千里眼の村

クリスマス・ストーリー

A. キングスフォード A. Kingsford

The Creative CAT 訳




 何年か前、クリスマスの前日か前々日のこと、仕事の都合でイギリスから大陸に出張する羽目になった。
 私はアメリカ人で、とあるロンドンの商社に小額ながら共同出資していた。この商社はスイスと多数の取引があり、その取引先の一つを監督するために――それがどこかを述べる必要はない――急遽みずから足を運ばなければならなくなった。本当なら友人たちとロンドンで年の瀬を祝っていたはずだったのだが。しかしこの旅は私にたいへん際立った種類の冒険を齎し、家で楽しいクリスマスを過ごせなかった埋め合わせとして十二分なものとなったのである。
 ドーヴァーからカレーまで渡ったのは夜だった。荒れた海峡は雪混じりで蒸気船の客はとても少なかった。船客の中に何というか尋常ではない感じの男がおり、私の興味を惹いた。カレーに到着し列車に乗り換えた際、私が先に腰を下ろしていたコンパートメントにその男が入ってきた時も、嫌な事態になったとは全然思わなかった。
 薄明かりの下でちらっと顔を見た限りでは、見知らぬ男は五十絡みだったと思う。繊細で上品な顔付きで、目は暗く落ち窪んでいたが、知性と思慮を漲らせていた。全体の雰囲気から、生まれが良く、勉学と瞑想向きの性格で、人生の中でとても悲しい経験をしてきたことが伺えた。
 アミアンまでは他に二名の乗客が同席していたが、彼らが下車してしまうと、コンパートメントの中は曰く有りげな異邦人と私の二人きりになった。
「嫌な夜ですね。」窓を引き上げながら話しかけた。「おまけに、これからもっと酷くなりますよ! いつも夜明け前が一番冷え込みますから。」
「そうでしょう。」彼は重々しい声で答えた。
 顔に劣らずその声は印象的だった。地味で控えめで、心に大きな痛みを抱えている者の声だった。
「パリの年末年始は荒れますよ。」話をさせたくて続けた。「去年の冬はロンドンより冷えました。」
「パリには泊まりません。」彼は答えた。「朝食をとるだけです。」
「そうですか、私も同じで、バーゼルまで行くところです。」
「私もそうですが、もっと遠くまで行きます。」
 こう言うと彼は窓の方を向いて黙ってしまった。この人物が寡黙なせいで、私は一層あれこれ気をめぐらし始めた。間違いなくこの人物には一つのロマンスがある。それがどんな性質のものか知りたい気持ちが強まっていった。パリでは別々に朝食をとったが、バーゼル行きの列車に乗るところを見届けて同じコンパートメントに飛び込んだ。汽車旅の最初のうちは二人共眠っていたが、スイス国境が近づくに連れ目が冴えて、ポツポツと言葉を交わすようになった。この旅仲間はバーゼルには一泊しかしないつもりらしかった。彼の目的地は更に遠くの山岳地帯で、普通の旅行者なら夏にしか訪れない場所だ。年末のこんな時期には通れないと思っている人もいるだろう。
 私は尋ねた。「お一人で? 向こうでは連れがいらっしゃらないのですか?」
「ガイドを頼みます。」彼はこう答えると、再び口を噤み思いに沈んだ。
 そこで、も一つ質問をしてやれ、という気になった。「どうやら――楽しいご用向きではなさそうですね?」
 彼は憂鬱そうな目でこちらを見、穏やかに尋ねてきた。「私が娯楽のために旅しているように見えますか?」
 非難された気がして急いで謝った。「失礼しました。口にすべきではない言葉でした。ですが、貴方のことがだいぶ気になってしまって、私でいいならどうか手助けさせてください。こんな年末に一人でアルプス地方に用事があるということですと――」
 気後れした私は言葉に詰まってしまった。彼の遠征には間違いなく何かロマンスが絡んでいると思うのだが、それを知りたくなるほど私は興味をかき立てられました、などとどうして口にすることができよう。そんな私の胸の内を見透かしたに違いない、彼は逆に質問してきた。「貴方は――バーゼルでお仕事を?」
「はい、バーゼルだけではありませんが。訛りで私の国籍が知れたと思います。アメリカの合資会社、フレッチャーブラザース・アンド・ロイ商会の仕事で出張してきました。うちのロンドン支店のことはご存じでしょう。ただ、バーゼルには二十四時間滞在すればいいだけなんです。その後はベルン、ジュネーヴと回るのですが、バーゼルの仕事が終わったらまずイギリスからの手紙を受け取ることになっていますので、何日かはフリーになりますね。」
「何日間ですか?」
「二十一日から二十六日までです。」
 彼はちょっとの間黙考した。旅行鞄からポルトフイユ財布を取り出し、財布から名刺を取り出して、私に手渡した。
「私の名前です。」手短に言った。
 私はちょっとした情報を受け取り、私も同様のものを返した。彼の名刺にはこうあった:

チャールズ・デニス・セント=オービン
ロンドン、グロブナー・スクエア シュルーズベリー、セント=オービンズ・コート

 私の名刺にはこうある:

フランク・ロイ
マーチャンツ・クラブ、ウェスタン・セントラル

「さてこれで知らぬ同士ではなくなりました。」私は言った。「いい加減な話ではなく、自由時間を使って貴方のお役にたちたいと思うのですが、お許しくださいますよね。」
「貴方はとても良い方だ、ロイさん。親切で、よそ者のことで興味深々、お国柄です。」当てこすりなのだろうか? 多分そう。だが彼の口調は大変礼儀正しかった。「私は孤独で不幸な男です。貴方のご親切を受ける前に、私の旅というのがどんなものか、お聞き願えますか? とても奇妙なものですよ。」
 声はしわがれ、なんとか絞り出しているのが明らかだった。私は是非にと懇願した。
 彼は言葉に迷いながらポツリポツリと語った。以下は私が聞いたその物語である。
 セント=オービン氏は男鰥だった。十二歳になる一人息子は、重症のチフス熱を患った結果、辛うじて命は取り留めたものの一年前から聾唖になってしまった。この夏、医師の勧めに従ってセント=オービン氏は息子を連れてスイスに向かった。アルプスの空気が、景色の変化が、運動が、旅の喜びが、我が子が正常なコンディションを取り戻すきっかけになるのではないかと期待して。ある日、父子はガイドを雇って山道を登った。一般的にそこは危険な経路だとは見なされていなかったが、頭上にそびえ周囲を取り巻く雪山の風景を見ようと少年が脇に逸れたところ、緩んだ岩の端を踏み抜いて渓谷に滑落してしまった。高さは大したことがなく、落ちたはずの地点は平らで、柔らかな草が茂っていたため、父親もガイドも初めのうちは少年の命や五体に重大な危機が迫っているとは思っていなかった。打ち身くらいはしたかもしれないし、もしかすると切り傷や手首の捻挫のせいで二、三日動けないかもしれないが、精々そんなところだろう。二人は滑りやすくなっている地面に足を取られないよう注意しながら、うねうねとした道を急いで原っぱまで降りた。ところが、降りてみると少年の姿はどこにもなかった。憔悴しながら何時間も探したのだが、影も形も音もなく、手がかりは一つも見つからなかった。ガイドが大声で少年を呼んだが、その声が届いたとしても、いや間違いなく届いていたはずなのだが、それを聞くための耳は、死体のそれ並に役に立たなかったのだ。滑落の結果動けなくなり姿を現わせなくても、一声叫べば居場所がわかったのだが、少年にはそれもできなかった。病気が彼の舌と耳を封印し、仮に小声だけは出せたとして、谷を吹き渡る風音に邪魔されてしまったのだ。夜が訪れ捜索は一旦中止となった。夜が明けたら最寄りの村から人を呼んでもう一度探そう。最近この村に来た人たちの中には、その原っぱに降りる斜面には洞窟があり、少年はそこに落ち込んだのだろうと言う者がいた。早速調べてみた。明らかに小さな洞窟で、数頭のヤギが休んでいたが、少年が落ちた痕跡は見つからなかった。必死になって何日も探しまわったものの、すべての希望が潰えた。失意の父親はイギリスに帰って息子の喪に服すことになり、アルプスの山岳遭難年鑑はここに新たな名前を加えたのである。
 これはロマンスどころではない、ひどく悲惨な話だ。私は語り手の手を握り、大変でしたね、と暖かい声で言って、なるべく好奇心をむき出しにしないよう注意しながらこう付け加えた――:
「それで、アルプスに戻られる目的は、ええと――その――不幸な現場のそばに居たいということだけなのでしょうか?」
「違います、ロイさん、旅の動機はそれではありません。私は、皆が言うように息子の死体が平原の草葉の陰に転がっているとか、谷川に流されてしまったとか、信じていないのです。下流の河床なら何キロメートルも探ってみましたよ。それだけではなく、息子は滑落時に水筒を肩に掛け、毛皮の裏打ちのある厚い袖なし外套を羽織っていました――高地は寒いだろうと思っていましたから、それなりの装備をしていたのです――そういった身の回り品が何一つ見つかっていません。谷川に落ちたのなら、流れに揉まれて衣服が剥がれるでしょうし、それがいくらでもある浅瀬の岩に引っ掛からないなどということはあり得ません。ところが実際には一つも発見されていないのです。私が希望を抱いている理由はもう一つあります。」彼は身を乗り出し、断固とした口調でゆっくりとこう付け加えた:「私は息子が生きていると確信しています。それは――息子を見かけたからです。」
「お子さんをご覧になった!」私は叫んだ。
「はい、何度も何度も――夢で。いつも同じやりかたで、同じ外見で。私の前に立って手招きします。助けに来てくれ、という仕草をしながら。それが一度や二度ではありません、毎夜毎夜同じ夢を繰り返し見るのです!」
 哀れなる父親よ! 哀れなる孤独者よ! 悲嘆のせいで取り乱すのも、愛と切望の影に惑わされるのも、今に始まった事ではないのだ。
「夢まぼろしに騙されているのだとお考えですね。」私の顔を見ながら言った。「そういう貴方こそが今日こんにちの科学バカのせいで誤解させられているのですよ。その手の賢者ぶった連中は、魂が魂に語りかけるのを見るといつでも、『人間に成し遂げ得る至聖の霊的交感は器質的病変の結果である』などと信じさせたがります! 荒っぽい言葉遣いをご寛恕ください。もし私同様に、愛した者を――妻と子を――失ったなら、貴方にも判っていただけるでしょう、こういった今時の教師たちの冷酷でぞっとするような教条にどれ程の恥辱と怒りを覚えるか。これら教条はより高い生命を目指す人類の希望と切望の全てに嘘をつくだけではありません、低位の存在から高位の存在への進歩という彼ら自身の哲学の基盤にも、魂と愛の獲得こそ必須だという観念にも背いているのです! 進化というものは完成無欠になりうるという可能性を暗黙の前提としていて、そのためには意識して目的に合わせた達成手段を用いていかねばなりません。そして願いなしには理想そのものも理想を目指す努力もあり得ず、願いは愛であり、その座は自分の内面であり生ける魂――つまり外面を形作る造形者なのです!」
 今や彼は憂鬱から立ち直り、立て板に水で熱弁を振るっていた。その声が再び沈んだ時、私は彼を元気づけるために自分自身の哲学的な信念や、彼が問題としているらしい論点の健全さといった話を持ちだした。すると彼は真剣にこう続けた:――
「息子を見かけたことがあり、生きているのを知っていると申しました――墓場の彼方の遠い世界ではなく、この地球上で、生者の間に! 息子を見失って以来、私は二度ヴィジョンに導かれてこちらに戻り、息子を探しましたが見つかりませんでした。イギリスの家に帰ってまた同じ夢を見たものです。ところが――つい先週――素晴らしい話を聞いたのです。私の友人に大層な旅行家がいて、南方を巡る長旅からちょうど帰ってきたところでした。彼とクラブで会ったのですが、ものを考えない人たちなら『偶然に』と言うでしょうね。彼によると、スイス・アルプスの山懐に、一つの小さな村が常人の目から隠れてひっそりと埋もれているというのです。その村の住人は、大なり小なり、値段のつけようのないほど驚異的な力を持っています。殆どの村民が互いに姻戚関係にあって、大昔から一つの家名を引き継いでいるか、その分家に当たっています。この共同体の元を作ったのは一人の盲人で、不思議な幸運によって『第二の視力』ないしは千里眼と呼ばれる心霊能力を得るか、あるいは授けられるかしました。この能力は今では全村民に遺伝しているようですが、それでも遠い親戚よりも直系の子孫の方が強い力を持っています。妙な話ですが、この能力を発揮できるのは一年に一度、クリスマスイヴの時だけで、それにはこの能力が獲得された時の事情が絡んでいます。私にはよく判っているのですよ、」セント=オービン氏は続けた「貴方の肚の裡が。貴方は間違いなく、その話をした人物は信じやすい私をからかっていたのだとか、仮にそんなアルプスの村民が実在するとしても、千里眼などではなく、好奇心に駆られた馬鹿相手に商売をしている山師なのだとか、あるいは話全体が夢見がちな私の脳が生み出したキメラに過ぎないとさえおっしゃりたいのでしょう。私はそれでも構いません。これらの説のどれを取るのも貴方の自由です。私はね、悲しみと絶望に暮れながら決意したのです、息子を取り戻すためならどんな手段でも試さずにおくものかと。それに、偶々、問題の村というのが私から息子を奪った災害現場からさほど離れていませんでね。旅が終わりに近づくに連れ、胸の中に不思議な希望が――自信すら――生まれてきました。私は信じています。じきに友人の話が真実だと証明することができるだろうと、また、それらの山の民が持つ素晴らしい能力を通じて私のヴィジョンが現実になるのだろうと。」
 そこで彼は話をやめて顔を逸らし、声は再び途絶えた。私は大いに心を動かされ、自分がどれほど共感し、彼が繰り返したその話を信じる気になっているか、なんとか判ってもらえないかと思った。
 少し暖かい感じでこう話してみた。「貴方のお話は奇妙に聞こえますが、だからといって私がそれを軽んじようとしているとはお考えにならないでください。私は西部の生まれで、子供の時分に、同じくらい変わった話をたくさん耳にしました。未開な私たちの国では、時々森や平原から妙なモノどもやおかしな状況が現れいでるのだ、というのです。ええ、人が足を踏み入れようとしない場所では、異様な生物がブッシュをうろつくとも聞きましたね。そんなわけでそういった話は耳新しくないんですよ、ちっとも! 貴方ほど信じこんでるわけじゃぁないが、馬鹿にしているわけではありません。さあ、そこでセント=オービンさん、一つ提案があるんですが。貴方はお一人です。目的を達するには雪の山地を行かなければなりませんが、辛いことだし、危険かもしれない。一緒に連れて行ってください、と言ったらどうされます? 多少はお役に立てるつもりですし、兎にも角にも、貴方の冒険とお話に大変興味をそそられましたよ!」
 彼がこの申し出を断ってきたらどうしようとビクビクものだったのだが、彼はそうしなかった。それどころか真面目な目で私の顔を一分間も見つめると、黙ったまま私の手を取り、力を込めて握った。固い約束だ。これ以降私たちは同志となり、共に旅を続けたのである。
 バーゼルにおける休息の一日は過ぎていき、私はここでの仕事を終えた。二人はセント=オービン氏が指し示す道を辿り、十二月二十二日の夕方、小さな丘の駅に着いた。明朝探している村に案内してくれるというガイドも見つけた。朝日は我らが道を照らし、休憩を挟みつつ何時間も苦労して歩いた末、私たちはついに目指す地点に到達した。
 それは絵のように美しく古趣のある谷間たにあいの小村落で、周囲の風雪から護られた一つのオアシスだった。スイスでよくある木の彫刻が共同体の主な収入源らしい。唯一の大通りは狭く山羊が跋扈し、それらが引っ切り無しに鳴らす多彩な鈴の音が心地よい調べを醸していた。シャレー丸太小屋から突き出した屋根の下では乾燥させた薬草の束が凍てつく風に揺れ、家々の戸口の脇には、樅の木がいつでも使えるように積み上げてあった。厳しい顔をしたセント・バーナード種の大型犬があちこちで目につき、ライオン並に大きな足跡を新雪の上に残していた。私たちが村に入った時、バラ色の午後の陽がぐるりの山々を讃え、暖かな斜光を小村に投げかけていた。まだ三時になるかならないかの時刻だったのだが、陽は既に山頂に近づいており、もうじきその影に隠れて谷間を黄昏の裡に沈めるのだろう。こんな世間離れした一隅には専業の宿屋も旅籠もなかったが、村民たちは喜んで私たちをもてなそうとし、一番大きなシャレーの持ち主が早速宿泊の準備をしてくれた。夕食――山羊の乳のチーズ、硬いパン、蜂蜜、コーヒーと称する飲み物――が終わる頃になると、村民が三々五々私たちを見にやってくるようになった。そして主人の招きに従って、皆で松の木の囲炉裏を囲んで暖かい奇妙な飲み物を飲み交わした。砂糖とトーストが付き、どこか接骨木の実の酒に香りが似ていなくもなかった。やがて我が英国人の友は私よりも能弁になり、フランス語とドイツ語が入り混じったこの地方の訛りで自分の悩みをぶちまけたのだ。彼はそこにいる村民に向けて率直に、熱っぽく話し終えた。毎年この村の住民に千里眼が現れるという話に何らかの真実性があるなら、きっと村民はその能力を使って彼を助けずにはおけないだろうと思われる程に。
 おそらく、これほど懇願されたことはなかったのだろう。我が友の話が終わった時、一同の上には沈黙が落ち、あるかなしかの囁きが聞こえただけだった。誤解されたのかもしれないと恐れ始めた私は、到頭、できるだけの説明を足して彼を助けようとした。その時、炉隅に座っていた男が立ち上がって、なんでしたら最初に千里眼の力を持った人の孫たちを連れてきましょうか、と言った。その人たちなら、尋ね人のことでできうる限り最も詳しい情報を教えてくれるでしょう、と。私たちはこの申し出を聞いて元気づけられ、快諾した。彼はシャレーを出ていき、程なく二人の男を連れてきた。二人とも頑強で知的な感じがし、一人は三十歳、もう一人は三十五歳ほどで、見たことのないほど立派な二頭のセント・バーナードと一緒だった。顔を見るなり、私はこの二人の田舎者が決して悪党でも馬鹿者でもないと確信した。一座は既に男女二十人を数える程になっており、その中央に進み出た二人を主人は型通りに紹介してくれた。テオドール・ラウルとオーギュスタン・ラウルの兄弟だという。主人は兄弟に炉端の木の長椅子を勧め、大きな犬たちは二人の足元に座り、一同はあちこちでパイプをくゆらし始めた。赤々と燃える松の薪、見慣れない村人の衣装、私たちが座っているシャレーの台所の古びた調度がこのシーンを飾り、加えて自分たちの奇妙な旅と、ラウル兄弟のために再話した尚一層奇妙な物語のせいで、私は次第に、夢のなかにいるような、この世ならぬ感じになっていった。だが私は、セント=オービンの真剣で張り詰めた表情を見て、目の前の光景が少なくともある一点に於いてつらい現実だということを思い出したのだ。彼は熱心に身を乗り出していた。兄弟が口にする一言一言に命が懸かっているかのように。この寂しく孤独な人物にとって、ここで語られるクリスマスの夜語はその一字一句まで深刻極まる意味を孕んでいたのだ。身振り手振りを交えながら無骨でドラマチックな口調で孫達が語った、かのアルプスの千里眼の伝説を英訳してここに記そう。弟は時折口を挟んで、兄が言い忘れた細部を補い、データを確認し、聞く者が思わず漏らした感嘆をよく響く声で繰り返した。
 私たちに話をしてくれた二人の祖父であるオーギュスタン・フランツ・ラウルは目が見えなかったが、その点を除いて、もともと普通の人と変わったところはなかった。あるクリスマスイヴ、夕暮れが近づく頃合い、凍てつく雪嵐が山々を襲う只中、彼と飼い犬のハンスはラバを連れて急ぎ足で家路を辿っていた。角を曲がると一人の僧に出くわした。すぐ下の村で一人暮らしをしている人が亡くなりそうなので、臨終の聖糧を持って行くところだったのだ。僧は疲れきってもう歩けそうになく、激しい雪のため道を見失いかけていた。時々刻々、雪は激しく顔に当たり耐え難いほどになってきた。渦巻く雪片が目の前で踊り、曲がりくねった道はほとんど見えなくなっていた。頭はくらくらし、足はふらつき、誰かの助けなしには安全に目的地に辿り着くことはできそうもないと感じていたのだ。盲目のラウルは、自分自身がくたびれて屋根の下に入りたいと思っていたのにも拘らず、僧の訴えに心を動かされてこう答えた。「神父さま、御存知の通り、俺はなにも教会の敬虔な信者というわけじゃありません。ですが、この先に死にそうな病人がいて、教会に魂を慰めてもらう必要があるなら、俺は神父さまを力一杯助けなければならんでしょう。そうしなきゃ天がお許しになりません! 確かに俺は盲だけど、この岩山の道のことじゃ俺より詳しい奴はいませんし、神父さまの目を惑わせる雪だって俺にとってはへっちゃらです。ほら、俺のラバに乗って。ハンスが一緒に来てくれます。三人で間違いなく行き先に着けますよ。」
「息子よ、」僧は答えた「神はこの慈しみの行いに対し、褒美を授けるでしょう。私が参じようとしている病人は、魔法使いとしてこの地域ではその悪名を知らぬ者がおらぬほど嫌われていたのです。この人物は良心に恥じる罪を犯したことがあるのでしょう、生きている内に告解したいと言うのです。貴方の手助けなしには、この嵐の中で道をたどることはできなかったでしょうし、その男は苦しみを懺悔せずに終わってしまったでしょう。」
 暗くなるに従い、嵐の猛威は増していった。どちらを向いても激しく降る雪で真っ白、もはや空と山との見分けはつかなかった。僧は恐怖に囚われたが、盲人にとっては昼も夜も関係がなく、そんな恐怖に脅かされることはなかったのだ。彼は口をきかぬ友人たちを引き連れ、通い慣れた道を一歩一歩、黙々と進んだ。ついに真夜中頃恙無く村に到着し、僧は告解者の許へと案内された。瀕死の魔法使いがどんなことを告白したのか盲人が知らされることはなかったが、それが終わり、ホスチアが唇を通った後、ラウルは病床に呼ばれた。そこでは重々しい異様な声が彼の名を呼び、彼が果たした奉仕を感謝していた。
「友よ、」いまわの際の男が言った「私がどれほどの借りを作ったか、貴方には判りますまい。ですが、この世を去る前に、お礼としてその幾分かを喜んで返すつもりです。世の人は私を魔法使いと呼びますが、貴方の目が見えるようにして差し上げられるわけではありません――もしそんなことができるならば、私はそれを捧げるために心のすべてを注ぎますのに。しかし、神様は罪を悔悟し死んでいくこの男が地上に残す最後の祈りをお聞きになって、きっとより良い贈り物を下さることでしょう。肉体の視力よりも素晴らしい、類まれな贈り物です。魂の目が開かれるのですよ! そしてこの内なる目は、貴方が今なさったように、それを慈悲と情けのために使う限りにおいて、貴方と貴方の係累に受け継がれていくことでしょう!」
 男はこう言うと、暫し手を盲人の額に当て、声に出さずに唇を動かした。尤もラウルには見えなかったのだが。僧とラウルは告解者が息を引き取るまでその場に留まり、灰色のクリスマスの朝が開け、真っ白になった平原を照らしだした時、二人は家の入り口に近い方の小部屋に亡骸を安置し、谷の住人たちに魔術師の死を告げ、葬儀を依頼した。ラウル兄弟は言った。俺たちの祖父はそのクリスマスイヴ以来、毎年毎年、この聖なる時が巡り来ると、新たな超能力を発揮できることに気づいたのです。それは魂の内奥にある感覚を用いて、どんなものでも望むがままに見ることができるという力です、と。何キロも離れたものでも、我が家の框にあるかのようにありありと。昔の預言者やシビュラ予言の巫女と全く同様に、内なる目が開くのは寝ている間かトランス状態になっている時だった。この状態は一瞬に過ぎないこともあったにせよ、光景全体が目前でフラッシュするのだ。何十キロも遠くにいる友人の顔が見え、その手をとることさえできそうだった。こんな時には、彼の目を逃れられるものは一つもなかった。誰でも、どこでも、それを見ようと熱望すれば、そしてその願いが無垢なものであるなら、すぐさま千里眼の力が発揮された。ほんの幼い頃に視力を失った盲人にとって、この力は計り知れない慰めとなり、クリスマスイヴは煌めくお祭りとなった。それを思い出し、楽しみにしながら一年一年を明るく迎えられたのだ。ついにこの人物が他界した後も力は家族に受け継がれ、彼の子孫たちは全員が大なり小なりこの力を持っていて、最も近縁の孫たるこの二人は力を完全に開花させた。そして――何より奇妙な話だが――我々の前、炉端で横になっている二頭の猟犬も魔法使いの祝福に与っているらしいのだ! この二頭、フリッツとブルーノはハンスの直系の子孫で、これまでにも度々、透視能力を示唆する強固な証拠を見せており、この力に影響されて通常の犬の域を遥かに超える明敏さと賢明さを披露してきた。二頭の父親であるグリュックは二十二キロ離れたアルブレン峡谷の修道院で飼われていた。この父犬が千里眼の力を使って目覚ましい業績を上げたとはラウル兄弟は聞いていなかったが、一族に与えられた贈り物を大いに受け継いでいると皆から言われていたのだ。
「それで、ラバは?」考えなしに聞いた。
 弟の方のラウルがにこやかに答えた。「ラバは、ムシュー、何年も前に死にましたよ。当然子孫は残しませんでした。」
 こうして物語は終わり、暫くの間一座の誰もが口を閉ざしたまま、熱い視線をセント=オービンにたっぷり注いだ。彼は座ったまま身じろぎもせず、頭を下げ腕を組み、思いに沈んでいた。
 一人また一人、周りの人が立ち上がり、パイプの灰を落とし、一言二言残すとシャレーを辞した。数分後には主人、ラウル兄弟、彼らの犬、友人、そして私だけが残った。セント=オービンは漸く口がきけるようになった。立ち上がってテオドールに向かい、震える声でおずおずと尋ねた――
「明日私達のために探索隊を出していただけるのですね?――もし、何かにお気づきになったら、ですが。」
「準備万端整っているはずですよ、ムシュー。夜明け前にピエール(主人のこと)が貴方がたを起こしに行きます。クリスマスイヴの朝から俺たちの千里眼は開きますから。良いニュースを得ようと思うなら、早く出発せねばなりません。行くべき先は遠いかもしれず、日は短いのです。」
 彼は口笛で大型猟犬を呼び、おやすみなさいと言った。こうして兄弟は一緒に家を去り、フリッツとブルーノが続いた。
 ピエールはランタンに火をつけ、部屋の隅に梯子をかけると、ついてくるように言った。こんな原始的な階段を登るのはいささか困難だったが、ともかく寝室に落ち着いた。そこは下の台所に引けをとらない程美しく古趣があった。私たちのベッドの周りは壁一面に山羊のチーズ、乾燥させた薬草、食品の大袋などの冬を越すための品々が積み上げられていた。
 外は星月夜だった。清澄な、平穏な、凍てついた、来るべき日の好天ぶりを期待させる夜。私は長いこと夢の世界にいたのだが、セント=オービンはもしかすると寝つけないのではないかと思った。落ち着きのない目で星の巡りを追い、どこか遠くのどことも知れぬ場所で、いなくなってしまった息子もまたこの星空を見ていたりはしないかと念じながら。
 灰色の霧が小村を包む夜明け、何人もが叫ぶ騒々しい声と駆け上がってくる足音に目が覚めた。少しして寝室に上がる梯子を深いブーツが踏むのが聞こえ、ドアをノックする音が重く響き渡った。セント=オービンはベッドから跳ね起き、掛け金を上げた。入ってきたのは弟の方のラウルで、口を開くまでもなく、輝く目と上気した様子から、良い知らせを運んできたことがありありとわかった。
「俺たちは見ました!」意気揚々と両手を頭の上まで投げ上げながら叫んだ。「二人共です、ムシュー、貴方の息子さんを! 夜明けの直前で、まだ三十分も経っていませんが、ヴィジョンを見ました。山の洞窟で生きて、元気にしています。この村からは広い谷川を渡った向こうです。神の御使に救われたんです、奇跡ですよ! さあ元気を出して、息子さんを取り戻せますよ。今すぐ着替えて、下で朝飯を食べてください。もう出発の準備はできています。無駄にする時間はありません!」
 断片的にぶちまけられた言葉の奔流を梯子の下から呼ぶ兄の声が押しとどめた:
「どうか急いでください、ムシュー。俺たちが夢で見た村まではたっぷり二十キロあって、そこへは雪をラッセルして行かねばならんでしょう。この時期にはきつい作業ですし、道が通れないかも知れません! 行くぞ、オーギュスタン!」
 もう何もかもがあたふたと上を下への大騒動で、村中がガヤガヤとした興奮の坩堝と化した。窓の外ではツルハシ、ザイル、手斧といったアルプスの山行に必要となる装備を持った男たちが頻りに私たちのいるシャレーに集まってくる様子が見えた。二頭の大型犬は仲間と一緒に大喜びで雪の中へと飛び出そうとしており、頭の良さそうな目つきと焦れったそうな態度から、この二頭は既に今日の探索計画がどんな性質のものか理解しているように思えた。
 日の出どき、私たちは腰をおろしてほっこりした食事をとった。声と食器の喧騒の中で兄の方のラウルがどうやって問題の峡谷に到達するつもりか計画を説明してくれた。兄弟共認めたところでは、それはアルブレンの上の方にあり、ここより千メートル程も標高が高く、こんな厳寒期に向かうには危険な土地だという。
 彼は言った。「その地点は瀬によって谷からすっかり切り離された所で、山側から下っていく道筋が一本だけありましたが、昨年起きた地滑りのせいで通れなくなってしまいました。お子さんがどうやってそこにたどり着いたのか、まさに謎です!」
「なんとかしてトゥルガウ峠を抜けなきゃ無理だな。」オーギュスタンが叫んだ。
「俺もそう思う。食い終わったら即刻ジョルジュとアルベールを呼べ。ザイルを持って行くんだ!」
 たちまち私たちの小パーティは装備を整えた。男たちが威勢のいい声援を送り、女たちが同情の呟きを交わす中、私たちは雪のカーペットを敷いた小さなメインストリートを急いで通り過ぎ、山道に突入した。パーティは六人だった。セント=オービン、私、ラウル兄弟、登山用具を携えた村人二人。先導をとるのは二頭の犬、フリッツとブルーノだ。
 山に入るといきなりガレ場のトラヴァースとなり、何度もザイルと道具を使って切り抜けた。高地の登山道は滑りやすく、ほとんど足場がなかったからだ。幾つかの箇所など、到底通り抜けられそうもない程だった。だが、新たな障碍を一つ一つ乗り越えるたびに、私たちの決意は燃え上がっていった。加えて、二人の千里眼が何度も何度も励ましてくれた。「挫けないで、ムシュー! もうじき一番の難所を通り抜けますよ!」私たちは正義の善意を胸に歩を進め、ついに岩がちの広い高台に出た。
 このかん、先を行くのは常に二頭の大型犬だった。驚くほど上手に切り立った角を回りこみ、凍った谷を跨いで岩から岩へと自在にかつ勇猛果敢に跳躍し、それを見る私の血は凍りそうになった。犬たちが最後の狭い山道を支障なく降りるのを見、ハアハアと息をしながら大威張りで私たちの脇に座るのを見て、ようやく胸を撫で下ろした。辺りは一面の新雪で、ダイヤモンドダストのようにキラキラと光を放ち、私は目がくらんでしまった。私たちは三々五々転がっている丸石の上に腰を降ろして一息入れた。取り巻くのは驚くべき絶景だった。聳え立つ輝く峰々、眼下に広がる紫の渓谷、音を立てて流れる白い瀬、霧が川面からフワフワと浮き上がり、間断なく漂っていた。
 私が驚嘆のあまり呆然として座っていると、セント=オービンが腕を取り、黙ってテオドール・ラウルを指差した。彼は既に腰を上げ、下の平地の上に張り出した高台の縁に立っていた。首を伸ばし、目をかっと見開き、全身からトランス状態にあることを示す磁場を発散していた。私たちが見ている間に、彼は頼りなげに手探りしながらゆっくりとこちらに向き直った。闇の中で道を見つけ出そうとしているようだった。そして、夢見るような声でゆっくりこう語ったのだ:
「若者が洞窟の入口に座っているのが見えた。谷の向こうを見ながら、誰かを待つように。青白く痩せていて、黒貂の毛皮の裏打ちのある濃い色のマント――大きなマントだ――を着ている。」
 セント=オービンは飛び上がって叫んだ。「そうです! 山道から滑り落ちた時に腕に抱えていたマントです! おお、神様ありがとう、そのマントに命を救われたのだろう!」
「俺が見たところ息子さんのいる場所は、」山の住人は続けた「今、俺たちが立っているこの高台から五キロばかり先です。ですが、どうやったらそこに行けるのかわかりません。道を見分けられないんです。途方に暮れているんです!」両手を忙しなく前後に動かし、声に失望を滲ませながら叫んだ:「もう見えない! ヴィジョンが行ってしまう。良くわからない形がどんどん暗くなっていく闇の中に紛れ込むのがわかるだけだ!」
 私たちはうろたえて彼の周りに集まり、セント=オービンは弟の方のラウルになんとかしてくれと頼み込んだ。だが、弟も失敗したのだ。洞窟の様子は完全にはっきり見えた。だが、そこへの道を辿ろうとすると暗黒にすっかり閉ざされてしまうのだ。
「地下に違いない。」テオドールと同じ探る仕草をしながら彼は言った。「岩の輪郭がいくらか見える。だがそれ以外には全然判らない。ちらりとも明かりが見えない。真っ暗闇だ!」
 私たちがああでもないこうでもないと話し合っていると、突然、猟犬の一頭が鋭く吠え、私たちはびっくりして即座に口を噤んだ。議論を中断させたのはフリッツだった。捕まえそこなった何かを探すかのように、興奮した様子で行ったり来たりしながら高台の縁を嗅ぎまわり、何度もクルッと振り向いた。今度はブルーノもこの謎めいた探索に参加し、次の瞬間、私たちを感嘆させ驚かせたことには、二頭の犬は目を知性と歓喜に輝かせながら同時に首を擡げ、嬉しそうな吠え声を長々と放ったのだ。遠吠えは壁の如く聳える背後の山に反射し、合唱となって響き渡った。
「あいつらには分かるんだ! 見えるんだ! 手がかりを掴んだんだ!」二頭が高台から飛び降り、クレバスの雪だまりを蹴散らしつつ、谷間に下る険しい斜面を滅茶苦茶な勢いで駆け降りるのを見た村人は叫んだ。私たちは大急ぎで荷物を担ぎ、飛ぶように下っていく案内役を可能な限りの速さで追いかけようとした。高台を一段下まで降りた犬たちはそこで立ち止まり、頭を真っ直ぐ伸ばし、舌を垂らし、ジリジリと峡谷を這い降りる私たちを待っていた。再び彼らは先頭に立ったが、今度はずっと慎重に、ゆっくりと進んだ。私たちは一列縦隊になり、逆巻く小さな瀬を幾つも渡りながら曲がりくねった細い凸凹道を伝って後を追った。下るに連れ、寒さは緩み、雪も浅くなり、岩がちの山の斜面にリンドウなどの寒さに強い植物がぽつぽつと見え始めた。
 突然、セント=オービンは激しい動揺にとらわれた。「ほら、見てください!」私の腕を掴みながら叫んだ「ここ、まさに私たちが立っているここから、息子は滑落したのです! 下の方は谷になっています!」
 ちょうど彼が話している間、犬たちは足を止めてこちらにやってきて、話しかけたがってでもいるかのような賢い目でセント=オービンの顔を覗き込んだ。私たちは立ち尽くし、緑の谷間を見下ろした。真冬でも緑に覆われ、山羊の群れが日の光を浴びながら草を食んでいる。我が友人はここに降りて調べたことがあるはずだ。だが、ラウル兄弟は犬を信じて従うように命じた。
「彼らを追うんです、ムシュー、」テオドールが力強く言った。「貴方には見えないものが彼らには見えます。神様がお導きになっているのです。それを貴方に教えようと俺たちをここに連れてきたんですよ。間違いありません。安心して自分らのガイドに任せて欲しいと。ほら! 進み始めました! 行こう! 遅れを取ってはなりません!」
 これを聞いて、私たちは犬族のガイドを急ぎ追跡した。二頭は不思議な力が齎す謎めいた影響力に駆り立てられ、再び前進を開始した。今度は登りだ。すぐに谷間は見えなくなり、ぐらつく石と鋭い岩の間を一時間登った所で、一つの深い裂け目に出た。縁と縁との間は六メートル、深さはおそらく二百五十から三百メートルくらいあったのではないか。両側の縁は垂直に切り立ち、ほとんど壁だった。ここは梯子の出番だ。それらとザイルの力を借りて、パーティの一行全員が、人も犬も、恙無く深淵の反対側に渡ることができた。
 ガレ場を更に三キロほど探した時だ、小高い丘の頂上で大型犬がついに立ち止まったのは。セント=オービンに近づき、勝ち誇った目でじっと見上げた。あたかも「尋ね人はここですよ!」とでも言うかのように。
 屹立する花崗岩の峰々を背景にした荒涼たる人気のない地点で、嵐に裂けた枝々が散乱し、分厚く生い茂る松の木が陽の光を遮っていた。セント=オービンは心の動きのままにブルブル震えながら辺りを見回した。
「大声で呼ぶんだ、」村人の一人が叫んだ。「大きな声で、あんたの息子に聞こえるように!」
「ああ、」父親は答えた「あいつは耳が聞こえないんです。お忘れですか、息子は聾唖なんです!」
 テオドールは離れた所でしばし口をきかずにぼんやりしていたが、その瞬間セント=オービンに近づき、腕を握った。
「大声で呼ぶんです!」と、真面目な顔で命令を繰り返した。「息子さんの名前を呼ぶんです!」
 セント=オービンは驚いて彼の顔を見たが、命令を容れてはっきりした声で叫んだ。
「チャーリー! チャーリー、私だ、どこにいる?」
 ひどく心配し同時に期待しながら、私たちは彼の周りに静かに集まって団体写真を撮る時のように待ち構えた。中央のセント=オービンは青ざめた顔をひくつかせて両手を固く握り、両側のラウル兄弟は懸命に耳を澄まし、犬は座ったまましきりに毛むくじゃらの首を伸ばし耳を立ててていた。じっと答えを待つ間、もし足元の岩にピンが落ちれば、その音すら聞こえただろう。こうして一分の時間が経った。その時、はるか下の方から、微かな音のようなものが聞こえてきた。たった一言――震える子供の声で――この上ない願いを込めて、「父さん!」と。
 セント=オービンはその場に頽れた。「神様! 神様!」すすり泣きながら叫んだ。「息子です! 生きている、耳が聞こえる、口がきける!」
 私たちは我先に岩場を下り、緑の草地に出た。そこは三方を高い崖で護られ、残った南方は幅十メートル程の流れの速い瀬で仕切られていた。瀬の向こうには広々とした牧草地があり、下り坂になってアルブレン峡谷まで続いていた。
 セント=オービンはもう一度大声で呼びかけ、それに応えて再び子供らしい叫びが返ってきた。声の出所は岩にできた狭い亀裂で、茂みの陰になってほとんど隠れていた。この亀裂の中を進んでいくと、小さな芝山になり、その上に、山の岩石にできた深い凹みが口を開けていた。絵画のように美しい洞窟だ。苔で覆われ、壁面にはあちこちに消え掛かった彫刻があり、おそらくは大昔に彫られたものだろう。察するに、多分キリスト教が弾圧されていた時代に教会ないしは地下納骨堂として用いられたのだ。この洞窟の入口に、目をまん丸にし、青ざめた唇を半ば開けて、金髪の少年が立っていた。身につけているのは兄のラウルが言っていた通りのマントだった。一瞬立ち尽くしたが、一散に駆け寄り、すすり泣きと声にならない叫びを上げながら父親の胸元に飛び込んだのだ。
 私たちはかくも神聖な出会いに打たれ、この上ない喜びを感じながら、離れたところで黙って立っていた。犬たちだけが洞窟の中に飛び込んで、大喜びで跳ねまわり、満足げに吠え声を轟かせた。犬たちにも判っているのだろう、この二頭がいなければ、この驚異の発見は決してなされなかっただろうし、このドラマがかくも幸福な終幕を迎えることはなく、生涯続く悲劇として終わっていたに違いないのだ。
 だから、一頻り再会の喜びを噛み締めた後、セント=オービンが犬の方に向いて、二頭のゴツゴツした大頭にしがみつき、嬉し涙をボロボロ流しながら熱狂的に口づけしたのを見ても、誰も驚かなかった。
 購い難い今日一日の奉仕に対して彼らが受けた報酬はこれだけだった。我らを愛する物言わぬ獣たちは、金銭のためには働かないのだ!
 さて、我が友人と小さな息子とを引き離した災難から三ヶ月もの間どうなっていたのか、その経緯を語る時がきた。
 セント=オービンを中央に、少年をその隣にして、私たちは洞窟の床に広がるふわふわした苔の上に腰を下ろした。前夜テオドールとオーギュスタンが語った奇妙な物語の続編に耳を傾けたのだ。まず私たちが知ったのは、今日父親の呼ぶ声が聞こえるまで、チャーリー・セント=オービンは事故当日と同様に聾唖のままだった、という点だった。聴力と会話能力が復活したこの時も、発音は不明確で、発話は困難なままであり、最後まで文章を話し終えることができず、身振りや手まねを交えざるを得なかった。話を進めるには父親の援助が必要だったのだ。セント=オービンの叫びに含まれた強い愛の力が疾病の呪文を破り子供の鈍磨した神経を生き返らせたのだろうか? それとも何週間もの眠れぬ日々を虚しく過ごした後、いきなり激しい情動に襲われたためなのだろうか? あるいは私たちをこの未知の秘所にたどり着かせてくださったのと同じ、謎めいた贈り物たる神の恩寵のおかげなのだろうか?
 そんなことはどうでもいいのだ。人間の魂はあらゆるものの主人であり、愛の奇跡は数え切れない。純粋なる愛が満ち溢れる時、人間の魂は神の精霊の如くになるのだから。
 セント=オービン少年の命を救い、この三ヶ月間持ちこたえさせたのは、彼同様に物言わぬ一つの生き物の働きだった――フリッツやブルーノにそっくりな大型犬だ。彼はアルブレン峡谷を指す身振りをしながら、私たちにその犬が「川の反対側」から来たのだと教えた。苦難の初めから、その犬は人間の友達のようだったという。崖から転落しても少年は打ち身をしただけで、一旦は目が回って倒れていたものの、一、二分後にはもう立ち上がっていた。少々苦労しつつ、坂になった平原を横断しようとした。そこで崖から降りてくる父親に会えるだろうと思っていたのだ。だが、方角を見誤って、あっという間に道に迷ってしまった。不安に駆られながら長い時間待ち続けたが、遠くに山羊飼いが見えるだけで、気づいてもらおうとしても駄目だった。歩き回ったせいで捻挫した足首が痛み、洞窟の中に避難して夜を過ごさなければならなくなった。直後に村人たちの指示と助けによって父親が辿りついた洞窟だ。その村人たちはこの洞窟の奥に広大な地下迷宮が広がっているなどとは思ってもみなかった。岩山の内部を穿つ地下の網の目は、一部は天然のもので、一部は人工のものだった。事故から一夜明けた日の出の少し前、ささいな好奇心から彼は一夜を過ごした絵のような岩窟を探ってみた。すると一番暗い隅に苔むした石があり、その裏に大量の雑草やツタや屑が雑に押し込まれていた。いかにも少年らしく、彼はこれら妨害物を取り除け、石を掘り起こさないではいられなくなった。せっせと石の裏にあるゴミを片付けると、少し上の方に狭い通り道があるのに気づいた。その中に潜り込んでいったのは、部分的には「探検心」からであり、また部分的にはこれを辿って行けば村の方角に出られるのではないかと期待したからだ。実は、この洞窟はセント=オービンの目に留まっていた。滑落した少年の捜索が再開されて一時間後のことだった。だが、ガイドの一人が、ざっと調べてこの中には何もないと言い、捜索パーティはその報告に満足して立ち去ってしまった。急いてはすべての努力を無にしてしまうと考えもせずに。洞窟は見かけこそ狭かったが、セント=オービン少年が発見したように、実際に中に入れば最も暗い部分から広がり始め、次第に我慢できる程度の広さの通廊になり、そこでは立って歩けたし、ある程度の間隔をおいて人工的に岩の壁に穿たれた窓からうっすらと外光が入ってきた。少年はこの発見に喜び、しかし地下墓所のような寒さに震えて、急いで入り口の方に置いてきた毛皮のマントを取りに戻ると、それを肩に掛けて探検を続けた。一足ごとに魅力的なものが現れ続け、少年は洞窟に魅了されてしまった。地下の泉があった。花崗岩の天井からは荒く彫られたガーゴイルがニタニタと笑いかけていた。道は奇妙な込み入った様子でくねくねと続き、彼を奥へとずんずん引き込んで行った。その間じゅう死の世界に似て恐ろしい沈黙が支配しており、健常児なら先に進むのを躊躇したかもしれないが、墓場の静けさも外界の生き生きとした音も聞き分けられない少年には影響がなかったのだ。
 こうして彼はふらふらと探り回ったのだが、気がつけば通廊は闇に閉ざされつつあり、岩に穿たれた窓はずっと少なくなっていた。もう暗さに馴れていた彼の目にすら不吉に感じるほどの暗闇で、一歩を踏み出すごとに目に見えない出っ張りに当たってよろめき、擦りむきながらも手探りで帰り道を探そうとしたが無駄に終わった。彼は自分が山の内部で殆ど迷子になっていることに遅まきながら気づき始めたのだ。曲がりくねる迷路の構造が絶望的なまでに複雑なのか、あるいはいつにない歩行の振動のために天井から岩の屑が落下し、帰り道を塞いでしまったのか。もと来た道を辿り直そうと長時間努力したが無駄だったと少年は語っており、となると後者の仮説の方がありそうだった。背後で岩が崩れても、もちろんその騒音は彼の耳を素通りしていった。迷いに迷ってくたくたになった少年は、結局、キメラめいた闇の中を行ってみよう、そうして山の反対側にある第二の末端を見つけ出そうと決意した。彼はやり遂げた。嬉しいことに、ついに出口が、かすかな星の光のように見えた。苦労しながらにじり寄っていくと、光は次第に大きく明るくなり、やっとのことで彼はこれほど長時間にわたって彼を山の胎内に閉じ込めることになった地下の深淵から解放されたのだ。脱出するまでに何時間かかったか判らなかったが、太陽の位置から見て、再度外に出た時は昼頃だった。疲れ果てふらふらになった彼は岩屋の苔むした床に座り、今いる避難場所の下に渦を巻きながら勢い良く流れ込む渓谷を見つめた。しばらく眠って夕方目覚めたが、たまらなくお腹が空いて、病気をせず、声さえ出せれば助けを呼べたのにと苦々しく思ったのだ。
 突然、黄褐色の巨大な頭が平地を囲む岩の上に現れ、彼は肝を潰した。次の瞬間セント・バーナード犬が急斜面をよじ登り、洞窟めがけて駆けてきた。犬はずぶ濡れで、広い背中に荷籠を二つ乗せていた。中を調べてみると、瓶入りの山羊のミルクが三本とブリキの容器に入ったライ麦パンが六斤あった。
 訪問者の親しげな表情と賢げな態度を見て、セント=オービン少年はこの犬を信じるつもりになり、沈んでいた心にもう一度明かりが灯ったのだ。近くに人が住んでいる証拠に喜び、また空腹に耐えかねて、少年は山羊のミルクを飲み、パンを一部食べた。その後、ポケットからありったけのスー硬貨を取り出し、それは僅かな数ではあったが、食べ残したパンで包んでブリキ容器に戻した。こうすればお金を見た飼い主が事故のことを感づいてくれるのではないかと願って。来た時と同様に、動物は流れの中の一番深くて穏やかな所に飛び込み、泳いで対岸に渡ったかと思うと、すぐに見えなくなってしまった。
 ところが次の日も、だいたい同じ時刻に、犬は一頭きりで現れ、ミルクとパンを運んできた。同じくそれらは少年の食料となったが、今度は籠に入れて持たせるべきスー硬貨は残っていなかった。昨日同様新しい友が帰ろうと立ち上がった時、チャーリー・セント=オービンは洞窟から一緒に出て、苦労しいしい土手を這い降り、どこか浅瀬を渡れないか試してみた。だが流れはがっかりするほど深くて速く、少年は沈んだ心で住処に戻った。来る日も来る日も同じことが繰り返され、とうとう彼はこの異様な暮らしに慣れていった。木が、鳥が、花が友達、大きな猟犬は謎めいた保護者で、彼はこの犬を深く敬愛し、どこまでも信頼していたのだ。夜になると家の夢を見た。そして幻の中でいつも父親の許へと訪ねて行った。「父さん、僕は生きてる、元気だよ」と繰り返しながら。
「それでね、」しっかりセント=オービンの腕に抱かれながら、少年は囁いたのだ。「今日はおかしかったんだよ。この洞窟に入り込んでから初めて、僕の犬がやって来なかったんだ! こんなことってなかったんだよ。まるであの犬は変な魔法かなんかを使って、何が起きているか全部わかっているみたいで、それどころか最初から全部わかっていたみたいじゃないか、ね! ああ、父さん! あの犬、本当は天使様が変装しているなんてことあるかな――ねえどう思う――そんなことってあるのかな? ほんとうに僕はあの犬をポンポンって叩いたんだよ、ただの犬だと思ってた!」
 少年が青い目を恐る恐る上げながら、こんな無邪気な考えを語っている隙に、私はセント=オービンの顔をちらっと見た。唇には微笑があったが、眼差しは真剣で、喜ばしい驚きで一杯だった。
 彼は私たちを取り囲む村人たちの方を向いて、彼らの言葉で息子の話を繰り返した。村人たちは夢中でそれを聞き、折々聡明な視線を交わし合って、びっくりした声で、おお、とか、ああ、とか呟いた。話が全て済んだ時、入り口に立っていた兄の方のラウルは日を浴びたアルブレンの谷間に目をやりつつ、恭しい手つきで帽子を取り、十字を切った。
 謙ってこう語った。「神よ、俺たち哀れなる罪人を許し給え。俺たち人間の思い上がりをも! オーギュスタンと俺のヴィジョンに現れ、少年の面倒をみていた神の御使は他でもない、向こうの修道院に住む犬のグリュックだったんだ! 俺たち人間は年に一度しか透視能力を使えないのに、グリュックは一年中見えるんだ。そして神様は少年がこの洞窟にいることを伝えた。俺たちが探し歩いて駄目だったちょうどその時にだよ。俺は知っているんだが、グリュックは毎日谷を渡って、その先で暮している貧乏な未亡人の所に食事と飲み物を届けているんだ。このばあさんは体を壊して寝たきりになっていて、小さい孫娘が面倒をみている。間違いなく、ばあさんは籠に入った硬貨をお坊さんからの贈り物だと思って取ってしまったのだろうし、送られてくる食べ物にしても、毎日決まった量というわけではなくて、どれだけ施しに回せるかに左右されていたのだから、パンとミルクが減っていても気づかなかったのだろう。もしかすると、乞食が増えたせいであたしの取り分が減っちまったよ、と愚痴でもいっていたのかもしれないな。」
しばし沈黙の帳が下りた。そこにセント=オービン少年の声がした。
「父さん、」震える声で聞いた。「もう大事なグリュックには会えないの? お坊さん達に、グリュックがどんなふうにして僕を助けたのか話せないの? フリッツとブルーノがどうやって父さんたちをここに連れてきたかも?」
「できるよ。」セント=オービンは立ち上がり、息子の手をとって答えた。「一緒にグリュックに会いに行くんだ。間違いなくグリュックは今日起きたことを全部わかっていて、修道院で待っているよ。」
「瀬を渡らなければなりません。」オーギュスタンが言った。「去年の雪崩で橋が流されてしまいました。でも、俺たちは六人で犬もいます。もう朝飯前ですよ。」
 日は暮れゆき、凍てつく天には早くもクリスマスイヴの星々が昇り、雪を抱いた遠くの峰々の上に輝いていた。
 今日出会った不思議な出来事を振り返りながら、感謝の気持ちと驚異の想いに満たされた私たちは渡渉へと赴いた。ザイルとストックの助けを借りてパーティは無事に谷の側に降り立ち、半時間後には修道院の食堂で暖炉の火に当たってぬくぬくしていた。夕食の準備をしている間に、ここの立派な僧侶たちは私たちの話に聞き入った。それは教会で学ぶ伝説のレパートリーのどれにも劣らぬほど素晴らしい物語なのだ。グリュックと二頭の高貴なる息子たちを聖列に加えようとしても、カトリック教会は多分首を縦に振らないだろうから、僧侶たちはさぞかしがっかりするだろうな、ふとそんなことを考えた私だった。

[#改ページ]

翻訳について

 底本は Project Gutenberg の Dreams and Dream Stories By Anna Kingsford(http://www.gutenberg.org/ebooks/5651)の第二部 Dream Stories の第一話 A Village of Seers―A Christmas Story です。この翻訳は独自に行ったもので、先行する訳と類似する部分があっても偶然によるものです。単位を SI にした部分は HTML 版をご覧ください。「夕映えのむこうの国」でも Seers が出てきます。そちらは「先覚者」と訳しましたが、こちらの Seers は「千里眼」と訳しておきます。題名をこうしておくとちょっとしたレッドへリングになるかもしれません。
 この訳文は他の拙訳同様 Creative Commons CC-BY 3.0(https://creativecommons.org/licenses/by/3.0/deed.ja)の下で公開します。TPPに伴う著作権保護期間の延長が事実上決定した現状で、ほとんど自由に使える訳文を投げることには多少の意味があるでしょう。

固有名詞等

Fletcher Bros.,Roy, & Co.、MR CHARLES DENIS ST AUBYN、Grosvenor Square, London. St Aubyn's Court, Shrewsbury、MR FRANK ROY、Merchants' Club, W. C.、Theodor and Augustin Raoul(アウグスティンかもしれません)、Hans、Gluck(原文ではこうですが、ウムラウトのついた Gl※(ダイエレシス付きU小文字)ck として訳しました。ドイツ語で「幸福」です)、Arblen、Pierre、the Thurgau Pass、Georges and Albert、Charlie


「夢の物語」には、以下の八編が収められています。いくつか邦訳を試みておりますので。興味をおもちでしたらどうぞ。
第一話:A Village of Seers(「千里眼の村」)(本作)
第二話:Steepside; A Ghost Story(「崖端館」)(http://www.asahi-net.or.jp/~YZ8H-TD/misc/AnnaKingsford/SteepsideJ.html)
第三話:Beyond the Sunset(「夕映えのむこうの国」)(http://www.aozora.gr.jp/cards/001882/card57998.html)
第四話:A Turn of Luck
第五話:Noemi(「ノエミ」)(http://www.asahi-net.or.jp/~YZ8H-TD/misc/AnnaKingsford/NoemiJ.html)
第六話:The Little Old Man's Story
第七話:The Nightshade(「犬酸漿」)(http://www.aozora.gr.jp/cards/001882/card58029.html)
第八話:St. George the Chevalier





This is a Japanese translation of "A Village of Seers" by Anna Kingsford.
   2016(平成28)年9月6日初訳
   2016(平成28)年12月5日最終更新
※以上は、"A Village of Seers" by Anna Kingsford の全訳です。身体・精神障害に関係する放送できない用語があります。何ぶん古い作品ですのでご了承願います。
※この翻訳は、「クリエイティブ・コモンズ 表示 3.0 非移植 ライセンス」(https://creativecommons.org/licenses/by/3.0/deed.ja)によって公開されています。
Creative Commons License
※元のファイルは、http://www.asahi-net.or.jp/~YZ8H-TD/misc/AnnaKingsford/VillageOfSeersJ.html にあります。
翻訳:The Creative CAT
2016年12月24日作成
青空文庫収録ファイル:
このファイルは、著作権者自らの意思により、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)に収録されています。




●表記について


●図書カード