも出来ませんや」
「弱ったなア、抜け荷を扱う人間は口が堅いから、ここで荒立てると、親船が判らなくなる。大川から芝浦、洲崎すさきへかけて、あんなにたくさん船が居るから、どれが抜け荷を扱う親船だか見当の付けようはねえ」
「弱ったなア、――この葛籠つづらの中はどんなもんで」
「お前入ってみるか」
「親分は?」
こもの中へ隠れよう、水垢みずあかで少しジメジメするが」
 平次とガラッ八がどうやらこうやら身を隠した時、曲者二人は帰って来ました。
「悪くねえ商売だなきち和蘭オランダカルタが三両だ、――こいつは親分には内緒だぜ」
「いいとも、その代り一両は口止めによこせ」
「まア仕方がねえ。ところで、この辺で江戸も切上げだろうな」
「こんな仕事の深入りはよくねえよ」
 曲者二人、静かに小舟をいで行きます。
 それから半刻(一時間)あまり。
 小舟は越中島えっちゅうじまを廻って、洲崎六万坪の沖あたりまで来ました。
「親船は見えるかえ」
がないから見当はつかねえが、この辺から遠くはねえと思うよ」
「月が出たら判るだろう、ゆっくり漕げ」
「お、そこに居るぜ、声を掛けてみようか」
「どっこい、うっかり声を出して、見張りの船にとがめられるとうるさいぜ」
 曲者の話を聞いて、平次は菰の中から顔を挙げました。一二町先に、陸地近く泊っているのは、灯も何にもない、二三百石積みの船です。
 ここまで見定めておけば、もう大丈夫です。
「…………」
 御用とも何とも言わず、ツイ鼻の先でかいを握っている男の脇腹を、思い切り一つ突きました。
「ウーム」
 一ぺんに目を廻した様子。
「あッ、手前てめえは何だ」
 を押していた方の男がち直りました。
「静かにしろ」
 飛付いた平次。
「あッ、た、大変ッ」
 なにぶん狭い舟の中、口を封じるすきもなく、親船へたすけを求められます。
「親分、とうか、縛ろうか、それとも水へほうり込もうか」
 ガラッ八はようや葛籠つづらをハネ開けて、曲者の後ろからむずと組付きます。
 騒ぎは一瞬でおわりました。
 二人の曲者を縛って、一応八丁堀へ引返し、改めて笹野新三郎が出役、十数艘の小舟で怪しの船を囲み、命がけの働きで、乗組の船頭八人を生捕ったのは、もう真夜中過ぎ。鉄砲を撃たれて、だいぶん怪我人もこしらえましたが、ともかく、大成功で御船手おふなて屋敷まで引いて来たのは暁方あけがた近くでした。
 調べてみると、これが、今(昭和十年当時)の南支那、台湾から日本の沿海を荒らし廻った、抜け荷(密輸入)扱いの一味で、和蘭人オランダじん葡萄牙ポルトガル人から、雑貨薬種を仕入れては日本へ持帰り、それを金に代えるかたわら、船着き場で少年少女を誘拐かどわかし、それを支那から、南洋へ連れて行っては、良い値で売り飛ばしていたのです。
 内地で人身売買をしないために、容易に露顕しなかったのですが、抜け荷と関係があると睨んだ、平次の慧眼けいがんに見破られ、とうとう一味十人ことごとく生捕られ、すぐさま手配をされて、大坂、長崎に居る仲間まで一掃されてしまいました。それは後の話――。
 誘拐された少年少女のうち、今年の春からの分だけ、約半分は船の中で見付け、それは銘々の親許にかえしましたが、不思議なことに、金座役人、石井平四郎の倅勇太郎だけはその中に見えません。
 十人の曲者は、さんざん責め問われましたが、本町や吹屋町は、船からの足場が悪いから、人さらいに行った覚えはないと言い張るのです。
 命はどうせないものと覚悟した悪者どもの言うことですから、この言葉に嘘があろうとも思われません。
 抜け荷さばきと人さらいの、江戸開府以来という悪者の団体は挙げましたが、たった一人の勇太郎を救うことが出来なかったのは、銭形平次何としても我慢がなりません。
「八、弱ったなア、石井の倅は一体どうした事だろう」
「親分、諦めた方が無事ですぜ、あれだけ捜して見付からないんだから、いよいよ神隠しとでも思わなきゃア」
 大手柄に陶酔して、八五郎はこんな事を言いますが、仕事に神経質な平次はどうしても諦め切れません。


「親分、大変なことになりましたぜ」
「何だ八、――近頃大変なこと続きで、滅多な事じゃ驚かないが――」
 平次は苦笑いしました。何となく気の滅入る四五日だったのです。
 銭形平次の手柄は、いやが上にも評判になって、うっかり外へ出ても、人に顔を見られるようなこの頃ですが、平次にとっては、それがまた、たまらない屈辱のような気がしてならなかったのです。
 頼まれもしない十何人の少年少女は救いましたが、あんなに頼まれた、たった一人の少年を救うことが出来ないのは、何という意地の悪いめぐり合せでしょう。
「冗談じゃねえ、親分、お春が死にましたぜ」
「お春?」
「金座役人の石井のお小間こまさ、――坊っちゃんがさらわれたのは私のせいだし、他の子が助けられた中に、坊っちゃん一人だけ見付からないようでは、申訳がなくて生きちゃいられないという遺書かきおきがあったんですって」
「それは気の毒だ、勝気な娘のようだったから無理もないが、そう言われると、何だか俺が殺したような気がしてならねえ」
「親分、冗談じゃありませんよ」
「とにかく、石井へ行ってみようか」
 二人はそのまま本町ほんちょうの石井平四郎の家へ行きました。十日目ぐらいの訪問です。
 死んだお春は人気者だったので、家中が何となく湿っておりました。死装束の晴着に換えて、白布しろぎれひざゆわえ、香までいて、どこから持出したか、女持ちの懐剣、左乳の下を一とえぐり、武士も及ばぬ見事な最期だったそうです。
「あ、早まってくれた」
 平次はその前に坐ってしばらく黙祷もくとうを続けました。勝利の後のほろ苦い悲哀といったようなもの、――名匠が不本意な仕事を俗衆にヤンヤと言われる時のような、――言いようもない腹立たしさと交って、若く美しい娘の死をいたむ気持が、異様に胸を騒がせるのでした。
「親分さん、ちょいと」
 新造しんぞうのお君が平次を呼びます。
「とんだ事で、御新造ごしんぞ――」
「お春は可哀想ですが、このままにしておくと、乳母のお霜も生きていないかもわかりません。お霜に万一の事があると、勇太郎の継母ははの私も――」
 お君は日頃から慎み深い、冷たい女でしたが、さすがに夫や世間の思惑にさいなまれて、万一の場合には死んでもしまい兼ねまじき顔色です。
「そんな事をなすっちゃいけません、坊っちゃんが生きてさえいるものなら、どんな事をしても捜して上げますよ」
 平次もこう言うのが精一杯でした。
「生きていることは確かでございます」
「というと?」
昨夜ゆうべ、坊やの着ていた着物のえりがして、こんな手紙と一緒に店へほうり込んで行った者があります」
 お君が取出したのは、鼻紙一枚へ、灰を溶いたような粗悪な墨で書いた、仮名書の手紙でした。恐ろしい悪筆で、容易には読めませんが、大骨折で弁慶読みにすると、
〈坊っちゃんは無事だ、この上とも殺させたくなかったら、十両よこせ。金は裏口の右土台下の穴へ入れておくがよい、その上で折を見て子供は返す。誰にも言うな、言うと子供の命はないぞ〉
 とこんな意味の事が書いてあるのです。
「金はどうしました」
「昨夜土台下へ入れておきましたが、今朝見ると、無くなっています」
「誰かに見張らせたんでしょうね」
「いえ、そんな事をすると、坊やの命が危ないと思って、――それにたった十両ですから」
「なるほど、心配は御尤ごもっともだが、惜しい事をしたものだ、――いや、たった十両欲しいと言ったのが面白いな、どうかすると、もう一度百両とか二百両とか吹っ掛けてきますよ」
「そうでしょうか」
「その時は御新造」
 平次は何やらお君の耳にささやいて帰りました。


 あくる日、銭形平次がガラッ八の前に硯箱すずりばこを持って来させました。
「八、ちょいと字を書いてみる気はないか」
からかっちゃいけません。親分、字を書かされるような悪事をした覚えはありませんよ」
 八五郎はすっかりおかんむりげます。
「まア、そう言うな、手紙一本書くだけだ。ちょいとやってくれ」
「親分が書きゃアいいでしょう」
「俺の字じゃ納まらない事があるんだ」
 鼻紙を一枚、念入りにしわこさえて、ガラッ八の膝の下に置くと、禿筆ちびふでへたっぷり墨汁すみを含ませて、嫌がる手に持たせました。
「親分、勘弁してください。字を書くくらいなら、どんな使いでもしますよ」
「馬鹿、使い走りの利かないところだ、それも上手が書いちゃ役に立たねえ、思い切り下手な字でねえと――」
「下手な字が入用なんで、あっしに書けと言うんですかい」
「早く言えばその通りだ、腹を立てるな八、江戸っ子は手習いの事や金の事で腹を立てちゃみっともないよ」
「呆れたもんだ、書きますよ、何と書きゃ、いいんで」
「こうだ、〈十両はたしかに受取った、もう百両るから、前の場所へ入れておけ、見張りを付けると、子供の命はねえぞ〉とそれだけでいい」
「驚いたね、親分、こんな手紙をどうするんで」
まずい字だなア、よしよし、その拙いところがいいんだよ、――ところで、その手紙を、金座の石井の店へほうり込むんだ、ついでにやってくれ」
 銭形平次は手軽に言いますが、ガラッ八の方は驚きました。
「そんな事をしていいんですか、親分」
「いいてえことよ、誰も八五郎を誘拐かどわかし曲者くせものだと言う気遣きづけえはねえ」
「…………」
 ガラッ八は黙って立上がりました。
「まだ早いよ、の当ってるうちはいけねえ、暗くなったらやってくれ」
「ヘエ」
 平次の言い付けは善悪ともに黙って聴くガラッ八ですが、この脅迫状の投込みには、さすがに驚いた様子です。
 が、どうやらこうやら、それも無事に済みました。
 翌る日の朝。
「銭形の親分さんはこちらで――」
 石井平四郎の女房お君は、召使も連れず、たった一人で神田の平次を訪ねて来たのです。
「おや、御新造、こんなに早く、何か変ったことがありましたか」
 平次はお静とガラッ八を眼で遠慮させて、お君を奥へ通しました。
「来ましたよ、親分」
「ヘエ」
「やはり親分のおっしゃった通り、百両出せと言って手紙が来ましたよ、少し手跡が違うようでしたが相変らず鼻紙へ書いたまずい字で」
「そうでしょう、ずいぶん念入りに拙い字でしょう」
 平次は場所柄にも似ず、莞爾にっこりとしました。ガラッ八の書いた字を、お君が拙いと言ったので可笑おかしかったのです。
「それから主人と相談して、裏口の土台石の下へ百両入れました、〈一日も早く子供を返して下さるように、この上びになると、お春の二の舞が始まるかも知れない。乳母ばあやのお霜も、母の君も、生きている心持もしない〉と手紙を添えました、悪かったでしょうか」
「構やしません、で、見張りは?」
「やはり付けませんでした」
「手引か仲間が家の中に居るから、見張りを付けても何にもなりませんよ、金を遠方へ持出させずに、裏口の土台下へ置かせたのは、曲者の喰えないところで――」
 平次はそんな事を言っております。始めは見張りを付けなかったのを惜しがりましたが、家の中の者が仲間で、一と晩中でも隙を狙われるとしたら、見張りをつけるだけ無駄と判ったのです。
「その代り、小判には、目印があります」
「…………」
「改め役へ差上げて極印ごくいんを打つ前の、吹き立ての小判ばかり百両包みました。あれを一枚でも使えば足が付きます」
「それはうまい、――そんな都合のいい事があるとは知らないから、私は一枚一枚へ目印を付けるようにとお願いしました」
 それも平次の指金だったのです。
「御免下さい、親分さんはおいででしょうか」
 入口にはもう一人の女客、その声を聞くと平次は、大急ぎでお君を隣の二畳へ押しやりました。


「親分さん、面目次第もございません」
 入って来たのは乳母ばあやのお霜でした。平次の顔を見ると、いきなり畳へ崩折くずおれて、赤ん坊のようにシクシク泣き始めたのです。
「どうした、お霜さん、お前さんは悪人じゃない、が、何だって、あんな大それた事をやったんだ」
「親分さん、御存じで」
「知らなくってどうするものか、――子供を隠しておいた場所が判らないんで、今まで苦労していたんだよ――大根畑には、もうお前の元の亭主の文七は居ないぜ」
 平次は本当に何もかも知っている様子でした。お霜は、ただもう恐れ入って頭も上がりません。
「親分さん、とにかく、あれをお返し申します。別れた亭主の文七ですがこんな悪事を重ねさせたくもありません。二度目の百両は確かに私が取りましたが、私から主人へお返しする顔もなく、ここまで持って参りました。どうぞ、私をしばって、このお金と一緒に、お役所へ突き出して下さいまし」
 お霜は極印のない小判百両を平次の前に押並べます。
「そんな事が出来るなら心配はしないよ。俺はただ、坊っちゃんが危ないから手が出せなかったんだ、どこに隠している」
「練馬の文七の兄のところに居ります」
「そうか、そいつは知らなかった。練馬の兄は何という名前だ」
「文左衛門という百姓で、私の元の亭主に似ず堅気な男でございます」
「八、飛んで行って、文七と石井の坊っちゃんを連れて来い。下手な事をして自棄やけを起させちゃならねえよ」
「ヘエ――」
 ガラッ八は真っ直ぐに飛んで行った様子です。
「ところで乳母ばあやさん、何だってあんな罪の深いことをしたんだ。石井の旦那、御新造の歎きも容易じゃないが、そのためにお上にまで手数をかけ、可哀想にお春は死んでしまったじゃないか」
 平次の調子はしんみりしておりました。
「お春さんは可哀想なことをしました。あの時みんな申上げようと思いましたが、文七が慾に目がくれて、十両ほしいなんて言ってきたもんで、とうとう言いそびれていると、今度はまた大それた、百両と吹っ掛けてくるじゃありませんか。私はもう居ても立ってもいられなくなって、ここへ飛んで参りました。慾得ずくでしたんじゃございません、みんな坊っちゃんのためを思って――」
誘拐かどわかして坊っちゃんのためとは可笑おかしいぜ」
「詳しく申上げなければわかりません。勇太郎様は亡くなったせんの御新造の御子さんで、今のお君さんとはまましい仲でございます。お君さんはあの通りいい方ですが、自分の腹を痛めた子が二人も生れてみると、どうしても先妻の子の勇太郎さんによくは当りません、――いえ、私の目から見ると、そう見えたのでございます」
「フーム」
「旦那様はお役所のお仕事が忙しくて、朝も晩もろくに子供衆の顔も見ないような有様。ことに総領の勇太郎坊っちゃんは、育ちが遅れて可愛盛りを病身で暮したために、旦那様も、つい面倒臭がって、存分に可愛がっては下さいません。生れ落ちるからお育て申上げた私にしてみれば、それが口惜しくって」
 お霜は涙を拭いおります。愚直な中年女の、手の付けようもなくゆがんだ愛情を、平次は少しあきれて聴いております。
「で、どうしたのだ」
「去年から子さらい流行はやって、諸方の親達がどんなに心配した事でしょう。私も品川に子供をさらわれた知己しりあいを持っておりますが、日頃ふだんろくに見てもやらなかった子供でも、悪者にさらわれたとなると、まるで気狂いのようになって、夫婦はの目も寝ずに捜し廻っておりました。勇太郎坊っちゃまもたった三日でも姿を隠したら、旦那様や御新造様が目が覚めたように可愛がって下さるだろうと――」
「…………」
 何という無茶苦茶な愛情でしょう。平次はこの愚鈍に近い乳母が恐ろしくさえなりました。
「三年前、意気地がなくて別れた亭主の文七が、また一緒になりたがっているのを頼んで、ほんの二三日坊っちゃまを隠して貰うつもりだったのでございます。文七はよく坊っちゃまを存じておりますし、坊っちゃまも文七ならなついていらっしゃいます。二三日狙って、涼み台からさらわせたまでは無事でしたが、あんまり詮議せんぎが厳しく、連れて来ることも、白状することもならず、そのうちにお春さんが自害したり、文七が慾を出したりして、とうとうこんな破目になってしまいました。それもこれも重々私が悪かったからでございます。今にして思えば、旦那様のお可愛がりようにも不足はなく、ことに御新造様は、不断は一向お現わしになりませんが、見上げた方でございます」
「…………」
 隣室の二畳でシクシクと泣く声、お君は身につまされたのでしょう。
「私一人悪者にして、八方をまるく納めて下さいまし。亭主の文七も別れてしまえば赤の他人ですが、私ともう一度一緒になりたさに片棒をかつぎ、貧の苦しさに十両取る気になったのでしょう、――百両と二度目の強請ゆすりをやるようではこの先放っておいてはどんな事になるかわかりません」
「…………」
 こうなると、百両の細工を平次の仕業と知らないお霜が不愍ふびんでもあります。
「どうぞ、私を縛って、文七は許してやって下さいまし。私は処刑おしおきになっても、少しもうらみがましい事は申しません。みんな私の馬鹿がしたことでございます」
 身も浮くばかりに泣き沈むお霜を、平次も持て余して眺めるばかりでした。
「霜や、霜や、お前は、お前は」
 二畳から転げるようにお君。
「あ、御新造様、面目次第もございません」

     *

 ガラッ八が勇太郎をつれて帰ったのは、それから一刻いっときも後のことでした。文七は逃亡して行方知れず。
 間もなく、石井平四郎は金座役人をして、子供三人の良い父になり、自殺したお春の家族には、存分な手当をしてやりました。
 お霜は暇を取って、どこから捜し出したか、文七と一緒に西国巡礼に出かけ、とうとうこれほどの大事件にも、平次は人を縛らずにしまったのです。この事件ばかりは、ガラッ八も絵解きをして貰う世話がありませんが、平次はえさを獲り損ねたたかのような自尊心で、抜け荷の一味を縛った大手柄を人に褒められるのをひどく嫌っておりました。





底本:「銭形平次捕物控(六)結納の行方」嶋中文庫、嶋中書店
   22004(平成16)年10月20日第1刷発行
底本の親本:「銭形平次捕物百話」中央公論社
   1939(昭和14)年
初出:「オール讀物」文藝春秋社
   1935(昭和10)年9月号
※副題は底本では、「和蘭オランダカルタ」となっています。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
校正:結城宏
2018年8月28日作成
2019年11月23日修正
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