不可能
L'IMPOSSIBLE
エミイル・※[#濁点付き片仮名ヱ、1-7-84]ルハアレン Emile Verhaeren
上田敏訳
人よ、
攀ぢ
難いあの山がいかに高いとも、
飛躍の念さへ
切ならば、
恐れるなかれ不可能の、
金の
駿馬をせめたてよ。
登れなほ高く、なほ遠く。たとひ
賢しらに
なんぢが心、
山腹の
泉のそばを慕ふとも、
悦はすべて飛躍である。
途のなかばにとまる者は、やがて途に迷ふ。
かつは
苦みかつ悶え
錯ち
怒ることあつて
燃立つ心に命がある。
きのふの
目標、あすの日は
途の
障礙ぞ、
籠の戸いかに固いとも、
思想はたえず
相尅し
とはに盡きぬはその
饑渇。
變化あれよ、向上あれとは、この世の
大法、
不動の今がいかにして、
現世の
榮を引き
はす
大コムパスの支點となる。
過ぎし世の
智慧といふもの何の
益かある、
授くるものは
梭櫚の葉の
危なげも無い勝利のみ。
これを越えて飛べ、熱烈の夢。
人
苟も飛躍せば、たえず己に超越せよ。
われとおのれに驚けよ、
頭果してこの熱に、
堪へるか否かを問ふ勿れ。
不斷の
慾のたえまない人の心を、
攀ぢ
難い山の上から、ましぐらに、
未來めがけて不可能の、
金の
駿馬は
推し上げる。
●表記について
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