そらもよう
 


2024年07月07日 27歳のお引っ越し
今年も青空文庫の誕生日である7月7日がやってきました。
今日までその活動を27年間地道に続けて来られたのは、実作業で支えてくださった多くのボランティアのみなさんと、収録された作品をさまざまに楽しみ、その可能性を広げてきてくださったユーザのみなさんのおかげです。
あらためて御礼申し上げます。ありがとうございます。

さて、2023年1月1日から継続して進めて参りました「式年遷宮」ですが、ようやく新規データベースサーバの引っ越しの目処がつきました。
元旦でお知らせしていた本日7月7日からの本運用には間に合いませんでしたが、この8月から実データを構築中の新データベースに移し、そして運用を試験して大きな問題がなければ、この秋には引っ越しを完遂したいと考えています。
(もちろん試用しながら都度バグフィックスを行う必要が生じますので、夏のあいだにタイミングを慎重に見極めなければなりません)
ともあれ、おおむね準備は終わったということで、現状をお知らせするトップページの看板も「新館準備中」から「新館引越中」としたいと思います。

青空文庫の活動につきましては、新館開館へ向けて、段階的に再開していく所存です。
まずは、reception アカウントでの校了確認作業につきまして、これまでお預かりしているファイルを順次点検し、「校了」のステップに進めていく予定です。
およそ1年半のあいだにお送りいただいたものを振り返りながら確認していく都合上、順序が前後したり思わぬ追加作業が発生したりするかもしれません。どうかご協力頂けますと幸いです。

また元旦で告知いたしました新規裏方ボランティアの募集につきまして、さまざまに積極的なご応答をくださり、たいへん感謝しております。(お申し出の内容によっては、なかなかお返事ができていないものもあり、たいへん申し訳ありません)
現在は開館に向けて、入力申請受付の確認作業に力を貸してくださる方を探しております。
すぐに活動が始まるわけではありませんが、ご関心のある方は info@aozora.gr.jp までご一報ください。

そして、本日7月7日の新規公開作品は、タック・ラム作/川口健一訳「農園の日差し:タック・ラム作品集」です。
ちょうど昨年の本日、公益財団法人大同生命国際文化基金さんからありがたいお申し出があり、長年刊行なさってきた貴重な出版活動「アジアの現代文芸シリーズ」の電子書籍について、青空文庫の本棚へのリンク登録を始めました。
ひと月におよそ4~6点のペースで1年続けて参りましたが、この7月でついに、現在インターネット公開中の全57冊が登録完了となります。
このシリーズ登録のおかげで、青空文庫の蔵書の幅はたいへん拡がりました。
また、この受け入れを続けるなかで、広くアジアに生きる日本語話者のみなさんからも、とても暖かい声援を賜りました。
日本語がひとつの架け橋となって、各地域の文学と読者をつなげる役割をこれまで以上に果たしてゆければと思います。
なお、完結までの公開スケジュールは、以下の通りです。
7月7日 タック・ラム、川口健一訳「農園の日差し」
7月10日 カースミー、鈴木斌訳「静寂」
7月18日 南田みどり編訳「二十一世紀ミャンマー作品集」
7月23日 ウィクラマシンハ、野口忠司訳「時の終焉」

公益財団法人大同生命国際文化基金さんの「アジアの現代文芸シリーズ」は、今後も新刊が発行されて電子書籍が公開されるたびに、青空文庫への登録もご検討くださるとうかがっています。
続刊にもぜひご期待ください。

そのほか青空文庫では、しばらく前より分散型SNSの「Bluesky」で(同じ「青空」のよしみから?)、新着作品や公開作品のご案内を英語・日本語の二言語併記でお届けしています(https://bsky.app/profile/aozorabunko.bsky.social)。
自動配信ではなくボランティアによる手作業の広報のため、不定期の更新ではありますが、よろしければフォローのほどを。

2024年01月01日 カノンを攪乱するために――青空文庫に本を持ち寄ること
新年あけましておめでとうございます。
「ハッピー・パブリック・ドメイン・デイ!」と言いづらくなって早5年、巷では青空文庫の活動が終了したかのように誤解している方もいらっしゃるようですが、もちろんみなさまのおかげで元気に続いております。

この1年は、20年にわたる保護延長期間を乗り越えようと、これからの継続的運営を視野に入れた上で、デジタルアーカイヴとしての安定化を目指し、新規データベースサーバの開発・導入のため、昨年の元旦より「充電期間」に入っておりました。
一時お休みしている業務もさまざまあり恐縮ですが、ボランティアおよびユーザーのみなさま、ご理解とご協力ありがとうございました。
ようやく新データベース構築の目途がついたこともあり、まだもう少し時間がかかりますが、本日から看板は「充電中」から「新館準備中」と掛け替えたいと思います(詳しくは、のちほどご説明差し上げます)。

充電中の1年間は、いつもよりも作品の新規公開ペースを落として、通常時の半分から3分の1ほどの点数になっておりましたが、一方で、著作権あり作品の受け入れと登録・公開はこれまでで最大の数となりました。
本年元旦の公開作品も、昨年の7月7日より受け入れを始めて月に4~6作をお届けしている公益財団法人大同生命国際文化基金さんの「アジアの現代文芸シリーズ」より、ウダイ・プラカーシ作/石田英明訳「黄色い日傘の娘」のリンク登録となっています。
また、企画開始以来その成果をご提供くださっている円城塔澤西祐典福永信3氏による競作「○○を書く」シリーズも、近日中に最新作の「鴨川を書く」3作を収録予定です。

こうして青空文庫へ新たに登録をしてくださる著作者・翻訳者・出版社のひとつひとつの作品が、青空文庫の書架を豊かにしてくれています。
著作権保護期間を満了した著作物を集めるとなると、その創作から経た長い期間のために、ともすれば、評価の定まった古典や知名度の高い定番作に偏りかねません(こうした権威的な作品群を「正典《カノン》」とも言います)。
ところが、青空文庫は基本、各ボランティアが自分の意志で選んだ作品を入力・校正(あるいは翻訳)し、公開することを旨としています。
むろんここには、いわゆるカノンから外れた作品も数多くあり、固定化された正典のラインナップにとらわれない活動が、ボランティアによって長らく続けられています。

たとえば、青空文庫には当初よりたくさんの随筆やエッセイが収められています。
小説で有名な作家たちについても、その日常や交流が記された小品がいくつもあり、文豪コンテンツが一定の広がりを見せる今、あらためて読むと作家ひとりひとりがいっそう身近に感じられるものですが、かつては「青空文庫にはなぜ小説ではなくエッセイばかりあるのか」と揶揄されたこともありました。
さらに評論や雑文も含めた書き物全体をながめてみると、何よりも目を惹くのは宮本百合子の存在でしょう。
今日現在、宮本百合子は単独作家として最大の作品数(旧全集のほとんど)が青空文庫に入っており、まさにボランティアの熱意と努力のたまものと言えます。

しかし、その数多くある小説以外の文芸を意図的に除外してしまうなら、たちまち青空文庫の豊かさは見えなくなってしまいます。
一部の狭い小説文壇の外で健筆を振るってきた女性たちの姿も見えなくなり、元々あったはずの多様性も色あせてしまうでしょう。

ひとつひとつ自分の選んだ作品を青空文庫に持ち寄るにあたって、ボランティア各人はさまざまに秘めた思惑を持っていることかと思います。
  • ひとつひとつ作業するといっても、小説以外の作品を増やしたい――とりわけ日本十進分類法の9類以外を増やす。

  • 総合インデックスに女性がひとりでも多く現れるように、未登録の作家の初登録作品を積極的に取り組む。

  • 今ではあまり読まれなくなった推し作家を集中的に掘り起こす。

  • 絶版になった著作権保護期間中の自作を登録する。

  • 全集のない作家の作品を自分でこつこつ集めて入力し、インデックス内にひとつの著作集を作り上げる。

  • 底本となる詩集や句集がない作家の作品集を自分で編んで、著作権あり作品として収録する。

  • 青空文庫の作品を背景にして生まれた近年の創作をアーカイヴに加える。

  • 異なる文化・言語に属する作家の作品を翻訳として登録する。

  • 既存の翻訳にとらわれない解釈に基づく新訳を公表する。

これらのことは長らくボランティアのそれぞれが、自分の意志で積極的に行ってきたことでもあるわけで、青空文庫アーカイヴの公開メタデータを適切に読むと、確かにわかってくることでもあります。

青空文庫の総合インデックスを開いたとき、全文検索を行ったとき、閲覧アプリでランダムに選び出されたとき、多くの作品のなかからひとつ、カノンを攪乱するような作品が現れて偶然目にとまる――そのような瞬間が生み出せるようなアーカイヴを、意志の積み重ねの結果として築いてきたのです。

ひとつひとつの「+1」が、青空文庫のアーカイヴ全体に対して大きな意味を持つのであって、ある種の〈外れ値〉の多様性も歓迎できるような〈メタデータ評論〉こそが、きっと今後期待されるものとなりましょう。

さて、昨年元旦より続いております「式年遷宮」に関わる作業ですが、これまでの「そらもよう」でご報告してきた通り、メールシステムの更新がすでに終わり、「ジャパンサーチ」との連携も開始されております。
加えて、前年中に新データベースシステムの開発が一段落し、「会計報告」にあるように(「本の未来基金」に寄せられたみなさまからの寄付金のおかげで)そのための費用の支出も無事に果たせました。心より感謝申し上げます。
そののち、去年後半にかけて検証作業を行い、そのなかで生じた不具合や不足についてメモをまとめ、ただいま改修に向けての確認と準備を行っております。

この元旦から新館開館というわけではなく、まだもう少し時間がかかりますが、どうか引き続きご理解とご協力のほどお願い申し上げます。
今後の進捗目標としましては、年度内に新データベースシステムのバグフィックスを終えたあと、新しい年度に入ってから実データでの運用試験を始め、2024年の7月7日には新館に引っ越して運用開始ができればと考えています。

残念ながら青空文庫の活動の全面再開は現時点では行えませんが、それに先だって、データベース入れ替えそのものやファイル点検に影響しない範囲での活動について、新たにお手伝いしてくださるボランティアの方を募集したいと思います。
ただいま青空文庫の管理運営の部分は、メールアカウントごとに分けると、info@aozora.gr.jp では広報と会計、reception@aozora.gr.jp では点検グループとWeb管理を担うメンバーが所属しています。
今回はそのうち、info アカウントでのメール対応、reception アカウントでの作業済みファイルの整理や公開ファイル作成にあたってくださる新規ボランティアの方を若干名、募りたく思います(後者はある程度青空文庫での実作業の知識があると助かります)。
また、今後の新規データベースシステムの検証にもお手伝いしてくださる方がいると、たいへん嬉しく思います。

上記にご関心のある方は、どうか info@aozora.gr.jp までお知らせください。歓迎いたします。
希望者に向けて、近日中に作業メモの共有やオンラインでのガイダンスもできればと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

昨年元旦の新規入力校正の受付休止以来、新たな申請を今か今かとお待ちいただいている方も多くいらっしゃることかと存じます(長らく入力中・校正中になっている作品を引き継ぐいわゆる〈目覚まし〉の希望についてもメールをいただいております)。
全面再開には、新規データベースの運用開始と、ファイルの高品質化に携われる裏方ボランティアの増員と育成が必要不可欠です。
新館準備にあたって、まずは既存のものの整理を優先したく思いますので、入力校正作業に関する返信と新規受付の再開はもうしばらくお待ちください。
今後のスケジュールについても、決まり次第この「そらもよう」で随時お知らせする予定です。

本年はいよいよ「式年遷宮」へ向けて、活動を徐々に再始動していければと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。(U)


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