粉雪の中で 四十雀が啼いてゐる 春が眞近にせまつてきた
谿間で風が鳴つてゐる 楢山毛欅櫟 それらの枯葉が 雪の上を走つてゐる
山山よ 裸の木木よ 樂しい冬も 間もなく冬も終るだらう
懷かしい私の友垣 風よ 雲よ 山山よ 私達の友情の さて 春の計畫 を考へよう
その昔 その山のその
電報も 牛の背中で運んできた
谿に臨んだ細路に のつと牝牛が顏を出す 午後二時三時
山では仔牛が待つてゐた 踏みしだかれた草の香の ほろほろ苦い牛小舍に
向ふの山で樹が伐られる ああまた一本倒された
微かな音も聞えない 小さな人が動いてゐる
たぶんあそこの
ヒュッテに煙がたつてゐる
油が盡きた ランプの焔が小さくなる
後ろの山で風が鳴る
やみなん
萬年筆のインクが