堺水族館の歌

安西冬衛




(一)


都の花に魁けて
春足日をけふこゝに
明粧成りし水族館
東洋一の水族館
堺水族館は開かれぬ

(二)


明治の帝行幸して
叡覧ありしあとゞころ
由緒も深き水族館
東洋一の水族館
堺水族館は開かれぬ

(三)


大魚小魚鰭の数
集めてこゝに海の幸
綾うるはしき水族館
東洋一の水族館
堺水族館は開かれぬ

(四)


造りなしたる海の宮
竜宮城もよそならず
雅び床しの水族館
東洋一の水族館
堺水族館は開かれぬ

(五)


水際にあそぶ魚類の
ゆきゝ妙なる舞の袖
眺め見飽かぬ水族館
東洋一の水族館
堺水族館は開かれぬ

(六)


けふしも和む春の色
げに長閑なる茅渟の浦
いざ来て見ませ水族館
東洋一の水族館
堺水族館は開かれぬ





底本:「ふるさと文学館 第三三巻 【大阪※(ローマ数字2、1-13-22)】」ぎょうせい
   1995(平成7)年8月15日初版発行
底本の親本:「安西冬衛全集 6」寶文館出版
   1984(昭和59)年
入力:大久保ゆう
校正:Juki
2016年3月4日作成
青空文庫作成ファイル:
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