表紙絵について

芥川紗織




 雑誌の表紙は始めてです。何時もと同じ染色の方法で何時もと同じ人間の描き方をしました。乳房のある、片一方だけ黄色い翅をひろげた女が、青い空気の中で、眼をピカピカ光らせて立つています。何時の間にかクモの巣に引つかかつているのにも無頓著です。とにかく三つの色しか使えないので、絵具にはない、染料独特の強烈な色を対比させ、緊張感を出そうとしましたが、染料のしみ込んだ布の感じとともに、それが何処まで面白く印刷されるか、後は本が出来上るまで、手をこまねいて、運を天にまかせる外はありません。





底本:「新日本文学 第11巻第11号」新日本文学会
   1956(昭和31)年11月1日発行
※底本は新字新仮名づかいです。なお促音が並につくられているのは、底本通りです。
入力:かな とよみ
校正:The Creative CAT
2021年4月27日作成
青空文庫作成ファイル:
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