流行作家の死

野村胡堂




「勇、電話だよ」
 と社会部長の千種ちぐさ十次郎が怒鳴ると、
「おッ、今行くぞ、どうせ市内通報員だろう」
「いや、そんなものじゃ無い、早坂勇さんとはっきりお名差しだ」
「月賦の洋服屋にしては少し時刻が遅いね」
 無駄を言いながら、ストーブの側を離れた早坂勇、部長の廻転椅子いすの肘掛に腰を下すように、新聞社の編輯へんしゅう局にだけ許されて居る不作法な様子で、千種十次郎の手から受話器をたぐり寄せました。
「――僕は早坂、用事は何んです、何? 何? 小説家の小栗桂三郎が自殺したッ、何時いつ? 今晩、本当か? 君は誰だッ、何? そんな事はどうでもいって、――宜くは無いよ、何? 立派な特種だから、手柄にしろって言うのかい、そいつは有難いが、君の名が判らないと困るなあ、――あ、一寸ちょっと待った、切っちゃいけない、切っちゃ――あ、到頭切りゃあがった」
 受話器を放り出した足の勇の顔は、獲物を見付けた猟犬のような緊張に輝いて居りました。
「勇、小栗桂三郎が自殺したって? 本当かいそれは?」
 とニュース敏感症にかかったような、千種十次郎が顔を持って来ます。
「本当にも何にもお聴きの通りだ、もう少し手繰たぐろうと思うと、いきなり電話を叩き切りゃあがった」
「おかしいなア、自働電話のようだったぜ」
「そうかね」
「その上子供の声だったろう、不思議だネ」
「何がおかしいんだ兄貴」
 社会部長と平記者の隔りも、友達同志を階級付けるには足りません。千種十次郎と足の勇は、う「俺お前関係」で話す間柄だったのです。これが又新聞社の面白い空気でもあります。
「そうじゃ無いか、小栗桂三郎は有名な金持で立派に電話を持って居る筈だ。その自殺を、誰だかは知らないが、この夜更けに往来の電話で新聞社に知らせるのは不思議じゃないか」
「フム」
「それにもう一つ、知っての通り、僕と小栗は、大学時代からの友達で、かなり親しい積りなんだ。その小粟に変ったことがあれば、僕に知らせるのが順当じゃ無いか」
「そうかも知れないが、かく、こいつは大特種だぜ、市内版の最初の段から入れたらどうだ」
 足の勇は気が気じゃありません。
「それは解ってるが、俺はどうもに落ちないことがあるんだ、勇済まないが、電話をかけて見てくれ」
何処どこへ?」
「小栗の家へさ、俺はその間に標題だけでも書いて工場へ廻して置く」
成程なるほど、その事だ」
 勇は言下に電話に掛りました。新聞社の編輯局独特の深夜の緊張が四辺あたりを支配して、電話のベルの音、ザラ紙の原稿紙に鉛筆の走る音、校正の読み合せの声――などが、ようやく活気付いて来た工場の雑音を背景に、一種異様なリズムをかもし出して居ります。
「モシモシ、モシモシ、そちらは小栗さんですね、こちらは関東新報ですがね、――御主人がうかなすったそうじゃありませんか、詳しい事はいりません、締切の時間ですから、兎に角一応確かめて、改めて又詳しいことを聞かして頂きいんです、え? 何んですって? うもしない、離室はなれに寝て入らっしゃる? 本、本当ですかそれは?」
「勇ッその電話を貸せッ、切るなッ、――あ、モシモシ僕です。判りますか。関東新報の千種十次郎――、実は今小栗君が自殺をしたと言う電話が来たんです、貴方あなたは爺やさんの江藤さんですね。おかしいなア、――確かに夕方離屋はなれに引取った切りですが、仕事があると言ってネ? 灯がいてますかいてる、死ねば一番先に貴方あなたが知るわけですね、可怪おかしいなア、しか悪戯いたずらにしちゃこの夜中に少し念入りだ。小栗君の部屋を見てやってくれませんか、電話は――このままにして待って居ましょう」
 千種十次郎の顔には、恐ろしい疑惑が、雲の如く往来しました、「小説家小栗桂三郎自殺す」と書いた標題みだしだけの原稿と、工場から最後の原稿を催促に来た職長の顔を眺め乍ら、年寄の江藤が、玄関わきの自分の部屋から、離屋はなれへ行って帰って来るまでの時間を、考えて居りました。
「勇、これはどうかしたら事件かも知れないよ、御苦労だが、と走り行って見てはくれまいか」
「オーライ」
 足の勇はその上の注意は聴いて居ませんでした。千種十次郎の話を、半分は後ろ耳に聴いて、オーバーを引っ抱えたまま、サッと廊下へ――、
 足で種を取るから「足の勇」と言われる位の男で、用事がありさえすれば夜中だろうが朝だろうが、疾風つむじのように飛出すのが、この男の身上だったのです。
 取って二十七になったばかり、某大学を三年前に出て足で種を採るといっても、決して昔の探訪記者と一緒に見たわけではありません。

 足の勇が、渋谷の郊外の、小栗桂三郎の家へ着いたのは、それから三十分の後でした。
 家の中は深夜乍ら大変な騒ぎ――
 名刺を通して、「先刻さっき電話をかけた、関東新報の記者ですが――」と言うと、老人の江藤が出て来て、ぐ応接間へ通してくれました。
 あれからの出来事を手っ取り早く言えば、主人の小栗桂三郎は、矢張やっぱ離屋はなれの書斎の中で死んで居たのです。
「どうして新聞社の方へ先に判ったのでしょう」
 いくら報道機敏でも、家の者が知らずに居るのに、密閉した離屋はなれで主人が死んで居るのを、新聞社が先に嗅ぎ付けると言うのはあり得ないことです。
「子供の声で自働電話からかけて来たんです。それにしてもおかしいなア、兎に角離屋はなれを見せて下さい、まだ警官は来て居ないでしょう」
「え、ツイ十分ばかり前に掛り付けのお医者がおいで下すっていろいろ手当をして下さいましたが、亡くなってから一時間以上経つそうで、どうしてもいけません、ツイ今しがた警察へ電話を掛けたところですが、警官がお見えになるまでは――遠いところですから、まだ五分や十分はかかりましょう」
 顔馴染かおなじみの江藤老人は、顛倒したうちにも、斯んな事を言って、足の勇を離屋はなれへ案内してくれます。
 死んだ小栗桂三郎は一体変った生活様式が好きな男で、近頃は夫人の浪子と別れて女優上りの作家で、立花秀子という、有名な美人と親しくして居るという話でした。
 かなり広い家の中には、爺やの江藤老人夫妻と、書生の角木つのきと、女中が二人、いつも外でばかり暮らすような男ですから、これだけの奉公人は、大した仕事もなく、銘々の内職をし乍ら給料を貰って居る有様でした。
 小栗自身は、家に居る時は大抵離室はなれの書斎で、書き物や、考え事のある時は、呼鈴ベルを鳴らさなければ、一歩も入ってはいけないことにされて居ります。寝室は母屋の二階ですが、この新しい贅沢ぜいたく離屋はなれが、余程気に入ったものと見えて、原稿の忙しい時などは、長椅子の上で一と晩過すことも珍らしくはありません。
 小栗のこんな習慣は、江藤老人からも聴きましたが、一面識のある足の勇も、おぼ乍ら知らないではありません。
 内廊下が尽きると離屋はなれの入口で、樫の大戸が、どんな事をして打ち破ったものか、滅茶滅茶に叩きこわされ、中には、急いでやって来たらしい和服着流し姿の中年の医者が、係官の来るのを待つともなく、少し職業的な冷たさを装って、小栗桂三郎の死体を護って居ります。
「旦那様が御存じの新聞の方で御座います」
 江藤老人に紹介されて、二人は目礼を交しました。佐伯という内科の博士で、町医者乍ら、界隈かいわいで鳴らした人です。
「僕は新報の早坂という者です。小栗さんが自殺をしたという誰が掛けたかわからない電話を受けて驚いて飛んで来たんですが、本当に自殺したのでしょうか」
「さア、判然はっきりしたことは、解剖しなければわかりませんが、自殺とでも思わなければ説明のしようがありません」
「とおっしゃると」
「いずれ、もう警察医の方が来るでしょうから、立会で診た上発表しますが、――密閉された部屋で人が死んで居て、それが、炭酸瓦斯がす中毒か、青酸中毒の徴候を現わして居るとしたら――自殺と言っても差支さしつかえはあるまいと思います。この部屋は御覧の通り電熱があるだけで、瓦斯がすも石油も使いませんから炭酸瓦斯がす中毒とは思われないのです」
 佐伯博士は、立って、安楽椅子の上に楽々と掛けた形になって居る、小粟桂三郎の死体の顔から、手巾ハンケチを取って見せました。
 小肥りの小栗桂三郎の顔は、全く生きて居る時の儘で、美しい血色までが少しの変りもありません。
「この美しい血色が問題です。炭酸瓦斯がす中毒か、青酸中毒でなければ、二時間以上も経った死体が、こんな色をして居る筈がありません」
「二時間以上?」
「そうです、小栗さんは十一時前に亡くなって居たのです」
「――――」
「それに、口のあたりに、猛烈な巴丹杏はたんきょうの匂いが残って居ります。これは小栗さんは、かなり多量の青酸をんだ証拠です」
「成程」
 足の勇は、腑に落ちないことばかりですが、専門家がこれだけ確言するのですから、疑問を挟む余地もありません。
 へやの中は少しも取り乱した様子はありません。窓はことごとく閉め切って、内側からさし込みで留めた上、厚い窓掛を念入に引いてありますし、チークの大テーブルの上も、波斯ペルシャ模様の絨毯じゅうたんの上も、日本語とフランス語の本が一杯に取り散らばしてありますが、それも一種のリズムと人格のある散らかしようで、決して主人公以外の者の掻き乱したものではありません。
 テイブル抽斗ひきだしはたった一つ開いて居りますが、中には大した重要なものが無く、これも取乱した様子を見出すほどではありません。卓上のスタンドは消したままで、天井から下った切子硝子カッティング飾電灯シャンデリヤが、書斎と言うよりは、むしろ客間と言うに相応ふさわしく、華やかに四方を照して居ります。
 その中に、桜の大本箱が一つ、電気蓄音機のかなり贅沢なのと、レコードキャビネットが一つ、書物卓の外に、茶卓が一つと、ベッド兼用になりそうな長椅子が一つ、安楽椅子が二つ、小椅子が二つ、その安楽椅子の一つの上に、主人公の小粟桂三郎は、何んの苦悩の跡もなく、爛酔らんすいして眠った人のように死んで居たのです。
 茶卓の上には卓上点火器ライターを兼ねた灰皿が一つだけ、その側に行儀よくパイプが置いてありますが、主人の小栗以外に煙草たばこった形跡もなく、部屋の隅の三角棚には、ウイスキーのセットとベルモットのビンが置いてありますが、これも飲んだ様子はありません。
 入口は廊下に面した――江藤と角木が二人がかりで打ち破った――の外にもう一つ、直接庭の方へ開くがありますが、これも厳重に鍵を掛けてあります。
 鍵は二つ共テーブルの鍵や何んかと一緒に小栗桂三郎の死体のチョッキのかくしに入って居ります。
「この鍵は一つ切りじゃ無いでしょう」
 足の勇は斯う言い乍ら江藤老人を振り返りました。
「一つだけしかありません、旦那様は御存じの通りの御気性で、黙って書斎へ入るのを、大変お嫌いで、鍵は御自分で持って居らっしゃるのだけしか御座いません。用事があると、外からノックして、開けて頂くようにして居りました」
 他殺らしい疑は、これで全部消えてしまいました。併し、足の勇には、相変らず腑に落ちないものがあります。
 そのうちに所轄署から係りの警部が警察医と一緒にやって来ました。
 午前一時、――足の勇は市内の最終版へ間に合うように、編輯局で首を長くして待って居る筈の千種十次郎へ電話をかけなければなりません。

 小説家小栗桂三郎の死は、翌朝の関東新報の特種になりました。一流の花形作家で、恋愛狩人ラブハンターとして有名だった小栗の死は、近頃閑散で苦しんだ新聞の社会部を賑わしたことは言うまでもありません。
 死んでから早坂勇へ掛った電話は相当重要に見られ、当の早坂勇は一応喚問を受けましたが、多分奇癖の多かった小栗桂三郎が、死ぬ前から計画して、何処どこかの子供に電話を掛けさしたのだろうと言うことに決定しました。実際そう考えるより外に、解釈の下しようが無かったのです。小栗桂三郎の死んだ推定時間は十時から十時三十分までの間で、関東新報へ電話の掛ったのは十一時半、早坂勇が小栗邸へ駆け付けたのは十二時――この時間は、五分とも間違いありません。
 それに、青酸のような匂いの強い猛毒を、黙って呑まされる筈もなく、し又ウイスキーや水の中へ入れて飲まされたとしたら、其処そこに青酸臭いコップとか、何んとかが残って居なければなりません。部屋は文字通り内から密閉されて居たのですから、毒を飲んだ後で、コップを持ち去ることなどは到底考えられなかったのです。
 もっとも、自殺にしても、青酸を入れたコップとかビンとかが無いのは可怪おかしいとも言うことが出来ます。この問題はかなり係官を悩ませましたが、結局、切手の裏へ塗った青酸をめてさえ死んだ例がある位だから、多分、何んか、気の付かない物に塗るかどうかして、持って居たのだろう――と言った、アヤフヤなことで片付けられてしまいました。
 解剖の結果かなり、多量の青酸が、死体の口中と胃の中から検出されましたが、それにしたところで、自殺説を引繰ひっくり返すほどの結果にはなりません。
 別居して居る夫人の浪子と、懇意な立花秀子も一応は取調べられましたが、どちらも上等過ぎるほどの不在証明アリバイを持って居る為に、告発することなどは思いもよらなかったのです。
 里方に引取られた浪子は、薄情な夫、小栗桂三郎を怨み抜いて居りましたし、家もそんなに遠くはありませんが、何分ひどいヒステリーで、その晩は特に発作が猛烈だったので、年取った母親が、一刻も目を離さなかったと証言して居ります。
 立花秀子の方は、これも渋谷の終点近い有名なアパートで隣室に居る女流詩人のかなえ咲子と十時過ぎまでお茶を飲んで無駄っ話をして、それから自分の部屋へ帰って、締切に追っ立てられて居る原稿を書いて、十二時近くなってから、お隣りの鼎女史と「お休み」を交換して寝台ベッドに入ったと言うのです。
 二人の笑い声は、廊下まで聞えて居りましたし、立花咲子がそれからズーッと原稿を書いて居たらしいことは、逆上性のぼせしょうで、冬も半分は窓を開けて置くので、鍵の手になった建物の向う側からも、よく見えて居りました。
 その外、文壇的にも敵の無い小栗桂三郎の書斎へ、けむりの如く潜入して、青酸を口の中へ流し込む者があろうとは思われません。いろいろ不都合なことがあるにもかかわらず、小栗桂三郎は自殺して果てたと、警察も世間も信じ切ってしまうのも無理のないことでした。
 大きい遺産は、別居して居ると言っても、まだ離婚の手続をんで居ない、夫人の浪子のところへ転げ込むでしょう。
 その中で、たった一人、小栗桂三郎の自殺説を信じない者がありました。それは関東新報の社会部長千種十次郎で、小栗と友人関係でその性格やら人生観やらをよく知って居たせいもあるでしょうが、一つは新聞記者の本能で、何んかしら腑に落ちないところのあるのを隠そうともしませんでした。
「勇、君はう思う?」
「何を」
「小粟桂三郎の一件だよ、君はあの発表を少しも疑わずに信ずることが出来るか」
 到頭堪兼たまりかねて、足の勇にチョッカイを出したのは、それから又五日目でした。
「と言うと?」
「俺はどうしても小栗を自殺だとは思わないよ、あれはキット人に殺されたんだ」
う言うわけだ、兄貴、少し詳しく話してくれ、俺も腑に落ちないことがあるが、口へ出してハッキリ言うほど、考がまとまってない」
「御同様だかね、勇、第一小栗は有名な楽天家で、野心家で、自殺などする男じゃない」
「――――」
「その上、金もふんだんにあるし、一流の作家だし、しななければならぬ理由が何処どこにあるんだ」
「無い」
「それから、青酸中毒で死んだと言うのに、青酸のビンもコップも無かったと言うじゃ無いか――」
「その通りだ、それが一番不思議だ」
「まだあるよ、自殺を予告すると言う話は聞いたことがあるが、自殺してから新聞社へ電話をかけさせると言うのは例の無いことだ。死んだのは遅くとも十一時で、電話を受けたのは市内版の最初の締切間際だったから、どうしても十一時半だ――」
「――――」
「もう一つ、小栗が死ぬ前に人に頼んで置いて、死んでから電話をかけさせることがあり得るとしても、君を名指して呼んだのはう言うわけだ、――僕が取次ぐと、子供の声で、早坂勇さんに電話口へ出て下さい――と判然はっきり言ったよ」
「――――」
「君は一二度逢っただけで、小栗をよく知って居ないと言ったが、僕は学生時代からの友達だ、小栗は自分の死を関東新報の特種にさせる積りで、誰かに頼んで電話を掛けさせたにしても、呼出すのは早坂勇なる君ではなくて、この千種十次郎でなければならぬ筈だネ、勇そうじゃ無いか」
「うまい、兄貴、御明察だ、関東新報の社会部を背負って立つほどの事はある」
おだてちゃいけない」
其処そこまで判って居るなら、なぜ恐れ乍らとやらかさないんだ、警視庁の花房はなぶさ一郎は、君の友人じゃないか」
「話したよ花房へ」
「ヘエ――、したら、何んと言った」
「一応理窟はあるが、所轄署の意見を覆えすほどの証拠が無い、警視庁から手を入れる為には、もう少し動きの取れぬ証拠でも無ければと――言うんだ」
「つまらない遠慮だね」
「で、僕は警察の手を借りずに、もう少し突っ込んで探して見度いと思うんだ、一つは友人のうらみを晴らす為に、一つは、素晴らしい特種を一つ取る為に――」
「素敵だね」
「勇、一と肌脱いでくれるか」
「やろう、是非一と役買わしてくれ」
「よし、それで話が決った。会わせる者がある、一寸ちょっと応接間へ行ってくれ」

 薄暗い応接間には、十四五の少年が一人、借りて来た猫の子のように、隅っこの方に立って居りました。
今朝けさの新聞を見て来たというのは君だね」
 と千種、少し職業的ですが、人をらさぬ調子で話しかけると、
「え」
 少年はおどおどした調子で千種十次郎と足の勇を、二人の巨人のように見上げました。
「少しも怖がることは無い、知ってるだけの事を皆んな話してくれさえすれば」
「…………」
 千種は少年を促して、向い合って椅子を引寄せました。
「詳しく話して御覧」
「あの――、今朝、売物の新聞を読むと、小栗と言う人の遺産の事を書いたあとに、あの晩、頼まれて新聞社へ電話を掛けた人が名乗って出たら、お礼をやるとありましたが、本当でしょうか」
「本当とも、さア、金はこの通り用意してある、何んでも洗いざらい皆んな話してくれ、君はあの晩電話を掛けた本人かい」
 千種は紙入から紙幣を何枚か抜出して、少年の前へ置きました。
 あれから電話局へ何遍か問い合せましたが、渋谷駅前の自働電話から、関東新報の編輯局へ掛けたことだけは解りましたが、それ以上はどうしても解らなかったので、到頭今日の朝刊に広告を出す段取になったことは、側で黙って聞いて居る早坂勇も大方知って居ります。「兄貴は愈々いよいよ本気だな――」そう思うと、一と掴みほどの汚い少年の前に居る足の勇も、何んとなく武者顫むしゃぶるいらしいものを感ずるのでした。
「そうです、僕なんです――、あの晩は寒い晩で新聞の売れが悪かったんで、十一時半頃までかかって、漸く籠を空けて帰ろうとすると、女の人が僕を呼び止めたんです」
「女」
 足の勇の声が大きくなると、少年は少し脅えたように口をつぐみましたが、
「それからうしたんだ――」
 千種十次郎は、さり気なく次の言葉を引出し乍ら、足の勇の軽率な態度に一瞥いちべつをくれました。
「え、女でした、若い綺麗な女の人でした」
「和服か、洋服か」
「和服です、狐色の毛皮の襟巻で、始終顔を半分隠すようにして居ました」
「…………」
 十次郎と勇は顔を見合せました。和服で毛皮の襟巻というとどうやら別れた夫人の浪子の匂いがします。立花秀子は洋装一点張で、和服と言うものを着た例が無く、それが又自慢の一つでもあったのです。
「毛皮の襟巻で顔を隠して居るのに、うして、若いとか、綺麗とか言うことが解ったんだ」と千種十次郎。
「僕に、電話を掛けさして居る時、横のガラス窓の外から見て居ましたが、その時、何にかの弾みで襟巻が外れたんです」
「どんな顔をして居た」
「眼の大きい、眉の濃いそれでも綺麗でした」
「よしよし大抵分った。で、電話を何んと掛けたか知ってるだろう」
「よく知ってます。関東新報の編輯へかけて早坂勇と言う方を呼出して、――小説家の小栗桂三郎が自殺した、特種だから、貴方あなたの手柄にするように――と言い付けられたんです」
 少年は大分応接間の空気に慣れて、うやらうやら、これだけの事を報告しました。
「それで結構、さア、お礼の百円だ、受取ってくれ――でもう一つ二つ聞くが、電話の後で、その女の人からお礼を貰ったろうネ」
「え、百円札が一枚」
「それから着物の柄を覚えて居るか」
「よく知ってます」
「どんな着物だ」
「黒いピカピカしたコートでした」
「草履か下駄か」
「靴です」
「よし、もう沢山たくさんだ」
 千種十次郎に斯う言われるとお礼の紙幣を引っ掴むように、少年は応接間を飛出しました。
「矢張り浪子夫人だ」
 と足の勇。
「いや、そう簡単には行かんぞ」
「どうして? あの顔や、様子は、浪子夫人そっくりじゃないか、浪子夫人が離屋はなれへ忍び込んで、うたた寝をして居る夫の口へ青酸をたらし込んで、鍵をかけて飛出して、渋谷の駅前で、夕刊売の少年に、此社へ電話をかけさしたとしたらどうだ」
 足の勇は日頃にも無い雄弁にまくし立てます。
「いや、浪子夫人は、夫を殺した後で、何んの為に電話をかける必要があるんだ、しかも、一二度しか逢った事の無い君にだよ」
「――――」
「それに、十四や十五の少年が、あんなにはっきり女の顔を記憶して居るのもおかしいし、十一時過ぎの往来で逢った人間の、着て居たコートや、履物まで記憶して居るのは少し変じゃないかネ、何より、今時、昔の女学生じゃあるまいし、和服に靴を穿いて居る女というのが奇抜だよ」
「そう言えばそうだが、その時漫然と見て居ても、あとで事件が大きくなったんで、淡い記憶がはっきり焼き付けられたんじゃ無いか」
「さア」
 二人は黙りこくって考込みました。
「もう一度あの夕刊売の少年に逢って見よう、住所は判ってるネ」と足の勇。
「書き留めてあるよ」
「それじゃ、追っ駆けて行って、今度は浪子夫人と立花秀子を一緒に訪ねて、首実検をさせようじゃないか」
「それもよかろう」
 二人は自動車を飛ばして、夕刊売少年の住所を探しましたが、千種十次郎に教えて行った、青山穏田のその番地は、大きい邸宅ばかりで、夕刊売などをやる少年の住んで居そうな場所ではありません。
「しまったッ、あの時警視庁の花房一郎君にでもそう言って、本職に聞かせるんだった」
 と言ったところで追っ付きません。
「あれは皆んな出鱈目でたらめか」
「容易ならぬ相手だ、勇、一と奮発する気は無いか」
おおいにやろう」
「僕は浪子夫人の方を探って見るから、君は立花秀子の方へ接近して見たらどうだ。僕は小栗の関係で、浪子夫人は表面からよく知って居るが、立花秀子は女優時代の関係で君の方が懇意だろう」
「そう言えばそうだ」
「立花秀子はあれでも職業婦人だから、昼は大抵『愛の友社』に居るだろう」
「行こうよ、勇」

 二人が有名な「愛の友社」へ行ったのは、昼を少し過ぎて居ました。昼食をすませた連中は大抵出かけた後ですが「愛の友社」に籍を置く立花秀子は、隅っこの椅子でお茶を啜って居りました。
「立花さん、しばらく」とり気なく千種十次郎。
「あっ、千種さん、早坂さんも御一緒」
「この間は嫌なことでしたネ」
「え、全く嫌になって仕舞いましたワ、小栗さんが自殺したからって、私まで引合に出さなくてもいいでしょう。私と小栗と何んの関係があるものですか」
「全く、災難でしたね、まア過ぎた事だ、あきらめが肝心ですよ。ところで立花さん、今日は付合って頂けませんかしら?」
「え、招ばれて上げてもいワ、だけど、何んにも食べられはしませんよ」
「まだ胸が一杯でしょう――」
「あら、千種さん、そんな事を言っちゃイヤ、ね早坂さん」
「僕の腹なら空っぽですよ」
「マア、何んて間抜けな調子でしょう。だけど、私は、早坂さんのその生一本きいっぽんなところが好きよ」
 立花秀子は、そう言い乍ら、二人の中へ席を移しました。
 薄い白粉おしろい、濃い口紅、公卿様のような、濃い太い眉の下に、深い瞳が媚を含んで、頬から頸へかけての曲線などは、何んとも言えない魅惑です。
 黒以外の色を忘れてしまったと言ったような洋服、華奢きゃしゃな脚を重ねると、身体からだが不安定になって、柔かいひじがゆらりゆらりと、足の勇に触れます。
「立花さん、勇の野郎が、近頃恋患いをして居るんです」
「あら古風ねえ、相手は?」
「言おうか勇」
「止せやい兄貴」
 足の勇はすっかり赤くなってしまいました。
きまり悪がる柄かよ、勇」と千種。
「可哀そうにすっかり憂鬱になって居らっしゃるじゃありませんか」
「勇が恋患いをしたんだから、年代記ものですよ。此間っからすっかり音痴メンタルになって居るから、うしたのかって訊くと――」
「何んです、その音痴メンタルと言うのは?」
「センチメンタル見たいなものですが、勇のは少し馬鹿気て居るから音痴メンタルで――」
「まア」
「訊問に及ぶと、白状しましたよ」
「何んて――」
貴方あんたに逢い度いって」
「あら」
「立花秀子さんに逢いたいなんて、身の程を知らない野郎でしょう、駆け出しの新聞記者のくせに」
「そんな事無いワ、ねえ早坂さん」
もっとも、これでも文学士なんで、学問よりはラグビーの方が出来がよかったが、そんなに三下でもありません。まア、時々呼んで可愛がってやって下さい。当人は中世紀のナイトのような気で居るんですから、発奮の足しになりますよ」
「あら、本当なの早坂さん、嬉しいワねえ。私は世間から阿婆摺あばずれのように思われて居るけれど、これでも小娘のように純潔よ、お友達になりましょうね、ネ、ネ」
 美しい立花秀子は、手袋をった滑らかな両手を、足の勇の七つ下りのズボンの上にかけて、斯う揺ぶり加減に、照れ切って居る勇の顔を、覗き上げました。
「弱ったなア」
「弱ることなんか無いワ。貴方あなたはもう私の愛人アミよ誰が何んと言っても」
「驚いたなア」
 足の勇は全く面喰ってしまいました。天下に聞えた美人で、才女で、しかも大年増の妖艶な女から、こんな調子で話しかけられようとは予期もしなかったのです。
「じゃ、僕は失敬する、仲人は宵のうちさ、頼むぜ勇」
 何方どっちの意味にも採れるような言葉を残して、千種十次郎はサッと立ち上りました。
「待ってくれ兄貴、約束が違う」
「馬鹿だなお前は、約束は立花さんとするがい、左様なら」
 千種十次郎はそう言って午後の街の陽の中へ飛出しました。後に残った二人、足の勇と立花秀子は、隅っこの椅子に二羽の小鳥のように寄り添って、照れ臭く顔を見合せて居りました。

 それから又十日ばかり経ちました。
 足の勇はすっかり立花秀子のアパートに入り浸って、ろくに社へも出ないようになってしまいました。
 初めは、千種十次郎に言い含められて、小栗桂三郎の死因を探る為に入り込んだ筈でしたが、何時いつの間にやら、秀子の取なしと美色にとらえられてしまったのでした。
 秀子は、何んとか世間から噂されて居りますが、男性に取っては全く魅力そのものでした。趣味が精練されて、性格はかなり知識的で、作家としても一風を打ち建てて居りましたが、それよりも素晴らしいのは、この女の持って居る肉体の価値です。
「勇さん、貴方あなたは私を探偵する積りだったんでしょう。何んてお馬鹿さんでしょう。私が小栗を殺したとでも思って、ホ、ホ」
 高笑いを転がされると、足の勇の持って居た疑いなどは、煙のように吹き飛ばされてしまいます。
「私は、貴方あなたが好きだったの、本当よ、嘘なもんですか。女優時代にチョイチョイお目にかかったでしょう。貴方あなたの頑固な武骨な新米記者振りが、とてもよかったワ」
「…………」
「白状すると、貴方あなたが大学に居て、ラグビーの選手をやってる頃から好きだったのよ。随分執念深いでしょう、――小栗なんか、冗談でしょう、あんな嫌な男って無かったワ、私大嫌い」
 そんな事も言いました。
 玉虫色の笠にされて来る、言いようの無い美しい光の中に秀子は足の勇と並んで、長椅子の上へ深々と坐って居るのでした。
 逆上性のぼせしょうの秀子も、近頃は窓を閉めて、カーテンを引いてばかり居ります。お隣の部屋の鼎咲子はさすがに当てられ気味で、時々大きい音をさせたり、気取った咳などをしますが、秀子は西洋人のように、美しい肩をゆすって、微笑をするだけでした。
 併し、この交際も長くは続きませんでした。ある晩訪ねて行った勇は、秀子の化粧卓の抽出ひきだしの中から、青酸の空ビンと、大きい西洋鍵を見付けてしまったのです。
 勇は本能的に、この二品を取上げると、ギョッと四方あたりを眺めました。幸い誰も居ません。手早くズボンのかくしにねじ込んで、酔っ払ったようにフラフラと起ち上ると、
「随分変ネ、お隣の鼎さんよ、あんなに親しくして居たのに近頃は私と口も利かないワ、妬いてるんだワ」
 そう言い乍ら、顔を洗ったばかりの、健康な顔をした秀子が入って来ました。
「あら、どうかなすったの勇さん、変な顔色よ」
「どうもしない」
何処どこかへお出かけ?」
一寸ちょっと社へ行って来る、あんまり休むから」
いじゃありませんか首になったらそれまでよ」
「そうも言っちゃ居られない」
 勇は渋谷の往来へ、鉄砲玉のように飛出してしまいました。
 行く先は、言う迄もなく小栗桂三郎の死んだ家。まだ未亡人の浪子は入らず、江藤老人夫婦が留守をして居るだけですから、見せて貰うにも手数が掛りません。
「江藤さん、一寸ちょっと離屋はなれを見せて下さい、少し調べ度いことがあるんだが――」
「早坂さんでしたか、どうぞ」
 何んのわだかまりもありません。
 庭から廻って、離屋はなれの外側の厳重なの鍵穴へ、秀子の化粧卓から持って来た鍵を差し込むと、何んの苦もなくスルリと入って、廻せばは滑らかに開きます。
「あッ、早坂さん、何処どこからその鍵を手に入れました」
 廊下伝いに離屋はなれへ入った江藤老人が、バアと顔を出します。
「いや、何」
 足の勇がどんなに蒼かったことでしょう。
 その晩遅く。
 いつものように、長椅子の上に並んで掛けた勇は、恐ろしい疑惑にとらえられ乍らも、切り出し兼ねてワクワクして居りました。
「どうなすったの? 悪い顔色よ」
 秀子は若い蔓草のような腕を伸べて勇の首にからみ付こうとしました。
 真珠色のスタンドから射す光は、この情景シーンをすっかり劇的に照して居ります。
「秀子さん、もう僕は斯うしちゃ居られない、今晩こそ、何もも言ってしまいましょう」
うしたの、まア、大変な亢奮こうふんよ、貴方あなたは」
「僕には、こんな生活を何時いつまでも続けちゃ居られないわけがあるんだ。秀子さん、これを見て下さい」
「あッ」
 秀子が驚いて飛退とびのきました。勇がズボンのかくしから掴み出して、茶卓の上へ置いたのは、黒いラベルを貼った青酸のビンと、銀色の光に西洋鍵が一つ。
「これはうしたんです秀子さん、――それはかりじゃ無い、僕はこの鍵が小栗の離屋はなれにピタリと合うのを見定めて帰って来ると、此アパートの入口で、貴方あなたがあの新聞売とか言った少年と話して居るのを見たんです。秀子さん、斯うなってはもう、何も彼もお仕舞いだ。――サア秀子さん、何んとか言って下さい、弁解があるなら、せめて、僕はその弁解でもいいから聴き度い」
 勇は秀子の豊満な腕をつかんで、母親に物を強請ねだる子のように打ち振りました。秀子はそうされ乍らも、小娘のように、シクシクと泣いて居たのです。あの勝気の秀子が――
「勇さん、何も彼もお仕舞いねえ、私はもう隠しもうもしない、そのビンと鍵は一体何処どこから手に入れなすったの?」
「この化粧卓の抽出ひきだしから」
「ああ、矢張りあの女だ」
「あの女と言うと?」
「勇さん、小栗を殺したのは私よ、確かに私に相違ないワ。だけど、これにはわけがあるワ、――あの小栗と言う奴は、そりゃ悪人よ、私の昔の過失あやまちを知って居て、それを世の中に発表しそうにしておどかして居たんだワ。世間では、私とあの男と関係があったように言うけれどそれは真赤な嘘よ」
「えッ」
「みんな小栗の細工だワ、そして私の名誉をメチャメチャにして自分の思う通りにしようとしたんだワ」
「だけど、たった一度私はあの男に接吻キッスを許したわ、あの晩」
「えッ」
「そうするより外に仕方が無かったんだワ、御覧なさいなこんな、具合に――」
 秀子はその熱を帯びた美しい唇を持って来て、勇の唇を追いました。物悲しい眼を一パイに見開いて。
 プーンと女の口から巴丹杏はたんきょうの匂い、――
「小栗は夢中になって、カプセルに入った青酸を、私の口から吸い取ってしまっただけの事よ、だけど、勇さんには、このカプセルはやらないわ」
「あッ、秀子さん、それを呑んじゃ、それを」
「左様なら――」
 あッと言う間もありませんでした。
 秀子はその儘長椅子にもたれて倒れて、ヒクヒクと恐ろしい痙攣けいれんが全身を走ります。

 立花秀子は、小栗に脅迫されて、危うく貞操を奪われそうになった時、フト手に入れた青酸を二重のカプセルに入れてその上を厳重に密封したのを、接吻にことよせて口移しにしてしまったのでした。
 人を毒殺する者は、必ず自分の為にも一服は用意すると言われて居ります。立花秀子ももう一つ用意して居たカプセルを含んで、自分から勇の腕の中に死んでしまいました。
 離屋はなれの鍵は小栗がひそかに造って、秀子に与えたもの、ビンと一緒にその晩のうちに捨てる筈のを、さすがにあわてて果さなかったのです。
 その後刑事につけられて居る事を知って持出して捨てることもならず、アパートの物置に隠して置いたのですが、隣室の鼎咲子が、勇と秀子の猛烈な恋にごうを煮やして、老嬢オールドミスの岡焼半分に、その二品を取出して、勇の発見するような場所へそっと移したのでした。
 秀子は全く勇を慕って居りました。
 少年を買収して電話をかけさしたのは、勇に手柄をさせると共に、自分の溜飲を下げる為、言わば犯罪者の小さい虚栄心だったのです。
 何も彼も段落が付いてしまったから、千種十次郎は、足の勇をめる勇気もありませんでした。それほど勇は悄気しょげ返って居たのです。
 千種十次郎が夕刊売少年の話を聴いて、犯人は立花秀子ではないかと気が付いたのは、少年が電話を頼んだ女の顔や身なりをあまりによく知って居たのに疑を起したところへ「履物はきものは?」と訊かれた時「靴」と応えたので、一ぺんに覚ってしまいました。女が洋服で靴を穿いて居るのが記憶にあった為に、少年は不用意の間に、斯う言ってしまったのだと気が付いたのです。
 少年の言った人相や身扮みなりが浪子によく似て居たのは、聴く方の疑心暗鬼で、別に巧みのあったわけではありません。これは立花秀子がそれ程悪人ではなかったという証拠に、言い添えて置きます。





底本:「野村胡堂探偵小説全集」作品社
   2007(平成19)年4月15日第1刷発行
底本の親本:「踊る美人像」愛翠書房
   1949(昭和24)年2月
初出:「新青年」
   1932(昭和7)年2月
※初出時の表題は「最後の接吻」です。
※「離室はなれ」と「離屋はなれ」の混在は、底本通りです。
入力:門田裕志
校正:阿部哲也
2015年9月1日作成
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