2001年12月31日
青空文庫は今年、「時」に突き当たったのだと思う。

電子本に対する関心を通じて知り合った四人で、インターネットを使った電子図書館について話し始めたのは、1997年の春だ。
目指すところを文章にまとめ、大枠の進め方を想定して、その年の夏、ほんの5作品ほどを置いて、文庫のページを開いた。
どのくらいのペースで電子化を進めようといった目標は、立てなかった。自分たちが割り振れるわずかな力では、「目標」でもないだろうという気がした。
だが、青空文庫を訪れる人の中から、「協力しよう。いっしょに進めよう」と名乗りを上げる人が現れた。次々に現れた。
それから4年と半年近くたって、文庫には今、1670の作品が登録されている。今年も新たに、430余点をラインナップに加えられた。懸案のデータベース化にも、ようやくゴールが見えてきた。
はじまりのあの年の夏を思い起こせば、遠くまできたものだと思う。
だが、あの夏からこの冬へと続く道の途上には、「時」もまた、私たちを待ち受けていた。

スタート以来、青空文庫は電子化した作品を、三つのファイル形式に加工して提供してきた。テキスト、HTMLと、縦組みの読みやすい文字を提供できるエキスパンドブックだ。
最初に集まった四人は、エキスパンドブックを通じて、「パソコンでも本が読める」という確信をもった。この形に仕立てるには、手間がかかったが、「もう、電子図書館の始めどき」と納得してもらい、自分たちもそう胸をはるためには、この読みやすさが不可欠だと考えた。以来、時間と労力を注いで、エキスパンドブックを用意した。
だが、開発元のボイジャーは、エキスパンドブックの技術を、T-Timeと名付けた新しい枠組みに移した。その際、引き継ぐものと捨てるものを選り分けて技術に磨きをかけ、幅広い情報機器に対応する試みにも着手した。その一方で、OSの新バージョンに対応したエキスパンドブックの更新は止まり、一部では作成や閲覧に問題が生じ始めている。
エキスパンドブックは、古くなった。今後、どんなファイルを提供するのか、見直さざるをえなくなったと思う。
今後も、「読みやすい」ファイルを用意する、という考え方もあるだろう。だが、古びることのない基本的なフォーマットに限定して、「電子化」という基本に集中するという選択もあるはずだ。

表からはっきり見える、電子図書館としての活動の裏側で、青空文庫に集う人たちは、基礎的な資料やツールの開発に取り組んできた。
第1〜第4水準までの漢字を、部首・画数と、読みの双方から引ける「新JIS漢字総合索引」。入力ファイルに紛れ込みがちな機種依存文字をチェックしてくれる「文字チェッカー」。旧字ファイル中の新字排除を支援する、「校閲君」。テキスト版を、HTML版やエキスパンドブック版に加工する作業の支援ツールも、用意された。
文庫のファイルを読みやすい形で開くための閲覧ツールに関しては、私たちのまったくあずかり知らないところでも、広く開発が進んでいる
電子化に取り組むと、いやでもJIS漢字コードの考え方や、ルールに向き合わざるを得なくなる。JISのルールブックを電子化して、誰もが参照しやすくするための作業にも、今年、青空文庫で取り組んだ。
11月1日付けで改訂した「工作員マニュアル」のとりまとめに際しては、メーリングリストに集う人たちが、電子化の作法に関する論議を掘り下げ、方針を導き出してくれた。
文庫の活動は、「著作権の切れたものと、著者が公開に同意したものを集める」という、当初のややぼんやりとした想定をこえて、さまざまな領域で、深く掘り進められることになった。
昨年の大晦日の報告の繰り返しになるが、その一方で、現役の書き手からの登録要請には、ますます応えられなくなってきている。
青空文庫の役割として想定してきた柱にも、あらためて時の物差しを当て、今、この局面における優先順位を見きわめて、整理し直す局面にさしかかっていると思う。

「時」は実りを蓄える恵みの母ともなれば、限りある人の力にゆっくりと、だが確実にやすりをかける効果ももっている。
私たち一人ひとりには、こうした活動から距離を置かざるを得なくなる局面もおとずれれば、進め方や成果に関する根本的な疑問が生じることもあるだろう。
加えて、誰にしろ「私」は、「時」に試されながら何事かをなし、疲れ、やがてはこの世を去る。
青空文庫は、そうした「時」にも向き合わざるをえない。

では、「時」のやすりに耐えて持続する力を、この試みは育てられるのだろうか?
可能かも知れない。だが、力は決して「私」には宿らない。
唯一可能性を持つのは、「私たち」だろう。

「私たち」を目指しながら、文庫はこれまで、始まりの形を、否応なく引きずってきた。
けれど今年、青空文庫メーリングリストは、未来を選び取る主体として、目覚ましい存在感を発揮し始めた。
可能性はここにあると思う。
私は、私たちにとけて、「時」をこえてみたい。(倫)



2001年12月31日
田中亨吾さんが入力された
平林初之輔『山吹町の殺人』を登録する。校正は土屋隆さんです。(AG)



2001年12月29日
tatsukiさんが入力された
海野十三『烏啼天駆シリーズ・1 奇賊は支払う』『烏啼天駆シリーズ・2 心臓盗難』『烏啼天駆シリーズ・3 奇賊悲願』『烏啼天駆シリーズ・4 暗号の役割』『烏啼天駆シリーズ・5 すり替え怪画』『超人間X号』を登録する。校正は原田頌子さんです。(AG)



2001年12月28日
tatsukiさんが入力された
海野十三『恐竜島』『金属人間』を登録する。校正は原田頌子さんです。(AG)



2001年12月27日
Nana ohbeさんが入力された
岩野泡鳴『戦話』国木田独歩『二少女』堺利彦『獄中生活』広津柳浪『昇降場』、菅野朋子さんが入力された菊池寛『形』を登録する。校正はすべて林幸雄さんです。(AG)



2001年12月26日
門田裕志さんが入力された
幸田露伴『菊 食物としての』を登録する。校正はLM3さんです。(AG)



2001年12月25日
林幸雄さんが入力された
板倉勝宣『五色温泉スキー日記』を登録する。校正はちはるさんです。(AG)



2001年12月24日
林幸雄さんが入力された
横瀬夜雨『花守』を登録する。校正は小林繁雄さんです。(AG)



2001年12月22日
砂場清隆さんが入力された
泉鏡花『薬草取』、hongmingさんが入力された巖谷小波『こがね丸』『三角と四角』、Nana ohbeさんが入力された与謝野晶子『激動の中を行く』を登録する。校正は門田裕志さんです。(AG)



2001年12月21日
鈴木厚司さんが入力された
国木田独歩『画の悲み』(旧字・旧仮名)、大野晋さんが入力された大阪圭吉『カンカン虫殺人事件』、林幸雄さんが入力された島木健作『黒猫』を登録する。校正は小林繁雄さんです。(AG)



2001年12月20日
プラトン作、sogo さん訳の
『クリトン』を登録する。
国家の認める神をうやまわなかったとして、死刑判決を受けたソクラテスと、脱獄を進める友、クリトンとの対話の記録。クリトンの働きかけを退け、プラトンの師であるソクラテスは、「悪法も法なりとして」国家の命じるままに毒をあおる。
訳者後書きで sogo さんは、「国家と個人との関係、正義をめぐる対立、それらを考える上で必読となる文献、そのひとつが古代ギリシャ時代にプラトンが著した『クリトン』であることは間違いないでしょう。」と語る。
本作品は、9月11日の、アメリカにおける同時多発テロを受けて、「今の時代を考える上での手がかり」となるテキストを、「青空文庫に置くため」に訳された。

同じく sogo さん訳で青空文庫に登録されている、人の心に錐を当てて回答を迫るような論考、ジョナサン・スウィフト『アイルランドにおける貧民の子女が、その両親ならびに国家にとっての重荷となることを防止し、かつ社会に対して有用ならしめんとする方法についての私案』が、18日付で改訂されている。(倫)



2001年12月19日
鈴木厚司さんが入力された
楠山正雄『浦島太郎』『たにしの出世』『花咲かじじい』を登録する。校正は林幸雄さんです。(AG)



2001年12月18日
tatsukiさんが入力された
佐々木味津三『旗本退屈男 第九話 江戸に帰った退屈男』『旗本退屈男 第十話 幽霊を買った退屈男』『旗本退屈男 第十一話 千代田城へ乗り込んだ退屈男』を登録する。校正は大野晋さんです。(AG)



2001年12月17日
Nana ohbeさんが入力された
幸徳秋水『ドレフュー大疑獄とエミール・ゾーラ』『文士としての兆民先生』島崎藤村『朝飯』徳田秋声『躯』を登録する。校正は林幸雄さんです。(AG)



2001年12月15日
tatsukiさんが入力された
オイゲン・チリコフ作、森鴎外(森林太郎)訳『板ばさみ』を登録する。校正は山根生也さんです。(AG)



2001年12月14日
素樹文生さんが入力された
素木しづ『嫂』を登録する。校正は柳澤敦子さんです。(AG)



2001年12月13日
kompassさんが入力された
森鴎外『大塩平八郎』を登録する。校正は小林繁雄さんです。(AG)



2001年12月12日
鶴岡雄二さんの
『45回転の夏 第1章』『第2章』『第3章』を登録する。
7年前、新潮社から刊行された小説。長らく、入手できない状態が続いていたが、今回、電子ファイルとして蘇った。入力は著者ご本人、校正はY.N.さんが担当してくださった。
1966年、横浜市郊外に新設された全寮制の中高一貫校を舞台としたこの物語は、人生の幕が唐突に開く瞬間の、目のくらむようなおののきと至福感とにみちている。ページをめくるごとに、ロックンロールの黄金期を飾った旋律が響き出すだろう。残響の底からは、時が運んでくるおびただしい「死」へのレクイエムもまた、静かに聞こえてくるはずだ。
誰か、ラジオ番組にしてくれないか。

私個人には、忘れえぬ記憶もある。
この作品が生み落とされた頃は、『パソコン創世記』と名付けたはじめての本を、電子本として蘇らせる作業に取り組んでいた。残されたわずかな体力では、刊行後のパソコン産業の推移に、軽く触れる以上の事はできないだろうと思っていた。60年代後半を鮮やかにえぐり取って見せた鶴岡さんの物語を、プリントアウトで読んだのは、そんな時だ。
古い友は、なすべき仕事を一つ、確かに終えていた。
『パソコン創世記』を一から組み立て直し、70年代後半に私たちが見たもう一つの輝きに、腹を括って向き合う気力を、私は『45回転の夏』から得た。(倫)



2001年12月12日
はまなかひとしさんが入力された
桑原隲蔵『支那史上の偉人(孔子と孔明)』内藤湖南『日本国民の文化的素質』を登録する。校正は菅野朋子さんです。(AG)



2001年12月11日
高寺康仁さんが入力された
横光利一『犯罪』『碑文』『冬の女』『マルクスの審判』『盲腸』を登録する。校正は松永正敏さんです。

また、武田秀男さんが有島武郎『小さき者へ』のエキスパンドブック版を作ってくださいました。そちらも登録いたしました。(AG)



2001年12月10日
高寺康仁さんが入力された
横光利一『頭ならびに腹』『一条の詭弁』『神馬』『父』『七階の運動』を登録する。校正は松永正敏さんです。(AG)



2001年12月8日
林幸雄さんが入力された
板倉勝宣『春の上河内へ』『山と雪の日記』を登録する。校正は田口彩子さんです。(AG)



2001年12月7日
tatsukiさんが入力された
レオ・トルストイ作、森鴎外(森林太郎)訳『パアテル・セルギウス』を登録する。校正は浅原庸子さんです。(AG)



2001年12月6日
武田秀男さんが入力された
與謝野晶子『遺書』を登録する。校正はmayuさんです。(AG)



2001年12月5日
柴田卓治さんが入力された
夢野久作『父杉山茂丸を語る』を登録する。校正は小林徹さんです。(AG)



2001年12月4日
林幸雄さんが入力された
黒島伝治『チチハルまで』『名勝地帯』本庄陸男『お菜のない弁当』『とも喰い』を登録する。校正は土屋隆さんです。(AG)



2001年12月3日
田浦亜矢子さんが入力された
海野十三『国際殺人団の崩壊』を登録する。校正はもりみつじゅんじさんです。(AG)



2001年11月30日
Nana ohbeさんが入力された
長塚節『太十と其犬』を登録する。校正は林幸雄さんです。(AG)



2001年11月29日
土屋隆さんが入力された
十一谷義三郎『青草』を登録する。校正は鈴木厚司さんです。(AG)



2001年11月28日
はまなかひとしさんが入力された
内藤湖南『維新史の資料に就て』『大阪の町人と学問』『日本文化の独立』を登録する。校正は菅野朋子さんです。(AG)



2001年11月27日
kompassさんが入力された
大杉栄『日本脱出記』を登録する。校正は小林繁雄さんです。この作品の冒頭部分は、山根鋭二さん入力、浜野智さん校正ですでに公開してきました。ただしこれは抄録であったため、「パリの便所」以降をkompassさんに入力していただき、そして既登録部分も、kompassさんが入力底本とされた「大杉栄全集」と対照し、あらためてすべてを小林繁雄さんに校正してもらいました。(AG)



2001年11月26日
白田秀彰さんの、
『グリゴリの捕縛』を登録する。副題は「情報時代の憲法について」。
人は歴史のどのような局面で「憲法」を打ち立て、どう機能させようとしてきたのか。新しい情報の時代を迎えつつある今、「憲法」を楯として、私たちはなにに立ち向かうことになるのかを、見きわめようとする論考。
新しい強大な力が生まれ、「その時代ごとに考えられた『人間的なあり方』」が脅かされるとき、その脅威に対抗する仕組みが「憲法」に盛り込まれてきたと、白田さんは位置づける。では、情報を核とした新しい時代へと踏み込みつつある今、新しい強大な力は、どこに生まれようとしているのか。それらの力の主を捕らえて跳梁を阻み、人としてのあり方を守るために、私たちはどのような社会の「基本原則」を打ち立てようとしているのか。新しい強大な力に差し向ける精神の対抗軸は、どこから生まれ、どう育ちつつあるのかが、(私のこのようなまどろっこしい書き方ではなく)明晰な筆致で語られる。

なぜ私は、青空文庫の活動に誘われるのか。さまざまな志や願いがこの場に寄り集まるとき、何と何が結び付き、何と何がすれ違い、ときにはぶつかり合うことになるのか。日々向き合い、進むべき道を見きわめようともがいている問題を切り分ける「考えの補助線」を、『グリゴリの捕縛』に与えてもらったように思う。

なお、本稿のエキスパンドブック版を、Macintosh用の古い閲覧ソフト(BookBrowser 1.6.9.88以前)で開くと、表示に問題が生じる場合があることを確認している。最新版のv1.7では、問題は生じないと判断し、公開に踏み切った。旧版をお使いの方は、これを機会にボイジャーのソフトウエア・ライブラリーから新版をダウンロードし、切り替えて下さいますように。(倫)



2001年11月23日
kompassさんが入力された
萩原朔太郎『宿命』を登録する。校正はちはるさんです。(AG)



2001年11月20日
tatsukiさんが入力された
エドガー・アラン・ポー作、森鴎外(森林太郎)訳『十三時』を登録する。校正はもりみつじゅんじさんです。(AG)



2001年11月19日
jupiterさんが入力された
鈴木三重吉『古事記物語』を登録する。校正は鈴木厚司さんです。(AG)



2001年11月16日
森下祐行さんが入力された
渡辺温『赤い煙突』を登録する。校正はもりみつじゅんじさんです。(AG)



2001年11月15日
林幸雄さんが入力された
板倉勝宣『春の槍から帰って』を登録する。校正は土屋隆さんです。(AG)



2001年11月14日
はまなかひとしさんが入力された
内藤湖南『学変臆説』『寧楽』『日本の肖像画と鎌倉時代』『平安朝時代の漢文学』を登録する。校正は菅野朋子さんです。(AG)



2001年11月13日
tatsukiさんが入力された
クスミン作、森鴎外(森林太郎)訳『フロルスと賊と』を登録する。校正は山根生也さんです。(AG)



2001年11月12日
tatsukiさんが入力された
海野十三『骸骨館』『雪魔』『一坪館』『霊魂第十号の秘密』を登録する。校正は原田頌子さんです。(AG)



2001年11月9日
記紀文庫からリンクしていた、下記作品の図書カードを削除した。
伊藤孝昭『オバQ主義者の憂鬱』、伊藤乃理子『心の旅 なにわの鳶職篇』『ライフ』、岩本太郎『私の非常な日常』、鈴木邦男『政治学入門』、津野潤『〈子供〉をめぐる虚言』、牧野剛『21世紀への遺言』
同文庫のウェッブページが、活動休止となったことに対応する処置だ。

記紀文庫は、編集者の伊藤孝昭さんがはじめた「電子個人出版社」だ。1996年の夏、電子メール雑誌月刊記紀(kiki)が創刊され、続いてウェッブページが開かれた。
青空文庫のスタートは、1997年の8月。1か月もたたない内に、伊藤さんから、「リンクしたい」旨の連絡があった。「インターネットの発展によって活字文化の再生を期せるのではないか」と考えて活動をはじめたと、メールの冒頭にはあった。
記紀文庫のページを覗き、単にリンクで終わらせるのではなく、収録されている作品の図書カードを、青空文庫に用意させてもらえないかとお願いした。
その後の青空文庫ではうまく延ばせなかった他サイトとの協調という筋が、ここにはあったと、個人的にはそう思う。

記紀文庫との連携当時ははっきりしていなかった、ファイルの取り扱いや収録のルールを、青空文庫ではその後、関わる人全体で決めていった。
著作権の生きている作品を収録する際の手順を定め、ファイルは原則として、書いた人本人のディスクスペースに置いてもらうことにした。
この原則に照らして、今回は、図書カードを削除するという方針を決めた。

では伊藤さん、またどこかで。(倫)



2001年11月8日
kompassさんが入力された
大杉栄『獄中記』『続獄中記』を登録する。校正は小林繁雄さんです。(AG)



2001年11月7日
鈴木厚司さんが入力された
国木田独歩『都の友へ、B生より』『湯ヶ原ゆき』『湯ヶ原より』を登録する。校正はmayuさんです。(AG)



2001年11月5日
1日に改訂した
青空文庫工作員マニュアルに、PDF版が復活した。
旧バージョンのPDF版は、本格的なDTPソフトを使って作られたものだった。その元データが事故によって失われたため、途中の改訂もままならないという事情があった。
今回「復活」したPDF版は、版下作成に、一般的なワープロソフトを使っている。レイアウトや画像の見やすさなどは、本格的DTPソフトの足下にも及ばないが、「紙に印刷して持ち歩く」という用途には、十分使えるだろうと思う。ぜひともプリントアウトして、作業の際、お手元に置いて下さるよう、お願いしたい。
少しずつ明文化してきた項目を加え、今回のPDF版は、旧バージョンよりも20ページ近くもページ数が増えた。これも青空文庫の成長のあかしと言えるだろう。これからも、さらに検討を加えて、作業しやすい環境を整えていきたいと考えている。その際には、引き続き、みなさんのお力を貸していただけますように。(LC)



2001年11月1日
青空文庫工作員マニュアルを、改訂した。
履歴に示したとおり、修正点は多岐に渡っているが、大半は、あやふやだった要素を明確化したり、運用の実態を成文化したりしたものだ。
白が黒に変わったような要素はない。

頭に置いて欲しいのは、以下の三点だ。
・外字注記
  喉を掻き※[#「※」は「てへん+劣」、読みは「むし」、30-16]って
のように書いてきたが、下線部を省き、
  喉を掻き※[#「てへん+劣」、読みは「むし」、30-16]って
と書くことにした。(→「3.入力-2」【外字の処理】
・アルファベットの前後のアキ
アルファベットと、かな、漢字などが接するところには、半角のアキを入れ、
  僕は Victor Hugo の Notre Dame を読んだとき、
のように入力することに決めた。(→「2.入力-1」【アルファベット】
・改行行頭の括弧の前のアキ
一部の底本では、改行行頭の「「」の前が、開けてある。
こうした際も、アキなしで入力することにした。(→「2.入力-1」【行頭の括弧の字下げ】

ポイントは以上だが、全体に目を通してもらえれば、より確かに、迷いなく作業できる。
入力時、校正時には、プリントアウトを座右においていただけるとありがたい。
なお、これまでHTML版とともにおいてきたPDF版は、削除した。
DTPソフトで作った元ファイルが失われ、PDF版には、これまでの改訂内容も盛り込めないできた。プリントアウトには、この形式がなじみがよいのだが、一から作り直す時間がとれなかった。

今回の改訂作業には、青空文庫メーリングリストで取り組んだ。
進行係りの不手際が響いて、長期間に及ぶ、込み入った論議を強いられた。
忍耐をもって提案を続けてくれた仲間、経過を見守ってくれたメンバーに、心からのお礼を申し上げます。
先送りにした体裁情報の記述に関して、もう一度、力をふるってくださいますように。

青空文庫メーリングリストは、生きている。
新しい友よ、協働の場に来たれ!(倫)



2001年11月1日
田中久太郎さんが入力された
太宰治『愛と美について』を登録する。校正は鈴木厚司さんです。(AG)



2001年10月31日
林幸雄さんが入力された
小野浩『金のくびかざり』を登録する。校正は鈴木厚司さんです。(AG)



2001年10月30日
森下祐行さんが入力された
渡辺温『アンドロギュノスの裔』『遺書に就て』を登録する。校正はもりみつじゅんじさんです。(AG)



2001年10月29日
柴田卓治さんが入力された
夢野久作『創作人物の名前について』『謡曲黒白談』を登録する。校正は小林徹さんです。

今まで「電子テキストの読み方」というページがあったのですが、すっかり更新せずにほったらかしでした。それを「TEXTの読み方」という名前に変更してリニューアルしました。内容の方向性も少し変えて、主にPDA、携帯電話での青空文庫のテキストの読み方になっています。「青空文庫」なわけですから、やはり青空の下で読もう、ということを目指しています。まだ一部分しか完成していませんが、順次更新して行こうと思っています。(AG)



2001年10月26日
先日開通した新しいミラーサイト、http://203.140.29.150/aozora/ですが、アスキーさんのご協力によりバーチャルドメイン化することができました。http://mirror.aozora.gr.jp/です。もちろん、http://203.140.29.150/aozora/ででもOKですが、タイピングするときなどには、mirror.aozora.gr.jpでどうぞ。(AG)



2001年10月25日
tatsukiさんが入力された
カミイユ・ルモンニエエ作、森鴎外(森林太郎)訳『聖ニコラウスの夜』を登録する。校正はしずさんです。(AG)



2001年10月24日
はまなかひとしさんが入力された
内藤湖南『日本上古の状態』『日本文化とは何ぞや(其一)』『日本文化とは何ぞや(其二)』を登録する。校正は菅野朋子さんです。(AG)



2001年10月23日
tatsukiさんが入力された
アルツウル・シュニッツレル作、森鴎外(森林太郎)訳『アンドレアス・タアマイエルが遺書』ライネル・マリア・リルケ作、森鴎外(森林太郎)訳『祭日』を登録する。校正は浅原庸子さんです。(AG)



2001年10月22日
tatsukiさんが入力された
マクシム・ゴルキイ作、森鴎外(森林太郎)訳『センツアマニ』を登録する。校正は山根生也さんです。(AG)



2001年10月19日
牡蠣右衛門さんが入力された
泉鏡花『縁結び』を登録する。校正は門田裕志さんです。(AG)



2001年10月18日
tatsukiさんが入力された
佐々木味津三『旗本退屈男 第八話 日光に現れた退屈男』を登録する。校正は皆森もなみさんです。(AG)



2001年10月17日
はまなかひとしさんが入力された
内藤湖南『弘法大師の文芸』『聖徳太子』を登録する。校正は菅野朋子さんです。(AG)



2001年10月15日
青空文庫に、新しい支え手が現れた。
インターネットでテレビ番組表を提供しているOnTV Japanが、ミラーサイトを引き受けてくださった。
ありがとうございます。
青空文庫を、どうぞよろしく。

新ミラーサイトは、
http://mirror.aozora.gr.jpですでに動きだしている。
強力なサーバーで、更新の遅れもない。ご贔屓に。
OnTV Japanの電子番組表からは、番組や出演者に関する情報が引き出せる。
いろいろな切り口での検索に対応していて、機器がそろっていれば、録画予約もここで簡単にできる。
同社の電子番組案内も、ご愛顧のほどを。

およそ2年半にわたってサーバーを提供してくださった、群馬インターネットのミラーサイトは、先ほど運用を停止した。
長い間、ありがとうございました。
同社の基盤は群馬だが、東京にもアクセスポイントがある。国内はもちろん、海外ローミングのサービスも、早くから提供してこられた。
プロバイダー選定の際には、群馬インターネットのメニューに是非、目を通してくださいますように。

今回の新規ミラーサイト開設にあたっても、松本吉彦さんのご尽力を得た。
毎度毎度で芸がないが、松本さんが何をしてこられたかは、『パソコン創世記』の第二部第五章でどうぞ。(倫)



2001年10月15日
tatsukiさん、『鳩よ!』編集部(「ゆず湯」のみ)さんが入力された
岡本綺堂『綺堂むかし語り』を登録する。校正は松永正敏さんです。(AG)



2001年10月11日
大野晋さんが入力された
萩原朔太郎『秋と漫歩』『ウォーソン夫人の黒猫』『日清戦争異聞(原田重吉の夢)』『老年と人生』を登録する。校正は鈴木厚司さんです。(AG)



2001年10月10日
高柳典子さんが入力された
尾形亀之助『色ガラスの街 詩集』を登録する。校正は泉井小太郎さんです。(AG)



2001年10月9日
「随筆計画2000」より、渡邉つよしさんが入力された
加福均三『希臘及び羅馬と香料』北原白秋『香いの狩猟者』正岡子規『犬』を登録する。校正は門田裕志さんです。(AG)



2001年10月8日
森下祐行さんが入力された
渡辺温『ああ華族様だよ と私は嘘を吐くのであった』『絵姿 The Portrate of Dorian Gray』と、清十郎さんが入力されたナサニエル・ホーソーン作、岡本綺堂訳『ラッパチーニの娘 アウペパンの作から』を登録する。校正はすべてもりみつじゅんじさんです。(AG)



2001年10月6日
(株)モモさんが入力された
中里介山『大菩薩峠 12伯耆の安綱の巻』を登録する。校正は原田頌子さんです。(AG)



2001年10月5日
群馬インターネットのご支援によるミラーサイト、http://www9.wind.ne.jp/aozora/の運用を、今月の15日いっぱいで停止することになった。
2年半にわたって私たちを支えてくださった群馬インターネットのみなさんに、あらためてお礼を申し上げます。
本当に、ありがとうございました。

今年8月のデータでは、メイン、ミラーあわせて、1日およそ7000人強が青空文庫を利用する勘定になっていた。転送量は、1日およそ3Gバイト。月で90Gバイト強に達している。
アクセス、転送量の増加傾向は、今後も続くだろう。雑誌の付録CD-ROMといった〈バイパス〉をもっと利用してもらえるよう、工夫していきたいし、根本的にはミラーサイトを増やし、分散化を押し進めることで、負荷の増大に対処していきたいと考えている。
青空文庫増殖計画の第一歩として、新たにミラーを引き受けてくださるところも決まった。
15日までには準備をおえて、青空文庫の新しい支え手と、新ミラーサイトのURLをお知らせできると思う。(倫)



2001年10月5日
(株)モモさんが入力された
中里介山『大菩薩峠 11駒井能登守の巻』を登録する。校正は原田頌子さんです。(AG)



2001年10月4日
(株)モモさんが入力された
中里介山『大菩薩峠 10市中騒動の巻』を登録する。校正は原田頌子さんです。(AG)



2001年10月3日
(株)モモさんが入力された
中里介山『大菩薩峠 9女子と小人の巻』を登録する。校正は原田頌子さんです。(AG)



2001年10月2日
kompassさんが入力された
幸田露伴『雁坂越』を登録する。校正は林幸雄さんです。(AG)



2001年10月1日
はまなかひとしさんが入力された
桑原隲蔵『秦始皇帝』を登録する。校正は菅野朋子さんです。(AG)



2001年9月28日
「随筆計画2000」より、渡邉つよしさんが入力された
岡本かの子『男心とはこうしたもの』幸田露伴『些細なようで重大な事』を登録する。校正は門田裕志さんです。(AG)



2001年9月27日
中里介山「大菩薩峠4」の入力に応募してくださったK.H.さん。ご相談したい点があり、メールを差し上げましたが、どちらのアドレスにも届きませんでした。info@aozora.gr.jp宛、ご連絡をいただけないでしょうか?

作業協力いただいている皆さん。着手後、アドレスが変更になった際は、info@aozora.gr.jp宛、ご連絡をお願いいたします。(倫)



2001年9月27日
「随筆計画2000」より、渡邉つよしさんが入力された
岡本かの子『一平氏に』『女性と庭/初夏に座す』桐生悠々『言いたい事と言わねばならない事と』萩原朔太郎『常識家の非常識』を登録する。校正は門田裕志さんです。(AG)



2001年9月26日
はまなかひとしさんが入力された
内藤湖南『近畿地方に於ける神社』を登録する。校正は菅野朋子さんです。(AG)



2001年9月25日
高瀬泰司×豊田勇造対談「12年目の大文字が燃える京都で」を登録する。
もともとは、豊田勇造の歌を主体としたカセット・ブック『センシミーナ』(1984年プレイガイドジャーナル社発行)に収録されていたもので、それが大阪在住の三木高士さんの手によってデジタル復刻され、ウェブサイトGATHERS NO MOSSで公開された。今回登録のファイルは、それに注釈を入れるなどの手を加え、新たにプレーンテキスト 版とttz版を作成したものだ。
高瀬泰司の名はいまや忘れられたも同然だが、京都を拠点に雑誌『話の特集』などで旺盛な活動を展開した文筆家。15年前に惜しくも亡くなったが、熱くたぎるもののある独特の文章を記憶している人もあるだろう。今回の作品は歌い手である豊田勇造との対談ということもあって、話題は音楽中心に展開するが、文化を考える上で示唆的な発言がいくつも含まれていると思う。(楽)



2001年9月24日
はまなかひとしさんが入力された
内藤湖南『易疑』『敬首和尚の典籍概見』を登録する。校正は菅野朋子さんです。(AG)



2001年9月21日
はまなかひとしさんが入力された
内藤湖南『禹貢製作の時代』『爾雅の新研究』『支那古典学の研究法に就きて』を登録する。校正は菅野朋子さんです。(AG)



2001年9月20日
「随筆計画2000」より、渡邉つよしさんが入力された
内田魯庵『貧書生』岡本かの子『私の書に就ての追憶』斎藤緑雨『青眼白頭』添田唖蝉坊『乞わない乞食』を登録する。校正は門田裕志さんです。(AG)



2001年9月19日
「随筆計画2000」より、渡邉つよしさんが入力された
金子ふみ子『父』倉田百三『あわれなる廿日鼠』直木三十五『貧乏一期、二期、三期  わが落魄の記』を登録する。校正は門田裕志さんです。(AG)



2001年9月18日
生野一路さんが入力された
織田作之助『わが町』を登録する。校正は小林繁雄さんです。(AG)



2001年9月17日
門田裕志さんが入力された
泉鏡花『木の子説法』『半島一奇抄』『古狢』を登録する。校正は林幸雄さんです。(AG)



2001年9月15日
tatsukiさんが入力された
ジュウル・クラルテエ作、森鴎外(森林太郎)訳『猿』ゲオルヒ・ヒルシュフェルド作、森鴎外(森林太郎)訳『防火栓』を登録する。校正は浅原庸子さんです。(AG)



2001年9月14日
tatsukiさんが入力された
アンリ・ド・レニエエ作、森鴎外(森林太郎)訳『復讐』を登録する。校正はしずさんです。(AG)



2001年9月13日
kompassさんが入力された
横光利一『旅愁』を登録する。校正は松永正敏さんです。(AG)



2001年9月12日
「随筆計画2000」より、渡邉つよしさんが入力された
市島春城『読書八境』幸田露伴『名工出世譚』坪内逍遥『十歳以前に読んだ本』正岡子規『読書弁』を、とみ〜ばあさんが入力された幸田露伴『水』徳冨蘆花『水汲み』を登録する。校正はすべて門田裕志さんです。(AG)



2001年9月11日
tatsukiさんが入力された
アンリ・ド・レニエエ作、森鴎外(森林太郎)訳『不可説』を登録する。校正は田口彩子さんです。(AG)



2001年9月10日
伊藤時也さんが入力された
加能作次郎『恭三の父』を登録する。校正は本山智子さんです。(AG)



2001年9月8日
ジョナサン・スウィフト作、sogoさん訳の
『アイルランドにおける貧民の子女が、その両親ならびに国家にとっての重荷となることを防止し、かつ社会に対して有用ならしめんとする方法についての私案』を登録する。プロジェクト杉田玄白正式参加作品。
スウィフトは、『ガリバー旅行記』で知られる、あのスウィフト。今回登録した『私案』は、『旅行記』の3年後、1729年に書かれている。長いタイトルの頭に、原題では modest proposal(おだやかな提案)とある。だが、内容はまったくもっておだやかではない。一読すれば誰の胸にも、ちょっと消えそうもない、異物感が残るのではないかと思う。
これほどのいびつで冷酷な嫌悪と憤怒は、果たしてどこからきたのか。
イングランドによる、アイルランドの長い支配の歴史。抵抗とさらなる弾圧。17世紀後半になって、いっそう強化された、カトリックへの政治的、経済的な締め付け。イングランドにすむプロテスタント不在地主と、アイルランド人の小作人という構図の成立。さらに、イングランドの産業と競合する製品の対英輸出禁止措置などが加わって、アイルランドの貧困は、いっそう深刻なものとなっていく。
そうした歴史的背景と、政治的立場からイギリスを追われた両親のもとにアイルランドに生まれたという、スウィフトの出自。いったんはイングランドで政治家秘書となっておよそ10年を過ごしたものの、政治的な立場からアイルランドに戻らざるをえなくなり、失意のうちに聖職者として過ごしたという彼の経歴抜きには、「おだやかな提案」の底なしの不気味さは、受けとめることもできないのではないかと思う。
ここには、イングランドへの憎悪がある。加えて、収奪されつくす母国アイルランドへの、闇よりもなお暗い嫌悪もまた、色濃く織り込まれているように感じた。
今に続く〈アイルランド問題〉の歴史的一断面をえぐり取った「おだやかな提案」は、短いがやはり、『ガリバー旅行記』とならぶ、スウィフトの代表作の名に値すると思わされた。
ていねいな作業で、格調高い端正な訳稿をまとめ、公開によって、多くがこの記念碑的な作品に親しむ機会を与えてくれたsogoさんに、心よりのお礼を申し上げます。(倫)



2001年9月7日
柴武志さんが入力された
若山牧水『なまけ者と雨』(旧字・旧仮名)『若葉の頃と旅』を登録する。校正は林幸雄さんです。エキスパンドブック版は、この2作品と、『序文に代えてうたえる歌十首』『草鞋の話旅の話』『島三題』『木槿の花』『夏を愛する言葉』『四辺の山より富士を仰ぐ記』『野蒜の花』『枯野の旅』『冷たさよわが身を包め』『夏の寂寥』『夏のよろこび』『釣』『虻と蟻と蝉と』『空想と願望』『酒の讃と苦笑』『歌と宗教』『自己を感ずる時』『貧乏首尾無し』『若葉の山に啼く鳥』『秋風の音』『梅の花桜の花』『温泉宿の庭』『或る日の昼餐』『桃の実』『春の二三日』『青年僧と叡山の老爺』『東京の郊外を想う』『駿河湾一帯の風光』『故郷の正月』『伊豆西海岸の湯』『海辺八月』『地震日記』『火山をめぐる温泉』『自然の息自然の声』『跋』を合わせて、随筆集『樹木とその葉』としました。(AG)



2001年9月6日
第1〜第4水準までの漢字をたやすく見つけられる
「新JIS漢字総合索引」を改訂した。この索引の使い方は、「新JIS漢字時代の扉を開こう!」で説明している。今回の改訂内容を反映するために、こちらもあらためた。

「索引」は、青空文庫のいしずえの一つになったと思う。
これをまとめられたことで、第3第4水準の漢字を使って外字の多くと縁を切る作業に、関わる人全員で取り組む準備が整った。内輪の話になるが、「現時点で何を外字に回すべきか」見きわめる、はっきりとした目安が得られた効果も大きかった。
新JISを使った文書作りは、今までの所、青空文庫が「明日の本棚」で進めているものくらいしかしらない。けれど、新JISへの移行が本格化した段階では、幅広い人が「索引」を使ってくれるだろうと期待している。
何しろ、自分たちが新JISに踏み込もうとしたとき、どうしても作らざるを得なかったツールだ。
きっと、みんなの役に立つ。

ただし、「索引」を文庫の仲間と使いはじめると、新しい問題がその「索引」そのものから生じるようになった。
例えば、コンピューターの文字の問題点として、しばしば指摘される森鴎外の「鴎」。印刷されたもので広く使われている「區+鳥」は、第1第2水準を決めた規格のルールでは、「鴎」のコードで入れてかまわないことになっている。
青空文庫の作業は、今もこのルールに従って進めているので、入力の元となる本に「區+鳥」があった場合も、「鴎」のコードで入れるのが、正しい作業方針だ。
ところが新JISでは、「區+鳥」が独自のコードを与えられた。「索引」には、第3水準に加えられた「區+鳥」を盛り込んである。底本とぴったり同じ「區+鳥」が見つかると、そこで「これだ!」と目が止まる。
「鴎」のコードで入れる代わり、当然「區+鳥」を使うべきだと気持ちが動く。
次に、この字が、文庫本体では今のところ使わないことにしている、第3水準の漢字であることを確認するステップがくる。
一般には、「第3第4水準の文字は外字注記する」のだという、マニュアルにある作業方針が頭に浮かび、結果的に「鴎」のコードで入れるべきものを、外字注記してしまう。
この新しい誤りのパターンが、「索引」の公開移行、ぽつぽつと現れるようになった。

こうした迷いを生じさせる文字が、「索引」には都合133字載っている。(適用されなくなる78互換包摂の29字と、包摂規準の適用が除外される104字)
これらを赤字で示し、現在の青空文庫の入力では、この文字を表すものとして使って良いコードの例示字体を、灰色で添えた。
文字コードの話は、「正しく書こう」とすると、途端にややこしくなる。
ざっくりと、多少の「嘘」も混じることを承知で言い直せば、底本に赤い字があった場合も灰色の字で入力するのが、現時点での正しい処置だ。
そのことを、一目でわかるように示すことが、今回の改訂の狙いである。

これまで「索引」を使ってこられた方には、改訂版への切り替えをお願いしたい。
あなたの作業の精度を、きっと高めてくれると思う。
何らかの形で、いわゆる電子出版に携わっておられる方、興味を持っておられる方にも、この機会に「索引」を試してみることをお薦めしたい。
第1〜第4水準の漢字探しには、今のところこれが、もっとも便利な道具だと思う。
詳しい使い方は、あわせて更新した「新JIS漢字時代の扉を開こう!」所収の【「新JIS漢字総合索引」を使ってみよう】で説明している。
こちらにも、目を通していただけるとありがたい。

今回、「索引」の改訂内容を反映させるために、「新JIS漢字時代の扉を開こう!」を読み直してみて、堂々と「嘘」の領域に踏み込んでいる「分かりやすい表現」が多いのに、冷や汗をかいた。
積極的な更新内容は、新版「索引」への対応のみだが、頭から最後まで見直して、いろいろなところで字句をあらためた。

文字コードの話は、本当にむつかしい。
あらたまっていない間違いや、新たな誤りもあるかもしれない。
正すべき点があれば、info@aozora.gr.jp宛、よろしく御指摘ください。(倫)



2001年9月6日
林幸雄さんが入力された
長塚節『炭焼のむすめ』を登録する。校正は浅原庸子さんです。(AG)



2001年9月5日
笊被りさんが入力された
『警察官職務執行法』を登録する。校正はmayuさんです。(AG)



2001年9月4日
林幸雄さんが入力された
新美南吉『屁』を登録する。校正は鈴木厚司さんです。(AG)



2001年9月3日
岡本綺堂『修禅寺物語』、小酒井不木『痴人の復讐』『恋愛曲線』『闘争』他の入力に応募してくださったMさん。
小酒井不木『恋愛曲線』の入力を引き継げないかという提案を、別の方からちょうだいしました。
メールによる連絡を試み、アドレスが使われていないと知りました。そこでさる8月18日の本欄で、ご連絡を乞うお願いを差し上げました。以降、お名前を検索エンジンにたずねたりもしてみましたが、手がかりがえられません。
どうすればMさんとコンタクトできるか、考えあぐねています。

「作業継続の意思をお持ちだったら…」、「ある程度進めておられたら…」とのためらいも拭えませんが、このままお待ちして良いとも思えません。
小酒井不木『恋愛曲線』の入力担当者は、勝手ながら変更させていただきます。
その他の作品については、もうしばらく、ご連絡をお待ちします。ただし、他の方から入力を引き継ぎたいという意思が示された場合は、その方にお願いします。
今年いっぱいかけても連絡を取り合えなければ、ご応募いただいたすべての作品を、「入力取り消し」のステータスに変更したいと思います。

作業協力いただいている皆さん。着手後、アドレスが変更になった際は、info@aozora.gr.jp宛、ご連絡をお願いいたします。(倫)



2001年9月3日
大野裕さんが入力された
黒島伝治『海賊と遍路』『前哨』『反戦文学論』『浮動する地価』『土鼠と落盤』を登録する。校正は原田頌子さんです。(AG)



2001年8月31日
kompassさんが入力された
森鴎外『椙原品』を登録する。校正はしずさんです。(AG)



2001年8月30日
はまなかひとしさんが入力された
内藤湖南『支那に於ける史の起源』『蔵書家の話』を登録する。校正は菅野朋子さんです。(AG)



2001年8月29日
林孝司@石原莞爾デジタル化同志会さんが入力された
石原莞爾『最終戦争論・戦争史大観』を登録する。校正はKOKODA@石原莞爾デジタル化同志会さんです。(AG)



2001年8月28日
kompassさんが入力された
森鴎外『津下四郎左衛門』を登録する。校正は浅原庸子さんです。(AG)



2001年8月27日
林幸雄さんが入力された
加能作次郎『少年と海』宮原晃一郎『椰子蟹』を登録する。校正は鈴木厚司さんです。(AG)



2001年8月24日
大野裕さんが入力された
黒島伝治『パルチザン・ウォルコフ』と、「随筆計画2000」より、葵さんが入力された薄田泣菫『手品師と蕃山』関根金次郎『本因坊と私』を登録する。校正はすべて柳沢成雄さんです。(AG)



2001年8月23日
矢野正人さんが入力された
戸坂潤『映画芸術と映画』『娯楽論』『思想と風俗』を登録する。校正は小林繁雄さんです。(AG)



2001年8月22日
kompassさんが入力された
萩原朔太郎『定本青猫』を登録する。校正はちはるさんです。(AG)



2001年8月21日
ロバート・ルイス・スティーブンソン作、katoktさん訳の
『ジキルとハイド』を登録する。プロジェクト杉田玄白の正式参加作品であるkatoktさんの訳稿を、これで五つ、文庫に加えることができた。あらためて、katoktさん、ありがとうございます。
本作品と並ぶスティーブンソンの代表作、『宝島』の刊行が、1883年。人の心の二重性という大きく異なったテーマを扱い、1886年に出版された『ジキルとハイド』は、イギリスで、続いてアメリカでベストセラーとなり、劇化されてさらに広く親しまれた。未読の方も、二重人格の代名詞としての、ジキルとハイドに対するイメージは、もっておられると思う。
だが、後書きでkatoktさんも述べておられるとおり、ハイドの〈悪〉に対するジキル博士のポジションは、一般的な受け止めとは少しずれていて、純粋な〈善〉とはされていない。「普段の人」であるジキルは、善悪に代表される、さまざまな要素の集合体として描かれる。
いくつかの機能モジュールからなる脳で、抑制的な役割を担う部分を、薬物の力を借りてしばらく黙らせておき、一時の放恣を楽しむことは、今も我々のあいだに深く根を張っている嗜好である。この作品に触れたのはこれで二度目だが、怪奇的な要素はほとんど感じず、薬物、とりわけアルコール依存の分析的な寓話のように受け止めながら読み進んでいった。(倫)



2001年8月20日
高橋真也さんが入力された
穂積陳重『法窓夜話』を登録する。校正は伊藤時也さんです。(AG)



2001年8月18日
岡本綺堂『修禅寺物語』、小酒井不木『痴人の復讐』『恋愛曲線』『闘争』他の入力に応募してくださったMさん。ご相談したい点があり、メールを差し上げましたが、届きませんでした。info@aozora.gr.jp宛、ご連絡頂戴できないでしょうか?

作業協力いただいている皆さん。着手後、アドレスが変更になった際は、info@aozora.gr.jp宛、お知らせくださいますように。(倫)



2001年8月17日
「青空文庫登録作品に現れた外字」と「文学作品に現れた外字」の二つの資料を、文庫本体のおさまっているサーバーから外した。合わせて、トップページに置いていた外字関係の見出しもとった。移転先は、「登録作品」が
こちら。「文学作品」がこちら
二つの資料を、どんなきっかけで、何を目指して作ったか、「青空文庫と外字」という報告にまとめている。本来は、新JIS漢字の制定時点で、役割を終えたものだが、タイミングを失して、昨日までそのまま置いてきた。必要があって、ファイルや資料を見直しているうち、「もう外そう」と決心が付いた。
努力してまとめ、活用し、役割を終えた資料を、「書庫」にしまう…。青空文庫にも少し、歴史らしきものができてきた。(倫)



2001年8月14日
大野裕さんが入力された
黒島伝治『武装せる市街』を登録する。校正は原田頌子さんです。(AG)



2001年8月13日
山田芳美さんが入力された
モーリス・ルヴェル作、田中早苗訳『或る精神異常者』と、j_sekikawaさんが入力された森鴎外『余興』を登録する。校正はしずさんです。(AG)



2001年8月11日
ジェームス・マシュー・バリ作、katoktさん訳の
『ピーターパンとウエンディ』エキスパンドブック版を、F.D.ベッドフォードによる挿し絵を入れたものに差し替える。
これで表紙は、1904年に『ピーターパン』が初演されたときのポスター、本文中のイラストは、1911年にはじめて小説として出版されたときのものと、初物でそろった。ファイルサイズは、832Kバイトと大きくなったが、どうぞエキスパンドブック版を開いてくださいますように。

今回のブック差し替えに際しては、インターネットに謝らなければいけないことがある。
8月6日付けのこの欄に書いたとおり、当初は、ベッドフォードの没年が確認できず、彼のイラストを組み込むことは諦めた。その際、自分の力不足をインターネットのそれにすり替えて、「誰かが画家の没年情報をまとめてくれないものだろうか」と書いた。
すると、挿し絵探しでこれまでもアドバイスをくださった大久保ゆうさんが、再度、ネット探索に乗りだし、Artist Netと、Art Databaseとなづけたリンク集を発見。そこでみつけたUnion List of Artist Namesで、ベッドフォード(Bedford, Francis Donkin)の没年を突き止めてくださった。しっかりブックマークして、今後に備えようと思う。
大久保さん。重ね重ね、本当にありがとうございます。
インターネットさん。なめた口をきいて、申し訳ありませんでした。(倫)



2001年8月10日
katoktさん訳の、
『アメリカ大統領就任演説』を登録する。
1961年に就任したジョン・F・ケネディから、2001年のジョージ・W・ブッシュまで、8人の大統領が行った計11回の演説が収録されている。冷戦、ケネディ暗殺、アポロ計画、ベトナム戦争、レーガニズム、貯蓄銀行を巡る金融危機、スターウォーズ計画、ソ連崩壊、インターネット等々、読み進んでいくと、過去40年のキーワードが繋がっていく。訳者後書きにある、「アメリカ現代史のおさらいにはいい読み物」との評価に共感。演説の出来映えは、もっぱらスピーチライターの腕にかかるのだろうと予想していたが、一人一人の大統領の個性や資質が、書き手の筆越しにもなお、はっきりと現れているように感じた。(倫)



2001年8月9日
「随筆計画2000」より、mayuさんが入力された
石川啄木『雪中行 小樽より釧路まで』を登録する。校正は富田倫生さんです。(AG)



2001年8月8日
柴田卓治さんが入力された
夢野久作『甲賀三郎氏に答う』『探偵小説の真使命』を登録する。校正は小林徹さんです。(AG)



2001年8月7日
はまなかひとしさんが入力された
内藤湖南『近代支那の文化生活』を登録する。校正は菅野朋子さんです。(AG)



2001年8月6日
ジェームス・マシュー・バリ作、katoktさん訳の
『ピーターパンとウエンディ』を登録する。
状況設定としては、先に登録した『ケンジントン公園のピーターパン』の後。ネバーランドで繰り広げられる、あのピーターの物語を描いた作品だ。
『ケンジントン公園のピーターパン』には、アーサー・ラッカムの挿し絵をおさめた。今回の『ピーターパンとウエンディ』にも、イラストを入れたいと思った。7月19日に報告した通り、大久保ゆうさんのアドバイスを得て、候補をあたった。「素晴らしい」と思うものは、いくつもあったが、画家の没年にたどり着けない。1911年、この作品がはじめて本になったときに添えられた、F.D.ベッドフォードの線画にはとりわけ強く惹かれたが、著作権切れの確認に至れなかった。今回は、唯一確かめられたチャールズ・ブッシェル(1851-1923)のものを、エキスパンドブック版の表紙に使うにとどまった。1904年、この物語が芝居としてロンドンではじめて発表された際、ポスターとして描かれたものだ。
いざ、あたってみると、画家の没年確認はかなり難しい。写真家も、同じような状況だと思う。データの収集には苦労するだろうが、誰かが没年情報をまとめてくれば、どれほどたくさんの人が恩恵に浴せるだろう。世界で誰か一人、ただ一人が引き受けてくれれば。

別件だが、明年1月1日の著作権切れに向けて、原民喜の電子化が、文庫に集う人によって進められている。本日付けの報告なら、このことにも触れておきたいと思い、一言書き添える。(倫)



2001年8月3日
kompassさんが入力された
中島敦『光と風と夢』を登録する。校正は伊藤時也さんです。この作品には、『宝島』を書いたロバート・ルイス・スティーブンソンが、サモアで過ごした晩年が描かれています。『宝島』は、去る7月18日に登録済み。『宝島』から『光と風と夢』へ、『光と風と夢』から『宝島』へとどうぞ。(AG)



2001年8月2日
生野一路さんが入力された
織田作之助『猿飛佐助 』を登録する。校正は浅原庸子さんです。(AG)



2001年8月1日
八巻美恵さんが入力された
幸田露伴『水の東京』と、「随筆計画2000」より、渡邉つよしさんが入力された南方熊楠『きのふけふの草花』を登録する。校正は染川隆俊さんです。(AG)



2001年7月31日
鈴木修一さんが入力された
森鴎外『木精』『里芋の芽と不動の目』『食堂』を登録する。校正はmayuさんです。(AG)



2001年7月30日
ジェームス・マシュー・バリ作、katoktさん訳の
『ケンジントン公園のピーターパン』を登録する。
この作品に登場するピーターは、生後一週間の赤ん坊である。ウエンディをネバーランドに誘い、フック船長と激しい闘いを演じた、あのピーターパンではない。妖精はたくさん出てくるが、ここではまだ、ティンカーベルの姿は見えない。
作者のバリによれば、赤ん坊の前世は鳥である。その頃の記憶に誘われて、窓から飛び立ったピーターは、ケンジントン公園の不思議な暮らしを楽しみながらも、繰り返し「お母さんのところへ帰ろうか」と思う。物語の結末では、「帰ろう」と心に決め、母の待つ部屋へと下り立ちもする。そのピーターが、なぜ、あの少年になったのか。ならざるをえなかったのか。そのわけは、どうぞ本作品で。
皆さんよくご存じの彼の冒険譚は、同じくkatoktさん訳で登録準備中の、『ピーターパンとウエンディ』で繰り広げられる。近日公開予定(^^)v。
なお、今回登録した『ケンジントン公園…』PDF版とエキスパンドブック版には、アーサー・ラッカムのイラストがおさめてある。「是非、挿し絵入りで読んで欲しい」との、katoktさんのメッセージをお伝えしたい。エキスパンドブック版は、ZIPで圧縮した状態でなお1.9Mバイトと、大変大きくなった。解凍の手間も、かけていただくことになるが、ページを開けば、きっと納得してもらえると思う。(倫)



2001年7月26日
「随筆計画2000」より、渡邉つよしさんが入力された
菊池寛『碁の手直り表』幸田露伴『囲碁雑考』を登録する。校正は門田裕志さんです。(AG)



2001年7月25日
柴田卓治さんが入力された
夢野久作『探偵小説漫想』『私の好きな読みもの』を登録する。校正は小林徹さんです。(AG)



2001年7月24日
柴田卓治さんが入力された
夢野久作『芝居狂冒険』『二重心臓』を登録する。校正はkazuishiさんです。(AG)



2001年7月23日
柴田卓治さんが入力された
夢野久作『挿絵と闘った話』『涙香・ポー・それから』『路傍の木乃伊』を登録する。校正はしずさんです。(AG)



2001年7月21日
tatsukiさんが入力された
海野十三『怪星ガン』『鞄らしくない鞄』を登録する。校正は原田頌子さんです。(AG)



2001年7月20日
藤真新一さんが入力された
小栗虫太郎『人外魔境 第一話 有尾人』を登録する。校正は鈴木厚司さんです。(AG)



2001年7月19日
昨日のこの欄で、『宝島』と『ピーターパンとウェンディ』の挿し絵に関する情報の提供をお願いしたところ、大久保ゆうさんからさっそくメールをいただいた。これらの作品に挿し絵を描いたことのある画家のリストからはじまって、生没年情報、どんな本が、どこのオンライン古書店に置いてあるかまで、調べ上げた結果を教えてくださった。
これで、十分な手がかりが得られたと思う。
18日付けの報告に書いた情報提供のお願いは、ここで、取り下げさせていただきます。あらためて、大久保さん、ありがとう。

大久保さんは、ご自身でも翻訳に取り組んでおられる。アーサー・コナン・ドイルのホームズ物から、
『赤毛連盟』『ボヘミアの醜聞』、加えて『アンデルセン童話集』を、青空文庫でも登録させていただいている。
ご自身のページ『The Baker Street Bakery』では、自由な複製、再配布を前提とした『シャーロック・ホームズ全集』作りのプロジェクトが宣言されている。青空文庫で読めるミステリー、探偵小説の読書案内、「Many Mysteries in Blue Sky Collection」も大変興味深い。この際、ブックマークして、みなさん、読書ガイドとして利用されてはいかがだろう。
いったん訳し終えた作品を、ご自身のページで仮公開し、広く批判を仰ぎながら練り上げていくという試みも面白い。これがはじまったときには、柔軟かつ率直に〈心を開く〉ということを、実践をもって教えていただいたような気がした。現在は、『シンデレラ』をβ公開中。
青空文庫がスタートして間もない時期、はじめて頂戴したメールの自己紹介には、「高校一年生」とあった。今は、19歳になられたのだろうか。
後生畏るべしとは、よくもまあ言ったものである。(倫)



2001年7月19日
本山智子さんが入力された
泉鏡花『貝の穴に河童の居る事』を登録する。校正は門田裕志さんです。(AG)



2001年7月18日
ロバート・ルイス・スティーブンソン作、katoktさん訳の
『宝島』を登録する。胸弾む、海の冒険小説。主人公のホーキンズ少年を含む〈英国紳士組〉と、隻脚のジョン・シルバー率いる〈海賊組〉、呉越同舟で南海の島に隠された財宝を目指す、冒険譚をお楽しみいただきたい。
この作品は、プロジェクト杉田玄白の正式参加テキストである。原作者同様、死後50年間保護される訳者の権利があって、古典的な海外の作品の公開が、なかなか進まない。ならば、自由に使ってもらうことを前提に、自分たちで訳そうじゃないかとする同プロジェクトの成果を、文庫ではこれまでにも、たくさん頂戴してきた。中でも今回の『宝島』は、もっとも長い作品となる。取り組んでくださったkatoktさんに、私たちからもお礼を申し上げたい。

1850年にスコットランドのエジンバラに生まれた、原作者のスティーブンソンは、病弱の人だった。大学卒業後、ヨーロッパに静養の地を求め、フランスで出会った人妻に惹かれた。彼女の母国、アメリカにその人を追い、離婚を待って結婚。妻となった人には、男の子があった。息子となった少年に話し始めた物語が、『宝島』になった。晩年は、温暖な気候を求めてサモアに渡り、この島で没した。サモア人は、彼を「ツシタラ(物語る人)」と呼んだという。
中島敦の『光と風と夢』は、サモア時代のスティーブンソンを描いた作品だ。最後は、島の老酋長がスティーブンソンの死を悼む言葉で締めくくられている。
「トファ(眠れ)! ツシタラ。」
『光と風と夢』は、現在青空文庫で校正中。スティーブンソンのもう一つの代表作、『ジキル博士とハイド氏』の翻訳には、同じくkatoktさんが取り組んでおられ、ウェッブページで、成果の公開が進んでいる。
すでに翻訳が終わり、上記ページで公開されている『ピータ ーパンとウェンディ』『ケンジントン公園のピーターパン』『大統領就任演説』も、青空文庫に登録させていただける予定となっている。いずれは、『ジキル博士とハイド氏』も、図書カードに加えられるかも知れない。
一人のツシタラは黙しても、人の物語る心は眠らない。

最後に、katoktさんと文庫世話役から、お願いが一つ。
katoktさんのページで公開中の、『ケンジントン公園のピーターパン』PDF版には、アーサー・ラッカム(Arthur Rackham; 1867-1939)による挿し絵が組み込まれている。イギリス人であるラッカムの著作権は、戦時加算分を入れてもすでに切れている。エキスパンドブック版を用意する際も、この挿し絵を入れたいと考えている。
同様に、『宝島』や『ピーターパンとウェンディ』にも、挿し絵が欲しい。英語版の古い本で、使えるかも知れない挿し絵が入っているものをご存じの方は、info@aozora.gr.jpまで、ご一報いただけるとありがたい。(なお、『ピーターパンとウェンディ』のために、素晴らしい挿し絵を描いているエドマンド・ブラムパイド(Edmund Blampied; 1886-1966)の権利は、未だ切れていない。)
青空文庫への登録が、単に登録に終わらず、katoktさんの成果物に、何かを積みます契機になれないものかと、切にそう願う。
1700年代、海賊が暴れ回っていた時代を舞台にした作品を、今、日本語に置き換えるにあたっては、訳語をどう選び、どう表現するかに、難しい点があると思った。厄介なところのあるこうした問題を、共に考えてみる機会をつくってくださった点でも、katoktさんには重ねてお礼を申し上げたい。(倫)



2001年7月17日
tatsukiさんが入力された
海野十三『海底都市』『三十年後の世界』を登録する。校正は松永正敏さんです。(AG)



2001年7月16日
南野輝さんが入力された
小栗虫太郎『聖アレキセイ寺院の惨劇』を登録する。校正はちはるさんです。(AG)



2001年7月12日
笠置一郎さんが入力された
高山樗牛『滝口入道』を登録する。校正は双沢薫さんです。(AG)



2001年7月9日
はまなかひとしさんが入力された
内藤湖南『章学誠の史学』桑原隲蔵『大師の入唐』を登録する。校正は菅野朋子さんです。(AG)



2001年7月6日
本山智子さんが入力された
薄田泣菫『水仙の幻想』『石竹』『侘助椿』を登録する。校正は林幸雄さんです。この3つの作品はとても短い随筆なので、縦書きで読めるフォーマットにはエキスパンドブックではなく、「随筆計画2000」と同じドットブックを採用。ドットブックを読むためにはプラグインとQuickTimeをインストールする必要があるが、もしダウンロードが面倒な場合には、ボイジャー社よりT-Time機能限定版、QuickTime4、秀英太明朝体フォントなどが納められたCD-ROMを返信切手代だけで手に入れることが可能。くわしくはこちらへ。(AG)



2001年7月5日
能美武功さんが訳されたルイジ・ピランデルロの戯曲
『真実は銘々に』を登録する。能美さんの作品はすでに、テレンス・ラティガン『お日様のあるうちに』『蠱惑草』『シルヴィアって誰?』『椿姫』『深く青い海』『炎の道』『涙なしのフランス語』『眠りの森の王子』『銘々のテーブル』、ノエル・カワード『侯爵夫人』、ヴォルテール『ザディッグ 又は 宿命』、エフゲーニイ・シュヴァルツ『裸の王様』が登録済み。まだ青空文庫に登録出来ていない作品も多数あります。興味のある方は能美武功さんのホームページへどうぞ。(AG)



2001年7月4日
大野晋さんと小林繁雄さんが入力された
島崎藤村『夜明け前 第二部下』を登録する。校正は砂場清隆さんです。(AG)



2001年7月2日
柴武志さんが入力された
若山牧水『序文に代へてうたへる歌十首』『跋』と、「随筆計画2000」より、ふろっぎぃさんが入力された土田杏村『私の書斎』平田禿木『趣味としての読書』を登録する。校正はすべて浅原庸子さんです。(AG)



2001年6月30日
包摂や当用漢字に関する資料など、ここしばらく、地味なお知らせが続いた。

作品公開という表看板の裏で、青空文庫は、コンピューターで日本語を扱う際の、足場がために関するあれこれにも手を染めている。
基礎的な作業はしばしば、きめ細かな論議や、息の長い積み重ねを求める。
こうしたやっかいな課題に、力を合わせて取り組んでいく広場となっているのが、
青空文庫メーリングリストだ。
今日は、そこで積み重ねられてきた、アクセント付きラテン・アルファベットの表記に関する工夫について紹介したい。

青空文庫のファイルは、今時の日本語が使えるパソコンなら、すべてが対応している文字コード(第1第2水準の漢字を定めた、JIS X 0208)の範囲内で作っている。
こうしておけば、文字化けはおこらない。
ただし、ここにない字(外字)については、言葉を連ねて形を説明する羽目になる。
第1第2水準にない漢字は、「目+爭」といった形で、注記してきた。
フランス語のアクサンやドイツ語のウムラウトといったアクセントの付いたアルファベットは、「desir[#desirのeにアクサン・テギュ(´)]」などと書いてきた。
だが、なんとも武骨ですっきりしない。

もう少し枠を広げた文字コードに、外字の多くが組み込まれ、それが、情報機器に必ず組み入れられるようになれば、状況はかなり改善される。
第3第4水準の漢字を定めたJIS X 0213の文字集合は、アクセント付きアルファベットも広くカバーしている。
これが、新しい基盤として機能してくれるのではないかと、期待している。
ただし、次の土台がしっかり根付くまでには、まだ少し時間がかかる。
その間、アクセント付きには、相変わらず武骨な注記で対処するしかないのかという問題が残る。

青空文庫メーリングリストに、アクセント付きアルファベットの注記に関する質問が寄せられた際、山本有二さんから、各国のラテン文字を通常の日本語テキストの枠内で表記する工夫の提案があった。
例えば、アクサン・テギュ付きの「e」は「e'」と書く。
これなら、「desir[#desirのeにアクサン・テギュ(´)]」が「de'sir」ですむ。
かねてからこの問題を突き詰めてこられた山本さんは、どの言語のどの文字を、どう書き換えるかルールを定め、独自の「アクセント分解」方式を「アクセント付き文字の変換表」にまとめ上げておられた。

青空文庫の収録作品には、時々、アクセントが現れる。
中でも強烈なのが、九鬼周造の『「いき」の構造』だ。
この作品を入力して下さった鈴木厚司さんと山本さんが中心となって、「アクセント分解」を採用するにあたっての、細部の詰めが行われた。
鈴木さんは、『「いき」の構造』にこれを適用し、従来の青空文庫方式等と比較検討するために、「アクセント分解の表記例」をまとめ、全体をこの方式で貫いたファイルも用意してくださった。
従来形式とアクセント分解によるものを共に、この作品の図書カードからダウンロードできる。
興味のある方は、是非読み比べて、すっきり加減の程を堪能してほしい。

地味だけれど、大切な成果。
これをもとに、アクセント付きアルファベットの表記問題に青空文庫全体としてどう取り組むのか、じっくり考えていきたい。(倫)



2001年6月29日
はまなかひとしさんが入力された
狩野亨吉『修善寺漱石詩碑碑陰に記せる文』『漱石と自分』『歴史の概念』を登録する。校正は染川隆俊さんです。(AG)



2001年6月28日
林幸雄さんが入力された
矢田津世子『反逆』『罠を跳び越える女』を登録する。校正は染川隆俊さんです。(AG)



2001年6月27日
大野晋さんと砂場清隆さんが入力された
島崎藤村『夜明け前 第二部上』を登録する。校正は原田頌子さんです。(AG)



2001年6月25日
青空文庫でファイル化し、公開していた「当用漢字表」に不適当な点があった。
いったん内閣告示されたあと、正誤訂正された部分が正しく反映できていなかった。
今回の修正の詳細は、ファイルに付した、「
作成者注記」で。
安岡孝一(京都大学人文科学研究所附属漢字情報研究センター)さんに、訂正の経緯に関するご教示と、問題箇所のご指摘をいただき、不備をあらためることができた。
ありがとうございます。

当初、内輪の作業の下準備のためにまとめた事情があって、これまでは、「当用漢字表」を含む「漢字表一覧」を、青空文庫本体に置いていなかった。
今回の訂正を機会に、一式をaozora.gr.jpに移し、合わせて「当用漢字表」と「当用漢字字体表」にPDF版を加えた。(倫)



2001年6月25日
本山智子さんが入力された
泉鏡花『絵本の春』を登録する。校正は門田裕志さんです。(AG)



2001年6月20日
柴武志さんが入力された
若山牧水『火山をめぐる温泉』『地震日記』『自然の息自然の声』『野蒜の花』を登録する。校正は林幸雄さんです。(AG)



2001年6月19日
鈴木修一さんが入力された
森鴎外『あそび』『沈黙の塔』を登録する。校正はmayuさんです。(AG)



2001年6月18日
文字の形がわずかに違っている場合、同じ字として扱うのか、それとも別の字として区別するのか。
こうした際の判断の目安を、JIS漢字コードは、かなり細かいところまで踏み込んで定めている。
このルールに関する文書を入力して、「
JIS X 0208と0213規格票の包摂関連項目」に置いた。

今回の作業の延長上に、上記ページに置いてある「包摂規準の詳細」の適用例を拡充して、最終的には「包摂規準索引」に相当するものを、「新JIS漢字総合索引」と同じ形式で用意したいと考えている。

もっぱら読む立場で、青空文庫を利用している方には、ピンとこない話だろう。
でも、パソコンによる読み書きを続ける中で、文字づかいが気になったり、文字の厳密な取り扱いを迫られたりすれば、最終的には誰もが、この文書を開かざるを得ないはずだ。

現在、文庫で力をふるってくれている人には、すぐにでも活用してもらえる。
入力の下敷きにする本を開いて作業を始めると、画面やプリントアウトの字と、印刷されたものの形が微妙に違っているケースに出合う。
「辻」のしんにょうの点が、一つと二つは区別するのか。草かんむりの間が切れたものと繋がったものとは、別字扱いになるのか。
このような疑問は、すべての作業者が抱いて当然で、図らずも世話役を引き受けることになった我々は、繰り返し繰り返し包摂に関する問いに答えてきた。
その際、私たちが判断のよりどころとしてきたのが、今回公開した、この文書だ。

ならば、誰もが参照できる形に、とっとと仕立てておけば。
「なぜそうしなかったのか?」と、当然の疑問がわくと思う。

JIS(日本工業規格)は、著作権法の保護の対象ではない。
生きた規格として活用されるためには、広く知られること、正しく理解されることこそが大切なのだから、参照の壁をできる限り低くしてやることこそが課題。これは当然の措置だろう。
規格の「普及並びに啓発等を図」ることを目的とした、大きな組織も存在し、規格票の発行にあたっている。
これまでの印刷物を用いた手段に加え、インターネットという仕組みが利用できるようになったのなら、こうした組織こそこれを活用し、「普及並びに啓発」を図ってくれれば、どんなにありがたいかと思う。

包摂規準を明確に定めた「JIS X 0208」の1997年改正から、およそ4年半。
今頃になって、まったくの私的なグループがこうしたファイルを作成し、公開するというのも、なんだか情けない事の成り行きだ。(倫)



2001年6月18日
地田尚さんが入力された
幸田露伴『学生時代』『雲のいろいろ』『言語体の文章と浮雲』『少年時代』『花のいろいろ』『旅行の今昔』を登録する。校正は今井忠夫さんです。(AG)



2001年6月16日
柴田卓治さんが入力された
夢野久作『一足お先に』を登録する。校正は山本奈津恵さんです。(AG)



2001年6月14日
柴武志さんが入力された
若山牧水『伊豆西海岸の湯』『海辺八月』『故郷の正月』『駿河湾一帯の風光』を登録する。校正は浅原庸子さんです。(AG)



2001年6月13日
柴武志さんが入力された
若山牧水『或る日の昼餐』『梅の花桜の花』『温泉宿の庭』『青年僧と叡山の老爺』『東京の郊外を想う』『春の二三日』『桃の実』『若葉の山に啼く鳥』を登録する。校正は林幸雄さんです。(AG)



2001年6月12日
枯葉さんが翻訳された、アーサー・コナン・ドイル
『ブルー・カーバンクル』『悪魔の足』『チャールズ・オーガスタス・ミルヴァートン』『ノーウッドの建築家』を登録する。
携帯情報機器には長年無関心だった私が、何を思ったか、昨年の秋にPalmマシンを買った。読むものを探してあちこちうろついていたときに「パーム本文庫」で見つけたのが、枯葉さんのホームズものだった。ホームズといえば、ミステリ愛好家にとって、常に気になる存在である。既に読んだ話であっても、新たな翻訳に出会うと、また読んでみようかという気になってしまう。早速ダウンロードし、掌サイズのデジタル読書の楽しみを、存分に味わわせてもらった。
枯葉さんのサイトではテキスト版とHTML版が、「パーム本文庫」ではPalm版のファイルが公開されているが、青空文庫収録にあたり、エキスパンドブックがラインナップに加わっている。掌も良いけれど、パソコンの画面にゆったりと本をひろげて読むのも、また楽し。
ホームズほどの名探偵ともなれば、「ホームズらしさ」とでも言うような、独特の雰囲気がある。その雰囲気を伝えながらも、どこかに自分独自の味付けをひそませるのが、翻訳者の楽しみでもあり、苦しみでもある。枯葉さん流の味付けを、ぜひ楽しんでいただきたい。
ちなみに、枯葉さんの4作は、いずれも「プロジェクト杉田玄白」の正式参加テキスト。ここの収録作品で、青空文庫に登録されているものもいくつかある。「電子テキストになっている翻訳作品が少なくて」と嘆いておられる方は、いちどこちらものぞいてみると良いかもしれない。(LC)



2001年6月11日
小野岳史さんが入力された
小野賢一郎『やきもの読本』を登録する。校正は小林繁雄さんです。(AG)



2001年6月7日
真先芳秋さんが入力された
泉鏡花『眉かくしの霊』を登録する。校正は鈴木厚司さんです。(AG)



2001年6月6日
柴田卓治さんが入力された
夢野久作『書けない探偵小説』『スランプ』『探偵小説の正体』を登録する。校正は渥美浩子さんです。(AG)



2001年6月5日
nnsさんが入力された
西田幾多郎『絶対矛盾的自己同一』を登録する。校正はちはるさんです。(AG)



2001年6月4日
久保あきらさんが入力された
近松秋江『狂乱』『黒髪』『霜凍る宵』を登録する。校正は松永正敏さんです。(AG)



2001年6月2日
(株)モモさんが入力された
中里介山『大菩薩峠 8白根山の巻』を登録する。校正は原田頌子さんです。(AG)



2001年6月1日
(株)モモさんが入力された
中里介山『大菩薩峠 7東海道の巻』を登録する。校正は原田頌子さんです。(AG)



2001年5月31日
(株)モモさんが入力された
中里介山『大菩薩峠 6間の山の巻』を登録する。校正は原田頌子さんです。(AG)



2001年5月30日
(株)モモさんが入力された
中里介山『大菩薩峠 5竜神の巻』を登録する。校正は原田頌子さんです。(AG)



2001年5月29日
はまなかひとしさんが入力された
内藤湖南『支那歴史的思想の起源』を登録する。校正は菅野朋子さんです。(AG)



2001年5月28日
鈴木厚司さんが入力された
国木田独歩『画の悲み』を登録する。校正はmayuさんです。(AG)



2001年5月26日
高橋真也さんが入力された
島崎藤村『夜明け前 第一部下』を登録する。校正は小林繁雄さんです。(AG)



2001年5月25日
柴武志さんが入力された
若山牧水『空想と願望』『釣』『夏の寂寥』『夏のよろこび』を登録する。校正は浅原庸子さんです。エキスパンドブック版は、他の作品とともに随筆集「樹木とその葉」として登録予定。(AG)



2001年5月24日
菅野朋子さん、小林繁雄さんが入力された
島崎藤村『夜明け前 第一部上』を登録する。校正は高橋真也さんです。(AG)



2001年5月23日
「随筆計画2000」より、加藤恭子さんが入力された
山本宣治『婦人雑誌と猫』を登録する。校正は菅野朋子さんです。(AG)



2001年5月22日
植松眞人さんの、
『雨のボレックス』を登録する。
ボレックスとは、手巻きのゼンマイで動く16mmのカメラだ。年輩の方なら、報道カメラマンが、ネジを巻き巻き、撮影にのぞむ様を思い浮かべることができるだろう。
『雨のボレックス』は、ひょんな運びで主人公の持ち物になった、この古い手巻きカメラを巡って展開する。カメラの中に残されていた、撮影済みのフィルムに刻まれていた映像が、主人公を揺さぶり、突き動かし、長く向き合うことを避けてきた問いへと追い詰める。
何を軸にして、何を描くか。植松さんの手並みは、いつもながらに鮮やかだ。
今回、はじめて植松作品に触れた方には、登録済みの『コーヒーメーカー』『新世界交響曲』『神さんが降りてきた。』『続・神さんが降りてきた。 アメリカ人になりたい。』『神楽坂奇譚』『逢瀬までの。』をご紹介したい。いずれを開いても、この書き手の手並みの冴えを、味わっていただけると思う。
最新作を読み終えた時、次は、ボレックスを駆使して「これぞ!」とつかまえられた何かに、まっすぐに向き合いたいと思った。この作品は、新しい出発点になりうると感じた。主人公と作者を混同した、乱暴で的外れな感想であるのは承知で、表現への衝動において、『雨のボレックス』を継ぐ作品を読みたいと思った。(倫)



2001年5月22日
伊藤時也さんが入力された
松永延造『ラ氏の笛』を登録する。校正は小林繁雄さんです。(AG)



2001年5月21日
本日から、トップページの広告に、
「携帯書房」が加わった。
携帯書房とは、iモード対応の携帯電話で、縦書き表示した文学作品を読む仕組みである。
テキストには、青空文庫のものが利用されている。サービス開始早々から、360作品をそろえると、準備万端のスタートだ。
利用は、無料。400字詰め原稿用紙、10〜15枚分相当の一まとまりをダウンロードするのに、通信料金が20円程度かかるそうだ。

携帯書房を始めたのは、ライフメディアという会社である。
メールによる、アンケート、広告の配信が業だ。
一方的に送りつけるのではなく、iMiネットと名付けた、会員制の仕組みを用意している。たとえばアンケートに答えると、会員には、商品券や図書券に換算されるポイントが付く。面接や電話によるアンケートには、かなりの人件費がかかる。メールによるシステムに切り替えて自動化すれば、回答者になにがしか支払っても、十分元がとれる。問いかける対象も、あらかじめ選別できる、という仕掛けらしい。
こうしたサービスを行っているライフメディアにとって、幅広い層の会員をたくさん抱えておくことは、ビジネスの基礎だ。
だから、人の集まりそうなウェッブページに、iMiネットの広告を置かせてもらい、そのページ経由で会員になってくれた人が現れると、そのつどポイントをページの運営者に与えるという、「iMiネットリンクキャンペーン」を進めている。
また、携帯電話を楽しく使うための、一般向けの無料コンテンツも用意している。
「携帯書房」の元テキストに青空文庫のものを利用したことから、ライフメディアは、「携帯書房経由での会員登録に、ポイント制度を適用しよう」と提案してくださった。
つまり、こういうことだ。
携帯書房自体は、無料で、iMiネットの会員にならなくても利用できる。
その上で、もし携帯書房経由でiMiネットの会員を獲得できれば、ライフメディアはビジネスの基盤を拡張できる。青空文庫は、一人あたりのポイントという形で、支援を受けられる。

携帯書房の仕組みをライフメディアから提案された際、私には彼らがなぜこのようなサービスを行うのか、同社の事業にどう繋がっていくのか、すぐには理解できなかった。
だから、直接お目にかかって、詳しく話を聞いた。
青空文庫のトップページで携帯書房を知った人の中には、最初に私が抱いたのと同様の疑問を、もつ人がいるかも知れないと考えた。
そこで、少し詳しく説明させていただいた。

ただ空を見上げて願えば、そこに本が開かれるような仕組みができないものかと、青空文庫を呼びかけた。
願いの、器にあたるところはもう、現実になったと言えるのかも知れない。
あとはここに盛る共用できるファイルを、10倍、100倍、1000倍と増やしていくことだろう。(倫)



2001年5月21日
tatsukiさんが入力された
佐々木味津三『旗本退屈男 第六話 身延に現れた退屈男』『旗本退屈男 第七話 仙台に現れた退屈男』を登録する。校正は大野晋さんです。(AG)



2001年5月19日
斉藤省二さんが入力された
内田魯庵『灰燼十万巻(丸善炎上の記)』『駆逐されんとする文人』『二十五年間の文人の社会的地位の進歩』『文明国には必ず智識ある高等遊民あり』を登録する。校正は松永正敏さんです。(AG)



2001年5月18日
tatsukiさんが入力された
佐々木味津三『旗本退屈男 第五話 三河に現れた退屈男』を登録する。校正は皆森もなみさんです。(AG)



2001年5月17日
久保あきらさんが入力された
徳田秋声『仮装人物』を登録する。校正は湯地光弘さんです。(AG)



2001年5月16日
矢野正人さんが入力された
戸坂潤『道徳の観念』を登録する。校正は小林繁雄さんです。(AG)



2001年5月15日
小林徹さんが入力された
水野仙子『悔』を登録する。校正は林幸雄さんです。(AG)



2001年5月14日
はまなかひとしさんが入力された
狩野亨吉『安藤昌益』を登録する。校正は染川隆俊さんです。(AG)



2001年5月12日
atomさんが入力された
直木三十五『巌流島』『傾城買虎之巻』『相馬の仇討』を登録する。校正は柳沢成雄さんです。(AG)



2001年5月11日
(株)モモさんが入力された
中里介山『大菩薩峠 4三輪の神杉の巻』を登録する。校正は原田頌子さんです。(AG)



2001年5月10日
(株)モモさんが入力された
中里介山『大菩薩峠 3壬生と島原の巻』を登録する。校正は原田頌子さんです。(AG)



2001年5月9日
「新JIS漢字総合索引」を公開してから、約半年。
当初は「音訓や画数をもとにして、目的の文字を探し、コピー&ペーストできれば便利」ということで作ったものだ。
しかし、使っているうちに、不便な面にも気が付く。その最大のものは、「目的の漢字が第1、第2水準なのか、第3、第4水準なのか、この索引だけではわからない」ということである。また、どうせなら文字コードも同時にわかれば、なお便利だろう。
そんな思いを反映して、面区点番号付きのバージョンを用意した。従来どおりのバージョンと共に、
「青空文庫『明日の硯箱』」に置いてある。

また、この作業をすすめる過程で、従来のバージョンに細かいミスが2箇所あることに気づいた。実用上、大きな問題はないけれど、この機会にダウンロードしなおしていただけるとありがたい。

面区点番号付き「新JIS漢字総合索引」の作成にあたって、スクリプトの作成などの面で、多くの人にお世話になりました。この場を借りて、深くお礼を申し上げます。(LC)



2001年5月9日
(株)モモさんが入力された
中里介山『大菩薩峠 2鈴鹿山の巻』を登録する。校正は原田頌子さんです。(AG)



2001年5月8日
(株)モモさんが入力された
中里介山『大菩薩峠 1甲源一刀流の巻』を登録する。校正は原田頌子さんです。(AG)



2001年5月7日
阿部良子さんが入力された
岡本かの子『母子叙情』を登録する。校正は松永正敏さんです。(AG)



2001年5月3日
柴武志さんが入力された
若山牧水『枯野の旅』『四邊の山より富士を仰ぐ記』『冷たさよわが身を包め』『夏を愛する言葉』を登録する。校正は浅原庸子さんです。エキスパンドブック版は、他の作品とともに随筆集「樹木とその葉」として登録予定。(AG)



2001年5月1日
林幸雄さんが入力された
小山内薫『梨の実』河上肇『御萩と七種粥』、小林徹さんが入力された泉鏡花『いろ扱ひ』を登録する。校正は本山智子さんです。(AG)



2001年4月30日
大野晋さんが入力された
松本泰『謎の街』『宝石の序曲』『暴風雨に終わった一日』を登録する。校正はちはるさんです。(AG)



2001年4月26日
昨日付けで、
「青空工作員マニュアル」を一部修正した。
書き換えたのは、「1.底本選び〜作業の流れ」の、「■底本を選ぶ」の項。
・すでに登録済みの作品であっても、新字新仮名版、旧字旧仮名版といった表記形式が異なるものなら、新たに入力してもらってかまわない。
・抄録形式は避け、作品全体での登録を目指す。
・他のサイトで公開されていることを理由に、青空文庫での着手を拒まない。
以上、三点は、これまでの運用実態の明文化。
加えて、「法令には原則的に取り組まない」という新しい要素を、一つ加えている。
去る4月1日、総務省は「法令データ提供システム」の運用を開始した。現在施行されているすべての法令が網羅され、新しいものも、官報掲載後1、2か月のうちには提供されるという。データの利用に制限はなく、信頼性も、きわめて高いと思われる。法令は、基本的にこのシステムに委ねようと判断した次第だ。(倫)



2001年4月26日
「随筆計画2000」より、加藤恭子さんが入力された
小酒井不木『毒と迷信』を登録する。校正は菅野朋子さんです。(AG)



2001年4月23日
柴田卓治さんが入力された
夢野久作『江戸川乱歩氏に対する私の感想』を登録する。校正はminekoさんです。(AG)



2001年4月20日
清十郎さんが入力された
岡本綺堂『番町皿屋敷』を登録する。校正は小林繁雄さんです。(AG)



2001年4月19日
柴田卓治さんが入力された
夢野久作『冗談に殺す』『木魂』を登録する。校正は柳沢成雄さんです。(AG)



2001年4月17日
小林徹さんが入力された
素木しづ『惨事のあと』を登録する。校正は林幸雄さんです。(AG)



2001年4月16日
柴武志さんが入力された
若山牧水『島三題』『木槿の花』を登録する。校正は浅原庸子さんです。エキスパンドブック版は、他の作品とともに随筆集「樹木とその葉」として登録予定。(AG)



2001年4月14日
冬佳彰(ふゆよしあき)さんの
『泥と雪』を登録する。
江戸の底辺に、捨て犬のように放り出された子供、二人。飢えと暴力に脅かされつつも、歯を剥いて生き延びようとする彼らは、ある夜、人斬りを目撃する。目の前に転がり落ちた手首から、紙片を引き抜いた二人を、黒い影が執拗に追い回し始める。残忍で、容赦のない影の背後には、幕藩体制の深くて巨大な闇が広がっていた…。
およそ一年ほど前、『水底の星々』という作品ではじめてこの書き手と出会い、ごつごつとした大岩に、右手一本でまっすぐな線を刻み込んでいくような、乾いた筆の冴えに舌を巻いた。成熟に向かおうとする人が、くぐり抜けざるを得ない青春の闇が、江戸の岡っ引、下っ引の世界を舞台に鮮やかに描き出されていることに印象づけられた。今回の『泥と雪』でも、乾いた暴力を通して、人を描くことに巧みな作者の手並みを再び堪能しながら、冬さんはどこまで、江戸という鉱脈を掘り進んで行かれるのか、気になりだした。
『泥と雪』の背景には、人を暗闘に駆り立てる、幕藩体制の構造的な〈磁場〉の存在が透けて見える。人の内奥に向かって深く掘り進んだ筆は、やがて、時代の枠組みの根に及んでいくのだろうか。(倫)



2001年4月13日
A.Morimineさんが入力された
岡本綺堂『半七捕物帳 お文の魂』(新字・新仮名)を登録する。校正は原田頌子さんです。(AG)



2001年4月11日
柴田卓治さんが入力された
夢野久作『白くれない』を登録する。校正はちはるさんです。(AG)



2001年4月9日
山田芳美さんが入力された
新美南吉『和太郎さんと牛』を登録する。校正は林幸雄さんです。(AG)



2001年4月7日
柴田卓治さんが入力された
夢野久作『斬られたさに』を登録する。校正は篠原陽子さんです。(AG)



2001年4月6日
「随筆計画2000」より、葵さんが入力された
内田魯庵『温情の裕かな夏目さん』と、ふろっぎぃさんが入力された内田魯庵『家庭の読書室』を登録する。校正は両作品とも小林徹さんです。(AG)



2001年4月4日
柴武志さんが入力された
若山牧水『虻と蟻と蝉と』『草鞋の話旅の話』を登録する。校正は浅原庸子さんです。エキスパンドブック版は、他の作品とともに随筆集「樹木とその葉」として登録予定。(AG)



2001年4月3日
旧字ファイル中に紛れ込んだ新字、俗字を洗い出してくれる、
校閲君の紹介ページに、オフライン版の解説を加えた。
すでに紹介済みのオンライン版とくらべると、
・インターネットへの接続なしに利用できる。
・校閲君が何をやっているか、理解できる。
・必要にあわせて、機能を調整できる。
のがメリット。
オンライン版では、サイズが大きすぎるとエラーになり、ファイルの分割を求められる場合があるが、オフライン版にはそうした制約もない。
なんの迷いもなく使えるあちらに比べると、話が少しややこしくなるが、文書の処理にさまざまに利用できるPerl言語への道案内もつとめてくれるかもしれない。
「訂正のお知らせ」「詳細」、「●2001.3.24」に、内藤湖南関係のものがずらりと並んでいる。入力にあたられたはまなかさんが、校閲君を使って見つけてくださった。すでに小林徹さん、泉井小太郎さんからも訂正指示を頂戴し、問題点をあらためることができた。
旧字ファイルの作成に関わられた方には、あらためて校閲君による再チェックをお願いしたい。
「まずしい僕たちの進行形」は、確かに、「着々と行進」しつつある。(倫)



2001年4月3日
阿部良子さんが入力された
岡本かの子『雛妓』『鶴は病みき』を登録する。校正は松永正敏さんです。(AG)



2001年4月2日
柴田卓治さんが入力された
夢野久作『冥土行進曲』を登録する。校正は渥美浩子さんです。(AG)



2001年3月30日
読書新聞・ちへいせんで「小熊秀雄全集プロジェクト」を開始します。
3年ほど前に浜野智+八巻美恵で小熊秀雄の全集を入力する計画を立てました。小熊 は計画者二人の敬愛する詩人です。その詩人の有名な詩だけでなく、残したテキストすべてを青空文庫で読めるようにしたいと願い、スタートしました。詩のほとんどと童話はすでに完成して公開していますが、エッセイと評論500ページほどが、まだ手つかずのままです。
この3年の間に、工作員の人数は大幅にふえました。このまま二人で時間をかけて入力を続行するよりは、たくさんの人によってたかって入力や校正をしてもらうのが、今の青空文庫にふさわしい方法ではないかと考えるようになりました。さらにそのプロセスをちへいせんで公開することで、全集や選集、また長い作品を完成にみちびくモデルをつくれたらとも考えています。
詳細は
「小熊 全集プロジェクト」のページをごらんください。そして、ぜひ参加してください。(八巻)



2001年3月30日
tatsukiさんが入力された
岡本綺堂『半七捕物帳 地蔵は踊る』を登録する。校正は瀬戸さえ子さんです。(AG)



2001年3月29日
柴田卓治さんが入力された
夢野久作『人間レコード』を登録する。校正はしずさんです。(AG)



2001年3月28日
鈴木厚司さんが入力された
楠山正雄『祖母』を登録する。校正は林幸雄さんです。(AG)



2001年3月27日
「随筆計画2000」より、加藤恭子さんが入力された
徳冨蘆花『謀叛論(草稿)』を登録する。校正は小林繁雄さんです。(AG)



2001年3月26日
柴田卓治さんが入力された
夏目漱石『模倣と独立』を登録する。校正は双沢薫さんです。(AG)



2001年3月23日
柴田卓治さんが入力された
夢野久作『オンチ』を登録する。校正はちはるさんです。(AG)



2001年3月22日
「随筆計画2000」より、葵さんが入力された
阿部徳蔵『美術曲芸しん粉細工』、加藤恭子さんが入力された竹久夢二『秘密』を登録する。校正は篠原陽子さんです。(AG)



2001年3月20日
柴武志さんが入力された
若山牧水『秋風の音』『歌と宗教』『酒の讃と苦笑』『自己を感ずる時』『貧乏首尾無し』を登録する。校正は浅原庸子さんです。
今回の登録はテキスト版とHTML版のみ。エキスパンドブック版は、先に登録した「随筆計画2000」からの『なまけ者と雨』とともに随筆集「樹木とその葉」として最終的に登録予定。(AG)



2001年3月19日
林幸雄さんが入力された
若杉鳥子『新しき夫の愛』『雨の回想』『ある遊郭での出来事』『職業の苦痛』を登録する。校正は小林徹さんです。(AG)



2001年3月16日
「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に、一項書き足すことにした。
漢字は新字、仮名はそのままというパターンも認めると、はっきり示すのが目的だ。
従来の条項には手を付けず、末尾に以下のような「補遺」を置こうと思う。

補遺 旧字、旧仮名で書かれた作品を現代表記にあらためるにあたっては、新字、現代仮名づかいへの変更を基本とする。ただし、漢字のみを書き換えた、新字、旧仮名づかいへの変更も拒まない。

改訂のきっかけは、「こうした形で書き換えたい」との入力者からの求めだ。
作品の成り立ちからして良く理解できたので、提案を受け入れ、公開に先立って「指針」を修正しておくことにした。
なお、旧字旧仮名作品の表記をあらためたいときは、着手前に、必ず呼びかけ人に打診してくださるよう、お願いしている。今回の改訂以降も、事前協議のステップは必ず踏んでくださいますように。(倫)



2001年3月16日
佐野良二さんが入力された
中島敦『悟浄出世』を登録する。校正は松永正敏さんです。(AG)



2001年3月14日
佐野良二さんが入力された
中島敦『李陵』を登録する。校正は松永正敏さんです。(AG)



2001年3月12日
j_sekikawaさんが入力された
森鴎外『堺事件』を登録する。校正は小林繁雄さんです。(AG)



2001年3月10日
花粉症にやられてから、毎年の春の頼りが憂鬱になった。
加えて今年は、青空文庫のメールボックスも、ウイルス付きのメールに悩まされている。
「TROJ_HYBRIS」ウイルス。
感染した人が自分では気付かず、延々とウイルス付きメールを送り続けるという性質上、この被害は長期に渡って、広く及びそうだ。
感染する可能性があるのは、Windows95/98/ME/NT/2000とのこと。
青空文庫の利用者にも、確実に何人か、罹患している方がおられる。
情報処理振興事業協会の、
「「W32/Hybris」に関する情報」のページ。
トレンドマイクロ株式会社の、「TROJ_HYBRIS対策Web」に、感染の如何を確認し、対処するための指針が示されている。
たくさんの方のお手を煩わせる点、申し訳ないが、該当OSをお使いの方は、一度チェックしてみていただけないだろうか。(倫)



2001年3月9日
伊藤時也さんが入力された
嘉村礒多『崖の下』を登録する。校正は小林繁雄さんです。(AG)



2001年3月7日 藤下真潮さんの
『アズ』を登録する。
20数年前、藤下さんがはじめて取り組まれながら未完に終わっていたというSFの完成版。ゴビ砂漠にある70万年前の隕石孔から発見された現世人類そっくりのアンドロイドは、何のために、誰によって作られたものなのか。そして、永い眠りから覚めた彼 が、地球にもたらすものは。
青空文庫登録済みの藤下作品には、人造人間プランツを巡るイブ・シリーズ三作、『イブ― 覚醒儀式―』『インターミッション』『エア ―黄泉戸喫―』がある。藤下さんのページ「mashの本棚」には、執筆中の長篇や短篇なども。(倫)



2001年3月6日
清角克由さんが入力された
森鴎外『魚玄機』を登録する。校正はちはるさんです。(AG)



2001年3月5日
MAMIさんが入力された
横光利一『厨房日記』を登録する。校正は平野彩子さんです。(AG)



2001年3月3日
「随筆計画2000」より、真先芳秋さんが入力された
泉鏡花『草あやめ』を登録する。校正はkazuishiさんです。(AG)



2001年3月2日
鈴木厚司さんが入力された
上司小剣『鱧の皮』を登録する。校正は林幸雄さんです。(AG)



2001年2月28日
「随筆計画2000」より、加藤恭子さんが入力された
吉野作造『蘇峰先生の『大正の青年と帝国の前途』を読む』を登録する。校正は染川隆俊さんです。(AG)



2001年2月27日
伊藤時也さんが入力された
嘉村礒多『業苦』を登録する。校正は小林繁雄さんです。(AG)



2001年2月26日
大野晋さんが入力された
浜尾四郎『彼は誰を殺したか』『殺された天一坊』『途上の犯人』『夢の殺人』を登録する。校正ははやしだかずこさんです。(AG)



2001年2月24日
「随筆計画2000」より、加藤恭子さんが入力された
牧野信一『余話 秘められた箱』三木清『消息一通 一九二四年一月一日 マールブルク』村井政善『蕎麦の味と食い方問題』を登録する。校正はもりみつじゅんじさんです。(AG)



2001年2月23日
大野晋さんが入力された
田中貢太郎『一緒に歩く亡霊』『怪僧』『狐の手帳』『庭の怪』『八人みさきの話』『貧乏神物語』を登録する。校正は松永正敏さんです。(AG)



2001年2月22日
kompassさんが入力された
田中英光『野狐』を登録する。校正は林幸雄さんです。(AG)



2001年2月21日
旧字ファイルに紛れ込んだ、新字・俗字の洗い出しツール、
「校閲君」の準備が整った。
かつて旧字ファイルの作成にかかわった方、現在、取り組んでおられる方は、「旧字ファイルの新字・俗字を、校閲君で洗い出そう!」から入って、この強力な味方について知って欲しい。
校閲君の力を借りて、これから登録済み旧字旧仮名ファイルの見直しにも取り組んでいきたい。
かつて旧字旧仮名版の作成に携わられた方には、是非力を貸してくださるよう、お願い申し上げる。

青空文庫には、旧字旧仮名で登録された作品がある。
我々の大半にとっては、現代表記が読みやすいが、もともと旧字旧仮名で書かれたのなら、オリジナルに近い形でおさめておくことも、意義深いと考えての措置だ。
ただし、ファイル作成時には、旧字で苦労させられる。まず、仮名漢字変換モジュールから旧字は読み出しにくいし、OCRもきちんと読みとってくれない。おうおうにして、旧字・正字が入るべきところに、新字・俗字が入ってしまう。新旧、正俗の字体差が大きければ校正でかなり拾えるが、微妙な違いとなると、校正者としての特別の技量がない限り、まず見つけられない。

青空文庫の活動を支える人の大半は、編集や校正のプロではない。学び、たずね、助け合いながらなんとか作業を進めている。
そんな私たちにとって、旧字ファイル中に紛れ込んだ新字・俗字を見つけることは、最も困難な作業の一つだった。しばしば見逃しが生じていることを承知しながら、これまでは、有効な対処策を講じられないできた。

この大きな壁に、Perl(パール)というプログラミング言語を使いこなす仲間が、突破口を開いてくれた。
「校閲君」と名付けた新字・俗字発見プログラムを用いると、置き換えが必要かも知れないあやしい候補が、自動的に、漏れなくマーキングされる。

例えば、旧字旧仮名版、平林初之輔『中西氏に答う』の一節。
「だから過去の時代の社會的意識が複雑多様な相を示しているにも拘らず、それは或る共通の形態或は一般觀念の中に動いているのであつて、これは階級對立が全く消え去らない限りは完全になくならぬということは怪むに足りぬ。」
上の引用では、底本では旧字が入っているところを、意図的に二つ、新字に置き換えている。
青空文庫は、JIS漢字コードの包摂規準を受け入れるという前提に立ったとき、さて、旧字にあらためるべき文字は何と何か?
どうだろう。なかなかわからないんじゃないかと思う。

この作品を校正してくれた大野裕さんは、プロの校正者ではない。
ところが、大野さんが旧字旧仮名作品を読むと、紛れ込んでいた新字・俗字が、見事に、一字残らず拾い上げられてくる。『中西氏に答う』にも、見逃しはまったくなかった。
大野さんはいったい、どんな手を使ったのか?
実はプログラミングに詳しい大野さん、テキストの取り扱いに特に強みを発揮するPerlを使って、新字・俗字の洗い出しツールを作り、これで抜群の捕捉率を発揮していた。(大野さんの「プロ文工作員の道具箱」では、これ以外にもさまざまなツールが公開されている。)

そのツール、校閲君を、大野さんが青空文庫メーリングリストに紹介してくれた。
Windows用のPerlで書かれていたオリジナルを、LUNA CATさんはMacintoshで使えるようにあらためてくれた
プログラミングに関する解説書を何冊もものし、先日も「Perl言語プログラミングレッスン 入門編」を出された結城浩さんは、先に同じくPerlで「文字チェッカー」を作り、編集、校正作業支援ツールの可能性を、私たちに強烈に印象づけてくれていた。
今回も結城さんは、ウェブブラウザーから誰でも使えるオンライン版の校閲君を仕立て、ご自身の「青空文庫の応援ページ」に置いてくださった。
こうしたPerl諸賢の目覚ましい働きと連携によって、簡単に校閲君の旨味を享受できる環境が整った。

これまで青空文庫で、旧字旧仮名版の入力、校正にあたられた方、現在担当しておられる方は、是非「旧字ファイルの新字・俗字を、校閲君で洗い出そう!」を読んで、校閲君の威力を確かめて欲しい。
登録済みファイルの再チェックにも力を貸してくださるよう、あらためてもう一度、お願いいたします。
青空文庫以外でテキストアーカイヴィングに取り組んでおられる方、ビジネスとしての電子出版に携わっておられる編集者、校正者の皆さんにも、旧字に取り組む際には、是非、校閲君を使ってもらいたい。
加えて、クイズ『中西氏に答う』の正解が知りたい人も、「旧字ファイルの新字・俗字を…」から入って、校閲君に正解を教えてもらって欲しい。

今回、校閲君の手引きを作る過程で、「当用漢字表」「当用漢字字体表」もこの際ということで、用意した。
その他の漢字表の文字種も、データにしておいたので、こちらもどうぞ。(倫)



2001年2月21日
伊藤時也さんが入力された
嘉村礒多『足相撲』を登録する。校正は小林繁雄さんです。(AG)



2001年2月20日
瓶井めぐみさん『偶然は透明な蒼』を登録する。
主人公は、24歳のOL。ボンダイブルーのiMacとおぼしきはじめてのパソコンを買った彼女は、インターネットに踏み込み、そこで、Mr.ジイと名乗る人物と出会う。博識で面倒見が良く、どこまでも穏やかなMr.ジイとのやりとりを楽しんでいたが、心のたがが外れた状態で送ってしまった一通のメールの直後、その人が、突然ネットから消えて…。
私たちのなじみ深い友である〈心〉の多くが、コミュニケーションの異界に踏み込んで、今、向き合いつつある、懐かしくて新しい体験をすくい取った物語。(倫)



2001年2月19日
田辺浩昭さんが入力された
吉行エイスケ『恋の一杯売 Love on Drought』『スポールティフな娼婦』『東京ロマンティック恋愛記』『バルザックの寝巻姿』『孟買挿話』を登録する。校正は地田尚さんです。(AG)



2001年2月16日
鈴木伸吾さんが入力された
徳冨蘆花『不如帰 小説』を登録する。校正は林幸雄さんです。(AG)



2001年2月15日
ゆかこさんが入力された
宮沢賢治『貝の火』を登録する。校正は林幸雄さんです。(AG)



2001年2月14日
鈴木厚司さんが入力された
有島武郎『クララの出家』を登録する。校正は染川隆俊さんです。(AG)



2001年2月13日
A.Morimineさんが入力された
岡本綺堂『半七捕物帳 二人女房』を登録する。校正は松永正敏さんです。(AG)



2001年2月10日
MAMIさんが入力された
横光利一『罌粟の中』を登録する。校正は松永正敏さんです。(AG)



2001年2月9日
田中敬三さんが入力された
正岡子規『寒山落木 卷一』を登録する。校正は小林繁雄さんです。(AG)



2001年2月8日
柴武志さんが入力された
若山牧水『鮎釣に過した夏休み』『鴉と正覺坊』『庭さきの森の春』『梅雨紀行』『鳳來寺紀行』『湯槽の朝』を登録する。校正は小林繁雄さんです。(AG)



2001年2月7日
tatsukiさんが入力された
佐々木味津三『右門捕物帖 因縁の女夫雛』を登録する。校正は鈴木伸吾さんです。(AG)



2001年2月6日
紅邪鬼さんが入力された
島崎藤村『分配』を登録する。校正はちはるさんです。(AG)



2001年2月5日
はまなかひとしさんが入力された
内藤湖南『尚書稽疑』を登録する。校正は菅野朋子さんです。(AG)



2001年2月3日
柴武志さんが入力された
若山牧水『家のめぐり』『金比羅參り』『酒と歌』『たべものの木』『花二三』『藤の花』を登録する。校正は小林繁雄さんです。(AG)



2001年2月1日
林幸雄さんが入力された
若杉鳥子『棄てる金』を登録する。校正は大野裕さんです。(AG)



2001年2月1日
「随筆計画2000」より、もりみつじゅんじさんが入力された
堺利彦『面白き二個の広告』を登録する。校正は渥美浩子さんです。(AG)



2001年1月31日
柴田卓治さんが入力された
夢野久作『S岬西洋婦人絞殺事件』を登録する。校正はちはるさんです。(AG)



2001年1月30日
久保あきらさんが入力された
近松秋江『うつり香』を登録する。校正は松永正敏さんです。(AG)



2001年1月29日
一色伸子さんが入力された
芥川龍之介『追憶』を登録する。校正は小林繁雄さんです。(AG)



2001年1月27日
内藤湖南の
『文溯閣の四庫全書』『概括的唐宋時代観』を登録する。
入力は、はまなかひとしさん、校正は菅野朋子さんが担当してくださった。

今回の二作品のうち、『概括的唐宋時代観』には、「支那」という言葉がたくさん現れる。
実は一昨日登録した、木下杢太郎の『すかんぽ』にも「支那」が使われていて、ここでは作業にかかわった方の提案で、問題のある表現を含む作品に付すと決めている注を入れた。
内藤湖南の作品には、同じその言葉が現れるが、世話役で話し合って、件の注は入れずにおいた。
こう決める過程で、確認したことをお話ししておきたい。

内藤湖南、1866(慶応2)年生まれ。
最終学歴は県立秋田師範学校卒で、小学校の教師を1年務めた後は、雑誌編集者、新聞記者として歩んだ。この間、在野で中国に関して広く学び、1907(明治40)年、40歳にして、新設された京都帝国大学史学科で東洋史学の講師となる。異色の経歴の学 徒だった。
内藤湖南等が中心となってひらいた中国史の新しい流れは、「支那学」と呼ばれた。その他の彼の論文にも、「支那」は頻出する。

「支那」という言葉は本来、外国から見て中国を指す際の呼称である。
秦の名がインドに伝わってサンスクリット語で表記され、仏典が漢訳される際に「支那」とあてられて、中国に逆輸入されたのが起源という。
日本にも仏典と共に伝わり、平安初期に生きた空海などにも、すでに用例があるそうだ。

中国は日本にとって、長く文化の源流であり続けた。
「支那」という言葉が広く用いられるようになったのは江戸中期からで、個別の王朝の国号をこえた民族的、地理的、文化的な流れをもったまとまりの呼称として、差別的な意識とは縁なく使われていたという。
だが、日本が朝鮮を植民地とし、中国への侵出を図っていく過程で、「支那」は政治的な意図をこめて用いられるようになった。

1911(明治44)年、辛亥革命が起こり、中華民国が樹立されて、中国最後の王朝、清が倒れる。
だが、1931(昭和6)年の「満州事変」における衝突の相手は、日本においては「暴戻なる支那」と位置づけられた。
1937(昭和12)年の蘆溝橋事件をきっかけとした日中戦争は、中華民国との戦争ではなく、「支那」との「事変」とされた。
近代国家としての体裁を欠く「支那」が「暴戻」なる振る舞いに及ぶので、「これを懲らしめる」とする、「暴支膺懲」が、政治スローガンとして言い立てられた。

「支那」という言葉は、こうして日本語の語彙の中では、中国と中国人に対する差別的な性格を帯びるに至った。
質的に変化した後の「支那」に対しては、注を付すのが妥当だと思う。
個人的な思いだが、今、意図的に「支那」を連呼する人、無自覚に日中戦争を「支那事変」と呼ぶ人には、あらためてこの言葉をどうとらえているのか、問いたい。
だが、内藤湖南の中国に対する姿勢は、差別意識とは無縁である。内容からも、作品が書かれた時期に照らしても、彼の「支那」を問題とすることには妥当性がない。
世話役間での話し合いを通じてこのことを確認し、内藤湖南の作品には、注を入れないと決めた。
木下杢太郎の『すかんぽ』に使われている「支那」が、直接に差別的な意識と結び付いているとは思わない。だが、この時期にさらりと使われた「支那」にも、注記は必要だろうと、あらためて確認し合った。
迷い、考えながら、今回はこのように態度を決めた。(倫)



2001年1月24日
伊藤時也さんが入力された
木下杢太郎『すかんぽ』を登録する。校正は小林繁雄さんです。(AG)



2001年1月22日
「随筆計画2000」より、遠藤貴さんが入力された
萩原朔太郎『病床生活からの一発見』北條民雄『外に出た友』正岡子規『病牀瑣事』、とみ〜ばあさんが入力された幸田露伴『鼠頭魚釣り』を登録する。校正はすべて今井忠夫さんです。(AG)



2001年1月20日
小林克彦さんが入力された
中島敦『牛人』を登録する。校正は今井忠夫さんです。(AG)



2001年1月19日
伊藤時也さんが入力された
木下杢太郎『少年の死』を登録する。校正は小林繁雄さんです。(AG)



2001年1月18日
山田豊さんが入力された
菊池寛『芥川の事ども』を登録する。校正は二宮知美さんです。(AG)



2001年1月17日
林幸雄さんが入力された
若杉鳥子『彼女こゝに眠る』『梁上の足』を登録する。校正は大野裕さんです。(AG)



2001年1月16日
柴田卓治さんが入力された
夢野久作『衝突心理』『無系統虎列剌』を登録する。校正はしずさんです。(AG)



2001年1月15日
紅邪鬼さんが入力された
島崎藤村『嵐』を登録する。校正は林幸雄さんです。(AG)



2001年1月13日
海野十三『海野十三敗戦日記』を登録する。校正は伊藤時也さんです。(AG)



2001年1月12日
植松眞人さんの、
『逢瀬までの。』を登録する。
書こうと思って書いた作品には、出来と不出来があるだろう。
だが、何かの力によって書かされたものには、たくらみの成就やけれんの冴えの如何を越え、読み手の「理解」の枠にはおさまろうとしない、不可思議な力を備えた作品があるように思う。
『逢瀬までの。』を読みながら、芥川龍之介の『歯車』に感じた、不気味な求心力を思い出した。
『歯車』同様、この作品の結末にも怖ろしい言葉が待っている。(倫)



2001年1月11日
林幸雄さんが入力された
若杉鳥子『母親』『烈日』を登録する。校正は大野裕さんです。(AG)



2001年1月10日
はまなかひとしさんが入力された
内藤湖南『應仁の亂に就て』『大阪の町人學者富永仲基』を登録する。校正は菅野朋子さんです。(AG)



2001年1月9日
割子田数哉さんが入力された
島崎藤村『千曲川のスケッチ』を登録する。校正は松永正敏さんです。(AG)



2001年1月8日
小林繁雄さんが入力された
三遊亭圓朝作、鈴木行三校訂『西洋人情話英国孝子ジョージスミス之伝』を登録する。校正はかとうかおりさんです。(AG)



2001年1月6日
小林繁雄さんが入力された
三遊亭圓朝作、鈴木行三校訂『菊模様皿山奇談』を登録する。校正はかとうかおりさんです。(AG)



2001年1月1日
あけましておめでとうございます。21世紀の最初に
金史良『玄海灘密航』『故郷を想う』『荷』『光の中に』を登録する。
20世紀は車や飛行機や殺戮兵器などのハードの時代だったが、21世紀はおそらくソフトの時代になると思う。著作権というものをもう一度じっくり見据え、如何にそのソフトの時代が私たちに意義あるものになるのか、固定観念に囚われずに、手塚治虫やスタンリー・キューブリックが描いたような自由なイメージの元に、真剣に論議されればと思う。(AG)

本日、はじめて作品を登録した、金史良の没した日は、実ははっきりとしていない。
1950年6月、朝鮮戦争がはじまると、彼は朝鮮人民軍の従軍作家となって南進した。同年9月15日、マッカーサー率いる国連軍は、仁川に上陸して反攻を開始。撤退の最中、持病の心臓病を悪化させた金史良は、家族への手紙と万年筆を仲間に託して落後し、消息を絶った。
そのまま、いのちを終えたのだろうと伝えられている。

朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮と書く)は、万国著作権条約にも、ベルヌ条約にも加盟していない。
同国籍を持つの人の書いたものは、日本では著作権法による保護を受けない。
だが、私たちは作者の死後、50年を経た後の最初の元旦を選んで、金史良の作品を登録することにした。
彼の作品の多くは、日本語で書かれ、日本ではじめて発表されているからだ。
現行の日本の著作権法は、保護の対象となる著作物を定めた第六条の二項で、「最初に国内において発行された著作物」も保護されると定めている。

金史良は、1914年3月3日、日本統治下の朝鮮、平壌で生まれた。
平壌高等普通学校在籍時、軍事教練を担当する日本軍の配属将校を排斥しようとする運動に関わった彼は、退学処分を受ける。
その後、日本本土に渡り、旧制佐賀高等学校、東京帝国大学と進み、日本語で作品を書いた。
1945年2月、「在支朝鮮出身学徒慰問団」の一員として(言うまでもなく日本から)中国に派遣された彼は、敗戦間際の6月、日本軍の封鎖線を突破して朝鮮義勇軍の拠点に逃れる。
同年8月15日の日本の敗戦による解放後、平壌に戻った金史良は、朝鮮の作家として朝鮮語で作品を書いていく。

金史良の作品をどう取り扱ったらよいものか、私たちはしばらくの間、行きつ戻りつしながら検討を重ねた。
日本統治下の朝鮮で生まれ、今も日本と国交をもたない北朝鮮の人として死んだという彼の経歴故の、迷いだった。
彼の残した作品もまた、日本に支配された朝鮮人の姿をそのままうつしたものだ。
だが、幾重にもねじ曲がった哀しみや、最下層の悲惨な暮らしを描きながら、金史良の作品の底には、光を求めずにはいられない人の心への深い深い共感があるように思う。
日本が強いた、苛酷な状況の中で、彼は常に「光の中に」踊る希望を失わなかった。(倫)
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