曰く婦人問題、曰く女学生問題、と近年
そは兎もあれ、妾は今、言稍極端なるに似たれ共、今日の婦人に尤も必要なる、一物を望まんとす。
何ぞや、堅固なる
何故、肱鉄砲を要するや。
之を説く前に、先づ婦人諸君に借問したきは、諸君果して其身の境遇に絶対の安心を得て、満足し居らるゝや否やの一事なり。
妾の見る処を以てすれば、多年の習慣上、表面だけは余儀なく平和を粧ひ安心らしく見せかけ居るも、極く少数を除く外の婦人は、総て
男子に貞操なければなり。
凡そ世に厄介なるものも少なからねど、妾は男子程厄介なる者は無しと思ふ。妾は男子の(暁天の星なる真の純潔なる士は例外)口より婦人貞操論を聞く度に、常にチヤンチヤラ可笑しくて噴飯し居るなり。然して耳を傾くる前に、先づお手許拝見と叫ばざるを得ざるなり。社会の滔々たる男子が、臆面も無く婦人貞操論を口にするイケ図々しさに至つては、只唯、呆れ入らざるを得ざるなり。
是れ畢竟、婦人を奴隷視し、侮辱するの甚だしきものなればなり。
妾は、我が婦人諸君が起つて、何故男子貞操論を絶叫せざるかを、頗る奇怪とする者なり。
故に妾は、今日の汚れたる男子の口より吐き出さるゝ、所謂賢妻良母なる語を、
されど悲しい哉、現今の社会制度に於ては、此大矛盾、大侮辱をも尚且つ忍んで、総ての婦人が男子の奴隷とならざるを得ざるは何故ぞや。是れ畢竟、生活の不安ちふ根本の一大問題のあればなり。
此根本問題の解決は、勿論社会主義に
奮起せよ婦人、覚醒せよ婦人。
労働者の資本家に対する階級打破の夫に比して、我等婦人が男子閥に対する平等自由の要求は、只己が意志一つにて、声を揚げず、血を流さず、至つて容易に得らるゝに非ずや。
暴横なる男子を排斥せよ、貞操なき男子を排斥せよ、堕落せる男子を排斥せよ、然して彼等に反省を与へよ。
卿等は百万
我が婦人諸君よ、一致団結して男子閥を打破せられよ、殊に未婚の婦人よ、堅固なる肱鉄砲に常に戦闘準備を怠る勿れ、安心なき結婚に、何の幸福か是れあらんや、貞操なき男子との同棲に、何の愉快か之れあらんや、妾は我が婦人諸君が、此有力なる最大武器を、我が権利保護の為に利用するを知らずして、只
起てよ婦人。
起つて諸君が団結して、肱鉄砲の一斉射撃をせられなば、男子は立どころに降伏して、卿等の足下にひれ伏し、泣いて哀を乞ふや必然なり。
結婚を急ぐ勿れ、売買結婚に甘んずる勿れ、而して己れの修養に勉めよ。
斯くて始めて、理想の家庭をつくるを得べし。
奮起せよ婦人、磨け肱鉄砲を。