大正文化概論

竹内浩三




序論


G線の下で
アリアをうたっていた
てるてる坊主が
雨にぬれていた

本論


交通が便利になって
文化はランジュクした
戦争に勝って
リキュウルをのんだ
はだかおどりの女のパンツは
日章旗であった
タケヒサ・ユメジが
みみかくしの詩をかいた
人は死ぬことを考えて
女とあそんだ
女とあそんで
昇天した
震災が起って
いく人もやけ死んだ
やけ死ななかったものは
たち上った
たち上った
たち上った
ボクらのニッポンは
強い国であった

結論


ダダがうなっていたけれども
プロがうなっていたけれども
エロがきしんでいたけれども
グロがきしんでいたけれども
芸術はタイハイしていたけれども
ぼくらはタイハイしていたけれども
ぼくらは
たち上った
たち上った





底本:「竹内浩三全作品集 日本が見えない 全1巻」藤原書店
   2001(平成13)年11月30日初版第1刷発行
   2002(平成14)年8月30日初版第5刷発行
入力:坂本真一
校正:雪森
2014年10月13日作成
青空文庫作成ファイル:
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