そらもよう
 


2013年12月31日 富田さんを送った年だった
富田倫生さんが亡くなってから4ヶ月あまりが過ぎて迎える2013年の最後の日。

富田さんのお葬式の日、葬儀場の片隅で「富田さんを送る会」の相談をした。葬儀は身内だけでおこない、その後にお別れ会のようなものをやってもらえたら、というのが富田さんの遺言のようなものだったから、それを聞いた数人、ボイジャー社長の萩野正昭さん、think Cの福井健策さん、MIAUの津田大介さんなどとともに私もひっそりと片隅のベンチに加わった。全員が富田さんに対して深い共感を抱いていた。追悼の会の相談とともに、青空文庫を積極的かつ持続して支援しようという話に自然に発展していき、それが「本の未来基金」として結実し、動き始めている。集められた寄付金から、まず500万円が青空文庫の未来のために寄せられた。青空文庫の活動のためにという目的を知って寄付してくださったたくさんのみなさんに深く感謝する。
(「本の未来基金」の活動報告には富田さんの追悼イベント「青空文庫の夢:著作権と文化の未来」の報告があり、当日の基調報告とディスカッションの動画、およびメディアによるイベントレポートへのリンクがある)。

また電子書店「BOOK☆WALKER」では、12月8日、青空文庫で公開されているデータのうち、著作権の切れた作品をEPUB形式に変換し、無料の作品として配信を始めた。さらに「本の未来基金」へのポイント寄付の受付もしている。公開直後に訪ねてみたサイトのランキングでは富田さんの『パソコン創世記』が一位となっていた。すごいな。

こうした出来事を経験すると、青空文庫もここまで来たのだと深い感慨を覚える。「本の未来基金」は富田さんが亡くなったことがきっかけとなって生まれた活動だが、12000以上に及ぶタイトルを自由に使えるように静かに擁しているいまの青空文庫でなければありえなかったかもしれない。「BOOK☆WALKER」のEPUB版青空文庫はいまの青空文庫のそうしたありようから発想されたものだとも思う。いまこのときの青空文庫にはそうした影響力があることにほんとうに感慨を覚える。

青空文庫の運営やファイルの点検にかかわるスタッフは最初から少人数だった。始まりが4人だったことはともかくとして、現在も10人を下回る弱小体制だということはあまり知られていないかもしれない。その10人のなかには、私のように日々の作業をほとんど担っていないメンバーもいるから、実質はもっと少人数だ。始めたメンバー4人はすでにお互いを知っていたし、なにか問題があればすぐに会って相談できた。いまの体制ではそうはいかない事情がある。暮らしている場所はそれぞれにお互いから遠いから、会う機会は限られている。連絡はメールに頼るほかなく、求める返事がすぐに返ってくるとも限らない。熱心に作業にかかわっている人ほど孤立感を深めてしまうことも何度かあった。全員がボランティアとしてかかわり、金銭や時間、役割などに縛られていないことは、一人ひとりにとっては案外たいへんなことなのだった。

富田さんは一年365日、一日24時間、ときには一日30時間くらいは青空文庫に向かっていたという印象がある。青空文庫の未来のヴィジョンがあったと感じるし、青空文庫を通じて外との関係も開かれていた。富田さんが遠からぬ未来に自分の死が待ち受けていることを常に意識しつつ、希望や喜びを全身で受けとめていたことを私は確信している。そうでなければ一日30時間向き合うことなんて、たとえそれが私だけの印象だけだとしても、出来はしないだろう。

猛暑の夏に富田さんを失なった我々スタッフは、冷たい秋風が吹くころに京都で集合して、今後の青空文庫についての打ち合わせをした。お互いの距離をのりこえて実際に会えるのは、生きているからこそ。富田さんの代わりはいないし、その必要もないけれど、青空文庫の今後のありかたそのものについては迷いなく決まった。公開作品を増やしていく。そのためにも外に向けて開かれた青空文庫にしたい。

具体的な一歩は明日やってくる新しい年に始まる。抽象的な存在となった富田さんもそのなかにいる。
(八巻)

持続可能な発展、という言葉を、最近よく聞くようになった。
「環境と開発に関する世界委員会」の報告書では「将来の世代の欲求を満たしつつ、現在の世代の欲求も満足させるような開発」と定義されている。
要するに、無理をせず、負担を増やさず、時間をかけてでも質を高めていく発展ということなのだろうと思う。

青空文庫は今年の夏、活動の中心となって動かしてきた富田倫生さんという人物を失った。
ことの始まりから17年の間、青空文庫は主に彼の情熱を推進力として進んできた。この年末年始は、彼を失ってから初めての年越しになる。

今年一年、世の中は明るい話題にはあまり恵まれていなかった。
政治がらみの暗いニュースには事欠かなかった上に、惜しまれる人、時代を象徴する人たちが、数多く世を去っていった。時代の「顔」が見えにくくなった時代を象徴するような年だったかもしれない。
そんな中で、青空文庫の立ち位置を、今一度考えてみる年でもあった。

青空文庫とは何か、と問われれば、「手を伸ばせば、そこにある本棚」と答えてきた。
17年間で、高度成長と呼んでもよさそうなくらいに、規模はずいぶん大きくなった。しかし、誰でも読めるようにネット上に本を公開していく、という青空文庫の本質が変わったわけではない。本を紙から、物理的な制約から、権利やしがらみからも解き放ち、青空に積み上げていく。それは、昔も今も変わらない青空文庫の基本だ。
次の世代に引き継いでいくことも、活動を続けていく上では不可欠な要素だけれど、幸いなことに、富田さんからバトンを受け取ってくれる人もいる。
富田さんをはじめとした少ないスタッフでやりくりしてきた青空文庫だが、今後はさらに手の届きやすいところに本棚を置き、本を積む人、読む人、本でつながる輪を拡げていく人、いろんな人に立ち寄ってもらえるようにしよう。
これこそ「持続可能な発展」に他ならないのではなかろうか。

「持続可能な青空文庫」は、来るべき年も、少しずつ、歩みを進めて行くはずだ。
これからもずっと、「手を伸ばせば、そこにある本棚」であり続けるために。

今年も青空文庫へのご支援、ご協力ありがとうございました。
新しい年も、引き続きよろしくお願いいたします。
(LC)

2013年12月25日 24日付「そらもよう」にリンクを追加
昨日の「そらもよう」に、参考として「琴の音」の底本の冒頭画像へのリンクを追加しました。

先の件に限らず、「曉月夜」公開以来オンラインやオフラインで様々な感想が寄せられています。一々お名前を挙げることは省略させていただきますが、校正担当として皆さまに感謝致します。
(Juki)

2013年12月24日 明治26年版「琴の音」の修正
さる19日に公開した「琴の音」の内、濁音付きの片仮名繰り返し記号「ヾ」を平仮名繰り返し記号「ゞ」に、テキストファイル、XHTML共々修正しました。
@2SC1815J さん、 @uakira2 さんのご教示によるものです。深く感謝致します。

繰り返し記号に関する基本方針は公開時のそらもようの「繰り返し記号については…」という箇所にあるとおりですが、今回の修正はこの方針が完全には実現できていなかった点を改めるものです。

@2SC1815J さんには、繰り返し記号に関して「琴の音」が発表されていた当時の活字見本と底本を比較するというアドバイスをいただきました。活字見本の画像を公開しているとして @2SC1815J さんが紹介されたのが @uakira2 さんです。
@uakira2 さんには「琴の音」発表時に近い明治22年製文堂『五号活字見本』の内「カタカナひらがな万葉仮名」の画像をTwitter経由で見せていただきました。平仮名繰り返し記号は一見片仮名繰り返し記号に似ているものの、同じ欄の片仮名繰り返し記号とは違うこと、そして「琴の音」の底本画像(冒頭部の画像)で「ヾ」と見えていたのは実際は平仮名繰り返し記号であったことがこの活字見本でわかりました。

又、@2SC1815J さんには、活字見本を活用した作業の可能性についてもアドバイスいただきました。併せて感謝致します。
(Juki)

2013年12月19日 「京都大学電子図書館 電子化テキスト」より樋口一葉作品を収録・公開開始中
本日、樋口一葉「琴の音」を公開します。入力者は万波通彦さん、校正者は私(Juki)です。
「琴の音」自体は、別の底本によるテキストファイルとXHTMLファイルが既に公開されていますが、今回のテキストの底本は1893(明治26)年12月の「文學界」です。

併せて、報告が遅くなりましたが、
9月6日に樋口一葉「曉月夜」を、
11月19日に、これも同じく樋口一葉「経つくゑ」を公開した事をお知らせします。
「琴の音」と同じく、二作品とも入力者は万波通彦さん、校正者は私です。

以上三作品ファイルの元となったのは、
かつて「京都大学電子図書館 電子化テキスト」で「樋口一葉小説集」として公開されていたhtmlファイルです。
昨年秋の「図書館機構 : 『京都大学電子図書館 電子化テキスト』の提供を終了します(2012-09-27)」(京都大学図書館機構)という記事には、コンテンツのうち「樋口一葉小説集」は青空文庫で引き継いで公開できるよう調整を進める旨の記述があります。
より詳しく言うと、京都大学の電子図書館の担当部署から「樋口一葉小説集」の引き継ぎに関するご提案があり、青空文庫は16作品分のhtmlファイルと底本の画像pdfファイルを受け取りました。
青空文庫点検グループは、提供されたhtmlファイルからテキストファイルを作る作業を行い、青空文庫で公開する際のルールに従った整形を施しました。元となったhtmlファイルにはルビの表示がなかった為に、底本にルビがある作品には底本と同じようにルビを振りました。

点検グループの一員でもあった富田さんは、ご自分が中心となって樋口一葉作品群の受け入れ作業を担ってこられました。特に、ルビを振る作業はほぼ一人でされていたようです。総ルビの作品に取り組んだ時の心境なのか、
「ルビ振りはきっと、永遠に終わらない。」
という富田さんの嘆きがTwitter上で残されています。富田さんが世を去る直前まで行ってこられた作業の量と種類は常人を超えていましたが、樋口一葉作品へのルビ振り作業もその内の一つでした。

4月上旬までには点検グループはテキストファイルの整形作業をほぼ全て終え、校正作業を残すのみとなりました。

さて、「京都大学電子図書館 電子化テキスト」で公開されていた作品は、初出誌・紙か、もしくは初出誌掲載後比較的早い時期に掲載された別の雑誌・新聞を底本としています。これら樋口一葉作品の底本には、二つの点で今とは異なる表記が本文中に頻出します。

一つ目は仮名です。
底本によって割合は異なりますが、本文には変体仮名と通常の平仮名が混在しています。
京大電子図書館「樋口一葉小説集」では、変体仮名は対応する仮名に置き換える方針を取っていました。

二つ目は繰り返し記号です。
通常、片仮名繰り返し記号として使われている「ヽ」「ヾ」が、底本では平仮名の繰り返し記号として使われている例が少なからずあります。又、「ゞ」と「ヾ」が同時に使われている例もあります。
京大電子図書館「樋口一葉小説集」では、底本での見え方にかかわらず平仮名の繰り返し記号「ゝ」「ゞ」で統一していました。

青空文庫では、読みやすさと厳密さのバランスを模索した末、公開までの作業を行う際に以下の方針を選択しました。
  • 変体仮名については、京大電子図書館「樋口一葉小説集」と同じく「変体仮名は対応する仮名に置き換える」方針にする。仮名の置き換えの妥当性に関しては、校正時、変体仮名についての入門書やネット上で公開されている対応表などで確認。本文の文末に「※変体仮名は、通常の仮名で入力しました。」を追加。

  • 繰り返し記号については、「底本で使用されている繰り返し記号を表示する」かつ「繰り返し記号が混在していても統一しない」という方針を取る。(先例としては三島霜川「昔の女」)


現在、青空文庫の収録作品のほとんどは、参加者皆が自分たちの手で入力した成果です。
しかし、青空文庫の最初の5作品が福井大学助教授(当時)岡島昭浩さんが作成された「日本文学等テキストファイル(Wayback Machine によるスナップショット)」収録のテキストが元であったように、先人によって入力され、公開されたテキストが元となった作品も少なからずあります。(例えば、「X68000 電脳倶楽部」)
京都大学電子図書館も又、準備期間を含めると青空文庫よりも前に活動を開始された先人です。その成果の一部を引き継ぐ事になりました。

この場を借りて京都大学電子図書館を管轄されている皆様に感謝致します。又、報告が遅れた事についてお詫び申し上げます。校正担当者の人手不足の為、残り13作品が全て公開されるまでにはまだ暫く時間がかかりますが、一歩一歩進めてまいります。(Juki)

2013年11月05日 三木清「人生論ノート」の入力をご担当いただいている方にお願い
三木清「人生論ノート」の入力をご担当いただいている方に申し上げます。

作業を引き継げないかとの打診を受けて、進捗状況とお気持ちの確認のためメールをお送りしましたが、不達でした。
reception@aozora.gr.jp宛に、ご一報をお願いします。

本日から一ヶ月、ご連絡を待ちます。
一月を経て、連絡を取り合えない場合は、これらの入力を引き継いでいただこうと思います。

作業の継続が難しくなった際は、皆さん、どうぞお気軽に、reception@aozora.gr.jpまでご連絡ください。
メールアドレス変更の際は、reception@aozora.gr.jp宛にご一報をお願いします。(門)

2013年11月05日 内田魯庵「硯友社の勃興と道程」「最後の大杉」「美妙斎美妙」の校正をご担当いただいている方にお願い
内田魯庵「硯友社の勃興と道程」「最後の大杉」「美妙斎美妙」の校正をご担当いただいている方に申し上げます。

作業を引き継げないかとの打診を受けて、進捗状況とお気持ちの確認のためメールをお送りしましたが、お返事がありませんでした。
reception@aozora.gr.jp宛に、ご一報をお願いします。

本日から一ヶ月、ご連絡を待ちます。
一月を経て、連絡を取り合えない場合は、これらの校正を引き継いでいただこうと思います。

作業の継続が難しくなった際は、皆さん、どうぞお気軽に、reception@aozora.gr.jpまでご連絡ください。
メールアドレス変更の際は、reception@aozora.gr.jp宛にご一報をお願いします。(門)

2013年10月12日 青空文庫の現状について
先日9月25日に開催された故・富田倫生さんの追悼イベントおよびお別れ会には、多数のご来場・ご視聴をいただきまして、どうもありがとうございました。そして本の未来基金への多くのご寄付もたまわりました。心より感謝申し上げます。 (詳しいご報告はリンク先の別サイトをご覧ください)

また故人が亡くなって以後、多くの方から応援の声や、作業協力の申し出をいただいております。ボランティアで運営されている当文庫としては、これほど嬉しいことはありません。

ただ申し訳ないことに、有志の力だけで様々な運営に関わる事などを回しているため、日々の作業量には限界があり、ただいま通常活動で何とかできる以上のお問い合わせをいただいているのが現状です。

たとえば、入力や校正の申請には通常では4週以内に返答することになっておりますが、正直に申し上げて、もうしばらく(場合によってはかなりのお時間)お待たせすることになるかと存じます。また青空文庫宛のメールも、すぐにはお返事しかねる状況にあります。ひとつひとつ精査・検討した上で応対しておりますので、あしからずご了承ください。

さらに次期代表や現状へのお問い合わせも複数いただいておりますが、元々青空文庫には代表というものがなく、多々誤解を生んでいる部分もあるかと思いますので、ここでは現状説明を兼ねて、あらためてボランティアの集まりとしての青空文庫をご紹介したいと存じます。

現在、青空文庫は次のような運営体制で動いております。名称だけではわかりにくい、との指摘もたびたびいただいておりますので、学校の部活動になぞらえて簡単な解説も付記いたしします。

  • 工作員または耕作員のみなさま
    日々あるいは余暇の時間を活用して、入力・校正などを世界・全国各地で行ってくださっている、青空文庫のボランティアのみなさま(部員)です。作業を始めたばかりの新人さんから長年ご協力いただいているベテランの方まで、また継続的に活動してらっしゃる方から、まとまった時間のできたときだけやるという人まで、関わり方は様々です。個人での作業が一般的ですが、グループワークという形で団体名義での活動をしてくださっているところもあります。

  • 呼びかけ人
    学校の部活動でいうところの顧問に当たる立場になります。工作員・耕作員の活動をサポートしつつ、必要なときには全体に関わる判断や承認をします。

  • 点検グループ
    部活動でいうところのレギュラー部員です。ボランティアのみなさんからの入力・校正希望に対する受付と、入力・校正してくださった作品の受領、また公開ファイルの作成を行っており、様々なご質問にも受け答えしています。

  • 広報
    部活動でいう渉外に当たり、青空文庫へ各方面から寄せられた取材や相談を、中心となって対応する役になります。

  • 会計
    青空文庫の運営資金を管理する役です。サーバ費用や底本購入費・消耗品費・外部校正費などの支払いや、外部からの広告・寄付の受入れなどをしています。また青空文庫は、ネットを通じて人の集まっているボランティア団体ですが、見なし法人として法人税等も納付しています。

  • Web管理
    青空文庫では、データベースを活用してサイトが運営されており、その管理などを行う役になります。部活動でいうとマネージャーでしょうか。

  • 外部協力者のみなさま
    入力・校正以外にも、あらゆる形で青空文庫を支援してくださっている方々がいます。分野別リストをはじめ、各まとめページやツール・アプリの開発、ミラーサーバ・メールサーバの技術提供など、様々なご協力があって今が成り立っております。

運営も呼びかけ人以下Web管理までの全員がボランティアで、工作員・耕作員のなかから手を挙げた方がその役目を無償で担っています。さらに青空文庫にはただいま大きく分けてふたつのメール アドレスがありますが、info は上記のなかでも呼びかけ人・広報・会計・Web管理の担当者に、reception は呼びかけ人・点検グループに届くようになっております。

とはいえ、故人は上記の役目のほとんどを兼ね、故人しか知らぬこともあったため、青空文庫には全容として内部の者にも不明瞭な点が少なくなく、ただいま通常の作業を進めるとともに、その把握に努めている最中です。その過程で、故人の逝去以来、多くの方々に不義理をしていたことにも気づきました。関係者の方々には誠に申し訳なく、心よりお詫び申し上げます。

ボランティアのため過度な無理もできず、また運営については作業に通じた者が少なく誰でもできることではないので、急な増員でカバーできることでもありません。それゆえ、これから活動が滞っているように見えることがあるかもしれませんが、可能なペースでひとつずつ案件に取り組んでいるさなかですので、どうかご容赦いただけると幸いです。

青空文庫は、テキストアーカイヴという文化の火種を絶やさぬよう、今後ともできうるかぎりの活動をしていく所存ですので、みなさまどうぞよろしくお願い申し上げます。(U)

2013年08月31日 9月25日(水)に富田倫生さんを送ります
昨日お知らせした「富田倫生追悼イベント」の詳細です。
当日ご参加いただき、ともに富田さんを送ってください。
イベントのことを、近くや遠くの人にお知らせください。
お願いいたします。(八巻美恵)

    *****

富田倫生追悼イベントと「本の未来基金」創設のお知らせ

去る8月16日、青空文庫の呼びかけ人、富田倫生さんが亡くなられました。
日本の電子出版発展へ大きな礎石を与えた青空文庫。率先してこの活動に邁進した富田倫生さん。
文化共有の青空の価値を誰にでも見える形で実践し、文化・研究・福祉・ビジネスの面で計り知れない影響を与え、それらを脅かす著作権保護期間の延長論に警鐘を鳴らし続けた彼の足跡を振り返り、遺志を継ぐべく、9月25日(水)『富田倫生追悼イベント』を開催致します。

【イベントの詳細】
2013年9月25日(水) 会場:東京會舘ローズルーム 千代田区丸の内3-2-1
http://www.kaikan.co.jp/company/access.html

『富田倫生追悼イベント』は二部に分かれており、第一部は「青空文庫の足跡:著作権と文化の未来」と題しまして、記念シンポジウムを行います。その後、引き続き第二部「ありがとう富田倫生さん」と題するお別れ会を行います。

第一部:記念シンポジウム 15:00開場、15:30〜17:30(120分)
「青空文庫の夢:著作権と文化の未来」

・冒頭報告
・基調スピーチ(以下、順不同・敬称略。タイトルは仮)
①電子図書館の挑戦 長尾真(前国立国会図書館長、元京都大学総長)
②青空文庫の歩みと成果 萩野正昭(ボイジャー代表取締役)
③保護期間延長問題とは何か 福井健策(弁護士・日本大学芸術学部客員教授)
・パネルディスカッション/アピール発表
大久保ゆう(青空文庫)
津田大介(司会、ジャーナリスト)
長尾真(前国立国会図書館長、元京都大学総長)
萩野正昭(ボイジャー代表取締役)
平田オリザ(劇作家・演出家)
福井健策(弁護士・日本大学芸術学部客員教授)

*定員200名(下記にて事前予約申込制・参加費無料)
http://www.voyager.co.jp/aozora/

第二部:お別れ会 17:30開場、18:00〜20:00(120分)
「ありがとう富田倫生さん」
献杯
関係者スピーチ
富田さん映像・写真上映 ほか

*申込不要・参加費:5,000円(参加費のお支払いは当日受付にてお願いします)

主催:富田倫生追悼イベント実行委員会
   共同代表 富田晶子、八巻美恵(青空文庫)
共催:青空文庫
   株式会社ボイジャー
   一般社団法人インターネットユーザー協会(MIAU)
   クリエイティブ・コモンズ・ジャパン(特定非営利活動法人コモンスフィア)
   thinkC
協賛:志ある国内外の各企業・団体(追って公表させて頂きます)

【青空文庫からのメッセージ】
青空文庫の発起人の一人であった富田倫生さんのお別れ会についてお知らせいたします。
華美なことには戸惑う富田さんでしたが、この日は思いきって、感謝やさよならの気持ちを込めて、みんなで故人を偲びつつ、青空文庫のこれまでやこれからを笑顔で話す機会にしたいと考えています。
できるだけ多くの方が集まってくださることを願っております。
お別れ会については、こうしたことに非力な青空文庫にかわって富田さんと関わりのあった人や組織が大きな力を貸してくださいました。
当日、お会いできますように。
青空文庫有志一同

【「本の未来基金」の創設と寄付募集】
今回の追悼イベント、及び青空文庫の今後の活動支援等の原資として、広く賛同者から寄付を募り、「本の未来基金」を創設します。青空文庫コンテンツに人生の喜びを見出し、その理念に共感する個人・企業・団体の方々に、積極的なご支援を頂ければ大変嬉しく思います。
本の未来基金の入金口座と運営の詳細は現在準備中です。今すぐ寄付して下さる方は、下記のペイパル口座をご利用ください。責任をもって本の未来基金に移管いたします。
http://www.voyager.co.jp/aozora/

【お申込みと問合せ先】
http://www.voyager.co.jp/aozora/ (問合せフォームより)

2013年08月29日 富田倫生追悼イベント決定
去る8月16日に亡くなった富田倫生さんのためにたくさんのお悔やみのメールをいただきました。ありがとうございました。富田さんのアドレスにも届いているはずですが、告別式にプリントアウトして持っていきました。

富田さんの追悼イベントを9月25日(水)におこないます。青空文庫だけではなく富田さんのためにたくさんの人と団体が協力して、盛大に暖かく富田さんを送ることができそうです。詳細は明日またここでお知らせいたします。とりあえず日時のお知らせを。スケジュールに入れておいていただけるとうれしいです。
(八巻美恵)

2013年08月17日 訃報
2013年8月16日、青空文庫呼びかけ人のひとり、富田倫生さんが世を去りました。
61年の、短く熱い生涯でした。

御自身の生前の希望により、葬儀は近親者のみで行います。
青空文庫では、お問い合わせに応じかねますので、ご了承ください。

かけがえのない仲間を失い、悲しみに沈んでおりますが、青空文庫は今後とも平常心で運営してまいります。
皆様の変わらぬご支援ご協力お願いいたします。

青空文庫スタッフ一同

2013年07月07日 片岡義男『夏と少年の短篇』を登録
青空文庫の誕生日(!)に片岡義男『夏と少年の短篇』を登録した。
「夏は心の状態だ」と言う片岡さんの真夏と少年のストーリーを、猛暑の予報のあるこの夏にぜひとも楽しんでほしい。片岡義男プロジェクトは2010年からスタートしているが、青空文庫のなかでは異例の個人的な試みである。片岡さん自身の意思に添ったクリエイティブ・コモンズ・ライセンスをつけて公開することがこれからの青空文庫の小さな布石になるようにとの願いをこめて、この実験をほそぼそともうしばらくは続けてみたい。片岡さんの希望で「道順は彼女に訊く」と「東京青年」が作業中だ。

青空文庫の誕生日を7月7日にきめたのはいつだったか、誕生した年は1997年だからようやく十代の後半に達したことになる。むつかしい思春期を乗り越えられたのだろうか。次から次へと困難はむこうからやってくるから、たとえ思春期を乗り越えられても人生(?)は続いていく。さまざまな困難に向き合いながら過ぎた時間は、実際に入力や校正、そのファイルの点検などの作業を日々自分の頭と手を使っておこなっている人たちの積み重ねで出来ている。どれも緻密に継続しなくてはならないし、ある方向を示していかなければならない作業だ。根本のところは人間にしか出来ないということは忘れてはいけない。

必要な資料を閲覧するために、何年かぶりで国会図書館に行った。どの階にもたくさんの端末が装備されていて、これが図書館なの?という目がくらむような光景だった。端末を使っている人はさまざまな理由で図書館のデータの蓄積から必要なものを手に入れている。利用者カードとパスワードで快適に必要な図書を探せて、その資料が電子化されていればコピーも端末から直接依頼できてしまう。国会図書館のあの光景を日本に限らず世界のとおくまで少しずつゆるやかに散りばめていったら青空文庫に似たものになるのかもしれないと感じた。青空文庫は利用者カードもパスワードも必要なく、どの資料にも直接アクセスできて自由に使えるから、ゆるく広がるための条件はじゅうぶんに備わっている。そしてだからこそ課題も尽きることがないのだ。開放的で魅力的だけど付き合うためにはちょっと緊張を強いられる、そんな友だちのような青空文庫の歳月をあらためて思った午後だった。(八巻美恵)

2013年05月17日 野呂栄太郎「日本資本主義発達史」の入力をご担当いただいている方にお願い
野呂栄太郎「日本資本主義発達史」の入力をご担当いただいている方に申し上げます。

作業を引き継げないかとの打診を受けて、進捗状況とお気持ちの確認のためメールをお送りしましたが、連絡がつきませんでした。reception@aozora.gr.jp宛に、ご一報をお願いします。

本日から一ヶ月、ご連絡を待ちます。一月を経て、連絡を取り合えない場合は、これらの入力を引き継いでいただこうと思います。

作業の継続が難しくなった際は、皆さん、どうぞお気軽に、reception@aozora.gr.jpまでご連絡ください。メールアドレス変更の際は、reception@aozora.gr.jp宛にご一報をお願いします。(門)

2013年05月12日 「同意します。」メールに添えてほしい青空文庫での名前
作業への参加を考えてくださる方にはまず、青空文庫のファイルの使い方と作り方を確認してもらっている。
そこに示された進め方を受け入れられるなら、「同意します。」メールの送信へと進んでもらう。

このメールには、「青空文庫での名前」を決めて、書き添えてほしい。
他の文書ではそうお願いしてきたものの、「工作員を志願される皆さんへ」には、名前の記載要請が抜けていた。
そこを追記した。

この名前を、図書カードとファイルの入力者欄、校正者欄に記載する。
皆のものを耕す皆さんへの、せめてものお礼として。(倫)

2013年05月01日 北原白秋第一歌集『桐の花』刊行から100年
第一詩集『邪宗門』、第二詩集『思ひ出』に続いて、北原白秋は1913年、はじめての歌集『桐の花』を刊行する。
以来100年。
彼が育った、福岡県柳川の北原白秋記念館では、この節目に『桐の花』にちなんだ展示を行い、写真展の開催を予定している。

『桐の花』には、短歌に加えて随筆が収録されている。その中の一篇、「桐の花とカステラ」は、青空文庫で公開されている。
写真展応募者への配布資料に、このテキストをそえたいとご連絡をいただいた。

九州では、桐の花は終わったという。
だが、以北ではこれからだろう。
すでに行われている展示に加えて、来月には、写真展の作品募集も始まる。
募集期間は6月1日〜25日。作品は、7月1日〜31日まで、同館のロビーに展示される。応募要項は、こちら

青空文庫側では、白秋の作品リスト、図書カードに、同館へのリンクを組み込んでおく。
桐の花』は、入力を終えていただいたが、まだ、校正に取りかかれていない。(倫)

2013年02月14日 第13期(2011年9月1日〜2012年8月31日)会計報告
青空文庫第13期(2011年9月1日から2012年8月31日まで)の会計報告をいたします。
13期におきましては、10期11期を中心に頂戴した寄付金を原資とした有償校正に取り組みました。有償校正をお願いしている方はこれまで青空文庫に関わったことのない職業的に校正をなさっている方です。
この費用は電子図書館公開費に計上しております。
報告がおそくなりましたことをおわびいたします。(青空文庫会計部)

2013年01月29日 公開サイトのUTF-8化が引き起こした混乱
青空文庫に対応したビュワーの一部で、作品ファイルをダウンロードできないといった問題が生じている。
原因となったのは、一昨日(1月27日)実施した、公開サイトの文字コード変更だ。これまでEUC-JPにしてきた図書カードを、UTF-8に変えた。これで、いくつかのビュワーに問題が生じた。

作品名や著者名を、外字注記なしですっきりと表示するには、データベースをUnicode化し、公開サイトをそれで作ることが必要だ。
EUC-JPのままでいれば、作品ファイルの文字コードの選択肢も限られる。Shift_JISで作ってきた作品ファイルの文字コードを今後どうするか考える上で、技術的な制約をのぞいておくためにも、UTF-8化を実現したかった。
昨年12月27日の、「データベースと公開サイトのUTF-8化に向けて」と題したそらもよう以来、ステップを踏んで案内してきたつもりでいたが、結果からみれば、周知が不十分だった。加えて、CSVの仕様に、重点を置きすぎたかもしれないという反省もある。

図書カードやリストのUTF-8化は、事前には、新設するものと更新のかかったものから進め、一挙に全体を変える形はとらないと言ってきた。準備も、そのつもりで進めた。ところが、技術的な見逃しがあり、全ての図書カードを同日、UTF-8化してしまった。
これで、足をすくわれたビュワーもある。例えば、快技庵の豊平文庫、よみづくえ、neo文庫だ。同社は、新規公開作品のリストへの追加を、ソフトの更新ごとに行っている。新しいものだけUTF-8化する形なら、支障なく仕様変更に対応できたものを、一挙の公開で溝を作った。
いったんUTF-8化した図書カードのうち、内容の変更のないものをEUC-JPに戻すことも検討したが、事態をさらに混乱させかねないと判断し、このままで行くことにした。
快技庵と、同社のビュワーを使っておられる方、また同じ溝に足を取られたその他のソフト開発者、利用者の皆さんにご迷惑をかけた。申し訳ありません。

もとより、ビュワーソフト自体に、深刻な問題があるわけではない。UTF-8に対応してもらえれば、もとどおり使えるようになる。
快技庵ではすでに、豊平文庫、よみづくえ、neo文庫の対応を終えて、アップルに申請。承認を経て、更新版のリリースを待っていると聞いている。
関係の皆さんの迅速な対応に、感謝したい。(倫)

2013年01月27日 青空文庫サイトをUTF-8化
どこが変わったか、表からはほとんど見えないが、今日から、青空文庫の公開サイトをUTF-8でUnicode化した。

本日公開した、中谷宇吉郎「雪雑記」、「「霜柱の研究」について」の図書カードのように、新しく作ったページ。加えて、トップページや作品リストのように更新のかかったところは、新しいUTF-8になっている。
なにも変わっていないページは、従来通りのEUC-JPのまま。これから長い時間をかけて、公開サイト全体のUTF-8化が進んで行く。

それで、なにが変わるのか。
これまで、図書カードやリストで外字注記してきたJIS X 0208にない漢字や、特別な書き方を用いてきたローマ数字などが、コードに置き換わる。
例えば、寺田寅彦の「映画雑感」の表題に含まれるローマ数字はこれまで、「1[#「1」はローマ数字、1-13-21]」と書いてきたが、これが「Ⅰ」になる。
事情があって、中途半端なところで中止していたJIS X 0208にない文字のコードへの置き換えを、再開する。「大倉※[#「火+華」、第3水準1-87-62]子」は、今日から「大倉燁子」となった。
置き換えると、表示が期待できないごく一部の文字、例えば、井上円了「「失念術講義」」の底本データ中の「※[#「人がしら/二/心」、U+2B779]」といったものと、Unicodeにもない文字だけ、外字注記で残す。

ただし、作品ファイルには変更を加えていない。
テキスト版は従来通り、Shift_JIS。XHTML版もShift_JISで、JIS X 0213の文字は画像で埋め込み、それ以外のUnicodeの文字は、外字注記する形のままとしている。

青空文庫をより広く活用してもらうための〝水路〟として、公開中作業中作品の書誌情報を、CSVで提供してきた。
今回実施した公開サイトの仕様変更は、青空文庫データベースのUTF-8化があって、可能になったものだ。これで今日から、外字注記をほとんどなくしたUTF-8版のCSVを提供できる。データベースを変えたために、従来提供してきたShift_JISのCSVを、そのままの形で提供することができない。従来に近いバージョンは、Shift_JISをマイクロソフトが拡張した、CP932で出す。

青空文庫ファイルの利用拡大と足並みを揃えて、書誌CSVも広く使われるようになった。そこに残してきた外字注記を、そのまま引きずった処理もみられる。
今回のUTF-8化が、青空文庫外のシステムにも良い影響をもたらすことを期待している。(倫)

2013年01月24日 従来互換版CSVはCP932で
データベース、公開サイトのUnicode化に伴って、青空文庫から提供している書誌情報CSVの作り方を変える。
従来のものに近い形で提供するバージョンを、CP932で出して良いか意見を求めてきたが、そのコメント期間が昨日で終わった。
掲示板に、賛成のコメントが一件。反対意見はなかった。
従来のものに近いバージョンはCP932とし、新設するUTF-8版と並行して提供していく。
ここまでのご検討、ありがとうございました。

データベースの切り替えは、1月26日を予定している。
27日から、CSVの二本立て提供となる。
公開サイトは、一挙にすべてをUTF-8化するわけではない。
新設するページをUTF-8で作り、更新のかかったものを、順次、従来のEUC-JPから切り替えて行く。

コード化できるものを、外字注記等のまま残してしまう可能性がある。「これは?」と思われたら、reception@aozora.gr.jp宛、ご指摘いただきたい。(倫)

2013年01月23日 青空文庫内検索システムをさらに調整
トップページ右上の青空文庫内検索を、調整した。
下に並んだ、検索エンジンの名前のついたボタンは、Javascriptで動いている。これがoffにしてある場合、あるいは使えない環境でも、Googleの答えは返るようにした。
gooは、Googleのエンジンを使っている。検索の仕組みは用意したが、ほとんど同じ結果になると思い、ボタンは表に出さなかった。だが、Googleが拾わないものをみつける場合があるという指摘を受けて、表示する形に変えた。
今回の調整も、もりみつじゅんじさんに進めていただいた。重ねて、ありがとうございます。(倫)

2013年01月18日 青空文庫内検索システムの手直し
トップページ右上に、Googleの検索窓を置いてきた。
これを、Google、bing、Naver、Baiduを選べる形に変えた。
検索語を入れ、ボタンを選んでクリックすれば、そのエンジンで青空文庫内を検索した結果が返ってくる。
選ばずにreturn・enterを押すと、Googleで戻る。
Googleのエンジンを使っているYahoo !とgooは、入れていない。(コメントアウトしてあるので、ソースをいじれば使えるようになる。)

トップページの「資料室」に、「青空文庫検索ページ」の見出しを立ててきた。
ここから、もりみつじゅんじさんによる検索エンジンのリストにリンクしてきたが、使えないものが多くなっていた。掲示板「こもれび」に、「なんとかしてほしい」という要望があって相談。見出しは外し、これまでGoogleだけだった右上の検索窓から、四つのエンジンを選べるように変えた。
仕組みは、今回ももりみつさんが用意してくれた。ありがとうございます。(倫)

2013年01月16日 CP932に変換した従来互換版CSV
予定しているデータベースのUnicode化に伴って、書誌情報CSVの作り方を変える。
変更後、どのような形で提供するか、昨年12月27日付けのそらもよう記事「データベースと公開サイトのUTF-8化に向けて」で案内した。

この記事では、変更後大きく2種類提供するCSVのサンプルも紹介した。
新しく加えるUTF-8版と、従来のものに近いShift_JIS版だ。
加えて、UTF-8化したデータから変換するよう作り方を変えることで生じる、Shift_JIS版の問題点を示し、どう対処するか、コメントを求めた。

掲示板の「こもれび」や、メール、twitterで意見がよせられ、問題の解消のために、マイクロソフトによるShift_JISの拡張規格、CP932に変換してはという提案があった。
これにそって、CP932にしたものを用意してみた。
「公開中 作家別作品一覧:全て(CSV形式、zip圧縮)」をダウンロード
「公開中 作家別作品一覧拡充版:全て(CSV形式、zip圧縮)」をダウンロード

「作業中 作家別作品一覧:全て(CSV形式、 zip圧縮)」をダウンロード
こちらでは、「―」「~」は、この形で見える。(ただし、波ダッシュが全角チルダに入れ替わる問題は残っている。)
JIS X 0208にない文字は、Shift_JIS版ではすべて数値文字参照で見えていた。CP932版では、非0208文字の内、Windows外字にあるものはグリフで見え、それ以外は数値文字参照で見える。

どちらも一長一短で、判断に迷う。
だが、CSVを利用しておられる方から推す声があったことを踏まえて、現時点ではCP932版を選ぼうかと考えている。

先の案内では、1月20日までをコメント期間としていた。
追加でCP932版を検討していただくために、これを1月23日まで延ばす。
reception@aozora.gr.jpへのメール、もしくは掲示板「こもれび」に意見を寄せていただけるとありがたい。(倫)

2013年01月01日 春を待つ冬芽
待っていた汽笛が、重なり合って横浜港を渡り始めると、新しい年がやってくる。
 秋田雨雀「三人の百姓」。
 飯田蛇笏「秋風」。
 小倉金之助「黒板は何処から来たのか」。
 西東三鬼「秋の暮」。
 妹尾アキ夫「凍るアラベスク」。
 土谷麓「呪咀」。
 中谷宇吉郎「」。
 正木不如丘「健康を釣る」。
 正宗白鳥「心の故郷」。
 室生犀星「抒情小曲集 04 抒情小曲集」。
 柳田国男「遠野物語」。
 吉川英治「私本太平記 01 あしかが帖」。
本日で著作権の保護期間を過ぎた、12人の著作を公開する。

作品を複製したり、インターネットに置いたりする権利を、日本の著作権法は、作者が生きているあいだ、加えて死後50年にわたって、著作権者に独占させると決めている。この間、作品の利用はさまざまに制限される。ただし、保護期間を過ぎれば、誰に断ることなく電子図書館に置いて、自由に読んでもらえるようになる。
法律の規定で、縛りの解ける境目は、大晦日に設定されている。明けて新しい年がくれば、利用の自由が広く認められる。本日公開した作品はいずれも、今日からその扱いとなったものだ。

著作権が切れたばかりの作品を青空文庫が元日に公開するのは、今回がはじめてではない。はっきり意識して始めたのは、2005年のことだ。それ以前も、小規模にはやったことがあったし、以降は必ず、かまえて準備してきた。

元日公開を準備するようになったのは、著作権の保護期間が、死後70年に延長されると聞いたのがきっかけだった。本当に延ばせば、以降20年間、青空文庫は新規の著作権切れを、迎え入れられなくなる。70年が、過去にさかのぼって適用されれば、すでに公開している作品のおよそ半分を、取り下げざるをえない。

作家として暮らしを立てられるように、権利を定めて作品を守ることには意義がある。かつては私自身も、ライターとして、その仕組みに助けられた。
ただしもう一方で、あるタイミングで保護を打ち切れば、作品提供のコストを下げる余地が生まれる。縛りをはずせば、過去の作品を下敷きにして、新しい作品を作ることも容易になる。個人の“資産”から社会のそれへと位置づけを変えることで、作品を、さまざまに活用する道が開ける。
著作権の切れたものを、テキストにして公開する青空文庫の試みも、その一つ。インターネットが社会基盤の一層として加わることで、位置づけを変えて得られるものは、格段に大きくなった。
ならば保護期間は従来通りにとどめ、デジタルアーカイブを育てることこそが、インターネットを得た社会で、なすべきことではないのか。
そう考えて、2005年1月1日、「著作権保護期間の70年延長に反対する」と宣言し、元日公開で、著作権が切れることの意味をアピールしようと考えた。

社会の片隅で、静かにテキスト化を進めてきた青空文庫が反対を唱えたところで、何になるだろう。けれど負けるなら、保護期間50年でできることを実例として示し、延長のメリットとされるものとくらべて、それでも延ばすのかと問いながら、負けていきたいと考えた。
元日公開の裏には、みつけたと思った可能性の芽をつまれようとする者の、ごまめの歯ぎしりがあった。

神奈川県立図書館に隣り合った、公園のそばで暮らしている。小さいけれど桜の名所で、春は花見でにぎわう。
図書館に向かうとき、桜木町に出るときには、必ず公園をぬける。ひときわ寒いこの冬も、裸の枝についた冬芽は、少しずつふくらんでいくように見えた。
良き敗者たらんと始めた元日の新規著作権切れ公開には、どこかに、強いられた戦いの気分があった。そこにこの冬は、春を待つような気分が紛れ込んできた。

「青空文庫を使う人がふえている。」
2012年には、繰り返し、そう実感させられた。
数年前から、スマートフォンやタブレット用に、青空文庫を読むソフトが競って書かれ始めた。そこにこの年、電子書籍端末が加わった。
koboやKindleの専用ストアに、青空文庫から作品ファイルが移されていく。有料の本に並んで、いささか古くはあるけれど、一群の無料の作品が提供され始めた。ただで読める電子書籍の総称として、青空文庫を知る人が増えた。

「待つ」気持ちを駆り立てたもう一つの要素は、長く読み継がれてきた作家の著作権切れだ。
2013年には、吉川英治の著作権が切れる。ならば、三国志や宮本武蔵、私本太平記などが、青空文庫で読めるようになるのではないか。柳田国男も切れる。では「遠野物語」も。雪の研究で知られる、寺田寅彦の弟子の中谷宇吉郎。室生犀星、正宗白鳥、翻訳でたくさんの仕事をのこした妹尾アキ夫も。
こうした記事が何度か書かれ、twitterや掲示板で注目を浴びた。
1998年の織田作之助、横光利一。1999年の太宰治。以来、堀辰雄、坂口安吾、神西清、久生十蘭と、文体に古さを感じさせない作家の著作権が切れ始めていた。
だが、吉川英治への期待は、明らかにこれまでのレベルを超えていた。
著作権保護期間がこれまでどおり、死後50年に保たれれば、2014年には、野村胡堂。2016年は、江戸川乱歩、谷崎潤一郎、中勘助。2018年には、山本周五郎が切れると、話題は将来の期待へもつながっていった。

青空文庫のトップページには、元日にだけ、新しく著作権の切れた作家を歓迎する、「Happy Public Domain Day」のロゴを掲げる。
吉川英治は、まず「私本太平記」から始める。続いて、「宮本武蔵」「鳴門秘帖」と、進めるつもりだ。校正がすめば、「三国志」も公開できるだろう。柳田国男、室生犀星、中谷宇吉郎にも、早めに公開できるものがある。
どうぞ、読んでほしい。

昨年、電子書籍の専門ストアーに、青空文庫のファイルが移されると、「収録冊数の水増し」となじる声が上がった。仲間内では、以来、青空文庫を「水」と呼ぶことが流行った。
私たちの活動の目的は、著作権の切れた作品を、使い回しの効くテキストに仕立てて、社会の資源として利用してもらうことだ。四方八方に流れて、そこで人を潤そうと目指すのだから、水は青空文庫のあり方にふさわしい。
だが、水として社会を潤す試みは、簡単なことではない。保護期間を過ぎた作品をテキストにして、利用に制限をつけずにネットに上げるだけでは、水が流れ出すことはない。

開設当初、「青空文庫のファイルは自由に使ってください。」とだけ書いていた。オープンソースにも造詣の深い山形浩生さんから、そうした姿勢を「しょぼい」と批判された。このファイルを使って、何ができるか、何はゆるさないかを明確に定義し、表明しておかなければ、使う側は手を出しにくい。社会の資源としては、生かされないと。

批判された時点では、すでにかなりの作品を公開していた。それまでファイル作りに携わった全員に呼びかけて、使い方に関する話し合いを始めた。そうしてまとめたのが、「青空文庫収録ファイルの取り扱い規準」だ。以来、作業協力を申し出てくれる人には、まずこの文書に目を通してもらい、「有償、無償を問わず、著作者人格権を侵害しない範囲でなら自由に加工して、使って良い。その際、事前にも、事後にも、青空文庫への連絡の必要はない。」とすることに納得できるか、確認を求めている。

青空文庫が作っているものは何かと問われれば、テキストと答える。ルビの書き方、字下げや文字サイズなど、入力の元にした本の組版情報をどう表現するかを決めて、同じルールでファイルを積み上げようと目指している。
だが、最初からこう考えて始めたわけではない。日本の電子出版を拓いてきたボイジャーのエキスパンドブックからはじめ、特定のフォーマットには寿命があることを身にしみて知る中から、もっとも長持ちが期待できる形式はなにかと考えた。そして、何の変哲もないテキストに行き着いた。そこに書き込む組版情報の表現ルールを見直し、コンピューターで処理できる形を意識して、全体を組み立て直した。
青空文庫ファイルの表示ソフトは、このルールを逆にたどり、紙面と似通ったページを、画面上に組み立てる。電子書籍端末で利用するために用意されたファイル変換ソフトは、このルールを信頼して設計されている。
ルールが確立される前に作られたものは、見直して形式を整えておかないと、四方八方へ向かう水の流れにうまくのれない。そう思ってファイルの修正を続けてきたが、今の形式から外れたものは、まだ残されている。社会の水として存分に使ってもらうためには、見直しをさらに進める必要がある。

表示ソフトへ、変換ツールへと、青空文庫からは水の道が伸び始めた。そのつなぎ目として機能しているのが、作品名、著者名、底本、初出など、書誌情報を網羅したCSV形式のデータだ。
青空文庫のファイルでは、難しい漢字などが、へんとつくりの組合せで書かれていることがある。使っている文字コードに、その字がないことによる制約だ。従来はCSVにもこうした表現を用いており、引きずられて、外部のシステムに持ち込まれることがあった。そのデータの作り方を、変えようと思っている。変更後のサンプルを提供して、外部の利用者に見てもらっており、1月中には、切り替えを果たしたい。

2013年――。
青空文庫の小さな春を予感させるこの年、あなたはどんなふうに、ここから流れ出したファイルを読むだろう。
インターネットに接続されたパソコンか。スマートフォン、タブレット。それとも、電子書籍端末か。それらを支える要素技術を思う。言うまでもない。すべては、人が育てたものだ。
それらが拓いた電子の道を駆け抜けて、あなたの手もとに届くファイルを思う。一文字一文字が、ひとりぼっちの密室の作業で入力され、長時間の無言の集中のうちに校正されたものだ。それらは皆、青空文庫の仲間が作り上げて届けた。
水となって四方に流れ出せと願うなら、テキストをインターネットに置くだけでは不十分。組版の表現ルールを確立し、全員がそれに従って作業すること。自由な利用規則を定めて、明示すること。読書システムの組み上げに求められる書誌情報を、自ら差し出す姿勢も求められる。

寒風の中で春を待つ冬芽について習ったのは、いつだったろう。
剃刀の刃で縦に切ると、花びらになる部分、おしべ、めしべなど、花のパーツのすべてが、精密な模型のように一式そろい、肩を寄せて縮こまっているのが不思議だった。
固く閉じた芽の中で、花となる一式が準備されるのは夏から秋にかけてのこと。植物の生命が、その全てを用意する。

開花を待つデジタル・アーカイブを組み立てる要素にも、無から生じたものはない。
青空文庫の誕生は、1997年。今年で、足かけ17年になる。
入力の勢いに校正が追いつかず、10年の長きにわたって読む人を待つファイルを生んでしまった。開設当初、唯一の選択だった文字コードのまま作業を続け、その後普及したものに切り替えられていない。基盤整備の積み残しも、まだまだ抱えている。それでも、花弁となり、おしべ、めしべとなるものを、蝸牛の歩みの中で用意してきた。
求められるこまのすべては、春を待つ冬芽の中で準備されてきた。そしてその中心には、著作権制度の精神があり続けたと私は思う。

日本の著作権法は、第一条に法の目的を掲げている。
この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。
他人の手が、無作法に及ぶことを排除して、作った人を守ろうとするだけではない。権利を定めて保護を図る一方で、作品が広く公正に使われることにも意をはらう。保護と利用、双方を支えとして、文化の発展を目指す。
だからこそ保護に期限を設け、社会の資産として広く活用されるよう願って、あるところで個人の手をはなす。
アーカイブの春を遠くのぞみながら、人が用意してきたさまざまな要素の中でも、その中核をなすものは、著作権制度に先人がこめた、理想ではなかったかと思う。

だが、私たちの耳にとどくのは、春の足音だけではない。
21分野にわたるTPP(環太平洋経済連携協定)の交渉項目には、知的財産も含まれる。2000年代半ばからの著作権保護期間延長論議の背景には、知財に関わる制度を自国にそろえさせることで、コンテンツ産業の利益の増大を狙うアメリカの圧力があった。2011年2月にリークされた、同国のTPP関連知財要求項目には、著作権の保護期間を、作者存命中と死後70年を下回らない範囲に設定することが含まれていた。

国立国会図書館は、かねてから、ページ画像方式の電子図書館、近代デジタルライブラリーを提供してきた。
加えて、本日から施行される改正著作権法によって、デジタル化したものの内、絶版資料等を図書館に配布する権利を認められた。
保護期間内でも、入手しずらいものは図書館に配信。期限を過ぎれば、近代デジタルライブラリーで広く一般に公開と、国会図書館は、書籍デジタル化でできることを一歩一歩積み上げてきた。アーカイブの春による最大の恩恵は、同館によってこそ、もたらされるだろう。
延長でたがをはめられるのは、青空文庫だけではない。
先行してデジタル化され、著作権切れを待つ国会図書館の電子書籍もまた、大きく制約されてしまう。

今一度突きつけられた保護期間延長要求に対して、再び、私たちにできることはなんだろう。
声も上げよう。旗も立てよう。
だが、たよりなく、まどろこしくは感じられても、デジタルアーカイブでできることを積み上げ、たくさんの人とともにその成果に潤され、その意義を強く自覚することこそ、もっとも根底的な延長への批判たりうるのではないかと思う。
春の足音が聞こえる。
開きかけた冬芽を胸に、この道をなお、進みたい。(倫)


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