どんな形でまとめるか


 青空の本は、作品ごとに三種類をそろえようと思います。

 一つはインターネットで広く使われている、HTMLの形式に合わせたもの。
 もう一つは、ボイジャーの開発した電子本の作成ツール、エキスパンドブックを用いたもの。
 加えて電子化したテキストを、できるだけシンプルな形で引き落とせるようにしたいと考えています。

 HTMLはインターネットの基本です。
 青空文庫を訪ねて下さった方は、この形式のものならすぐに、読み始められるでしょう。ただし、読みやすさという点で、HTMLには不満が残ります。
 一方エキスパンドブックでは、読みやすさと使いやすさが良く考慮されています。
 あらかじめ原稿をデジタル化しておけば、エキスパンドブックはほとんど一瞬のうちに作れます。レイアウトも自由に工夫できて、写真やイラスト、さらには動画まで組み込めます。当初から日本語を頭に置いて作られており、縦組みやルビにも対応しています。読みやすく文字を表示するための工夫も、こらされています。電子出版にはいくつかの試みがありますが、先ず紙と縁を切ると決め、画面で長文を読んでもらおうと腹をくくった割り切りが、この道具に独自の個性と強みを与えています。
 言葉による認識と表現に変わらぬ信頼を置きながら、私たちは、電子出版というもう一つの舞台で青空文庫を育てようと考えました。そう考えるに至ったきっかけを与えてくれたのも、本当のところは、エキスパンドブックでした。

 ただし、一私企業の技術であるエキスパンドブックに全面的に頼り切ることは、賢明な選択とは思えません。今後、さらにすぐれた電子本の環境が生まれてくる可能性があります。
 HTMLにはより長い寿命を期待できるでしょうが、読みやすさへの配慮を欠いたこの形式にも、全面的に依拠することはできません。
 文章をさまざまに活用するうえでは、できる限り手の加わっていない、シンプルな形で受け取りたいと考える人もいるはずです。

 そこで青空文庫には、エキスパンドブック版とHTML版に加え、テキスト版もそろえようと思います。こうしておけば、もし他の基盤に切り替えることになった際も、それまでの成果をたやすく引き継いでいけるでしょう。


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