そらもよう
 


2004年12月31日 青空文庫の2004年
2004年は、1通のメールとともに明けた。2003年の大晦日に、開発者から届いた新しいテキストビューア。後にazurと呼ばれるようになったそれは、誕生のときから、読書の新しいかたちを予感させるものだった。ウェブブラウザを必要とせず、azur自体がウェブブラウザの役割をつとめる。特別なファイル形式の「電子本」ではなく、青空文庫のxhtmlファイルを、そのまま縦書きで表示できる。ネットサーフィンと同じ気軽さで読書を楽しむことができるのは、当たり前のようでいて、実に新鮮な感覚だった。
Macintosh版とWindows版とで同等の機能を持つソフトウェアが世に出るまでには、それこそ種々様々なハードルや、壁や、落とし穴がある。話せば長い物語となるであろう紆余曲折を経て、azurは4月の東京国際ブックフェアでデビューした。公開作品を、手軽に、読みやすいかたちで読めること。Windows XPの普及にともなって、じわじわと切実な問題となりつつあった、「Windows XPでのJIS X 0213対応」が実現できたこと。エキスパンドブックとT-Timeが果たせなかった悲願を、azurが引き継いで、見事に果たしてくれた。この強力な道具を得て、青空文庫の屋台骨が、ぐんと太くなったようで心強い。
azurの興奮さめやらぬ7月7日、青空文庫は7周年を迎え、8年目に突入した。毎年の「創立記念日」は、特に何ごともなく過ぎていくのだけれど、今年は、7が重なることと、4000作品公開とがあいまって、みなさんからにぎやかにお祝いしていただいた。
青空文庫の活動は、1日ずつ、1作品ずつの、地味な積み重ねだ。7周年も4000作品も、積み重ねていくうちの、ひとつの通過点にすぎない。とはいえ、何かの節目というのは、ちょっと心を引き締め、また次の節目に向かって、気持ちを新たにする機会なのだろう。そして、4000作品という節目をazurとともに迎えることができたのは、青空文庫にとって、ひときわ大きな力になったと思う。
2004年も終わりに近づいた11月には、三石玲子賞を受賞することになった。azurの開発元であるボイジャー社との共同受賞。これからも青空に多くの本を並べていけるように、多くの人に読んでもらえるように、というエールだと受け止めている。
「IT化」が一段落した2004年は、ここ数年に比べると、少し地味な年だったかもしれない。しかし、データベースや作業着手連絡システムなどの基盤が整い、さらに強力なテキストビューアも加わって、「手を伸ばせば、そこにある本棚」という存在に、さらに一歩近づいたような気がする。
来るべき2005年も、雲を吹き払い、青空が拡がっていく年であることを期待したい。
みなさん、良いお年を!(LC)

2004年12月27日 森鴎外「渋江抽斎」等の入力ご担当にお願い
森鴎外「渋江抽斎」(底本「日本文学全集4」筑摩書房)の入力をご担当いただいている方に、申し上げます。
同作品の作業引き継ぎの打診を受けて、合わせてご担当いただいている、森鴎外「文づかひ」「普請中」「花子」「興津弥五右衛門の遺書」「冬の王」「雁」(底本は何れも同上)も含め、進捗状況とお気持ちの確認のためメールを送りましたが、不達でした。
reception@aozora.gr.jp宛に、ご一報をお願いします。

本日から一ヶ月、ご連絡を待ちます。
一月を経て、連絡を取り合えない場合は、「渋江抽斎」を今回申し入れてくださった方にご担当いただき、その他は「入力取り消し」とします。

工作員の皆さん。メールアドレス変更の際は、reception@aozora.gr.jp宛にご一報をお願いします。(倫)

2004年12月13日 むしとりあみ「利用の手引き」など関連文書の修正
2004年7月19日の「第二期むしとりあみ始動」と題したそらもようには以下のようにある。
「むしとりあみに指摘してほしいミスとは、作業上の誤りのうち、底本を参照することでその正誤が判明すると思われるもののみである。すなわち、「ルビの付け方」「外字注記」「レイアウト注記」「ファイル前後の注記」など、青空文庫独自の規則に関しては守備範囲外なので、行司は裁定を下す事はなく、必要ならばトピックスを閉じる。また、「テキストファイルの名前」「作品名読み」などのファイル管理も守備範囲外である。こういったむしとりあみの守備範囲外の点について気にかかることがあれば、reception@aozora.gr.jpへと連絡をして欲しい。」
この方針の変更に伴って、修正するべきであったむしとりあみ「利用の手引き」などの関連文書の修正を行った。むしとりあみ投稿の常連さんも初めての方も、一度「利用の手引き」を読んでから、投稿してほしい。行司さんには、この方針に従い、むしとりあみでは取り扱わない指摘に関してはreceptionアドレスに連絡してもらうように誘導をお願いしている。むしとりあみにはその守備範囲内の投稿をお願いいたします。(門)

2004年12月05日 「土」と町野修三さんのこと
長塚節「土」を登録する。底本は「長塚節名作選 一」(春陽堂書店)である。春陽堂は1912(明治45)年に「土」初版本を発刊して以来、長塚節との関わりは深く、「長塚節全集」を何度も発刊している。ところが今回校正を担当してみると、あまりに誤植が疑われる箇所が多く不思議に思った。すると、底本末尾の「巻末記」に、「土」が朝日新聞に掲載されてから以降の「土」出版の歴史が詳述されており、さらにこの底本を編集する際の方針が以下のように書かれていた。

「九 本巻の校訂に当たっては、初版本を底本とし、初出及び前記長塚家所蔵の新聞切り抜きにある修訂本文をもって校合した。
 その結果、底本と初出及び修訂本文との間に、なお数多くの異同があることを確認したので、初版本発刊の際における作者の修訂の意図に従い、修訂本文によってこれらの部分を復元した。」

そこで、今回の校正にあたって、ママ注記が入っていることに疑問は感じつつも、この春陽堂の編集方針を尊重して本文中には、一切誤植に関する注は付けなかった。

本作品を入力された町野修三さんは、私事にわたって申し訳ないが、実は私の近所に住んで居られた。そのことを知ったのは浜野智さんを通じてであった。何度かお会いし、楽しいお酒を酌み交わしたものだった。お元気そうに見えた町野さんの突然の訃報を奥さんから知らされたのは、二年前の、もう年も暮れようとしていた時であった。染色関係の会社を閉じられて「これからは悠々自適です」とおっしゃっておられたが、今にして思えば、身辺整理を徐々にされていたのではないかと思う。今日、12月5日は町野さんの三回忌にあたる。改めてご冥福をお祈りしたい。

なお、町野さんが心血を注がれた著作、「大伴家持論1前編」「大伴家持論1後編」と、かつて町野さんが開設されていたホームページを浜野さんがまとめられた「輝盡亭主人漫録」が青空文庫で公開されている。こちらも合わせて御覧いただければと思う。(繁)

2004年11月13日 宮沢賢治「注文の多い料理店」他、「カイロ団長」他、「飢餓陣営」他入力ご担当にお願い
宮沢賢治「狼森と笊森、盗森」「烏の北斗七星」「注文の多い料理店」「月夜のでんしんばしら」「どんぐりと山猫」の入力をご担当いただいている方に、申し上げます。
これらの入力を引き継げないかとのお申し出でを受けて、進捗状況とお気持ちの確認のためメールを送りましたが、不達でした。
reception@aozora.gr.jp宛に、ご一報をお願いします。

今回は合わせて、宮沢賢治「カイロ団長」「黄色のトマト」「ひのきとひなげし」と、同じく宮沢賢治の「飢餓陣営」「マリィヴォロンと少女」に関しても、引き継ぎのお申し出でを受けました。
入力ご担当お二方には、先にメールをお送りしていましたが、連絡を取り合うことができませんでした。

本日から一ヶ月、みなさんからのご連絡を待ちます。
一月を経て、連絡を取り合えない場合は、今回申し入れてくださった方に、引き継いでいただこうと思います。

作業の継続が難しくなった際は、どうぞお気軽にreception@aozora.gr.jpまでご連絡ください。
相談して、手だてを講じましょう。
メールアドレス変更の際は、reception@aozora.gr.jp宛にご一報をお願いします。(倫)

2004年11月11日 小栗虫太郎「黒死館殺人事件」入力ご担当にお願い
小栗虫太郎「黒死館殺人事件」の入力を、分担してご担当いただいているお二方に、申し上げます。
この作品の入力を引き継げないかとのお申し出でを受けて、進捗状況とお気持ちの確認のためメールを送りましたが、不達でした。
reception@aozora.gr.jp宛に、ご一報をお願いします。

本作品に加えて、夢野久作「女坑主」「けむりを吐かぬ煙突」「童貞」の入力をご担当いただいている方には、これらの状況に関しても、お聞かせ願えると幸いです。

本日から一ヶ月、ご連絡を待ちます。
一月を経て、連絡を取り合えない場合は、今回申し入れてくださった方に、引き継いでいただこうと思います。

メールアドレス変更の際は、reception@aozora.gr.jp宛にご一報をお願いします。(倫)

2004年11月09日 「青空文庫における書誌データのとりかた」を修正
「青空文庫における書誌データのとりかた」をまとめたことを、去る10月20日、この欄でご報告した。
その後、これに基づいてデータの修正を進めていく中で、「はっきり規定できていない」と感じる点が、いくつかあった。
そこで、青空文庫メーリングリストに提案し、以下の諸点をあらためることにした。

・「青空文庫における書誌データのとりかた」の【作品名読み】でいう、「漢字で表記されている外来語」の範囲から、「中国語、朝鮮語由来のものをのぞく。」とした。(中国語、朝鮮語由来のものの「読み」は、これによって、平仮名で書くことになる。)
・「書誌データのとりかた」の【作品名】に、「作品名の一部として組み込まれた空きには、原則として全角空きをあてる。(ただし1バイトのアルファベット中の空きには、半角空きを宛てる。「底本」「底本の親本」「初出」とも。)」を書き加えた。
・「青空文庫における「読み」の表記の規準」の【「読み」の表記の原則】で、「現代仮名遣い」に加えて、「外来語の表記」を、表記のより所として示した。
・同じく【「読み」の表記の原則】に、「書誌データのとりかた」ですでに述べている要素を、重ねて示しているところがあった。だめ押しするには及ばないと判断し、その箇所を削除した。(削ったのは、以下の部分。「片仮名による人物名と、人物名のうち、片仮名で表記された部分の「読み」は、片仮名で書く。/片仮名による作品名と、作品名のうち、片仮名で表記された部分の「読み」は、片仮名で書く。/漢字で表記された外来語の「読み」は、片仮名で書く。/アルファベットで表記された部分の「読み」は、片仮名で書く。」)
・「「読み」の表記の規準」」で、「外来語の表記」にない、「ヂァ」「ヂ」「ヂュ」「ヂェ」「ヂォ」の「読み」は、「ジャ」「ジ」「ジュ」「ジェ」「ジョ」ととると、方針を明示した。(倫)

2004年11月07日 エドガー・アラン・ポー「落穴と振子」「早すぎる埋葬」校正ご担当にお願い
エドガー・アラン・ポー「落穴と振子」「早すぎる埋葬」の校正をご担当いただいている方に、申し上げます。
この作品の校正を引き継げないかとのお申し出でを受けて、進捗状況とお気持ちの確認のためメールを送りましたが、不達でした。
reception@aozora.gr.jp宛に、ご一報をお願いします。

本日から一ヶ月、ご連絡を待ちます。
一月を経て、連絡を取り合えない場合は、今回申し入れてくださった方に、引き継いでいただこうと思います。

毎度毎度で恐縮ですが、工作員の皆さん。メールアドレス変更の際は、reception@aozora.gr.jp宛にご一報をお願いします。(倫)

2004年11月06日 三石玲子賞を受賞
青空文庫が、三石玲子賞を受賞した。
奨励賞部門ネット公共知財賞。
株式会社ボイジャーとの共同受賞というお知らせをいただいて、昨日、東京大手町の三菱総合研究所本社ビルで開かれた授賞式には、同社社長の萩野正昭さんとのぞんだ。

後に青空文庫を呼びかける者たちが、電子図書館を思い描くきっかけを与えてくれたのは、ボイジャーだった。
同社のエキスパンドブックという電子本に仕立てれば、パソコンの画面でも作品が読めると感じた。これをインターネットで引き落とすようにすれば、電子図書館になるんじゃないかと、1997年の2月頃から話しはじめた。
この年の夏に、最初に作品をならべたときは、エキスパンドブック版が中心で、HTML版とテキスト版はおさえくらいのつもりだった。
数人が、やれる範囲でゆっくり進めていくものと踏んでおり、資金を手当するといった発想もなく、ボイジャーのサーバーに間借りしての開館となった。

その後、たくさんの人が青空文庫を協力の場として選び、ここは著作権切れ作品の電子化を進める、活動拠点の一つとなった。
気心の知れた仲間内のものだった試みは、批判を浴び、新しい人も加わった見直しを繰り返す中で、「みんなのもの」に向かって少しずつ前進していったように思う。

ボイジャーという私企業の独自規格であるエキスパンドブックにも、見直しが及んだ。
ファイルは、基本中の基本のテキストと、公的な規格に沿ったXHTMLに絞ることになった。
そのXHTML版に、エキスパンドブックを越える読みやすさと表現力、加えて検索性等のインターネットならではの旨味と、軽快な操作感を与えてくれたのが、azurだ。
いったん切れた絆が、公的な風通しの良い場所で結び直され、再びボイジャーの技術的支えを得られることになった喜びについては、6月25日付けの「完結「大菩薩峠」から青空街道をのぞむ」に書いた。
ここに光りをあててくださった今回の受賞に、心からお礼を申し上げたい。(倫)

2004年11月04日 宮沢賢治「銀河鉄道の夜」入力ご担当にお願い
宮沢賢治「銀河鉄道の夜(初期形)」(底本「銀河鉄道の夜」角川文庫、角川書店)の入力をご担当いただいている方に、申し上げます。
この作品の入力を引き継げないかとのお申し出でを受けて、進捗状況とお気持ちの確認のためメールを送りましたが、不達でした。
reception@aozora.gr.jp宛に、ご一報をお願いします。

本日から一ヶ月、ご連絡を待ちます。
一月を経て、連絡を取り合えない場合は、今回申し入れてくださった方に、引き継いでいただこうと思います。

工作員の皆さん。メールアドレス変更の際は、reception@aozora.gr.jp宛にご一報をお願いします。(倫)

2004年10月20日 「青空文庫における書誌データのとりかた」
総合インデックスや図書カードに表示する「作家名」「作品名」や「読み」の採取ルールを、「青空文庫における書誌データのとりかた」にまとめた。
データベースの管理にたずさわるごく一部のための作業メモや、電子連絡帳の走り書きとしてばらばらに存在していたものを、整理し直したかっこうだ。

基本的には従来の方針のままだが、青空文庫メーリングリストで話し合って、「作品名」の仮名遣いの扱いを変更し、「読み」の表記の規準を定めた。
これまで、旧仮名は新仮名に書き替え、「ヰタ・セクスアリス」は「イタ・セクスアリス」、「きのふけふの草花」は「きのうきょうの草花」としてきたが、今後は、旧仮名は旧仮名のままとし、「ヰタ・セクスアリス」「きのふけふの草花」ととる。
「ヰタ・セクスアリス」の「読み」は、「ウィタ・セクスアリス」と書く。

時間がかかると思うが、過去のデータも新しい方針に従って、修正していく。
なお、「作業着手連絡システム」で必要事項を埋めていく際、「書誌データのとりかた」を確認した上で記入していただけると、ありがたい。(倫)

2004年08月21日 「物語倶楽部」のテキストについて
青空文庫の活動に微力ながら協力してから、いろいろと気になり、個人の努力に敬服し、すごいなぁと感心しながら訪れるサイトがいくつかある。そのひとつが「物語倶楽部」だ。何回も訪れる度に、その魅力的な作品のリストが充実していく様子に感服するとともに、同じ作品を入力するという気持ちが薄れ、そのテキストを青空文庫に提供いただけないか、という気持ちが強くなった。そこで、今年の年初、青空文庫のメーリングリストで相談した末にサイトの構築者であるosawaさんにご相談したところ、ご快諾いただくことができた。osawaさんには、ここまでの労を称えるとともに、報告が遅れたことのお詫びを申し上げたい。
以上が、簡単だが、かなり昔に非常に魅力的なテキストを提供していただいた御報告とその経緯である。
おそらく校正されて青空文庫の本棚に並ぶまでにはもう少し時間が必要だろうが、物語倶楽部生まれのシェイクスピアなどの作品が、いずれ並ぶ日を楽しみにしたい。
(あっ、手が空けばもちろん私も作業しますとも。。。^^; )(晋)

2004年08月12日 「こもれび」へのリンクにあたって
 私hongmingは、さんざん「青空文庫」を利用していながら、システムをあまり理解していません。
 「作業着手連絡システム」というものに気づかず、メールで校正を申し出たりしておりました。
 また、「みずたまり」を見ていると、時折、「こういう時はどうすればいいのか」「こういう利用法は可能か」という質問を見かけます。
 そこで、気軽に質問できて、質問ごとにツリーになるような掲示板があったら便利だろうな、と思うようになったのが、「こもれび」設置のきっかけです。
 メーリングリストで試用を呼びかけ、何人かの方に使っていただき、これなら運営できそうだということで公開することにしました。
 予想以上の書き込みがあり、やはり需要があるようだと思っていたら、「青空文庫」からリンクしたいという申し出を受けました。
 願ってもないことです。
 質疑応答や談論によって「青空文庫」の運営、情報の共有のお役に立つことができれば幸いです。
 「こもれび」が、「青空文庫」の利用法・活動への参加方法について知りたい、こんな提案がある、こういう場合はどうしたらいいだろう、などといったことについての気軽な相談の場になればいいな、と思っています。
 「留意事項」の内容をよくご理解の上、ご利用ください。(hongming)

2004年07月19日 第二期むしとりあみ始動
 2003年5月6日に閉鎖した誤植指摘掲示板、むしとりあみを今日から再開する。掲示板の使用方法等に大きな変化はない。ただ、少し運営の方針を変えてみたいと思う。
 確認になるが、むしとりあみに指摘してほしいミスとは、作業上の誤りのうち、底本を参照することでその正誤が判明すると思われるもののみである。すなわち、「ルビの付け方」「外字注記」「レイアウト注記」「ファイル前後の注記」など、青空文庫独自の規則に関しては守備範囲外なので、行司は裁定を下す事はなく、必要ならばトピックスを閉じる。また、「テキストファイルの名前」「作品名読み」などのファイル管理も守備範囲外である。こういったむしとりあみの守備範囲外の点について気にかかることがあれば、reception@aozora.gr.jpへと連絡をして欲しい。
 入力ミスの御指摘の整理とファイルの修正を同時に行うには、人的な資源が不足していることから、前回の閉鎖時のように、ある程度修正するべき箇所が蓄積したら、むしとりみあみを閉鎖し、ファイルの修正にとりかかることにしたい。時期や期間は決まっていない。行司がメーリングリストから選ばれているので、閉鎖のタイミングもメーリングリストではかることになる。これに伴って、各トピックスは、「修正します」または「修正しません」の裁定が下された後は、書き込めない仕様にした。同一の作品に対して、他にも指摘箇所があれば、新たなトピックスを作ってほしい。
 編集のプロが行った出版にも誤植はつきものである。ましてや素人が行った入力、校正作業にミスがあってもなんら恥じることはない。よって、ミスの指摘をしてくださる方は、客観的に誤りの内容のみを指摘して欲しい。ミスに対するコメントは不要、ということだ。あまりにも感情的なコメントには、削除を行うことも考えている。
 しばらくの間、行司は門田裕志(さすらいの行司)、大久保ゆう(行司見習い221b)が担当する。願わくば、むしとりあみという場が、公開ファイルのミスの発見を修正へとつなげてゆく恒久的な場となることを。(行司一同)

2004年07月07日 7年目の7月7日
きょうは青空文庫の誕生日、7年目の7月7日です。登録作品は4000になりました。おめでとうございます! ラッキーセブンが3つもかさなるという記念すべき日なので、事実上の創始者野口英司さんをはじめとして、「ちへいせん」編集長の浜野智さん、入力や校正がおわったあとのすべてのファイルの点検作業に携わっている門田裕志さんと小林繁雄さん、そして呼びかけ人有志に、それぞれの感慨を綴ってもらいました。
ほんの出来心でかかわった青空文庫は、未踏の世界への入口でした。インターネットでの日本語の問題をかんがえ、ボランティアがつどう組織をかんがえ、楽しさとともに少しは苦しさも味わった7年間は、個人的な経験にとどまらないひろがりを与えてくれました。7月7日は毎年めぐってきますが、次の7続きとなると、77年目の7月7日です。70年後、喜寿をむかえる青空文庫はどうなっていることでしょう。こんなことを思ってみるのも、誕生日ならでは、ですね。
では、以下にみなさんからのコメントを。(八巻美恵)


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青空文庫の構想を持ったのは1997年2月です。エキスパンドブック・ブラウザという電子ブックを読むためのブラウザの中に流し込むテキストを探したのがきっかけでした。富田さんに、何かない? と問い合わせたところ次のようなメールがやって来ました。
 ………………………………
 Fri Feb 14 16:31:07 1997
 From michio@xxx.jp (Tomita Michio)
 To: noguchi@xxx.jp (eiji noguchi)
 Subject: Re: Document Source
 
 At 15:39 97.02.14 +0900, eiji noguchi wrote:
 >ネットスケープからブラウザにテキストをDocument Sourceするのにいいページはあ
 >りませんか?
 
 ●岡田斗司夫
 『ぼくたちの洗脳社会』
 http://www.netcity.or.jp/OTAKU/univ/toshokan/senno/contents.html
 ↑もう一つ前のページ、
 http://www.netcity.or.jp/OTAKU/univ/toshokan/senno/
 でもいいかな。
 同じウェッブページに『オタク学入門』というのもあるのだけれど、こっちは文字化けします。
 
 ●福井大学教育学部国語科、岡島昭浩さんのリスト
 http://kuzan.f-edu.fukui-u.ac.jp/
 ここにインターネット上で読める、文学関係のものがずらっとリストアップしてあります。
 このうちのかなりが(UNIXでみんなやってるんでしょうね)文字化けしたと思うけれど、何しろたくさんあるので適当に選択し下さい。

 文学以外でも良いのなら、もう一報下さればまた見繕います。

 Tomita Michio
 富田倫生
 ………………………………
このメールの中の福井大学の岡島先生のサイトにびっくりし、こんなサイトを電子ブックで出来たら素晴らしいんじゃないかと考えました。すぐさま岡島先生にテキストを使用する許可を得て、仮のサイトを作ったのが2月26日で、富田さんに電子図書館プロジェクトを具体的にするべきだ、といわれたのが2月27日です。

では、7月7日とはなんだろう?
おそらく富田さんが「青空文庫の提案」を書き上げた日です。それも後付けで日にちを決めたような。それが象徴的な日にちとして誕生日に決定しました。でも、私の心の中での青空文庫・誕生日は、上のメールを受け取った2月14日なのです。いやいや、別に7月7日の誕生日にケチをつけるわけじゃありません。日にちなんてなんでもいいんです。ということで、777でおめでとうございます。(野口英司)


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自分の誕生日はもう半分忘れた。祝うこともなくなった。
でも、青空文庫の誕生日は祝いたいね。ブラボー!(浜野智)


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receptionメンバーの中では一番の新参者の門田です。そして、主な役目も「見ているだけ」であまり実務も担当していません。それでも、コツコツと登録作品がたまって、4000にまで到達したことには感慨が深いです。青空文庫に関わってから、いままで知らなかった作家、作品に触れることが出来ました。登録数が増えてゆくことは、いろいろな方がいろいろな文章を読むことが出来ることと等価だと考えています。青空文庫が、文学だけではない「日本語の文章」のコレクションとなってゆくことに、これからも微力ながらお手伝いをしてゆきたいと思っています。(門田裕志)


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職場の先輩の、「こんなHPがあるよ、知ってる?」という一言が、私を青空文庫へと導いてくれました。「工作員作業マニュアル」を何度も何度も読み返し、思い切って入力申請のメールを出したのは1999年1月のことでした。二年程前「ファイル点検グループ」に加えていただき、今は、毎日が青空文庫三昧です。機械的な作業が続くと少し辛いですが、そんな時は校正をして気分転換。次はどんな作家・作品と出会えるかと、ワクワクの連続です。個人的なとりあえずの目標は「収録作品数:10000」。青空文庫十周年には……まだちょっと無理ですか? (小林繁雄)


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1997年に、電子本への興味を通じて知り合った数人が、ごく軽い気持ちで準備した青空文庫には、はっきりした開館日がありません。
使おうと決めた電子本ソフトの開発元であるボイジャーのサーバーに間借りして、ファイルを引き落とせる形を整えていったのが、この年の夏。ただ、試みの初心をまとめた「青空文庫の提案」を7月7日付けとしたことで、始まりを振り返る気分が生まれてからは、この日を区切りとしてとらえるようになりました。
丸7年で、4000。5作品での出発を思い起こせば、これでも確かに、大きくなりました。皆さん、おめでとう。でも、まだまだよちよち歩きです。これからも、子育てをどうぞよろしく。(富田倫生)


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活動開始から少し遅れて青空文庫に加わった頃、始まってから間もない試みの中で、「呼びかけ人」を名乗るメンバたちは、自分たちの等身大だった青空文庫を育てようとしていました。
それから7年。青空文庫が大きくなっていく道のりは、そのまま、青空文庫がみんなのものになっていく道のりと言えるかもしれません。たくさんの人たちが、入力や校正はもちろんのこと、ファイル形式の変換や読書ツールの開発など、より多くの人に作品を読んでもらうために、力を貸してくださいました。作品公開を楽しみにしてくださる読者のみなさんは、いうまでもなく、青空文庫の大きな原動力です。
そういった多くの力に支えられて、この7年間で、4000作品を、読者のもとに届けることができました。まずは理屈抜きで、そのどれかをひもといてみてください。誰もが見上げることのできる青空が、そこからさらに拡がっていくことでしょう。(LUNA CAT)

2004年06月25日 完結「大菩薩峠」から青空街道をのぞむ
中里介山「大菩薩峠」シリーズの41巻目にあたる、「椰子林の巻」を公開した。
未完だが、著者の死によって、以降は書き継がれていない。
底本としたちくま文庫20冊をここ数年、左手のとりやすいところに置いてきた。
だが、もう、本棚の上の方に引っ込んでもらおうと思っている。

「大菩薩峠」の入力は、(株)モモとtatsukiさんに、およそ半分ずつをご担当いただいた。
校正は、全巻を通して原田頌子さん。
調整にしくじって、入力が中抜けになったところを、大野晋さんと門田裕志さんが助けてくれた。
小林繁雄さんは、影の伴走者として、長丁場の作業を支えてくださった。
みなさん、一仕事終わりましたね。乾杯! お世話様でした。

あらためて総合インデックスからたどると、「大菩薩峠」シリーズ一作目の「甲源一刀流の巻」は、2001(平成13)年の5月8日に公開されている。その図書カードのファイル欄には、まだエキスパンドブックがみえる。
エキスパンドブックは、1990年代の半ばにボイジャーによって開発された、電子本づくりのソフトウエアだ。縦組みのきれいな文字で、ページをめくるように読めるものができた。「これなら画面でもだいじょうぶ。インターネットと組み合わせれば、電子図書館ができる」と思ったのが、青空文庫誕生のきっかけだ。
だが、文庫の活動が予想外に広がっていく中で、エキスパンドブックを提供ファイルの軸に据えていけるのか、据えていていいのかが問われる時がきた。

エキスパンドブックづくりには、数万円する作成ソフトが必要だった。慣れもいるので、つくれる人が限られる。仕上げるのに、手間もかかった。技術の枠組みはもちろん、ボイジャーという私企業のものだ。
多くの人が力を寄せ合ってつくるファイルは、社会のさまざまな領域で広く活用され、また、長く生き残るものであってほしい。
そうした意識が高まる一方、青空文庫全体の作業負担をどうおさえるかという課題が重みをます中で、ファイル作成の努力は、技術進歩を経てなお長く使い続けられるだろうテキストと、インターネットの公的な標準にそったXHTMLに集中して注ごうと決めた。
青空文庫は、2002(平成14)年5月7日の公開分から、エキスパンドブックの提供をやめた。「大菩薩峠」では、13巻目の「如法闇夜の巻」以降には、エキスパンドブックが用意されていない。

エキスパンドブック廃止のマイナスを補う手だてが、当時、みえなかったわけではない。
文章を快適に読ませることを狙った閲覧ソフトが、すでにいくつかできていた。
「手放すことになる読みやすさは、そうしたものに委ねればよい」と、自分にも言い聞かせた。
ただし、それらでは足りない点も、内心では数えていた。
だが、大切な何かを置き去りにしたような悔いは、今はない。

去る4月22日、ボイジャーは青空文庫を快適に読むための閲覧ソフト、azur(アジュール)を発表した。
「こうしたものがつくれないか」との働きかけは、当初、青空文庫側から行った。「こんな機能がほしい」という注文もいくつかだし、開発中のテストにも協力した。
ファイルをつくっている当の本人達が、「これを最良の状態で読むにはなにが必要か」と絞った知恵と、切れ味鋭い独創的な設計センスに加えて、日本語表示の技術力を長く蓄えてきたボイジャーの開発者のアイデアが、二重螺旋のように絡まりあいながら、高みを目指していく開発過程には、スリルと興奮があった。
できあがったazurで、私は毎日、鼻歌まじりで青空文庫のファイルを読んでいる。
「大菩薩峠」というきわめつけの長尺ものの作業を終え、収録作品数が4000に達しようとする今、azurを紹介できることを、嬉しく、誇らしく思う。
azurは値札の付いた商品だが、30日間は無料で試せる。
どうかazurで、青空文庫のXHTMLファイルを開いてみてほしい
エキスパンドブックというメーカー固有の技術を巡って、いったんは別れることになった青空文庫とボイジャーが、インターネットの標準技術という場で再び手を取り、何をなしとげたかを見てほしい。(別離と再会をめぐる長い物語りはこちらで。)

azurは、青空文庫にとって、大きな到達点だ。
だが、ここはゴールではない。
無料で使えるものを含む、テキスト閲覧ソフトの多くが、青空文庫のファイルを読むことを意識してくれている。その開発者の皆さんにお願いしたい。XHTMLのソースとazurの出力結果を見比べれば、圏点や傍線の再現にあたって、なにがキーとして利用されているかは明らかだろう。漢文返り点や、訓点送り仮名の処理手順は、当たり前のステップの積み重ねだ。結果としてえられる「魔法」のような表現力を、azurに独り占めさせておく手はない。JIS X 0213への対応というazurの成果も、まさにこれから、重みを持ってくる。azurの到達点を確認し、追いかけ、追い抜いて、皆さんの手で日本語電子テキストの表示水準を高めていってほしい。
青空文庫形式でまとめたテキスト版は、青空文庫の仲間が開発したプログラムによって、自動的にXHTMLファイルに変換される。azurを使えば、これを、つくり込んだ電子出版物のように開ける。自動変換プログラムに残っているいくつかの問題点を取り除き、マニュアルを用意できれば、メーカーの技術の枠に縛られない、開かれた電子出版システムとして活用してくれる人が出てくるだろう。そのための努力を、積み重ねていきたい。
ボイジャーがazurでひらいてくれた道を、私たちは踏みしめ、固めながら進みたいと思う。
他の人達にも、この道を利用してほしい。
追われることになるボイジャーは、どうかさらなる高みを目指して、より力強く進んでくださいますように。

青空文庫のマニュアルに従って、私たちがつくってきたファイルが、まとまりをなしてきた。
その利用価値は、XHTML自動生成プログラムやazurが生み出した新しい電子出版の基盤を得て、いっそう高まっている。
だが、こうして青空文庫の歩みを振り返る中で、あらためて思い起こされるのは、その原点だ。
私たち一人ひとりの胸にあるとき灯った、「青空に本を開きたい」という小さな願いだ。
願いは、引かれ合い、寄り集まって、流れとなった。
その下り行く先に、どうかさらなる恵みの園が開けますように。
そして、すべての力の源泉である願いのともしびが、新しい人の胸へと、絶えることなく受け継がれますように。(倫)

2004年05月31日 「新JIS漢字総合索引」続報
「新JIS漢字総合索引」最新版を、5月30日付で公開した。
前回(5月15日付)の更新では、「自分の環境で、最新版を利用できない」と、がっかりした方もおられるかもしれない。今回、T-Timeでも追加10文字を表示できるようになり、最新版を利用できる環境が、大きく拡がった。Mac OS 9以前をお使いのみなさんや、マシンパワーの関係などでazur導入をためらっておられるWindowsユーザのみなさんにも、追加の10文字を利用していただくことができそうだ。
azurを導入できない場合、「新JIS漢字総合索引」を使うには、これまでどおりT-Timeを利用することになる。T-Timeは、JIS X 0213の文字を表示する際に、Kandataフォントを優先するしくみを持っている。5月15日の時点では、Kandataフォントが追加10文字に対応していなかったため、T-Timeでは「新JIS漢字総合索引」の最新版を利用することができなかった。
しかし、その後、内田明さんのご厚意により、追加10文字対応版のKandataが公開され、それを受けて、Macintosh版のKandataも更新することができた。これで、T-Timeでの利用にも大きく途がひらけたわけだ。
また、その後、Windows 2000でJIS X 0213を利用する方法も判明した。初回の更新から半月、現時点では、多くの環境でJIS X 0213をフル活用できるようになっている。
「明日」の読書を実現するしくみは、さまざまな人々に支えられ、少しずつ着実に前進してきている。大海に漕ぎ出していく小舟も、次第に沖に出つつあるようだ。順風を受けて帆走できる日が近いことを、心より願っている。(LC)

2004年05月17日 azurでひらく「新JIS漢字総合索引」
「新JIS漢字総合索引」最新版を、5月15日付で公開した。
JIS X 0213は、2004年2月20日付で改訂され、新たに10文字が追加されている。最新版の「総合索引」には、この10文字を追加した。(面区点番号1-14-1、1-15-94、1-47-52、1-47-94、1-84-7、1-94-90、1-94-91、1-94-92、1-94-93、1-94-94の10文字、いずれも第3水準。)
同じ5月15日付で、青空文庫最適ビュワー「azur」が、1.0.1にバージョンアップされた。azurは、青空文庫を読むために開発されたブラウザソフトだ。4月22日のブックフェア出展に合わせてダウンロードが開始されてから、約3週間。2004年3月末現在での青空文庫の公開作品をおさめたCD-ROM「蔵書3000」にも、お試し版が収録されている。実を言うと、今回のazurのバージョンアップと「新JIS漢字総合索引」の改訂との間には、浅からぬつながりがある。

話はいささか専門的になってくるが、Windows XPやWindows 2000などは、内部処理がUnicodeベースのOSである。Shift_JISで保存されたファイルの文字をOSが表示する際には、UnicodeとShift_JISとの間でコードの変換をおこなっている。この変換のしくみがJIS X 0213に対応していないため、Windows XPやWindows 2000でJIS X 0213を完全に利用できるアプリケーションは、ほとんど存在していない。T-TimeもShift_JIS−Unicode間の変換をOSに任せており、0213の文字を利用することはできない。このため、次第に主流になりつつあるWindows XPで「新JIS漢字総合索引」を利用できない状況が、長く続いた。現在、新品のWindowsパソコンを買うと、ごく一部でWindows 2000が、ほとんどの場合はWindows XPが搭載されている。新品のパソコンで利用できない不便が、次第に増してきていた。

5月15日にリリースされたazur 1.0.1は、Shift_JIS−Unicode間の変換を、アプリケーション独自の処理でおこなっている。つまり、内部処理がUnicodeベースのOSでも、azurを使えば、JIS X 0213の文字を利用できるということだ。とはいえ、追加10文字に対応したフォントがなければ、画竜点晴を欠くことになりかねない。こちらについては、XANO明朝が、追加10文字に対応してくれていた。さらに、Windows版のazurがUnicodeに対応するにあたって、途中で浮上した細かい問題点にも、迅速に対応してもらえた。azurが「青空文庫最適ビュワー」であるなら、XANO明朝も、「青空文庫最適フォント」と呼べるかもしれない。
これによって、Windows XPでも、「新JIS漢字総合索引」をフル活用できるようになった。以前からWindows 98SEをお使いの場合も、azurとXANO明朝の利用により、追加10文字を利用できるという大きなメリットがある。もちろん、「新JIS漢字総合索引」のみでなく、「明日の本棚」にあるファイルも、Windows XPで利用することができる。「明日の硯箱」の一覧表を参考に、まずはazurとXANO明朝をダウンロードしてみて欲しい。

残念ながら、Windows 2000では、日本語OSに問題があり、JIS X 0213対応は、今回も見送りとなった。もし何か動きがあれば、随時、お知らせしていきたいと思う。
なお、Macintosh版のazurでは、最新の1.0.1でも、変換のしくみをOSに任せている。現時点では、従来のJIS X 0213の範囲は表示できるが、追加10文字の表示に関しては、OSの対応待ちという状況となっている。Macintoshユーザのみなさんは、いましばらくお待ちいただけますように。

Windows XP搭載パソコンにazurをインストールし、「新JIS漢字総合索引」をひらくと、「アプリケーションによる独自の変換」という大きなパワーを内に秘めつつ、一見、何の変哲もなく、ひたすら文字と文字コードが並んでいる。JIS X 0213も、「当たり前のものとして、そこにある」段階に近づきつつあるのだろう。azurの登場により、新JIS漢字の世界が、さらに大きく発展していくことを期待している。

バージョンアップしたazurの機能は、もちろん、これだけではない。より快適に、より便利に青空文庫を読むための、さまざまな工夫が凝らされている。「蔵書3000」収録のお試し版をお持ちの方、ダウンロード版の初回バージョンをお持ちの方も、ぜひとも最新版をダウンロードして、新機能を堪能して欲しい。こちらの詳細については、aozora blogにて。(LC)

2004年04月01日 京都大学電子テクスト研究会の誕生
本日、魯迅「故郷」「明日」が公開された。明日には小泉八雲の怪談が数作公開される。これらの作品はいずれも翻訳作品であり、あるグループによって作業されたものである。初めて青空文庫にお目見えするに当たって、僭越ながら自己紹介をしたい。

青空文庫の掲示板「みずたまり」には、ときどきこのような書き込みがなされる。
「××××(海外の作家)の作品はないのですか?」
その返答としては、青空文庫Q&Aの「Q02」に詳しいが、たとえ原著者の著作権が失効していても、それを翻訳した翻訳者の権利も失効していることが必要であるから、なかなかむずかしい、というものである。

とはいえ、日本は翻訳天国である。海外から感心されるほど、多種多様な翻訳書が出回っている。それは青空文庫の守備範囲である大正期から昭和初期にかけても同様なことで、貪欲とも言えるほど多数の翻訳書が出版されていて、その中には著作権が失効しているものもたくさんある。公共のものとされるべき資産が潤沢にある。だがやはり公開はむずかしい。なぜかというと、日本の作家の作品であれば昔のものでも復刊されることが多いが、翻訳書になるとそうはいかないという事情がある。日本の作家の場合、オリジナルはそれしかないのだから、それを復刊すればよいのだが、海外の作家の場合、オリジナルは原書である。いちいち以前に出た訳書の訳者に連絡をとって復刊しますよ、という手続きを踏むよりも、新しい訳者に頼んで新しい翻訳を作ってもらった方が早い。それに文章も古くさいものでなく今に合わせたものが作れる。というわけで(むろんそれだけが理由ではないが)、その翻訳書自体が相当有名でない限り、復刊されない。その結果、著作権の切れた翻訳書は古書店の隅や図書館の書庫に眠ることとなり、手に入れにくくなっている。

しかし、なんとももったいないことである。そうやって埋もれてしまった翻訳書には今読んでも遜色ない名訳もたくさんあるし、歴史的に重要な位置を占めるものも多くある。あるいは命を賭けて翻訳に情熱を捧げたようなものも数多い。果ては一個の芸術に昇華している翻訳すらある。このような書物が人の目に触れないままでいるのはなんとも惜しい。最初からそう考えていたかはわからないが、そのような心意気で入力しようと、一工作員として私はここ二年のあいだ、著作権切れの翻訳書を収集してきた。青空文庫で知り合った方々もそれぞれ本をお持ちだったり、購入されたりして、今では百冊以上の本が確認されている。

そんな中、私はこつこつと作業をして、その成果がいくつか公開されているものの、あるときふと気がついた。
「この作品量、一人ではとうてい無理だ!」
このような作業困難な本であるから、自発的に本を探索して入力しよう、という人は結構少ない。また、青空文庫で翻訳書を入力対象としている工作員もそんなに多くない。本も情報も一部に集中しているだけである。しかし、ちょうどその当時、青空文庫ではさまざまなプロジェクトが進行していて、折口信夫作品の公開を目指す「まれびとプロジェクト」や与謝野晶子訳「源氏物語」公開を目指す「光の君再興プロジェクト」など、グループワークの成果を目の前で見ていた。
「いやはや一人ではむずかしくとも、人が集まれば可能ではないだろうか?」
私はあれこれ悩んだ末、今まで確認された本や情報を活用してグループワークを始めることにした。そこで、今回作業に携わった「京都大学電子テクスト研究会」が作られることとなった。

ただ、これまでのグループワークとは少し形態が違っている。それはグループ名を見てわかるように、大学内のサークルという点である。なにぶん(私を含めて)大学生は暇をもてあましている。しかし何かをやりたくて毎日ふつふつとしている。このパワーを結集すれば、成って成らぬものはない。ということで、作業困難な海外文芸・哲学書の登録公開を主目標としたサークルを立ち上げることにして、メンバーを募集すると、予想以上に多くの人が集まってくれた。そしてこの新しい仲間たちが懸命に作業してくれて、本日の公開にまで至った。

私は人を集める際、作業は本当に地味であることを、何度も繰り返し説明した。見た目格好良いことではないけれど、それでもみんな一丸になって取り組んでいる。まずは短編からだが、これからは長編作品の公開も視野に入れて活動している。

当サークルの手によって図書館や古書店の底から再び広い空に飛び立った本が、青空文庫を利用される皆様の手に渡って、なんらかの感興を与えることが出来たとすれば、それこそ無上の幸いである。(大久保ゆう@京都大学電子テクスト研究会)

2004年02月01日 訓点注記の簡略化を受けて

【関連文書の修正】

訓点注記の新しい方針を、「青空工作員作業マニュアル」に盛り込みました。
「2.入力-1」に、【返り点】の見出しで掲げていた項目を、【訓点】に置き換えたのが、変更点です。
加えて、各種注記の書き方をより具体的に説明するための「テキスト版の注記をどう書くか」に、「●訓点に関する注記」を新設しました。

今回の改訂にあわせて、「マニュアル」「2.入力-1」の【誤植・誤記・脱字】の用例から、「誤植」の二字を削除し、以下の形をとりました。

宮沢賢治[#「賢治」は底本では「憲治」]

誤植指摘掲示板「むしとりあみ」の話し合いの中から育ってきた、明らかな誤りと思われるケースでも、断定は避けようとする考え方にそった対処です。

【ルビなしテキストの段階的廃止】

旧形式で訓点を注記したテキスト版は追々、新しい形にあらためたいと考えています。
テキスト版を手直しした際は、それをもとにxhtml版をつくりなおして差し替えます。
初期に公開した作品では、ルビなしテキストを並置したものがありました。
管理対象のファイルを減らして手間を省き、サーバーの維持費に関わる容量を抑える狙いから、今後、何らかの理由でファイルの修正を行った際には、当該作品のルビなしテキストを廃止します。

ルビなしテキストは、鈴木厚司さんによる「ルビなしテキストの作り方」に紹介された手順で、容易につくれます。
必要な方には、自作をお願いいたします。(倫)

2004年01月26日 訓点注記の簡略化
漢文を訓読するときの手がかりとして、漢字の四隅や上下に小書きされた仮名や符号を訓点といいます。その訓点のうち、主に漢字の右下につく仮名を「送り仮名」、左下につくレ点や一二点・上中下点などを「返り点」といいます。今まではそれらの訓点をあらわすのにテキストファイルでは以下のように入力していました。

他山之石、可シ[#「シ」は訓点送り仮名]二[#「二」は返り点]以テ[#「テ」は訓点送り仮名]攻《おさ》ム[#「ム」は訓点送り仮名]一レ[#「一レ」は返り点]玉ヲ[#「ヲ」は訓点送り仮名]。

けれどこれではあまりに読みにくく、また入力校正作業における負担も大きいということで、青空文庫メーリングリストにおいて訓点注記の簡略化が検討されてきました。そしてこのたび、以下のように簡略化することの合意ができました。

他山之石、可[#(シ)][#二]以[#(テ)]攻《おさ》[#(ム)][#一レ]玉[#(ヲ)]。

返り点は今まで、二[#「二」は返り点]と注記していたものを[#二]と省略します。同様にレ点は[#レ]、上下点は[#上][#下]のように入力します。送り仮名は、シ[#「シ」は訓点送り仮名]としていたところを括弧に囲んで[#(シ)]と入力します。送り仮名はたいてい片仮名ですが、まれに万葉仮名などが使われていることがあります。そのような場合も、御船[#(爾)]乘給[#(弖)]幸行、のように入力してください。

ただ注意していただきたいのは、現時点ではこの注記を適用するのは「漢字の右下につく送り仮名」および「漢字の左下につく返り点」のみであることです。これから先、再読文字の「未」のように「いまダ……ズ」とよみ、送り仮名が漢字の右下に加え左下にもつくものや、返り点が漢字の右下につくようなものを入力することになるかも知れません。そのようなときはreception@aozora.gr.jpまで御連絡ください。相談して対処の仕方を考えましょう。

簡略化の実例として、今年1月1日に公開された釈迢空「死者の書」において送り仮名が、また1月12日に公開された斎藤茂吉「人麿の妻」で送り仮名と返り点両方の簡略化が行われています。テキストファイルからプログラムによって作成されるXHTMLファイルでは、返り点は下付きに、訓点送り仮名は上付きになっていますので、そちらも合わせて御確認ください。今後、作業中に訓点を目にした場合は、上記の作品などを参考に、新しい注記で入力してくださるようお願いします。(@)

2004年01月13日 小林多喜二「蟹工船」「工場細胞」「一九二八年三月十五日」「東倶知安行」、世阿弥「観世流謡曲 三輪」「観世流謡曲 神歌」ご担当へのお願い
小林多喜二「蟹工船」「工場細胞」「一九二八年三月十五日」「東倶知安行」の入力をご担当いただいている方。
目覚ましプロジェクトから、進捗状況とお気持ちの確認のためにメールを送りましたが、不達でした。
世阿弥「観世流謡曲 三輪」「観世流謡曲 神歌」ご担当の方。
おあずかりしている入力ファイルの取り扱いに関してご相談いたしたく、メールを送りましたが、不達でした。
reception@aozora.gr.jp宛に、ご一報をお願いします。(倫)

2004年01月04日 工作員リストの更新
青空文庫のIT化が一段落して、ひとつだけ残った課題は、工作員リストの更新だった。
まだシステムが確立していなかった初期のデータには、必要な項目が揃っていないものが数多くあった。新システムへの移行の際、作品や著者のデータは、調査の上、読みがなや生没年月日など、不足分の項目を補っていった。読みがながわからない工作員データについては、本来ならば、ご本人に連絡して、確認させていただくべきものだ。しかし、初期に協力いただいた工作員のみなさんの中には、連絡がとれなくなってしまった人も多い。昨今のブロードバンドブームでプロバイダを変更した人が多かったのも、困難に拍車をかけるかたちになった。そんなこんなで、「工作員リストの更新」が、最後まで手つかずで残ってしまった。
いろいろと手段を考えてみて、最終的には、データベースからの自動生成ではなく、不明のデータを仮に補った上で、「半分手作業」でリストを作成する、といった変則的なかたちで、しばらく運用してみることにした。
そんなわけで、更新時期は不定期になるけれど、今後はちょくちょく更新するつもりだ。
昨年から、「目覚ましプロジェクト」がスタートしている。青空文庫から、状況をおたずねするメールが届いたとき、お返事に、読みがなをかきそえていただけると、大いにありがたい。
そして、メールアドレス変更時には、忘れず、青空文庫にご一報くださいますように。(LC)

2004年01月01日 新しい年の始まり
 あけましておめでとうございます。
 2004年の青空文庫は、折口信夫「死者の書」(新字新仮名)斎藤茂吉「接吻」釈迢空「死者の書」(旧字旧仮名)堀辰雄「風立ちぬ」で幕を開けます。折口信夫(釈迢空は折口信夫の筆名です)、斎藤茂吉、堀辰雄は、すべてこの1月1日をもって著作権の消滅した作家です。

 今年も青空文庫をどうぞよろしくお願いいたします。(門田)

2004年01月01日 まれびとプロジェクトの紹介
 2004年1月1日をもって折口信夫の著作権が失効する。年頭に折口信夫の作品を公開したい、と考えた有志が集まって私的なプロジェクトを始めた。それが「まれびとプロジェクト」である。きっかけは、折口作品の入力をしていた高柳典子さんと私、門田が、連絡を取合ったことであった。最初は、お互いの入力作品を交換して校正し、年頭に公開出来るようにしようということだったが、他にも何人かの方の協力が得られそうなので、どうせならプロジェクトにしてしまおう、ということになった。名前は、折口語の有名な「まれびと」を採用した。プロジェクトになってから、扱う作品がかなり増えた。結果として、まれびとプロジェクトから、33作品の校了ファイルを仕上げる事が出来た。

 このプロジェクトの目的は、プロジェクトメンバーの思い入れのある作品を入力、校正し、年頭に公開までもっていくことであった。だから、全作品を網羅したような作品選択にはなっていない。なにしろ、中央公論社版の全集は、旧字旧仮名の全31巻のものと、新字旧仮名の全37巻のものとがあり、全作品を相手にするには折口の業績は膨大すぎるのである。それでもなお、創作、民俗学、作家との交流、随筆と様々な折口作品を紹介することは出来たと思う。

 プロジェクトの成果の一つが本日公開の釈迢空「死者の書」(旧字旧仮名)である。折口信夫の有名な作品と言えば「死者の書」であるが、この作品には、折口の創作の際のペンネームである釋迢空名義の青磁社版と角川書店版、本名である折口信夫名義の中央公論社の全集版が存在している。本日公開の折口信夫「死者の書」(新字新仮名)の底本の親本は、中央公論社の全集である。一方、釈迢空「死者の書」(旧字旧仮名)は角川書店版が底本である。青磁社版、角川書店版は、ともに著者の生前に刊行されたものである。実は、この角川書店版は、死後に刊行された全集版と比較すると誤植が疑われる箇所がいくつかある。最終的な校正の段階で、まれびとプロジェクトでは、それらの箇所を全集版をもとに直すことは全てやめることに決めた。理由は、名義が違う事と、著者生前の刊行であるのだから折口本人はこのテキストを是としていたと考えられるからである。つまり、いろいろなミスも著者の味であると考えたのである。疑問箇所は全てファイルの末尾に注記する形で残しておいた。本作品を読む際には、参照してほしい。

 校了となったファイルは、ある程度意味のあるまとまりごとに公開されてゆく予定である。そのまとまりとは、折口の文学論であり、民俗学の原点であり、時々の年中行事の起原について、などである。数少ない創作もまとめて公開されるだろう。現在もまだ、まれびとプロジェクトは作業中の作品を抱えているが、青空文庫の合い言葉である「ぼちぼち」で作業を進めてゆく予定である。冒頭にも書いたようにプロジェクトの目的は「年頭公開」であったが、これからはプロジェクトメンバーの思い入れのある作品をマイペースで入力、校正して行く方向に変わっていくことになる。(まれびとプロジェクト 総務 門田裕志)


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