新秋の記

木下夕爾




台所の片隅から吹いてくる
あの風ももう秋だ
白いさら
新豆腐のようにおどろきやすいこころよ

裏の林にきて
しばらく夕焼をながめている
川瀬の音
秋風の音

子どものために
わくら葉ひろつてふところにする
わくら葉にも美しい夕焼がある

もう走り穂がかぞえられ
みちばたにこぼれ生えの刀豆なたまめ
青いさやを垂れている
一列にうすあかい実がならんでいる





底本:「日本の詩歌 26 近代詩集」中央公論社
   1970(昭和45)年4月15日初版発行
   1979(昭和54)年11月20日新訂版発行
入力:hitsuji
校正:きりんの手紙
2022年8月27日作成
青空文庫作成ファイル:
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