人間業では盗めそうもない物を盗んで、遅くとも三日以内には、元の持主に返すという不思議な盗賊が、江戸中を疾風のごとく荒し廻りました。
「平次、御奉行
南町奉行付、
「ヘエ、――私も考えないじゃございません。盗んですぐ返すというやり方が第一気に入りません。恋の付け文、貧の盗みと言うくらいで、食うに困っての盗みなら、悪いながらも可哀想とも思います。盗んだ品を
若い平次は、日頃の温厚な様子にも似ず、ツイ
「お前がその気なら、遠からず
「恥ずかしながら、何の手掛りもございません」
「女泥棒だというが、本当だろうな」
「それも当にはなりません。盗んだ品を返しに来るのは、目の
「と言うと」
「鍵や錠を苦もなく外すのはともかくとして一丈も一丈二尺もある塀を飛越したり、
「フーム」
笹野新三郎も、銭形の平次も、近頃人も
「たった一つ、仕残した
「どんな事だ」
「
「ハッハハハハハ、平次は思いの
「ヘエ――」
苦味走った
「親分」
「何だガラッ八か、騒々しい」
「ガラッ八は情けねえな、――御注進、御注進とおいでなすったんで」
「気取るな、一体何がどうしたんだ」
平次は落着き払って、子分のガラッ八の顔を見上げました。
「
「どこへ」
「浅草の
「何を
「本堂の奥のお
「罰当り
「親分、あっしが盗ったんじゃありませんぜ」
「
「親分が行って下さりゃ、ガラッ八も、心丈夫だ。こう来なせえ」
「馬鹿にするな」
三寸二分、
風太郎にあっては、鍵も錠も問題ではありません。
住職に逢って、愚痴やら繰り言やらを聞いた平次は、あとは調べるでも探すでもありません。ケロリとして、庭に出ると、寺男を捉まえて小半日植木の講釈などをした挙句、今度は本堂の中に入って、寺相応の彫刻やら額やら絵やらを眺めて、お厨子の方などは振り向いて見ようともしません。
「親分、
「わかったよ、それより、どんな者がこの寺へ出入りするか、いちいち見張っていな」
「ヘエ――?」
「風太郎の仕業なら返すに極っている。どんな人間が持って来るか、俺はそれが知りてえ」
「なア――る、親分は親分だけの勘考だ、返しに来た野郎が取りも直さず盗んだ野郎って事になりますね」
「まアね」
「ようし、こうなりゃ
ガラッ八は二つの眼玉を
無事に一日を過して、念のためにその辺中を探してみると、本堂の
「あッ」
「いつの間に持って来やがったんだ」
さすが銭形の平次も驚き
翌晩襲われたのは、本郷春木町の質屋で
当時三百両と言えば一と身代と言ってもよいほどの大金、上総屋重兵衛
「風太郎の仕業なら二三日のうちに返って来るだろう。その間俺を邪魔でも帳場へ置いちゃくれまいか」
「ヘエ――、それはもう願ってもないことで、第一盗賊の入った後で、店の者もしばらくは怖がってなりません」
重兵衛は大乗気で引受けてしまいました。ガラッ八は用心のために外の路地を見張らせて、合図があったら飛出して貰うことにし、銭形の平次は、そのまま上総屋の帳場に坐って、来る客来る客に鋭い眼を配りました。
客は
「お帳面を忘れて来ました。済みませんがこれをここへ置かして下さい、ちょいと取って来ますから」
一人言のように言って、ヒョイと
「あ、そこへ置いて行っては困ります」
と言ったが及びません。
番頭の注意を背に聞いて、外へ飛出してしまった若い女は、それっきり戻っては来なかったのです。
「おや、
銭形の平次もまことに迂遠千万、このとき
「あッ」
驚きに驚きを重ねるばかり、怪盗風太郎一味には若くて美しい女が居るという事を確かめた以外には平次ほどの者も何にも
それから三日目有名な茶人
これを盗まれては、繁野友白首でも
今日は三日目となると、居てもたってもいられません。風太郎も名物の茶碗を惜しんだものか、三日の昼過ぎになっても返して来ず、友白はいよいよ土壇場に坐った心持で、日頃の落着きも失って、奥と
銭形の平次も三日詰め切りましたが、さて何の役にも立ちません。風太郎の手口は百も承知ですから、風のごとく通って歩いた後を嗅いだところで何の匂いも残ってはいず、この上は、例の通り品物を返しに来るのを待ち伏せて、有無を言わさず縛り上げる外はなかったのです。
風太郎が、ここの門を入りさえすれば、どんなに姿を変えていても、平次の捕縄を
「それッ」
と行ってみると、見知り越しの隣の男の子、風太郎いかに神出鬼没の怪盗でも、こんなに小さくなれッこはありません。
「叔母様、これ粗末なものですが、皆さんで召上がって下さいって――」
言いつかった口上通りを取次いで、友白の妻の前に出したのは
「それは御丁寧に有難うございました」
取り込んでいるので、気を利かしてお茶受けを持って来てくれたのだろう――そんな事を考えながらヒョイと見ると、饅頭を入れた丼と見たのは、三日前に盗まれた名物の茶碗。
「あッ、これはどうだ」
そこへ来合せた友自は饅頭を
「坊っちゃん、ちょいと待った」
平次は飛付いて、危うく隣の子を押えました。
「
「おいらのせいじゃないや、放しておくれよう」
物々しさに
そこへ友白の妻やら、隣の主人やらが来て、
人間業とは思えぬ巧妙
一体、何のために盗んで、何のために返すのでしょう。返って来た小判や茶碗を見ると、疑いもなく元のままの
怪盗風太郎というのは、若くて美しい女だそうだ――という噂は、その日のうちに江戸中に拡がってしまいました。
「平次、また風太郎だ」
「ヘエー、今度はどこへ入りました」
与力笹野新三郎に
「今度は少し困った事になった」
「とおっしゃると」
「
「殿様は四十がらみの立派な方、なお上様の御覚えが目出たいという評判でございますな――よく存じております」
「それなら話しよい。実は――その赤井左門殿のところへ風太郎が入った」
「ヘエ――」
「盗ったのは物もあろうに、上様お声掛りで勘定奉行から引渡された千両箱が二つ」
「エ――ッ」
これには平次も驚きました。千両箱が二つと言うと、金の相場で今日(昭和六年当時)の四万円ぐらい、物価の比例で割り出すと四五十万円にも当る大金です。
それに、この千両箱は並大抵の品ではありません。なお上様家光公が、京都の
赤井左門の出発は来月の一日、あと七八日の間、御墨付と二千両の大金を、奥の一と間に飾って、寝ずの番を付けるようにして守護したのですが、どこに
御墨付が無事だったのは、不幸中の幸いですが、手元不如意の赤井左門が、八所借りをしたところで、二千両という大金の工面が付きません。出発の日までにこの金の工面が付かなければ、赤井左門腹を切っても申訳しなければならぬ仕儀、工夫に余って、日頃
「こういうわけだ。平次、一と骨折ってみてはくれまいか」
笹野新三郎、改めて若い平次の顔を
「それはお気の毒なことでございますが、風太郎の仕業と決れば、三日経たないうちに戻って参りましょう」
「それがいけない」
「とおっしゃいますと?」
「盗られてから今日が五日目だ。さすが風太郎も、二千両という大金に眼がくれたと見えるな」
「そんな事はございません」
「お前はたいそう風太郎の肩を持つが、返って来る見込みでもあると言うのか」
「とにかく、赤井様のお屋敷の中を拝見さして頂きたいものですが、お言葉添えを頂けますでございましょうか」
「それは何でもない事だ。後刻平次という御用聞を遣わしましょうと、はっきり断ってある」
「それでは一と走り」
「あ、これこれ平次、赤井殿の出発の日取りはあと三日の後に迫っている。それまでに千両箱が二つ揃って返らないと、お気の毒ながら赤井殿は腹を召さなければならぬ。解ったろうな」
「おっしゃるまでもございません。今度は平次も死物狂いで、キット風太郎を引っ捉まえて参りましょう」
銭形の平次は八丁堀から小日向へ、初夏の街を大汗になって駆け付けました。
旗本赤井左門は、この時四十二の厄年、家柄も人品も不足のない人物ですが、少し
「平次とか言ったな、とんだ手数を掛けるが、なにぶん宜しく頼むぞ」
「ヘエ――」
二千八百石の殿様から、泥棒の手口を聴くわけにも行きません。平次は一度左門の前を滑って、用人の
盗まれたのは小判で二千両、これは型の通り四方金具の厳重な箱に入れられて、御墨付と一緒に奥座敷の床の間に飾り、隣の間には足尾喜内や家中の若侍、若党などが交代で寝ずの番をしておりました。
箱一つの重さは中味の
門も木戸も内から
そうすると曲者は、五貫目の千両箱を二つ抱えて、一丈あまりの高塀を越して逃げたことになりますが、これはちょっと人間業では出来そうもない離れ業です。まして、世間の評判通り、風太郎が若くて美しい女だとしたら、一体どんな事になるでしょう。
平次は腕を
「ガラッ八、
「ヘエ――」
「身体も気も軽いのが自慢のお前じゃないか、それくらいの事は出来るだろう」
「出来ねえことはありませんが、泥棒の真似は気がさすな」
「何をつまらねえ、気取ったって
ガラッ八とうとうあきらめて、塀へ飛び付きました。高いといっても板塀ですから、内側からなら這い登れないことはありません。
「よしよし、塀の越しっぷりがいいと思って、悪い
「親分、冗談を言っちゃいけねえ」
「待て待て、今度はこの石を二つ持って越すんだ、抱えても背負っても構わねえ」
「こいつア無理だよ、親分」
「まア、やってみな、無事に越せたら石は手前にやる。家へ持って帰って、
「からかっちゃいけねえ」
平次がこんな冗談を言ってる時は、一番真剣な事を百も承知のガラッ八は、素直に二つの石を背負って塀を越そうとしましたが、十貫目の荷物を背負っては、どう工夫してもこの塀を越せません。ガラッ八が危うくひっくり返りそうになるのを抱き止めて、
「よしよしもう沢山だ、とんだ骨を折らせた。サアこっちへ来るがいい」
引揚げると縁側から見ている赤井左門の前へ小腰を
「殿様、千両箱はお屋敷から持出されちゃいません」
「何?」
左門は今さら眼を見張ります。
「三日経って返して来ないのも
「フーム」
「風太郎は恐ろしい早業ですが、女だろうと言われているくらいで、決して大力ではございません。二つの千両箱はお屋敷の外へ持出されていないと申すのは、こうしたわけでございます」
「なるほど、そうもあろうな、餅は餅屋だ――ところでその箱はどこに隠してあるだろう。屋敷の中はたいてい探したつもりだが――」
赤井左門もすっかり乗気になりました。
「あの泉水の中を御覧なさいましたか」
「ウーム、それは気が付かなかった」
それッと言うと、待て
この喜びは長くは続きませんでした。千両箱を洗い清めて封印を直して、明日はいよいよ出発という晩、赤井左門の邸はもう一度怪盗に襲われたのです。
今度盗られたのは、
「二度まで赤井家を襲うというのは容易でない。これは
「私もそう気の付いたところでございました」
「何しろ、御墨付は容易でない。御苦労だがもう一度行ってみてくれ」
「ヘエ――」
そう言われなくてさえ、張り切った若駒のように飛出そうとしている平次、いよいよ怪盗風太郎と、人交えもせずに最後の腕比べをしてやろうと思うと、思わず
笹野新三郎に別れて、八丁堀の往来へ出ると、ポンと弾き上げたのは、例の銭占いの青銭、落ちて来るのを
「――吉と来やがる、しめ、しめ」
両袖を合せてポンと叩くと、そのまま
赤井の屋敷に着いて、足尾喜内に案内さして、邸内
主の左門に逢って、
「人に怨みを受ける覚えは――?」
と聴くと、若い時は
「八、外へ出ろ」
「ヘエ、
「馬鹿ッ、そんな
「なアる――親分はやはり親分だけの考えがあるね」
「馬鹿にするな」
二人は表と裏に分れて、二つの入口を見張りました。平次は荒物屋の店先を借りて裏門を見張り、ガラッ八は草っ原に寝転んで表門を見張ることにしたのです。
それから何刻かたちました。平次は荒物屋の女房の好意で日蔭にも渋茶にも有り付きましたが、気のきかない野良犬のように、小日向の草原に潜り込んだガラッ八は、真上から初夏の
陽が
ヒョイと見ると、手には何やら
「あッ」
平次は荒物屋の店を飛出すと、その子供には眼もくれず、街の左右に素早く眼を配りました。
右手、
「あれだッ」
と思うと一足飛びに――
それを見た女は、ハッとした様子で曲り角から吸われるように姿を消してしまいました。
「おのれ、逃してなるものか」
その間
「あッ」
二人は危うく飛退きました。
「ちょいと伺いますが、今こちらから逃げて行った若い女を見ませんか」
「いいえ」
女はニッコリしたようでした。狭い道を、平次とすれすれに通って、向うへ行こうとするのを、
「待った」
平次は後ろから帯際を取って押えました。
「あれッ」
「騒ぐな、お前は風太郎と言われる曲者に相違あるまい」
「エッ」
「逃げる振りをして、逆に取って返した手際は、尋常の者には出来ない事だ、それに、お前の声に覚えがある」
春木町の上総屋の帳場で、平次はこの女の声を一度聞いているのでした。
「いいえ違います」
「神妙にしろ」
銀磨き
「ガラッ八来い、捕ったぞ」
「おッ、そいつは有難え。この上夜露に打たれると、人間のカキ餅が出来そうだ」
ガラッ八は表の
「いよう、こいつは大した代物だ、風太郎てえのはこの
「そうだろうと思う」
「泥棒さしておくのは
「馬鹿野郎、何を言う」
しかし、平次もガラッ八の言葉を承認しないわけには行きませんでした。後ろ手に縛られて、夕陽の中に立った娘の美しさは、眼も覚めるばかり。解き下げて無造作に束ねた髪、地模様の
お墨付は返った――、曲者は捉まった。赤井左門の屋敷は夕陽に咲いた花のように陽気になりました。
しかし、それもほんのしばらく、女が子供に托して返した御墨付を受取った赤井左門、手を清めて改めると、御墨付に似せてはあるが、真っ赤な
「おお平次を呼べ」
縄付の娘を仲間部屋に
「平次、御墨付は贋物だぞ」
「エッ」
「出発は明日に迫っている。この上手間取って、万一表沙汰になっては、過怠の罪は
二千八百石取の殿様が、岡っ引風情に手を合せないばかり。
「…………」
平次は黙然として考えました。
「明朝までに御墨付が返らなければ、生きてお前に逢うのもこれ限りだ、――その娘とやらを拷問にかけても、御墨付の
少し乱暴なようですが、事件を表沙汰にして、町奉行所へ持って行かれないとすると、これも一つの考えようでしょう。
「宜しゅうございます殿様、お庭先を拝借して、あの娘を拷問にかけましょう。どうぞお立ち合い下さいまし」
平次は
表沙汰になるのを極端に嫌いながら、これはまた何とした事でしょう。もっとも町内へは屋敷へ女賊が入って、大事の品を盗んで隠したので、その
娘は庭の真ん中に敷いた荒筵の上に引据えられて荒筵を突き破って打ち込んだ青竹に、半身裸のまま荒縄で縛り上げられました。
「娘、その方は近頃世上を騒がす風太郎という盗賊に相違あるまい。この屋敷から盗んだ品をどこへ
用人の足尾喜内、少し
娘は
「手ぬるいぞ喜内、もっと打て」
と赤井左門。
「私が代ってやりましょう。さア、娘」
平次は竹刀を取って立ち上がりました。この岡っ引にしては珍しく人間味のある男、「
高張提灯の薄暗い
「さア、言え、言う気があったら、首を三つ縦に振れ、そうしたら、猿轡を外してやる、大事の品をどこに隠した」
平次の竹刀は続けざまに娘の背に鳴りましたが、娘は身もだえして苦しみながら、どうしても
「この上は殿様、この娘を五分試し一寸試しに斬ってやって下さい。そうでもしなければ口を開くような女じゃございません」
「よし」
赤井左門は庭下駄を突っかけて降り立ちました。右手には
「待った」
見物の中から飛出した男。
ガラッ八と仲間を突き飛ばして、娘の前に大手を拡げて立ちはだかりました。
「何者?」
赤井左門の
「世間で言う怪盗風太郎とは俺の事だ」
「曲者ッ、御用ッ」
飛付こうとするガラッ八を尻目に、
「騒ぐなガラクタ、名乗って出たくれえだ、逃げも隠れもしねえ」
落着き払って懐へ手を入れます。
「風太郎とはお前だったのか、
「お、さすがは平次、よく言った。
兇賊と御用聞は、ピタリと見合ったまま、お互の呼吸を測っております。赤井左門も足尾喜内も、ガラッ八も、もう二人の眼中にはありません。珊五郎というのは、お蔵前で少しは名を売った遊び人、これが怪盗風太郎の正体とは、さすがに平次も予想外だったのでしょう。
「なア平次、お前なら話がわかるだろう、聞いてくれ、こういうわけだ――」
「…………」
娘を後ろに
「何の因果か、俺には物を盗まずにいられねえ病気があるんだ。身体も軽く、智恵も人並にあるのが身の
あまりの不思議な物語に、平次も左門も口がきけません。珊五郎はそれに構わず、悲痛に顔をふり仰いで続けました。
「ところが、たった一つ返されねえ品物があった。それはこの屋敷から盗った千両箱と御墨付だ。わけを話せば長いが、一口に言ってしまえば、ここに居る赤井左門は、若いとき酒の上で、少しばかりの粗相を
顔をヌッと出すと、
「俺が赤井左門に腹を切らせようと目論んだわけが解ったろう。――千両箱は重いから泉水へ沈めたが、それを見付けられたので、御墨付を盗んだまでの事だ。娘がまた
「珊五郎、よくその娘を見ろ。鵜の毛で突いたほどの傷でもあったら、この平次は大地に手を突いて
「何?」
「みんなお前をおびき寄せる細工だ。娘が捉まったと聞いたらお前はどうせここへ来ずにはいられまい」
「畜生ッ」
「さア、それで話は済んだ、御墨付を置いて、娘を
そう言われて振り向くと、なるほど赤井左門は恥じ入る様子で珊五郎の方へ黙礼しておりました。
「本当なら縄を打って引立てる所だが、平次の目の届かねえところへ行くなら許してやる。解ったか珊五郎」
「ウーム」
珊五郎はしばらく黙り込んで、青竹に縛られた娘の
*
銭形平次は、こうしてまた
「平次、また盗賊を逃したそうだな、お前の道楽にも困ったものだ」
そう言う笹野新三郎の小言は、何という甘いなつかしいものだったでしょう。
「ヘエ――」
平次はその前にひれ伏して、一言もありません。