アムステルダムに金の雄鷄鳴けばハルレムに金の雌鷄卵を生む
ノストラダムス百首。
弗羅曼の畫風を
約めて一幅漫畫にしたやうなハルレム。ヤン・ブラアケル、ペエテル・ネエフ、ダ
ッド・テニイルス、パウル・レンブラントの畫によく出て來るハルレム。
堀割の水は青く搖すれ、
御堂の色硝子は金に耀き、ストゥウルといふ石造の張出に
干物は乾き、屋根の上には緑の
唐華草。
市廳の大時計のまはりに
羽搏する
鸛の鳥は頸を中天にさし延ばして雨の水玉を喙に受けてる。
二重
頤を撫でさすつて、さも屈託無ささうな市長殿。鬱金香を見詰めつつ、戀に身の細る花賣むすめ。
マンドリイヌの爪彈に浮かれ出すジプシイをんな。ロメルポットを
彈く老人。膀胱に息を入れてる子供。
薄暗い居酒屋の中で、酒盛の一座が煙草を喫んでる。旅籠屋の女中が雉子の死んだのを窓に吊してゐる。