2000年12月31日
今年できたこと、できなかったこと。
まず表からはっきり見える成果は、470の作品を新たに公開できたこと。
入力、校正に当たられた皆さん、自作を寄せてくださった方々に、あらためて、お礼申し上げます。

およそ2年あまり、水面下で続けてきた作業の延長線上に、
「明日の本棚」を開けたことも感慨深い。

著作権の切れた、書かれてから少し時間のたった作品の電子化をはじめると、JIS第1第2水準と呼ばれる、普段私たちが使っている漢字コードにない文字にしばしば突き当たるようになった。
使っている文字コードで表せない、こうした「外字」には、「目+匡」で「まぶち」といった具合につくりを説明したり、画像で文字の形をこしらえて対処することにした。

およそ1年ほど青空文庫の作業を続けた時点で、やっかいものの外字の処理が、見ようによっては、ある意味を持ってくると知らされた。
作品ファイルから外字に関する注記だけ抜き出してまとめると、今の漢字コードにない文字が、どんな作品にどのくらい出てくるかを示す資料になる。かなりたくさんの人に読まれたはずの、「必要性が高い」と思われる文字のうち、これまでの漢字コードに組み込めていないものは「これだ」と特定できる。
折から進められていた、JIS漢字コード拡張プロジェクトのリーダーにそう教えられて、青空文庫の意味が、ぐんと膨らむような胸の弾みを覚えた。
入力、校正し、ファイルを作って公開というこれまでの作業に加えて、外字データ収集に関わる、水面下の作業がはじまった。1998年の春のことだ。
ここで集約した情報をプロジェクト・チームに報告し、第3第4水準選定の、資料の一つとして使ってもらうことができた。

第3第4水準を定めた新しい規格が正式に定められたのは、今年2000年の1月だ。
期待した企業からのフォント供給は進まなかったが、個人で第3第4水準まで表示できるものを作ってくれる人が現れた。
ただし、規格が決まり、フォントがそろっただけでは、新しい文字コードをどんどん使いこなすというわけにはいかない。漢字の読み書きには、漢字辞書や国語辞典が欠かせないように、参考資料を用意しておかなければ活用が進まない。
そこで、必要と思う道具も作ることにした。

ここまで足場を固めてから、そもそもの出発点である外字の排除に取りかかった。
青空文庫でみつけた外字は、時期的に間に合わなかったものを除いて、すべて拡張プロジェクトに報告し、ほとんどが、第3第4水準に入った。そこで「目+匡」といった調子で処理したところに、新しく定められたコードを当てていった。
こうして、外字なしで仕立て直したファイルを集めたのが、「明日の本棚」だ。

ここに集められた作品を読んでもらうには、第3第4水準を表示できるフォントがいる。それらをどこから入手できるか。快適に読むには、どんな表示ソフトを使ったらよいかといった説明を、「新JIS漢字時代の扉を開こう!」という文書に集めた。漢字辞書の索引に相当する「新JIS漢字総合索引」の入手法と使い方の説明も、ここで行っている。
すべてのパソコンに、第3第4水準まで表示できるフォントが組み込まれ、拡張された漢字コードに関する説明などあらためて必要なくなるまでは、「明日の本棚」から、「明日」はとれないだろう。
だがいずれ、この形こそを青空文庫の基本形にできると考えている。

およそ2年半に及ぶここまでの流れを振り返ると、外字との出合いからはじまった環が、大きくぐるりと回り、「明日の本棚」の開設で閉じたような印象を受ける。
水面下で吹き出していた小さな泡が集まって大きな気泡に育ち、水の中を一気に駆け上り、空気中に飛び出して、シャボン玉のように虹色に輝きはじめたイメージが、脳裏に広がる。

今はまだ、完全に水面下で進んでいるデータベース化の成果も、いずれ皆さんの目の届くところに飛び出してくるのではないかと期待している。
何度も書いてきたことだが、当初、青空文庫を準備した者は、ほんの軽い気持ちで、ほとんど何の備えもなしにスタートを切った。
願いだけがぽつんとたたずんでいるようなちっぽけな試みに共感し、力を貸そうと名乗りを上げてくれた人のすさまじい勢いにあおられて、どうしても欠かせないものを、遅れ遅れ、追っかけ追っかけで用意してきたのがこれまでだ。
文庫全体のシステムを管理する仕組みもなくて、一つ一つのページはすべて手書きしてきた。だがここまで文庫が膨らむと、維持と更新に要する負担が、あまりにも大きくなってきた。そこで、なんとか作業を効率化できないかと考えて着手したのが、データベース化だった。
つまり、当初念頭にあったのは、裏方の作業の効率化だ。

ところが仕様を検討してみると、作りようによっては、データベースをさまざまに使いこなせると気付いた。
図書館の検索システムでは、たいてい、一冊ごとの本がまとまりの単位になっている。個別の作品がどの本に入っているか、直接には調べられないことが多い。
だが、現在開発が進んでいる青空文庫のデータベースなら、どの作品がどのファイルにまとめてあるか、検索できる。入力にあたって手本にした書籍の名前や出版社名も関連づけてあるから、ある作品を、紙の本で探す際の情報源にもできるだろう。

私たちが用意できそうな、データベースを動かすマシンのパワーや通信環境は、ごくごく限られたものになりそうだ。
最初から一般公開すれば、当初の狙いだった裏方作業の効率化に差し障りが出ると思うので、明年もしばらく、この流れは水面下に潜ったままだろう。
だが、データを拡充し、処理能力の高い環境への移設を果たして、いずれはこの成果もまた、青空に舞い上がらせたい。

漢字コードやデータベースに関わる、青空文庫の「もう一つの仕事」も、作品の電子化と同様、たくさんの人の力が集まってはじめて進められたものだ。
今年の4月にスタートした青空文庫メーリングリストが、協力の場となってくれた。
紹介した二つのテーマでは前進できたが、メーリングリストには今年、もっともっとたくさんの課題が提出されている。
それらの大半は、明年への宿題とせざるをえなかった。

呼びかけ人と称する世話役と連絡をとりながら作業にたずさわってこられた方や、メーリングリストのメンバーならよくよくご承知の通り、事務局役をになっている者の力量は、本当に貧弱だ。
「足りないのなら拡充すればよい」と、かつては単純にそう考えたこともあって、事実、そうしてみたこともある。
だが、世話役を増やすことにもまた、難しさがある。
自発性のみを力と頼む、インターネットを介した共働にとって、事務局機能の強化は果たして、プラスなのかマイナスなのかという点にも、双方の評価と懸念とがある。
結果的に、常にアップアップとなっている世話役の力量不足が集中して現れてしまっているのが、自作の登録要請への対応だ。
きわめて長期間、お待たせしているものが多数ある。
これ以外でも、問い合わせに対する答えがひどく遅くなったり、エアポケットに落ちて返答しないままになったりといった事態も、多々生じさせてしまった。
単純に答え損ねている場合がほとんどなので、そんなときには、二度三度、せっついていただけるとありがたい。


あたりを見回すこともなく、地図の一枚も持たずに青空文庫がスタートしたのは、1997年の夏だった。
そこから二十世紀(^^;)いっぱいをかけて、私たちは「作品を電子化して集め、利用する」作業の全体像を、どうやら思い浮かべられるところまできたと思う。
地図が描けるようになった分、手つかずの要素、欠けているコマもはっきり見えてきた。
ここからもう一度腰を据えて、じっくり進み、来年も一つ一つ、シャボン玉を空に舞い上がらせたいと願っている。(倫)



2000年12月31日
 林幸雄さんが入力された
若杉鳥子『古鏡』を登録する。校正は大野裕さんです。(AG)



2000年12月30日
 林田清明さんが入力された
岡本綺堂『影を踏まれた女――「近代異妖編」』を登録する。校正はちはるさんです。(AG)



2000年12月29日
 柴田卓治さんが入力された
夢野久作『継子』を登録する。校正はminekoさんです。(AG)



2000年12月28日
 大野裕さんが入力された
細井和喜蔵『モルモット』を登録する。校正は林幸雄さんです。(AG)



2000年12月27日
 柴田卓治さんが入力された
夢野久作『暗黒公使』を登録する。校正はかとうかおりさんです。(AG)



2000年12月26日
 はまなかひとしさんが入力された
内藤湖南『支那の書目に就いて』を登録する。校正は菅野朋子さんです。(AG)



2000年12月25日
「随筆計画2000」より、もりみつじゅんじさんが入力された
堺利彦『貧を記す』、とみ〜ばあさんが入力された薄田泣菫『魚の憂鬱』津村信夫『猟人』を登録する。校正はすべて今井忠夫さんです。(AG)



2000年12月22日
 砂場清隆さんが入力された
森鴎外『青年』を登録する。校正は藤田禎宏さんです。(AG)



2000年12月21日
 網迫さんが入力された
岡本綺堂『半七捕物帳 冬の金魚』『半七捕物帳 松茸』を登録する。校正はごまごまさんです。(AG)



2000年12月20日
鶴岡雄二さんの
『急がば廻れ'99』を登録する。
60年代にポップスを聴いていた人なら、タイトルから容易に想像がつくだろう。
本作品のテーマは、ベンチャーズである。
同じく鶴岡さんによる、登録済みの『モータウン・ミステリー』では、黒人ミュージシャンが生み出したはずのモータウン・サウンドの真の担い手が明らかにされた。今回暴かれるのは、ベンチャーズの正体だ。それも、容赦なく徹底的に。

本作品を読み、ベンチャーズのベスト盤を引っぱり出してきた。
聞いては読み、聞いては読みを何度か繰り返した。
あらためて聞き直せば、「10番街の殺人」のような鉄壁の演奏から、少々頼りないのまで、プレイスタイルもさまざまに取りそろえてあって、「彼等の音楽」は、実にバラエティーに富んでいる。
これだけばらばらでも、証拠を示して突きつけられないと正体に思いが至らないのだから、何とも私の耳などは、いい加減なものだな〜。
などと自らの耳を笑っているうちに、ゆっくりと澱がたまるように気にかかりはじめたことがある。
その点にも少し触れてみようと思ったところ、えらく個人的な話を長く書いてしまったので、そのお話はいずれ、みずたまりででも。(倫)



2000年12月19日
第3第4水準を表示できるフォント、Kandataが更新された。
新しい1.7.2版では、旧版に残っていた
これらの問題点が解消されている。
Windows版は、ここから
Macintosh版は、こちらからダウンロードできる。

Windows版のKandataを収めた一式には、「tar.gz」という拡張子がついている。
Unixでよく使われる、圧縮形式のものだ。
解凍に不安のある方は、 このページで、「2.Lhaplusで解凍、圧縮する」の項を参照してほしい。

たびたびで恐縮だが、旧版をお使いの方には、新版への差し替えをお願いしたい。
Kandataをまだ組み込んでおられない方も、これを機会にインストールされてはいかがだろう。
「青空文庫 明日の本棚」には、これまでコンピューターで表示できず、画像に置き換えたり、「何へん+何」と文字のつくりをしめすしかなかった「外字」を、第3第4の文字に置き換えた作品が用意されている。
Kandataと、これも第3第4に対応したT-Time新版のお試しバージョンを利用すれば、よりしっかりとした日本語取り扱いの土台に載せたこれらのファイルを、快適に読んでもらえる。
従来の制約を一つ越えたところに、どんな世界が開けるか、思いを巡らす手がかりにしてもらえるのではないかと期待している。

Kandataと、これも第3第4水準に対応したHabianの両フォントは、wakabaさんという個人が開発し、公開してくれたものだ。
その内のKandataについては、先日wakabaさんから「1.7.1版を最終とし、これ以降の更新は行わない」旨の意思表明があった。
「ならばKandataの保守は、私が引き継ごう」と、内田明さんから声があがったのは、その直後だ。
生みの親の元を離れ、kandataは新しい育ての親の元で成長を続けることになった。
今回の1.7.2版は、内田さんによるKandata補完計画の最初の成果である。(倫)



2000年12月19日
 大野裕さんが入力された
細井和喜蔵『女給』を登録する。校正は林幸雄さんです。(AG)



2000年12月18日
 柴田卓治さんが入力された
夢野久作『近眼芸妓と迷宮事件』を登録する。校正はちはるさんです。(AG)



2000年12月16日
プアマリナさんの
『虹の海の童話集1』を登録する。
幼い頃から「家にパソコンがある」時代に育つ子供たちにとって、本とパソコンとの区別は、もうどうでもいいことなのかもしれない。パソコンで読める児童文学の充実度が、これからの本の世界を決定づけていくのかもしれないと思うと、うかうかしてはいられない。
御自身も父親であるプアマリナさんは、児童文学の現状に危機感を持ち、これからの子供たちに手渡す本を、自らの手で作っていく試みを始められた。そのうちのひとつとして、『虹の海 児童文学賞』がある。
第1回の今回は、20世紀のあいだに募集し、21世紀に電子本化して、子供たちに手渡そうという試みだ。
募集期間は20世紀中。児童文学に関心を持っておられるみなさん、20世紀の記念に、応募してみられてはいかがだろう。(LC)



2000年12月15日
 柴田卓治さんが入力された
太宰治『猿ヶ島』を登録する。校正はすずきともひろさんです。(AG)



2000年12月14日
 大野晋さんが入力された
大阪圭吉『デパートの絞刑吏』『灯台鬼』『幽霊妻』を登録する。校正ははやしだかずこさんです。(AG)



2000年12月13日
 馬野哲一さんが入力された
泉鏡花(泉鏡太郎)『人魚の祠』を登録する。校正は鈴木厚司さんです。(AG)



2000年12月12日
「随筆計画2000」より、加藤恭子さんが入力された
幸田露伴『侠客の種類』、菅野朋子さんが入力された島崎藤村『伊香保土産』、渡邉つよしさんが入力された正岡子規『九月十四日の朝』を登録する。校正は浦田伴俊さんです。(AG)



2000年12月11日
 久保あきらさんが入力された
徳田秋声『縮図』を登録する。校正は松永正敏さんです。(AG)



2000年12月10日
第3第4水準を表示できるフォント、Habianが更新された。
最新の1.7.1版では、旧版にあった
これらの誤りが訂正されている。
Windows版は、ここから
Macintosh版は、こちらからダウンロードできる。

「それが青空文庫にどうかかわる?」と疑問に思われる方は、たびたび恐縮ではあるが、「新JIS漢字時代の扉を開こう!」をご覧ください。(倫)



2000年12月9日
植松眞人さんの
『続・神さんが降りてきた。 アメリカ人になりたい。』を登録する。
前作でお目にかかって以来、私、神さんのファンである。できるなら、初詣の年一とはいわず、月に一度でもお目にかかりたい。ところが、住吉大社から東京は新橋方面に流れて末のお足取りが知れず、今年はまことに寂しい限りであった。それがこうして、一年と半年ぶりにようようお目もじがかない、どうやらこの年の瀬は、心平らかに越せそうである。
無理は承知で、「それはもう決まりやねん」とばかり背伸びして、背伸びしてやはり、己の力不足を呪うことしばしばの諸兄に、いずこにおわすとお伝えできないのがちと切ないが、とりあえず帰依のほどをお薦めしたい。(倫)



2000年12月7日
 大野裕さんが入力された
黒島伝治『橇』を登録する。校正はJukiさんです。(AG)



2000年12月6日
 柴田卓治さんが入力された
夢野久作『超人鬚野博士』を登録する。校正はかとうかおりさんです。(AG)



2000年12月5日
 (株)モモさんが入力された
島崎藤村『家(下巻)』を登録する。校正は藤田禎宏さんです。(AG)



2000年12月4日
 金川一之さんが入力された
太宰治『走れメロス』を登録する。校正は高橋美奈子さんです。(AG)



2000年12月4日
大久保ゆうさんが翻訳された、アーサー・コナン・ドイル
『赤毛連盟』を更新する。
普通は、更新をここでお知らせするケースはほとんどない。にもかかわらず、今回こうしてアナウンスするのには、少しわけがある。
今年の夏、翻訳された大久保さんから、「『赤毛連盟』を改訳したい」とのお便りをいただいた。読者の方からのご意見も反映したという、改訳第一稿のURLが添えられていた。
それだけなら、特に珍しいこともない。大久保さんと青空文庫とで少し微調整をして、「これでよかろう」となったところで公開して終わりだっただろう。しかし、読者からのお便りがきっかけとなったというこの改訳を、それだけで終わらせては、なんだかつまらない。
青空文庫側からの「この際だから、多くの人からのご意見をうかがってみては」という提案に、大久保さんも乗り気になって下さった。改訳用のページと掲示板を用意され、みずたまりでも呼びかけて、「公開改訳」がスタートしたのである。
今回の更新は、そうしたインターネット的な人の輪がつながって実現した。ファイルの末尾に示されている掲示板にアクセスすると、青空文庫の翻訳作品でおなじみの、あの人やあの人のお名前も見える。(誰であるかは、アクセスしてみてのお楽しみ。)
ホームズの世界を堪能し、翻訳者と会話を交わし、共に本を育てる。これもまた、インターネット時代の読書ならではの醍醐味のひとつだ。そんなわけで、読者の皆様にもお知らせしたくなった次第である。(LC)



2000年12月2日
 (株)モモさんが入力された
島崎藤村『家(上巻)』を登録する。校正は藤田禎宏さんです。(AG)



2000年12月1日
第3第4水準を表示できるフォント、Kandataが更新された。
最新の1.7.1版では、旧版で確認されていた
これらの誤りが訂正されている。
Windows版は、ここから
Macintosh版は、こちらからダウンロードできる。

「それが青空文庫にどうかかわる?」と疑問に思われる方は、「新JIS漢字時代の扉を開こう!」をどうぞ。(倫)



2000年11月30日
過去2年間、トヨタ財団の支援を受けて、青空文庫が進めてきたプロジェクトが完了した。
設定した研究期間は10月末日までだったが、締めくくりにあたって求められていた書類の提出期限が、今日だった。
ようやく一式をまとめ上げ、届け出ることができて、一息ついたところだ。

このプロジェクトで取り組んできたのは、「外字」の問題だ。
青空文庫で、過去の作品のテキスト化を始めるとすぐに、JIS第1第2水準にない文字に突き当たった。「何偏+何」といった注記で対処したが、いかにもまどろっこしい。
そんな時、JIS漢字コードを拡張する計画が進んでいることを知った。
青空文庫で見つかった外字を拡張部分に加えてもらえれば、行く行くは注記という、特別扱いが避けられる。
そこで、外字に関する情報をまとめ、JISの委員会に提出して、収録文字選定の資料にしてもらおうと考えた。

このデータの意味を高める上では、たくさんの作品に当たって、より多くの外字を見つけたい。作業対象を広げれば、個々の外字の出現頻度も意味を持ってくる。
ただし、試験的に進めてみると、外字データの収集は、実に手間のかかる作業だとわかった。何らかの体制を作らないと、まとまった成果を残すのは難しい。そう考えて、公募による研究助成を行っている
トヨタ財団に計画を示し、支援を申し入れた。
ありがたいことに、これが1998年度の助成対象として選ばれた。

2年間で480万円の支援を受けて、私たちは事務局の体制固めに取り組むことができた。
1997年8月の開設から1998年10月末までの1年3か月で、青空文庫は236作品を公開していた。一方助成開始から昨日までに、965作品が公開された。1か月平均のペースは、それまでの15.7タイトルから38.7へと倍以上に高まった。

作業対照のファイルを拡充しながら、青空文庫は外字情報の集約を進めた。
拡張計画を担うJISの委員会は、原案を示して収録予定文字に対する意見を求める、公開レビューを行った。意見書の締め切りは1999年2月末に設定されたため、助成開始直後から集中して作業を進め、「文学作品に現れた第3第4水準原案にない文字」を提出し、「文学作品に現れたJIS X 0208にない文字」を参考資料として添付することができた。
青空文庫からの資料も検討材料の一つとなって、本年1月、第3第4水準がJISの新しい規格として制定された。

当初私たちは、規格成立から時をおかずに、第3第4水準に対応したフォントが利用可能になると考えていた。ところがパソコンメーカーが、広く普及している漢字コードの符号化方式(シフトJIS)で第3第4に対応することを避けたため、期待していたフォントが当面、利用できそうもないという事態に見舞われた。
こうした中で、第3第4水準に対応したフォントが、個人の働きによって作られ、公開された。
青空文庫はこれを利用して、拡張されたJIS漢字コードを使いこなすためのツール作りに取り組み、その過程で、フォントに含まれていた誤りを見つけて開発者に報告し、改訂の作業を後押ししていった。
一連の作業の中で蓄積したノウハウは、「新JIS漢字時代の扉を開こう!」と名付けたページで公開している。
第3第4水準に対応させて外字を排除したファイルは、「青空文庫 明日の本棚」に集めている。

第1第2水準で表せない漢字の情報を集約する。
それを拡張作業を進めているチームに送り込み、第3第4に組み込んでもらう。
その規格が制定されるのを待って、これまで表せなかった漢字をコードに置き換える…。
トヨタ財団の支援を受けた2年間で、我々はこのサイクルを完結させることができた。
青空文庫で作業する人は、延べで300人を越え、公開済みの1200タイトルをこえる約1500タイトルの作業が進みつつある。
公開作品数という量の面においても、JIS漢字コードの拡張に寄与し、新しい漢字コードの利用の道を開くという質の面においても、青空文庫は私たちがまったく予想もできなかった成果を残したと、率直にそう思う。
よちよち歩きの青空文庫の前で門を開き、「さあ走れ!」と背を押してくれたのは、トヨタ財団だった。(倫)



2000年11月30日
 福岡茂雄さんが入力された
與謝野晶子『舞姫』を登録する。校正はちはるさんです。(AG)



2000年11月28日
 大野晋さんが入力された
小酒井不木『愚人の毒』『メデューサの首』を登録する。校正はしずさんです。(AG)



2000年11月27日
 大野晋さんが入力された
小島烏水『紀行文家の群れ――田山花袋氏――』を登録する。校正は伊藤時也さんです。(AG)



2000年11月24日
 みやまさんが入力された
太宰治『雪の夜の話』を登録する。校正は鈴木厚司さんです。(AG)



2000年11月22日
「随筆計画2000」より、加藤恭子さんが入力された
木下杢太郎『パンの会の回想』倉田百三『善くならうとする祈り』を登録する。校正は菅野朋子さんです。(AG)



2000年11月20日
「随筆計画2000」より、加藤恭子さんが入力された
武田麟太郎『落語家たち』談洲楼燕枝(二代)『燕枝芸談』を登録する。校正は菅野朋子さんです。(AG)



2000年11月18日
植松眞人さんの
『神楽坂奇譚』を登録する。
長く生きていると、人間、いろんな目にあうもんだ。植松さん、今度は神楽坂で物の怪につかまった。
古い町が、新しい有象無象なども呑み込みながら現役で生きている、神楽坂は不可思議な魅力にあふれた町だ。土地勘がないわけじゃないので、描かれる情景は、脳裏に記憶した像を思い浮かべながら読んだ。坂を上りきった左、毘沙門天の裏あたりに幽閉されれば、確かにこれは怖い。「神楽坂を転がる」の木造三階屋には、見当が付かない。今度あのあたりに足を伸ばす機会があれば、探してみようと思う。
何がどうしてそんな仕儀に至ったかはわからないが、植松さん、神楽坂の不思議に足を取られて、どうやら抜け出せそうもない様子だ。ならば無責任な読者としては、例の大阪弁の神さんも、この町に現れて一幕演じてくれないものかと思う。
すでに登録済みの植松作品には、『コーヒーメーカー』『新世界交響曲』『神さんが降りてきた。』がある。大阪弁の神さんに会いたい方は、『神さんが降りてきた。』で。同作品のHTML版の最後からは、感想の書き込みページへリンクがはってある。万願い事の類も、そちらへ。ん(?)(倫)



2000年11月17日
 柴田卓治さんが入力された
太宰治『花吹雪』『不審庵』を登録する。校正は夏海さんです。(AG)



2000年11月15日
「随筆計画2000」より、菅野朋子さんが入力された
石田孫太郎『猫と色の嗜好』、葵さんが入力された大町桂月『月譜』、もりみつじゅんじさんが入力された堺利彦『私の父』を登録する。校正はすべて今井忠夫さんです。(AG)



2000年11月14日
 大野晋さんが入力された
甲賀三郎『ニッケルの文鎮』を登録する。校正はすべてkazuishiさんです。(AG)



2000年11月13日
「随筆計画2000」より、増元弘信さんが入力された
徳冨蘆花『草とり』、渡邉つよしさんが入力された岡本一平『非凡人と凡人の遺書』尾崎秀実『遺書』を登録する。校正はすべて菅野朋子さんです。(AG)



2000年11月11日
 久保あきらさんが入力された
岩野泡鳴『耽溺』を登録する。校正は松永正敏さんです。(AG)



2000年11月10日
 田中亨吾さんが入力された
平林初之輔『中西氏に答う』『文藝運動と勞働運動』『唯物史觀と文學』を登録する。校正は大野裕さんです。(AG)



2000年11月9日
 馬野哲一さんが入力された
泉鏡花(泉鏡太郎)『蛇くひ』を登録する。校正は鈴木厚司さんです。(AG)



2000年11月8日
 長住由生さんが入力された
二葉亭四迷『小説総論』ガールシン著、二葉亭四迷訳『四日間』を登録する。校正ははやしだかずこさんです。(AG)



2000年11月7日
 大野晋さんが入力された
小酒井不木『死体蝋燭』を登録する。校正はしずさんです。(AG)



2000年11月6日
去る3日、リチャード・ストールマン作、結城浩さん訳の『自由か著作権か?』を登録した際、「フリーソフトウエア」について触れた。
そこではまず「誰もが対価なしに使える。」と書き、コピーや再配布、書き換えが自由であることなどを、フリーソフトウエアの要件として並べていった。
これに対し、結城さんから、「フリーソフトのフリーとは『無料』ではなく『自由』」とのご指摘をいただいた。
たとえあるソフトが有償の器(CD-ROMのようなもの)に入れて販売されていたとしても、
「フリーソフトウェアって何?」が冒頭に掲げる四つの自由を保証しているなら、それはフリーソフトウエアだ。
逆に無料で使えたとしても、四つの自由を完全に保証していなければ、ストールマン氏ら言うところの「フリーソフトウエア」ではない。
だから「誰もが対価なしに使える。」を要件として掲げた私の書き方は、間違っている。
これでは、「〈フリー〉を、価格の問題ではなく、自由の問題として扱おう」とする運動の趣旨を、取り違えた上に矮小化してしまうことにもなる。

よって、3日付の記述にある「誰もが対価なしに使える。」は、取り消します。(記述自体は、悪い見本として残します。)
結城さん、ご指摘、ありがとうございました。(倫)



2000年11月6日
「随筆計画2000」より、渡邉つよしさんが入力された
葉山嘉樹『遺言文学』正岡子規『死後』、葵さんが入力された樋口一葉『月の夜』を登録する。校正はすべてもりみつじゅんじさんです。(AG)



2000年11月4日
「随筆計画2000」より、菅野朋子さんが入力された
岡本かの子『英国メーデーの記』、砂場清隆さんが入力された田畑修一郎『栄螺』田山花袋『新茶のかおり』葉山嘉樹『井戸の底に埃の溜つた話』を登録する。校正はすべてTomoko.Iさんです。(AG)



2000年11月3日
リチャード・ストールマン作、結城浩さん訳の
『自由か著作権か?』を登録する。
日本の著作権法には、冒頭にこの法の目的が書いてある。
「…著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。」
ごたごたと込み入った表現だが、真の目的は「文化の発展に寄与する」こと。「著作権者の権利の保護」は、そのための手段と読める。
誕生の当初は、もっぱら出版社の独占権の保護に偏っていた仕組みを、あらためてここまで押し戻し、再定義したことは、先人の手柄だと思う。
何よりも大切なのは、いろいろな人の考えの成果が広く社会に行き渡り、新しい考えが生まれるのを刺激して、文化が厚みを増していくこと―。
その目的により適合したやり方があると信じるなら、著作権制度とは異なったルールで物事を動かしてみることには意味があるはずだ。
『自由か著作権か?』の著者、リチャード・ストールマン氏は、ソフトウエアの領域で、もう一つのやり方を推し進めてきた人物だ。
誰もが対価なしに使える。コピー、再配布、必要に応じた書き換えも自由。書き換えのためには、中味を理解することが必要だから、ソースコードも公開。こうした原則に基づいてソフトウエアを提供し、活用していこうとするフリーソフトウエア運動で ある。(この一節に、誤りがありました。詳しくは、6日付のそらもようを参照してください。)
この試みの詳細については、プロジェクト杉田玄白の提唱者である、山形浩生さんによる「フリー・ソフトウェア・ファウンデーションとは?」からどうぞ。同氏による、ストールマンさんへのインタビューを読むと、山形さんが堅物の常識人に見えて面白い。
著作権について自分なりに考え直す際の第一歩として、白田秀彰さんが青空文庫を利用する若い人向けに書いてくれたのが、『もう一つの著作権の話』。制度の誕生から歴史的変遷の過程は、同じく白田さんの『コピーライトの史的展開』を。史的な経緯を踏まえた、新しい情報流通の仕組みの提案は『著作権の原理と現代著作権理論』をどうぞ。(倫)



2000年11月2日
ハンス・クリスチャン・アンデルセン作、結城浩さん訳の
『マッチ売りの少女』を登録する。
昨日登録した結城さん訳の二作、すでに登録済みの『賢者の贈り物』『最後の一枚の葉』(オー・ヘンリー著)、『マルチン・ルターの小信仰問答書』(マルチン・ルター著)同様、本作品もプロジェクト杉田玄白の正式参加作品である。
「電子化して公開できないか?」と海外の作品に関してたずねられる際、しばしば引っかかるのが翻訳者の権利だ。作者同様、死後50年間保護される訳者の権利があって、公開できない場合が多い。
「ならば公開を前提に、自分たちで訳そうじゃないか」というのが、プロジェクト杉田玄白。言い出しっぺの山形浩生さんから先日、「こちらのプロジェクトも点数が増えた…いくつかブツをこちらにもおすそわけしてさしあげようかと思います」と、みずたまりにお申し出でをいただいた。願ったり、喜んで。図書カードを用意することで、同プロジェクトの成果にも、青空文庫からの道筋を付けていきたいと思う。(倫)



2000年11月2日
 ゆうきさんが入力された
内村鑑三『寒中の木の芽』『時事雑評二三』『楽しき生涯(韻なき紀律なき一片の真情)』『ネルソン伝に序す』『問答二三』『寡婦の除夜』を登録する。校正はちはるさんです。(AG)



2000年11月1日
オスカー・ワイルド著、結城浩さん訳の
『幸福の王子』『わがままな大男』を登録する。
前者は、黄金に覆われ、宝石に飾られた像として立つ王子が、ツバメに託して貧しい人々に宝物をほどこすお話。後者は、自らの庭で遊ぶ子らを追い払った大男が体験する、孤独と回心の物語である。『幸福の王子』の筋立ては、覚えておられる方が多い のではないかと思う。
著者のオスカー・ワイルドは、昨日登録した三遊亭圓朝と同じく、ちょうど100年前に没している。
新聞という新しいメディアの勃興の波に乗って、物語作家としての人気を獲得した圓朝は、新しい日本語文体を模索していた坪内逍遥、二葉亭四迷にヒントを与えた。江戸から明治へと移る近代への転換点にあって、話し言葉に近い形で綴るという、私たちが良く見知っている書き言葉の形成に影響をおよぼしたのが、圓朝だった。昨日登録した『名人長二』は、高座の噺を速記したものではなく、圓朝自身が書いて新聞連載したものである。モーパッサンの「親殺し」の翻案で、筋立ては有島武郎の母から圓朝に伝えられたとの逸話が伝えられている。
ワイルドも時に、「最初の現代人("the first modern man")」と呼ばれるのだという。才気あふれる作品と、諧謔精神に満ちた言動。当時は処罰の対象であった同性愛をとがめられて2年間、投獄された後、46歳でパリに客死する彼の人生は、映画「オスカー・ワイルド」にも描かれている。そのワイルドは、『幸福の王子』になにを託したのだろう。「オスカー・ワイルド 〜最初の現代人〜」と題されたページを入り口に、彼の足跡をたどるうち、天国における救済というエピローグがもしもこの作品に付け加えられていなかったら、との思いを抑えられなくなった。(倫)



2000年10月31日
 小林繁雄さんが入力された
三遊亭圓朝作、鈴木行三校訂『名人長二』を登録する。校正はかとうかおりさんです。(AG)



2000年10月30日
「随筆計画2000」より、加藤恭子さんが入力された
木下杢太郎『本の装釘』島崎藤村『装釘に就て 『春』と『家』及び其他』高村光雲『佐竹の原へ大仏をこしらえたはなし』を登録する。校正は菅野朋子さんです。(AG)



2000年10月27日
「随筆計画2000」より、渡邉つよしさんが入力された
幸徳秋水『死生』と、加藤恭子さんが入力された野口雨情『女王』を登録する。校正は両作品とも今井忠夫さんです。(AG)



2000年10月26日
 柴田卓治さんが入力された
夢野久作『キチガイ地獄』を登録する。校正はしずさんです。(AG)



2000年10月25日
 柴田卓治さんが入力された
夢野久作『髪切虫』『白菊』『霊感!』を登録する。校正はkazuishiさんです。(AG)



2000年10月24日
 林田清明さんが入力された
小泉節子『思い出の記』を登録する。校正は松永正敏さんです。(AG)



2000年10月23日
 大野晋さんが入力された
伊藤左千夫『水害雑録』を登録する。校正は松永正敏さんです。(AG)



2000年10月21日
栗林元さんの
『自転車の夏』を登録する。
時は1977年。
ビートルズが駆け抜け、後半には世界中で学生が大騒ぎした60年代からはすでに遠い。連合赤軍事件、内ゲバ。ビッグ・チルに、石油ショックがだめ押しの冷や水をぶっかけた70年代前半を経て、閉塞感も日常に拡散していった時期、主人公は大学の門をくぐる。新入部員勧誘イベントの華麗な演武に魅せられ、「体育会の最右翼と言われる武団連合の、その中でもさらに過酷といわれた少林寺拳法部」に入った主人公の、疾風怒濤の一夏を描いた物語。
それにしても、なぜ体育会、それも武道か?
「上の世代は、とにかく好むと好まざるとに関わらず、何かにつけ『燃えるもの』があったのだ。『戦う相手』があったのだ。…『あと五年早く生まれたかったよ』何故ならば、…『七十年安保とかビートルズとかを同時代で体験できただろうからね』」

「熱よ蘇れと」パソコンが出てきたのも、ちょうどあの年だ。(倫)



2000年10月20日
JIS漢字コードにある文字を、たやすく見つけられるようにと考えて、索引を用意した。
「この字」と思ったものが、仮名漢字変換辞書からなかなか出てこないときに使って欲しい。「これはJISにはないんだろうか?」と不安になったときにも、きっとここから手がかりが得られるはずだ。
今回用意したものは「部首・画数索引」と「音訓索引」からなっている。加えて、日本語の文脈でよく使う記号を集めた「記号一覧」を付けた。
名前はちょっと大仰だが、「新JIS漢字総合索引」とした。

「総合索引」には、今年の1月に定められた、第3第4水準の漢字も入っている。
第3第4が表示できるフォントを組み込んでも、仮名漢字変換モジュールの辞書が対応していないので、普通のやり方では新しい字が出てこない。そのため、第3第4の入力はかなり面倒だったが、これでずいぶん楽になると思う。
第1第2の範囲で書く際にも、便利に使ってもらえるはずだ。
第1と第2、第3と第4の区分けを念頭におき、条件に応じて使い分けようと考える人には、デスクトップの友として活用してもらえるのではないかと期待している。

「新JIS漢字総合索引」は、
「青空文庫『明日の硯箱』」から、自由に引き落とせる。

「索引」を開くにあたって、あらかじめ組み込んでおいて欲しい、第3第4を表示できるフォントの置き場所や、そもそも第3第4水準が担うだろう役割、利用に当たっての注意点などを、「新JIS漢字時代の扉を開こう!」という文書にまとめている。
公開済みのものだが、今回「総合索引」の導入手順と使い方を書き起こし、新しい一節として加えた
全体としてはかなり長い。けれど、頭から読み進んでもらえれば、JIS漢字コード使いこなしの基本がおさえられると思う。

電子的な仕組みを使った日本語のやりとりの基盤は、よりいっそう頼りがいのあるものに生まれ変わりつつある。
言葉が自在に行き交う空間は、もっと確かで、もっと可能性にあふれたものになる。
これを利用して、なにができる? さあ、なにをやろう。(倫)



2000年10月20日
 田中亨吾さんが入力された
平林初之輔『政治的價値と藝術的價値 マルクス主義文學理論の再吟味』を登録する。校正は大野裕さんです。(AG)



2000年10月19日
 網迫さんが入力された
岡本綺堂『半七捕物帳 あま酒売』『半七捕物帳 張子の虎』を登録する。校正はおのしげひこさんです。(AG)



2000年10月18日
 鈴木厚司さんが入力された
有島武郎『碁石を呑んだ八っちゃん』を登録する。校正は地田尚さんです。(AG)



2000年10月17日
 砂場清隆さんが入力された
森鴎外『護持院原の敵討』を登録する。校正は菅野朋子さんです。(AG)



2000年10月16日
3年前の1997年10月、青空文庫に「そらもよう」というページができた。いま青空で何が起こっているのかを、読者に知らせるコーナーだ。当時の「そらもよう」を読み返してみると、まだ生まれたばかりの青空文庫が、手探りで道をみつけて歩き出す様子が、手に取るように伝わってくる。
あれから3年、青空文庫にも、文庫を取り巻く世界にも、さまざまな変化があった。
中でも大きな変化は、新JIS(JIS X 0213)が制定され、当時はJIS外字扱いだった文字を、コンピュータの画面上で表示できるしくみが、少しずつできはじめたことではないだろうか。

青空文庫の蔵書の中心となっているのは、著作権の保護期間が終了した作品である。保護期間は50年だから、戦後まもなく世を去った作家の作品が、公開できるようになりはじめたところだ。新字新かなの時代が訪れる前に書かれた作品には、「コンピュータで表示できない文字」が数多く含まれていた。これらの作品を電子化するには、多くの制約がつきまとう。それゆえ、電子テキストの可能性を否定する意見も根強いようだ。

コンピュータの歴史は、まだ浅い。人々が気軽にインターネットを利用できるようになったのは、ここ5年くらいのことなのだから。そして、コンピュータは、まだまだ未熟者である。できないことが、あまりにも多い。けれども、未熟者ゆえ、これからできるようになることは、きっとそれ以上に多いだろう。先人の残してくれた「本」という財産を活用していく力を身につけることも、そのうちのひとつに違いない。新JISは、そのひとつのかたちだ。電子テキストは、無限の可能性を秘めている。それが少しずつかたちになってきている。否定するのは、まだ早い。

新JISをめぐる大きなうねりの片すみで、青空文庫も、小さな本棚をこしらえた。新JISを使った本を置くための本棚だ。ここに置いた本を開けば、これまで外字として扱ってきた文字が、本文の中に違和感なくとけ込んで表示されているのがわかる。目立っていた「外字扱い」の文字に比べると、それらの文字は、本当に目立たない。
明日は、ほんの少し先の未来だ。驚くような変化はなくとも、きっと何かが変わっている。その変化は、あまりにも小さくて、どこが変わったのかも気づかないかもしれない。そんなふうに「明日」が積み重なり、気づかないほどのささやかな変化が少しずつ積み重なって、はるか彼方の未来へと続いていくのだ。
未来は誰にもわからないけれど、明日は確実に訪れる。まずは「明日」を少しだけ覗いてみよう。
そんな思いを込めて、私たちは、この小さな本棚を、
「明日の本棚」と名付けた。
これからも、たくさんの明日を積み重ね、いつのまにか、明日が今日になっていく。そして、ある日気づいたら、「明日の本棚」は、単なる本棚にしか見えなくなっているだろう。

などという理屈は脇に置いて、まずは手始めに1冊、手にとって読んでみて欲しい。「ちょっとだけ未来」の蔵書を、理屈抜きで楽しんでいただければ幸いである。(LC)



2000年10月16日
 大野裕さんが入力された
黒島伝治『「紋」』を登録する。校正は富田倫生さんです。(AG)



2000年10月14日
 田中陽介さんが入力された
太宰治『如是我聞』『走ラヌ名馬』を登録する。校正は鈴木厚司さんです。(AG)



2000年10月13日
「随筆計画2000」より、渡邉つよしさんが入力された
織田作之助『秋の暈』、加藤恭子さんが入力された薄田泣菫(薄田淳介)『若葉の雨』を登録する。校正は両作品とも今井忠夫さんです。(AG)



2000年10月12日
 星夕子さんが入力された
竹久夢二『どんたく』を登録する。校正はJukiさんです。(AG)



2000年10月11日
 柴田卓治さんが入力された
夢野久作『復讐』を登録する。校正はちはるさんです。(AG)



2000年10月10日
 土田一柄さんが入力された
有島武郎『生まれいずる悩み』を登録する。校正は丹羽倫子さんです。(AG)



2000年10月7日
 MAMIさんが入力された
横光利一『睡蓮』『ナポレオンと田虫』『比叡』を登録する。校正は松永正敏さんです。(AG)



2000年10月6日
「随筆計画2000」より、とみ〜ばあさんが入力された
葉山嘉樹『運動会の風景』横光利一『鵜飼』を登録する。校正はもりみつじゅんじさんです。(AG)



2000年10月5日
 小林徹さんが入力された
南部修太郎『疑惑』『病院の窓』を登録する。校正ははやしだかずこさんです。(AG)



2000年10月4日
 柴田卓治さんが入力された
宮沢賢治『『春と修羅』『春と修羅』補遺』を登録する。校正はかとうかおりさんです。(AG)



2000年10月3日
(株)モモさん、砂場清隆さん、富田倫生さんが入力された
寺田寅彦『寺田寅彦随筆集第二巻「科学について」』を登録する。校正は田中敬三さん、かとうかおりさんです。(AG)



2000年10月2日
 大野晋さんが入力された
三木清『語られざる哲学』を登録する。校正は小林繁雄さんです。(AG)



2000年10月2日
図書カードの「作品について」には、空白が目立ってちょっと寂しい。
でも、岡本綺堂、半七捕物帳シリーズのそれは、着実に成長しつつある。〈ぷんきゅのちち〉さんが、あらすじをまとめては、送ってくださるからだ。
今回は、『鬼娘』と『小女郎狐』。いつも、ありがとうございます。
ぷんきゅのちちさんのウェッブページ
「趣味の十字路」には、「半七捕物帳の世界」がある。作品紹介欄も整えてあって、図書カードに使わせてもらっているあらすじは、この解説の一部だ。カードからのリンクをたどれば、さまざまな角度から論じられる作品評の、全体を読める。
この夏、東京を訪れた際には、「半七が生まれたことになっている日本橋、住んでいたはずの神田」と、青山墓地にある綺堂の墓所をたずねられたという。そのレポートは、「半七旧跡めぐり」で。(倫)



2000年9月30日
 柴田卓治さんが入力された
夢野久作『狂人は笑う』を登録する。校正はちはるさんです。(AG)



2000年9月28日
 久保あきらさんが入力された
田山花袋『一兵卒』『少女病』『ネギ一束』を登録する。校正は伊藤時也さんです。(AG)



2000年9月27日
 林田清明さんが入力された
島木健作『鰊漁場』を登録する。校正は松永正敏さんです。(AG)



2000年9月26日
 柴田卓治さんが入力された
夢野久作『空を飛ぶパラソル』を登録する。校正はしずさんです。(AG)



2000年9月25日
市川陽さんの小説
『放課後のロックンロール・パーティ』を登録する。
現時点まで未発表のままになっていた作品だが、最初に書かれたのは5年ほど前のことだという。かなりの長編であったのが、何度も手を入れて削られ、現在の形になった。「量」という観点から見ると、長編と中編の中間あたりといった感じか。
1964年、東海道新幹線が開通し、東京オリンピックがにぎにぎしく開かれたその年のある地方都市を舞台に、東京からすぐ近くにあるその地方都市で起こるいくつかの「事件」が織り込まれて、物語は進行する。新駅のホールにできた巨大な壁画といたずら書き。そのいたずら書きに関係しているとおぼしき謎の転校生。コンクリートの固まりでしかない新駅とはおよそ対照的な、古びた鉄のアーチ橋。そして、二人の高校生がそこで出会う奇矯な老カメラマン。やがて、彼らをとりこむようにしてつかの間の不可思議な祭りが展開する……。
著者は1952年生まれで、40代に入ったある日、さる出版社の編集者にすすめられてこの小説に手をつけたらしい。はじめての物語の扉を開くそのとき、「1964年」がテーマとして選ばれたのは、著者自身にとって、その1年がやはりその後のこの国とそこに住む自身の変化を決定的なものにしたシンボリックな1年だったからなのだろう。著者から届いた私信の一部をここで公開してしまえば、「64年という時代を鏡のようにして、その後の時代に関わる事象がフィクショナルに写しこまれている」という一言がこの作品を端的に要約している。
私信の公開ついでにいえば、著者はちょうどその頃、川端康成の「浅草紅団」に代表されるような古い東京を舞台にした作品に夢中になり、建築に興味をもちはじめた。日頃の仕事はテレビの世界という人であるのに、なぜかラジオに熱中していて、「ラジオから流れてくるフィクション」を構想してはわくわくしていたそうである。この作品には、それらすべてがいろいろな形で反映している。
ここで作品の評価をするわけにはいかないが、お話がテンポよくリズミカルに進んでいく、「ロックンロール」の名にふさわしいファンタジーであるとだけは言ってもいいだろう。高校生の心理が生き生きと描かれているのも魅力の一つで、ああ、市川さんの中には大人になったいまでも少年が一人そのままに棲んでいるのだなと思ったことだった。(楽)



2000年9月23日
 網迫さんが入力された
岡本綺堂『半七捕物帳 海坊主』『半七捕物帳 旅絵師』を登録する。校正は柳沢成雄さんです。(AG)



2000年9月21日
 林田清明さんが入力された
葛西善藏『哀しき父』『椎の若葉』を登録する。校正は松永正敏さんです。(AG)



2000年9月20日
 小林徹さんが入力された
泉鏡花『愛と婚姻』を登録する。校正は鈴木厚司さんです。(AG)



2000年9月19日
 柴田卓治さんが入力された
太宰治『竹青』『東京だより』を登録する。校正は山本奈津恵さんです。(AG)



2000年9月18日
 柴田卓治さんが入力された
太宰治『作家の手帖』『散華』を登録する。校正はkumiさんです。(AG)



2000年9月16日
 小林徹さんが入力された
素木しづ『咲いてゆく花』を登録する。校正は大西敦子さんです。(AG)



2000年9月15日
 笠原正純さんが入力された
小栗虫太郎『人外魔境 水棲人』を登録する。校正は大西敦子さんです。(AG)



2000年9月14日
 小林徹さんが入力された
泉鏡花『醜婦を呵す』を登録する。校正は伊藤時也さんです。(AG)



2000年9月13日
 田代信行さんが入力された
宮沢賢治『谷』『二人の役人』を登録する。校正は伊藤時也さんです。(AG)



2000年9月12日
 佐野良二さんが入力された
森鴎外『寒山拾得』(新字・新仮名)を登録する。校正は伊藤時也さんです。(AG)



2000年9月11日
 柴田卓治さんが入力された
夏目漱石『一夜』『趣味の遺伝』を登録する。校正はLUNA CATさんです。(AG)



2000年9月9日
 柴田卓治さんが入力された
夢野久作『名君忠之』『山羊髯編輯長』を登録する。校正はかとうかおりさんです。

 また、群馬インターネットに置いてある青空文庫ですが、http://www3.wind.ne.jp/mazmoto/aozorabunko/から、http://www9.wind.ne.jp/aozora/へ移転いたしました。(AG)



2000年9月7日
 網迫さんが入力された
岡本綺堂『半七捕物帳 少年少女の死』『半七捕物帳 人形使い』を登録する。校正は藤田禎宏さんです。(AG)



2000年9月5日
 網迫さんが入力された
岡本綺堂『半七捕物帳 異人の首』『半七捕物帳 一つ目小僧』を登録する。校正は藤田禎宏さんです。(AG)



2000年9月4日
 大野裕さんが入力された
里村欣三『苦力頭の表情』を登録する。校正はJukiさんです。(AG)



2000年9月1日
 MAMIさんが入力された
横光利一『春は馬車に乗って』を登録する。校正はもりみつじゅんじさんです。
 この横光利一『春は馬車に乗って』のHTML版は、今まで深谷由布さんのホームページにリンクを張っていました。ところがそのページが突然無くなり、と同時に深谷由布さんとも連絡が取れなくなってしまいました。そこで新たに入力し直し、再度登録いたしました。(AG)



2000年8月31日
 柴田卓治さんが入力された
夏目漱石『カーライル博物館』『琴のそら音』『倫敦塔』を登録する。校正はLUNA CATさんです。(AG)



2000年8月30日
 砂場清隆さんが入力された
泉鏡花『二、三羽――十二、三羽』『雛がたり』『竜潭譚』を登録する。校正は松永正敏さんです。(AG)



2000年8月29日
「随筆計画2000」より、加藤恭子さんが入力された
西田幾多郎『フランス哲学についての感想』を登録する。校正はnnsさんです。(AG)



2000年8月28日
 真先芳秋さんが入力された
菊池寛『義民甚兵衛』『俊寛』を登録する。校正は大野晋さんです。(AG)



2000年8月26日
 真先芳秋さんが入力された
菊池寛『仇討禁止令』『仇討三態』『乱世』を登録する。校正は大野晋さんです。(AG)



2000年8月25日
 薦田佳子さんが入力された
宮沢賢治『おきなぐさ』『めくらぶどうと虹』『四又の百合』を登録する。校正は平野彩子さんです。(AG)



2000年8月24日
 柴田卓治さんが入力された
夏目漱石『創作家の態度』を登録する。校正は大野晋さんです。(AG)



2000年8月23日
 atomさんが入力された
直木三十五『鍵屋の辻』を登録する。校正は大野晋さんです。(AG)



2000年8月22日
 網迫さんが入力された
岡本綺堂『半七捕物帳 半七先生』『半七捕物帳 雷獣と蛇』を登録する。校正は藤田禎宏さんです。(AG)



2000年8月21日
「新JIS漢字時代の扉を開こう!」というページを用意した。
ここで、青空文庫の明日の姿を、見ていただける。
コンピューターを使った読み書きの作法も、こんな形に、よりすばやく変わっていってほしいと願っている。

青空文庫がはじまるまで、漢字コードのことは知らなかった。
作品に、JIS漢字コードで表せない文字があると気付いて、やっと関心が向いた。
この字もダメ、あれもないと知り、第1第2水準と呼ばれているものの制約を意識した。
JIS漢字コードの拡張計画が進められていると聞いたのは、そんな時だ。
青空文庫でぶつかった「JISにない字」を、新しく定められる第3第4水準に入れてもらえれば、すっきりしたファイルを楽に作れるだろう。ちくちくと刺さる〈制約のトゲ〉から逃れて、もう一度、漢字コードを忘れられるのではないか。
受け継ぐべき作品と、書いて示すべき自分の言葉を電子環境に置くことに、ためらいがなくなるのではないかと考えた。

「新JIS漢字時代の扉を開こう!」には、こんなことを思いながら積み重ねてきたことをまとめた。
「コンピューターを使った読み書きは、ここが問題だ」
そう気付いた人の中には、改善のために自分のやれることをやろうと考えた人がいる。
「やれること」として彼等が設定した目標のいくつかは、呆れるほどに高い。
心の声だけを頼りに、淡々と一人静かに働いて、誰もが自由に利用できる公の富を耕してくれた人たちの成果にも、リンクできた。
ちっぽけなページだが、ここからのぞみうるものは、小さくないと思う。(倫)



2000年8月21日
 紅邪鬼さんが入力された
国木田独歩『あの時分』『号外』『春の鳥』を登録する。校正はLUNA CATさんです。(AG)



2000年8月19日
「随筆計画2000」より、加藤恭子さんが入力された
樋口一葉『雨の夜』と渡邉つよしさんが入力された森鴎外『遺言三種』を登録する。校正は両作品とも浦田伴俊さんです。(AG)



2000年8月18日
「随筆計画2000」より、加藤恭子さんが入力された
吉江喬松『五月雨』若山牧水『なまけ者と雨』を登録する。校正は両作品とも浦田伴俊さんです。(AG)



2000年8月17日
 真先芳秋さんが入力された
泉鏡花『婦系図』を登録する。校正はかとうかおりさんです。(AG)



2000年8月10日
 tatsukiさんが入力された
佐々木味津三『右門捕物帖 第18番てがら 明月一夜騒動』『右門捕物帖 第19番てがら 袈裟切り太夫』を登録する。校正は柳沢成雄さんです。(AG)



2000年8月9日
 砂場清隆さんが入力された
森鴎外『カズイスチカ』『杯』『百物語』を登録する。校正は松永正敏さんです。(AG)



2000年8月7日
 小林徹さんが入力された
南部修太郎『畫家とセリセリス』『自分のこと』を登録する。校正は伊藤時也さんです。(AG)



2000年8月1日
「随筆計画2000」より、奥村正明さんが入力された
内田魯庵(三文字屋金平)『為文学者経』を登録する。校正は菅野朋子さんです。(AG)



2000年7月29日
「随筆計画2000」より、砂場清隆さんが入力された
薄田泣菫『雨の日に香を燻く』と増元弘信さんが入力された薄田泣菫『草の親しみ 刈草の匂ひ 1』を登録する。校正は菅野朋子さんです。(AG)



2000年7月28日
「随筆計画2000」より、砂場清隆さんが入力された
鷹野つぎ『虫干し』立原道造『夏秋表』を登録する。校正は菅野朋子さんです。(AG)



2000年7月27日
 nnsさんが入力された
西田幾多郎『善の研究』を登録する。校正はかとうかおりさんです。(AG)



2000年7月26日
「随筆計画2000」より、増元弘信さんが入力された
若山牧水『秋草と虫の音』と、砂場清隆さんが入力された若山牧水『渓をおもふ』を登録する。校正は、両作品とももりみつじゅんじさんです。(AG)



2000年7月25日
 森下祐行さんが入力された
渡辺温『勝敗』『シルクハット』を登録する。校正はもりみつじゅんじさんです。(AG)



2000年7月24日
 大野裕さんが入力された
黒島伝治『二銭銅貨』を登録する。校正はJukiさんです。(AG)



2000年7月21日
 能美武功さんが訳された
エフゲーニイ・シュヴァルツ作『裸の王様』を登録する。
 能美武功さんが訳された作品は、すでにテレンス・ラティガンやノエル・カワードの著作が青空文庫に登録済みですが、他にも数多く訳されています。それらの作品は順次青空文庫に登録する予定ですが、能美武功さんのホームページへ行けばその著作の全貌を見ることも出来ますので、そちらのページもどうぞ。(AG)



2000年7月19日
「随筆計画2000」より、渡邉つよしさんが入力された
北一輝『子に与ふ』を登録する。校正は田村隆さんです。(AG)



2000年7月18日
 よしだひとみさんが入力された
森鴎外『うたかたの記』を登録する。校正は松永正敏さんです。(AG)



2000年7月14日
「随筆計画2000」より、加藤恭子さんが入力された
萩原朔太郎『喫茶店にて』を登録する。校正はM.Sさんです。(AG)



2000年7月12日
 紅邪鬼さんが入力された
国木田独歩『二老人』を登録する。校正は鈴木厚司さんです。(AG)



2000年7月11日
「随筆計画2000」より、渡邉つよしさんが入力された
岡本かの子『秋雨の追憶』『ある男の死』『風と裾』『縮緬のこころ』『恋愛といふもの』を登録する。校正は菅野朋子さんです。(AG)



2000年7月10日
 紅邪鬼さんが入力された
国木田独歩『疲労』を登録する。校正は鈴木厚司さんです。(AG)



2000年7月8日
 紅邪鬼さんが入力された
島崎藤村『芽生』を登録する。校正は菅野朋子さんです。(AG)



2000年7月7日
 紅邪鬼さんが入力された
国木田独歩『少年の悲哀』(新字・新仮名)を登録する。校正は鈴木厚司さんです。(AG)



2000年7月6日
 網迫さんが入力された
岡本綺堂『半七捕物帳 熊の死骸』『半七捕物帳 雪達磨』を登録する。校正はおのしげひこさんです。(AG)



2000年7月5日
 紅邪鬼さんが入力された
国木田独歩『窮死』を登録する。校正は鈴木厚司さんです。(AG)



2000年7月4日
 柴田卓治さんが入力された
夢野久作『奥様探偵術』『卵』『人の顔』『夫人探索』を登録する。校正は江村秀之さんです。(AG)



2000年7月3日
 大野裕さんが入力された
黒島伝治『電報』『豚群』を登録する。校正ははやしだかずこさんです。(AG)



2000年7月1日
 古村充さんが入力された
夏目漱石『三四郎』を登録する。校正はかとうかおりさんです。(AG)



2000年6月30日
 小林繁雄さんが入力された
三遊亭圓朝著、鈴木行三校訂『根岸お行の松 因果塚の由来』を登録する。校正はかとうかおりさんです。(AG)



2000年6月29日
 tatsukiさんが入力された
佐々木味津三『旗本退屈男 第三話 後の旗本退屈男』『旗本退屈男 第四話 京へ上った退屈男』を登録する。校正はM.A Hasegawaさんです。(AG)



2000年6月28日
 大野晋さんが入力された
佐々木味津三『旗本退屈男 第一話 旗本退屈男』『旗本退屈男 第二話 続旗本退屈男』を登録する。校正は皆森もなみさんです。(AG)



2000年6月27日
 林田清明さんが入力された
國木田獨歩『空知川の岸辺』を登録する。校正は大西敦子さんです。(AG)



2000年6月26日
早見秋さんの、
『レズビアン・ライフ』『十八歳のモノローグ』『装飾の性』を登録する。
『レズビアン・ライフ』と『十八歳のモノローグ』は、人を思う気持ちが、一方通行ではないと知る安心、求める人と、肌をふれ合うことのぬくもりを描いた作品だ。私たちの誰もが、惹かれ合う者同士、寄り添うことの喜びを知っている。だが、異性を求める者が体験せずにおわる困難と逡巡と不安に、同性に惹かれる者はさらされる。そのことが、普遍的な人を恋うる心の輪郭を際だたせ、ここに、鮮やかな表現を成立させていると思う。
あるがままの自分を受け入れてこそ開ける世界への、『装飾の性』は避けることのできない、大切なステップだったのではないか。勝手な思いだが、読み終えて私には、三作が一つに見えた。(倫)



2000年6月24日
 「随筆計画2000」より、増元弘信さんが入力された
島崎藤村『路傍の雑草』を登録する。校正は浦田伴俊さんです。(AG)



2000年6月23日
 久保あきらさんが入力された
徳田秋声『あらくれ』を登録する。校正は湯地光弘さんです。(AG)



2000年6月22日
 「随筆計画2000」より、渡邉つよしさんが入力された
與謝野晶子『台風』を登録する。校正は浦田伴俊さんです。(AG)



2000年6月21日
 柴田卓治さんが入力された
夢野久作『笑う唖女』を登録する。校正は小林繁雄さんです。(AG)



2000年6月20日
 柴田卓治さんが入力された
太宰治『惜別』を登録する。校正は青木直子さんです。(AG)



2000年6月19日
 大野晋さんが入力された
伊藤左千夫『浜菊』を登録する。校正は大西敦子さんです。(AG)



2000年6月17日
 柴田卓治さんが入力された
夢野久作『鉄鎚』を登録する。校正は久保あきらさんです。(AG)



2000年6月16日
 tatsukiさんが入力された
岡本綺堂『両国の秋』を登録する。校正はかとうかおりさんです。(AG)



2000年6月15日
 tatsukiさんが入力された
岡本綺堂『箕輪心中』を登録する。校正はかとうかおりさんです。(AG)



2000年6月14日
 tatsukiさんが入力された
岡本綺堂『鳥辺山心中』を登録する。校正はかとうかおりさんです。(AG)



2000年6月13日
 霊鷲類子さんと宮脇叔恵さんが入力された
吉行エイスケ『大阪万華鏡』『女百貨店』『地図に出てくる男女』を登録する。校正は大野晋さんです。(AG)



2000年6月12日
 tatsukiさんが入力された
岡本綺堂『籠釣瓶』を登録する。校正はかとうかおりさんです。(AG)



2000年6月10日
 tatsukiさんが入力された
岡本綺堂『心中浪華の春雨』を登録する。校正はかとうかおりさんです。

 この作品で青空文庫の登録作品が1000冊を数えました。まだ青空文庫のデータベース化が完了していないので、このカウントも果たして合っているのかどうか疑問ですが、一応目安として1000冊に限りなく近いと思います。ありきたりな言葉ですが、これも一重に入力、校正をしてくださった方々、そして色々な形で協力をしていただいた方々のおかげだと思っています。今後、このような「青空文庫」の試みが、どれだけ世間一般に認められて行くのかわかりませんが、「著作権が切れたものはみんなのもの」を基本に、末永く活動を続けて行きたいと思います。(AG)



2000年6月9日
 柴田卓治さんが入力された
夢野久作『怪夢』を登録する。校正はしずさんです。(AG)



2000年6月8日
 tatsukiさんが入力された
グスタアフ・ヰイド著、森鴎外(森林太郎)訳『尼』を登録する。校正ははやしだかずこさんです。(AG)



2000年6月7日
 霊鷲類子さんと宮脇叔恵さんが入力された
吉行エイスケ『職業婦人気質』『新種族ノラ』『戦争のファンタジイ』『飛行機から墜ちるまで』を登録する。校正は大野晋さんです。(AG)



2000年6月6日
 柴田卓治さんが入力された
太宰治『鉄面皮』を登録する。校正ははやしだかずこさんです。(AG)



2000年6月5日
 tatsukiさんが入力された
佐々木味津三『右門捕物帖 開運女人地蔵』を登録する。校正は福地博文さんです。(AG)



2000年6月3日
 「随筆計画2000」より、渡邉つよしさんが入力された
岡本かの子『五月の朝の花』『慈悲』、ゆきこさんが入力された大杉栄『遺言』、砂場清隆さんが入力された石川啄木『氷屋の旗』を登録する。校正はすべて菅野朋子さんです。(AG)



2000年6月2日
 大野晋さんが入力された
伊藤左千夫『奈々子』を登録する。校正は大西敦子さんです。(AG)



2000年6月1日
 もりみつじゅんじさんの発案により始まった「随筆計画2000」より、もりみつじゅんじさん自身が入力された
岡本かの子『愚なる(?!)母の散文詩』堺利彦『私の母』福田英子『母となる』与謝野晶子『産褥の記』を登録する。校正は菅野朋子さんです。「随筆計画2000」についての詳しい内容は、2月8日付けのそらもようをどうぞ。

 今回から、縦書き表示のファイルとしてボイジャー社の「.book(ドットブック)」を使用しました。この「.book」を表示させるには、T-Time Plugのインストール、及びApple社のQuickTimeが必要です。表示させる際にJavaScriptを使用していますので、Internet Explorer、NetScapeともバージョン4.0以上で、そして「JavaScript有効」をチェックしてご覧下さい。また、表示させた「.book」ファイルをダウンロードする方法は、こちらのページを参考にしてください。(AG)



2000年5月31日
 Sinさんが入力された
幸田露伴『幻談』を登録する。校正は伊藤時也さんです。(AG)



2000年5月30日
 大野晋さんが入力された
田中貢太郎『義人の姿』『猫の踊』『宝蔵の短刀』『村の怪談』『幽霊の自筆』を登録する。校正は地田尚さんです。(AG)



2000年5月29日
 鈴木厚司さんが入力された
九鬼周造『「いき」の構造』を登録する。校正は鈴木厚司さん本人とかとうかおりさんです。(AG)



2000年5月28日
青空文庫のデータベース化を進めたいと考えている。
入力に関する問い合わせに誤りなく迅速に応え、さまざまなデータ利用の可能性を開き、毎日の更新の負担を抑えるのが狙いだ。
仕様を決めたあと、運用開始に至るまでには、システムを組み、大量のデータを入力していかなければならない。こうした作業の一部は、対価を支払って進めてもよいのではないかと考えている。

いくつかの企業の支援を受けて、青空文庫には今、お金が入ってきている。そのお金を、我々は作業に使うことを検討しはじめている。
こうした新しい段階に踏み込むのなら、青空文庫の財政基盤は今、どうなっているのか、事前に包括的な説明をしておきたいと考えた。
私たちはトヨタ財団から研究助成を受けていると繰り返し報告してきたが、公表している
「会計報告」には、その分を組み込んでいない。なぜこれを切り離し、どんな使い方をしてきたかも、お話ししたいと思う。
「青空文庫のしくみ」を書き換え、ここで財政基盤に関する包括的な説明を試みた。関心のある方は、目をとおしていただきたい。かなり突っ込んだ事情や心情にも触れている。苦い固まりを、突然口に放り込まれたように感じられるかもしれない。嫌なものを見せられたと、不快に思われる可能性がある点は、あらかじめお断りしておきたい。(倫)



2000年5月27日
森野光さんの
『トラベルメイト95・トラベルメイト98』『片山くんが行く』『田森くんは西へ』を登録する。
森野光さんに代表される執筆陣は、30年近くを旅行業界で過ごしてきた人々。30年前といえば、「海外旅行」という言葉に、まだ独特のオーラが漂っていた時代だ。旅行者の数も、現在とは比べものにならないほどわずかだったその頃、森野さんたちは、海外格安航空券を扱う会社をスタートした。そして今に至るまで、お金はなくとも、自分の目で地球上のあちこちを見てやろう、という人々の意欲を支え続けてきたのである。
『トラベルメイト95・トラベルメイト98』は、その経験をもとにして書かれたトラベルガイドである。経験に裏打ちされた記述は、旅をことさらに美化するのでもなく、いたずらに警戒心を煽ることもなく、淡々としていて力強い。
『片山くんが行く』『田森くんは西へ』は、バブルの時代を迎え、誰もが気軽に海外旅行に出かけるようになるはるか以前、1970年代初頭に海外に出かけていった若者たちの、旅の記録である。卒業旅行という言葉が目新しくなくなってから、何年経つだろうか。そんな言葉が生まれるなどとは、日本人の誰もが考えてもみなかった時代、若者たちは、やはり海外へと引き寄せられていったのだ。
旅好きの読者には、格好のガイドとなり、共感を呼ぶ読み物となるだろう。旅に出かけるには忙しすぎるとぼやいておられるみなさんにも、日常生活からしばし離れ、文字を追って旅をする楽しみを味わっていただければ幸いである。(LC)



2000年5月25日
 柴田卓治さんが入力された
夢野久作『巡査辞職』を登録する。校正は小林繁雄さんです。(AG)



2000年5月24日
 tatsukiさんが入力された
佐々木味津三『右門捕物帖 達磨を好く遊女』を登録する。校正はJukiさんです。(AG)



2000年5月23日
 tatsukiさんが入力された
佐々木味津三『右門捕物帖 卒塔婆を祭った米びつ』『右門捕物帖 献上博多人形』を登録する。校正はkazuishiさんです。(AG)



2000年5月22日
 柴田卓治さんが入力された
夢野久作『押絵の奇蹟』を登録する。校正はおのしげひこさんです。(AG)



2000年5月20日
文書の小規模な改訂について、二件。
入力していただいたファイルに、半角のスペースや記号、句読点が紛れ込むケースがふえている。Windows、MSIMEの設定に起因するこの問題を回避するために、「工作員マニュアル」の「2.入力-1」に、二箇所、文言を追加した。(■入力の実際、(1)レイアウト関連、
【行頭の字下げ】。(3)数字と記号、【記号】)思い当たる方は参考にしてほしい。
加えて、「青空文庫早わかり」、「自分の作品を登録する」に、長くお待たせしている旨の言い訳を入れた。自作の登録申し入れに、なかなか対応できないでいる。(倫)



2000年5月20日
 紅邪鬼さんが入力された
島崎藤村『刺繍』を登録する。校正は菅野朋子さんです。(AG)



2000年5月19日
 柴田卓治さんが入力された夢野久作『
ビルディング縊死体月蝕微笑』を登録する。校正はしずさんです。(AG)



2000年5月18日
 柴田卓治さんが入力された
夢野久作(三鳥山人)『豚吉とヒョロ子』を登録する。校正は江村秀之さんです。(AG)



2000年5月17日
 柴田卓治さんが入力された
夢野久作(かぐつちみどり)『オシャベリ姫』夢野久作(とだけんさくぐわ)『ルルとミミ』を登録する。校正は江村秀之さんです。(AG)



2000年5月16日
 伊藤弘道さんが入力された
森鴎外『妄想』を登録する。校正は伊藤時也さんです。(AG)



2000年5月15日
 大野晋さんが入力された
有島武郎『星座』を登録する。校正は地田尚さんです。(AG)



2000年5月14日
和井府清十郎さんから、
「綺堂事物」開設のお知らせをいただいた。
さっそく開いてみると、年譜から作品リスト、綺堂物の公演情報、人となりの紹介から綺堂論と、氏の世界を広く見渡した、岡本綺堂総合案内的な仕立てである。「ありゃ、先を越された!」と、嘆く声が聞こえてきそうだ。
これまで文庫では、半七捕物帳シリーズの図書カードから、大久保友博さんによる「半七捕物帖 執筆順リンク」と、ぷんきゅのちちさんによる「半七捕物帳の世界」にリンクを張ってきたが、「綺堂事物」も当然見逃せない。さっそくお願いして、全作の図書カードからリンクを張らせてもらった。
同ページの「シャーロック・ホームズを江戸へ」には、「文芸倶楽部」1927(昭和2)年8月号に載った、綺堂による『半七捕物帳の思い出』が掲載されている。現在、tatsukiさんが入力にかかってくれている『綺堂むかし語り』(光文社時代小説文庫)では、これが『捕物帳の成り立ち』と題され、「サンデー毎日」に載った『半七紹介状』と合わせて『回想・半七捕物帳』としてまとめられている。
まずは「綺堂事物」で実録風の『…思い出』を読み、作品の仕立てをなぞった『回想…』は、『綺堂むかし語り』の登録を待たれたい。(倫)



2000年5月13日
すでに登録済みだったにもかかわらず、
『源氏物語』の【螢】【常夏】【篝火】【野分】【行幸】【藤袴】【真木柱】【梅が枝】【藤のうら葉】【若菜(上)】【若菜(下)】【柏木】が読めなくなっていた。ファイルをアップし直し、同作品の目次ページから開けるように整えた。
これまで『源氏物語』の図書カードを開いてこられた方、入力と校正にあたられた方にお詫び申し上げます。(倫)



2000年5月13日
島田一郎さんの
『旅 八十歳と出かけたスペイン旅行、あるいは「我が道」の歩き方』を登録する。
八十歳になる御母堂と、島田さん、娘さんの三人で参加したスペイン、フランス観光ツアーの折節に浮かんだ思いを、率直な筆致で綴った作品。「私にとっての国際化は、国内の自分をそのまま待ち出すこと」とする島田さんの思いを軸に、言葉の壁をこえた触れあいのぬくもりと、仕立てられた旅の在りようへのいらだちが織りなされていく。
『随想 橡の木の葉』『自伝抄録・祖父の肖像』に続く、文庫登録三作目。前二作同様、参加資格に50歳以上を求めるメーリングリスト、「散歩者の夢想」への連載をまとめたものだ。(倫)



2000年5月12日
マルチン・ルター著、結城浩訳
『マルチン・ルターの小信仰問答書』を登録する。
宗教改革の旗を掲げたルターが、誰に向けて、何を訴えようとして本書を著したか、結城さんは図書カードに、ていねいな解説を寄せてくださった。これを手がかりに、本書の歴史的な像を思い浮かべながら、ページを追ってもらえると思う。
結城さんの解説に、あえて一言付け加えるとすれば、ルターの宗教改革は、革新的なメディアの新技術を活かした試みでもあった点だろう。1450年代のはじめに、ドイツ、マインツの金細工師、ヨハネス・グーテンベルクは、活版印刷の技術をまとめ上げた。同じ文書を大量に複製し、世に訴えかける可能性が、ここから開けていく。
結城さんの解説にある、ルターの「95カ条にのぼる抗議文」は、印刷されてドイツ各地に配布され、時の教会権威に異を唱えるメッセージが広がっていった。学者や修道士だけが能くするラテン語による聖書を、民衆の言葉であるドイツ語に訳す試み。「一般の民衆、特にあまり教育を受けていない人向けに」、「キリスト教の教義のエッセンスを」伝えようとする本書執筆の動機も、活版印刷が育てた「声は広く届けられる」という確信に支えられていると思う。

同じく結城さん訳の、『賢者の贈り物』『最後の一枚の葉』(オー・ヘンリー著)に続いて、文庫登録三作目となる本訳稿も、プロジェクト杉田玄白の正式参加作品である。この試みを主宰する山形浩生さんを、私が青空文庫の恩人として勝手にあがめる理由はこちら。文庫の意義を一段掘り下げたと思う、「収録ファイルの取り扱い規準」のとりまとめに、あの時点で着手できたのは、個人的には山形さんの批判が効いたと感じたからだ。その他、プロジェクト杉田玄白への、共感のメッセージはこちらこちらなど。(倫)



2000年5月11日
 tatsukiさんが入力された
アルベエル・サマン著、森鴎外(森林太郎)訳『クサンチス』を登録する。校正は小林繁雄さんです。(AG)



2000年5月10日
 小林繁雄さんが入力された
三遊亭圓朝著、鈴木行三校訂『闇夜の梅』を登録する。校正はかとうかおりさんです。(AG)



2000年5月9日
 小林繁雄さんが入力された
三遊亭圓朝著、鈴木行三校訂『政談月の鏡』を登録する。校正はかとうかおりさんです。(AG)



2000年5月8日
 小林繁雄さんが入力された
三遊亭圓朝著、鈴木行三校訂『文七元結』を登録する。校正はかとうかおりさんです。(AG)



2000年5月6日
 柴田卓治さんが入力された
夢野久作『猟奇歌』を登録する。校正は久保あきらさんです。(AG)



2000年5月5日
 tatsukiさんが入力された
ライネル・マリア・リルケ著、森鴎外(森林太郎)訳『駆落』『老人』を登録する。校正は小林繁雄さんです。(AG)



2000年5月4日
 長住由生さんが入力された
二葉亭四迷『予が半生の懺悔』『余が翻訳の標準』『私は懐疑派だ』を登録する。校正はもりみつじゅんじさんです。(AG)



2000年5月3日
 西田さんが入力された
太宰治『火の鳥』(新字・旧仮名)を登録する。校正は山本奈津恵さんです。(AG)



2000年5月2日
 柴田卓治さんが入力された
太宰治『禁酒の心』『黄村先生言行録』を登録する。校正はしずさんです。(AG)



2000年5月1日
冬佳彰(ふゆよしあき)さんの
『水底(みなそこ)の星々』を登録する。
岡っ引きの手先をつとめる青年が、親の敵の夜盗を追う、江戸に舞台をとった物語である。

ぷんきゅのちちさんによる「半七捕物帳の世界」には、「江戸時代の警察制度」の解説がある。半七親分は、岡っ引。その下に付くのが、手先と呼ばれる聞き込みや下調べにあたる手下で、この作品の主人公がつとめる下っ引は、そのさらに下に付く。
そもそも岡っ引き自体が、役人の私的な使用人であり、公の存在ではない。その私人が、犯罪捜査にかかわって、権力を振るう。役人から受け取る給金はごくわずかで、女郎屋から金を吸い上げ、大店から付け届けを受けて、手先を抱える。金で、犯罪のもみ消しに動く者もある。半七親分は例外として、庶民にとって彼らは、胡散臭い存 在だったらしい。さらにそれが、手先、下っ引と下れば、評判はますます悪くなる。
人に疎まれ、乾いた暴力に身をさらしながら、青春の闇と格闘する、半七や右門のそれとは全く異なった捕り物の世界がここにある。

およそ20年ほど前のことだ。敬愛する児童文学者のUさんを囲む場の、末席に連なった。Uさんは、明らかに現代に迫ろうとしたいくつかの作品で、〈昔〉に舞台を借りている。なぜ〈昔〉なのかが、その時、話題に上った。
「児童文学を選んだUさんには、どこかに希望を見いだしたいという心の底からの願いがある。ところが現代には、その希望の置き場所がどうにも見つけられない。置きようのない希望をそれでも置こうとして、Uさんがたどり着いたのが、〈ちょんまげ〉の世界だったのではないか―」
作者を前に臆面もなくそうまくし立てて、苦笑された記憶が残っている。

自分の時代には置けない何かを〈過去〉に置いてみて、結果として、描きたかった世界がうまく描ければ、それで良いのではないか。
Uさんの作品を読んでいた頃はきっと、ぼんやりとそう感じていたのだと思う。
だが、遠くを望むとき、自覚的にせよ無自覚にせよ、書き手は少しだけ目を薄くするだろう。
止むに止まれぬ動機から発していたとしても、それは「認識の解像度を落とし、少しだけ美しすぎたり、少しすさまじすぎたりする物語を見ようとする」、要するに〈逃げ〉なのではないか。
後に、明治をことさらに立派に描こうとする、ある作家の一連の作品を読み進むうちに、そんなふうに決めつける偏見が、私の中には育っていった。
時代物一般に、まず眉に唾をつけてかかるような、嫌な癖が付いた。

『水底の星々』には、ところが、そんな嫌らしい目で見ても、一切の曇りがない。
主人公の像を脳裏に描き、どこまで視点を近づけてみても、粗雑に流れる細部が見つからない。
丹念な、丁寧な、巧みなわざで描かれるのは、成熟に向かおうとする人が乗り切らざるを得ない、青春と称されることのある、熱く暗い混沌である。
作り物の匂いからあくまで遠いこの物語に引き込まれながら、ただ一つわからなかったのは、作者が江戸を選んだ理由だ。
ここまで書く気で、それでも作者にとって〈昔〉が必要だったのだろうか?
いや、これほどのものを受け取った後だ。
どこに舞台をとっても、冬さんにはここまで書けるという、それで良いのだろう。

青空文庫にかかわって、自分にとって大切な作家を何人も得た。
読む機会のなかった古典と出合い、同時代の書き手の作に巡り合った。
冬さんのサイトには、他にもいくつもの作品が読み手を待っている。
これもまた、青空文庫の与えてくれた恵み。(倫)



2000年5月1日
 tatsukiさんが入力された
グスタアフ・ヰイド著、森鴎外(森林太郎)訳『薔薇』を登録する。校正は小林繁雄さんです。(AG)



2000年4月29日
 鈴木厚司さんが入力された
有島武郎『僕の帽子のお話』を登録する。校正は石川友子さんです。(AG)



2000年4月28日
 柴田卓治さんが入力された
夢野久作(杉山萠圓)『東京人の堕落時代』を登録する。校正はかとうかおりさんです。(AG)



2000年4月27日
 柴田卓治さんが入力された
太宰治『一燈』『失敗園』『リイズ』を登録する。校正は渥美浩子さんです。(AG)



2000年4月26日
青空文庫メーリングリストのしくみを用意した。
自分の手で青空文庫を耕そうとする人に、円滑に作業を進めてもらいたい。
より自由に連携してほしいし、新しいアイデアの実現に向けて、準備と実行の前面に立ってももらいたいと考えてのことだ。

参加者は、「文庫を耕す人」を想定している。
青空工作員、呼びかけ人、作品を登録している〈青空作家〉、ファイルのフォーマット変換などを通じて利用の裾野を広げている〈青空拡張員〉、彼らを総称して、とりあえず〈青空耕作員〉と呼ぼう。
この耕作員の内、希望する人に参加してもらいたい。
準備を進めてきた側としてはもちろん、できる限り多くの耕作員、できるなら全員に集まってほしい。

目的としては、当面つぎの四つを掲げようと思う。
・青空文庫の作業上の問題を見きわめて、対処方針を論議し、対処案をまとめる。
・問うことと応えることを通じて、知識の共有を目指す。
・助力を求め、応えられるなら手をさしのべて、さまざまな協力関係を築く。
・新しい企画を立て、実現のためのしくみを作る。
話し合いのテーマは、必要に応じて広げればいいし、「作業の話だけに限る」と目くじらを立てる必要はないだろう。「実務中心」を頭に置いて、後は自由に使い、活発に声の響きあう、元気な場に育てたい。

「青空文庫早わかり」に、
「青空文庫メーリングリストに参加する」という項目を設け、そこからリンクした「青空文庫メーリングリストのしくみ」に、目的と進め方、参加手続きの詳細を示した。
耕作員、お一人お一人の名を思い浮かべながら、心より参集を乞う。(倫)



2000年4月25日
 柴田卓治さんが入力された
夢野久作(杉山萠圓)『街頭から見た新東京の裏面』を登録する。校正はかとうかおりさんです。(AG)



2000年4月24日
 akiさんが入力された
太宰治『新釈諸国噺』を登録する。校正は久保あきらさんです。(AG)



2000年4月22日
 tatsukiさんが入力された
佐々木味津三『右門捕物帖 七化け役者』『右門捕物帖 へび使い小町』を登録する。校正はM.A Hasegawaさんです。(AG)



2000年4月21日
山海空悠丸さんの翻訳で、
『モウグリの兄弟たち』を登録する。
子どもの頃、ジャングルの動物たちを主人公にした物語を夢中になって読んだ経験は、誰しもあるのではないだろうか。『モウグリの兄弟たち』の原作は、『ジャングル・ブック』。子どもの頃にこの物語を読んだときは、誰もが、ジャングルやそこに住む動物たち、さらには狼に育てられた少年の物珍しさに惹かれて読んだのではないかと思う。そして、物珍しさだけが印象に残っているかもしれない。
『ジャングル・ブック』の冒頭の部分である『モウグリの兄弟たち』では、モウグリがジャングルの掟に従って狼の群に受け入れられ、そして、ふたたび掟に従って、ジャングルを後にするまでが描かれている。改めて読めば、『ジャングル・ブック』という作品は、決して物珍しいだけの物語ではない。人間として生まれ、狼に育てられ、そしてまた人間としてのアイデンティティを探そうとする少年モウグリの成長物語なのだ。
山海空悠丸さんは、この作品の出典を、あまりにもよく知られている『ジャングル・ブック』という表記にするかどうかで悩んだそうだ。「物珍しさにひかれて読んだ子ども向けの作品」のイメージを引きずるのをおそれてのことだという。しかし、そんな心配は無用なのではないか。むしろ、同じ表記にすることによって、今この作品を読んでいる読者が、かつての自分との距離を測るよすがとなるのではないだろうか。
タイトルは、内容を象徴するものではある。しかし、読んでみて、そこから何をくみ取るかは、タイトルではなく、内容に語らせるべきものだろう。タイトルだけを見て、読まずにわかったつもりになるのはもったいない。本は、読んでみないことには始まらないのだから。
『モウグリの兄弟たち』を読んで何を感じるかは、読者一人一人の心に委ねられている。モウグリと共に、〈ヒト〉として生きることの意味を考えてみるのも、悪くない。(LC)



2000年4月20日
 tatsukiさんが入力された
佐々木味津三『右門捕物帖 子持ちすずり』『右門捕物帖 千柿の鍔』『右門捕物帖 血の降るへや』を登録する。校正ははやしだかずこさんです。(AG)



2000年4月19日
 柴田卓治さんが入力された
太宰治『たずねびと』『男女同権』『メリイクリスマス』太宰治(黒木舜平)『断崖の錯覚』を登録する。校正は石川友子さんです。(AG)



2000年4月18日
 小林繁雄さんが入力された
三遊亭圓朝、鈴木行三校訂『真景累ヶ淵』を登録する。校正はかとうかおりさんです。(AG)



2000年4月17日
 tatsukiさんが入力された
佐々木味津三『右門捕物帖 のろいのわら人形』を登録する。校正は小林繁雄さんです。(AG)



2000年4月15日
 田代信行さんが入力された
宮沢賢治『さいかち淵』と佐野良二さんが入力された芥川龍之介『戯作三昧』(新字・新仮名)を登録する。校正は両作品とも伊藤時也さんです。(AG)



2000年4月14日
 tatsukiさんが入力された
佐々木味津三『右門捕物帖 お蘭しごきの秘密』『右門捕物帖 やまがら美人影絵』を登録する。校正はkazuishiさんです。(AG)



2000年4月13日
 柴田卓治さんが入力された
太宰治『小さいアルバム』『花火』を登録する。校正は夏海さんです。(AG)



2000年4月12日
 tatsukiさんが入力された
佐々木味津三『右門捕物帖 妻恋坂の怪』を登録する。校正はしずさんです。(AG)



2000年4月11日
 柴田卓治さんが入力された
夏目漱石『文芸の哲学的基礎』を登録する。校正は大野晋さんです。(AG)



2000年4月10日
 tatsukiさんが入力された
佐々木味津三『右門捕物帖 卍のいれずみ』を登録する。校正はJukiさんです。(AG)



2000年4月8日
 tatsukiさんが入力された
佐々木味津三『右門捕物帖 幽霊水』を登録する。校正は小林繁雄さんです。(AG)



2000年4月7日
 柴田卓治さんが入力された
太宰治『苦悩の年鑑』『チャンス』『未帰還の友に』を登録する。校正はmiyakoさんです。(AG)



2000年4月4日
 柴田卓治さんが入力された
夢野久作(香倶土三鳥)『雨ふり坊主・先生の眼玉に・奇妙な遠眼鏡』を登録する。校正はもりみつじゅんじさんです。(AG)



2000年4月1日
 柴田卓治さんが入力された
太宰治『風の便り』『十二月八日』『水仙』『律子と貞子』を登録する。校正は高橋真也さんです。(AG)



2000年3月30日
 tatsukiさんが入力された
岡本綺堂『玉藻の前』を登録する。校正は小林繁雄さんです。(AG)



2000年3月29日
 大野晋さんが入力された
海野十三『第五氷河期』を登録する。校正は鈴木伸吾さんです。(AG)



2000年3月27日
 柴田卓治さんが入力された
太宰治『誰』『恥』を登録する。校正はもりみつじゅんじさんです。(AG)



2000年3月24日
西府章さんの『対州風聞書』を登録する。
対州とは、対馬の国の別称。朝鮮半島と九州のあいだに位置するこの島で起こった「不可思議な事件の報告書」が、タイトルの謂である。
本作を開いた読者はやがて、さまざまな文化の潮が行き交う島に配置された異物一つが、時の流れの中に、怪奇と悲劇の色を帯びた英雄譚を幾重にもこだまさせるのに気付くだろう。近未来に起こる事件の一部始終を読み終えた後も、七百数十年前のドラマの主人公や、やがて再び舞台に引きずり出されるはずの、次の登場人物の命運を思って心の幕が下りきらない。広がりが想像を誘い、空白が余韻を響かせる。盤石の構成と、大地に基礎をえぐり込む鉄壁の細部。たとえ職業としてたくさん書いたとしても、これほどの〈成功〉は滅多に得られるものではないと思う。
小松左京が『日本沈没』で書きたかったのは、生きる空間を失って世界に四散した日本人の、その後の命運だったという。だから本来は、列島が沈没したところから物語をスタートさせても良かった。それが結果的には、プロローグの〈沈むまで〉で、息が切れた。
SFを物しようと志す者は誰も、仕立てを書き込むことに、強烈に誘惑される。だが、実にしばしば、膨れ上がった設定は書き手の足場をふらつかせ、物語を破綻へと誘い込む。〈置き去りにされた透明な黒船〉というテーマを与えられた書き手は、先ず間違いなく〈黒船〉を細密に描くことに熱中するだろう。その誘惑を断ち切り、西府さんは小さな空間に、異物を異物のままに閉じこめた。科学の有り様と、人の心を描くという二本の軸足を最後まで微動もさせず、歴史の時間軸に鏡像のような劇を浮かび上がらせるという妙技は、この抑制こそが生んだのだと思う。
ついに結末を迎えられなかったSFもどきを、何本か引き出しの奥にしまい込んでいる我が身故に、本作を読み終えた後は「この手があったのか!」と強烈な嫉妬を覚えた。
いずれこの作品は、広く知られるに違いない。微力ながら青空文庫もそのお手伝いをさせていただけることを、ありがたく思う。(倫)



2000年3月23日
 H・大野さんが入力された
島崎藤村『新生』を登録する。校正はかとうかおりさんです。(AG)



2000年3月22日
 大野裕さんが入力された
黒島伝治『渦巻ける烏の群』を登録する。校正はJukiさんです。(AG)



2000年3月21日
 柴田卓治さんが入力された
太宰治『親という二字』『薄明』『やんぬる哉』を登録する。校正はゆうこさんです。(AG)



2000年3月18日
 小林繁雄さんが入力された
織田作之助『青春の逆説』を登録する。校正は伊藤時也さんです。(AG)



2000年3月17日
『鳩よ!』編集部から、「江戸っ子ホラー作家・岡本綺堂」の特集を組んだ4月号が送られてきた。書店には、本日から並ぶらしい。
tatsukiさんをはじめとする工作員各位のお働きを得て、文庫には『半七捕物帳』シリーズがそろってきた。先日は大久保友博さんの
「半七捕物帳 執筆順リンク」が朝日新聞で紹介され、ぷんきゅのちちさんによる「半七捕物帳の世界」とも連携が始まって、ここのところなんだか綺堂熱が高い。『玉藻の前』『修禅寺物語』が校正中。『江戸情話集』『中国怪奇小説集』が校正待ち。『三浦老人昔話』『綺堂むかし語り』の入力も数日前から始まり、先日は、半七物以外としてはじめて、『ゆず湯』を登録できた。
このテキストはもともと、『鳩よ!』編集部が、綺堂特集のために用意したものだ。同誌編集長の喜入冬子さんが青空文庫を面白がって、提供を申し入れてくれた。同号には、歌田明弘さんが「ルポ 絶版のない文庫 青空文庫で綺堂を読む 綺堂を載せる」という記事も書いてくれている。
歌田さん、喜入さんとお目にかかった日は、心がすっかり内向きになっていて、憑かれたように泣き言を並べたと記憶している。驚かせたと思う。その印が、歌田さんの原稿にも少し見える。だが、きっと大丈夫だ。「抱え込まず、開こう」とする賢明な試みが、呼びかけ人の中から生まれつつある。それについて行けばいい。綺堂の輪の広がりも、すべてはこれ、他力の業である(倫)



2000年3月17日
 小林繁雄さんが入力された
織田作之助『世相』『放浪』を登録する。校正は伊藤時也さんです。(AG)



2000年3月16日
山本洋さんの
『窓の外』『メロディー』を登録する。
「インターネットに繋がったパソコンがあれば、自分の作品を広く人に示す可能性が開ける―」そんな言いぐさも、確かに嘘ではないだろう。だがその気になって一歩この場に踏み込むと、聞かないとなったらてこでも言うことを聞かないコンピューターの無理解を前にして、何度となく途方にくれることになる。本作品は、確かにただのHTMLファイルではあるが、これをここまでもってくるまでに、山本さんには長い苦難の道を堪え忍んでいただくことになった。
紙の上から、インターネットにも広がりはじめた山本さんの世界が、ここで豊かに育っていくことを願ってやまない。(倫)



2000年3月16日
 寺澤昌子さんが入力された
田中英光『さようなら』を登録する。校正は伊藤時也さんです。(AG)



2000年3月15日
 紅邪鬼さんが入力された
島崎藤村『岩石の間』を登録する。校正はしずさんです。(AG)



2000年3月14日
 2月17日に登録された
『松平維秋の仕事』に重大なミスがあった。巻頭の文章「渋谷道玄坂百軒店界隈」が「未発表原稿」ではなく「雑誌に掲載された文章」であったことだ。3月12日の深夜になって、さる人物を介して遺族のもとに掲載誌が届けられ、そのことがわかった。
 初出誌は、流行通信から発行されていた『INFAS』1985年4・5月号。現物はまだ見ていないが、「渋谷冒険物語」という特集の一部として掲載されたようである。遺品中に遺されていたのは生原稿のコピーで、そのためてっきり未発表と思いこんだ。うかつだった。
 早速、修正を加え、再アップロードした。ただし、文章の標題は現在のままとし、初出時の「ブラックホーク時代、'69―'79 at 百軒店」は使わなかった。 完全なものを手元に置いておきたいと思われる方は、お手数ながら、再度ダウンロードしてください。(楽)



2000年3月14日
 柴田卓治さんが入力された
太宰治『ろまん燈籠』を登録する。校正はkumiさんです。(AG)



2000年3月13日
 tatsukiさんが入力された
佐々木味津三『右門捕物帖 首つり五人男』『右門捕物帖 死人ぶろ』を登録する。校正はkazuishiさんです。(AG)



2000年3月11日
 小林徹さんが入力された
素木しづ『青白き夢』を登録する。校正はJukiさんです。(AG)



2000年3月10日
 tatsukiさんが入力された
岡本綺堂『半七捕物帳 正雪の絵馬』を登録する。校正はTomoko.Iさんです。(AG)



2000年3月9日
 野村裕介さんが入力された
山中貞雄『右門捕物帖 三十番手柄 帯解け仏法』を登録する。校正は伊藤時也さんです。この作品は、1932(昭和7)年9月8日に公開されたサイレント映画『右門捕物帖 三十番手柄 帯解け仏法』の脚本です。(AG)



2000年3月8日
 大野晋さんが入力された
海野十三『軍用鮫』『特許多腕人間方式』を登録する。校正は福地博文さんです。(AG)



2000年3月7日
 大野裕さんが入力された
葉山嘉樹『海に生くる人々』を登録する。校正はかとうかおりさんです。(AG)



2000年3月7日
朝日新聞「半七捕物帳なぞに挑む」からお越しくださった皆さん、ようこそ。岡本綺堂の作品リストは、
こちらに。作品名のクリックで、該当作品の図書カードが開きます。ちなみに半七シリーズの第一作は、『お文の魂』です。
大久保友博さんが作られた「半七捕物帳 執筆順リンク」。加えて、ぷんきゅのちちさんによる「半七捕物帳の世界」へもどうぞ。
作品の読み方は、「青空文庫早わかり」で、「どうすれば、作品が読めるのか。(作品を読む)」を参照してください。(倫)



2000年3月6日
 柴田卓治さんが入力された
夢野久作(海若藍平)『お菓子の大舞踏会』『キキリツツリ』『雪の塔』を登録する。校正はもりみつじゅんじさんです。(AG)



2000年3月4日
 鈴木厚司さんが入力された
有島武郎『カインの末裔』を登録する。校正は地田尚さんです。(AG)



2000年3月3日
 tatsukiさんが入力された
佐々木味津三『右門捕物帖 左刺しの匕首』を登録する。校正はM.A Hasegawaさんです。(AG)



2000年3月2日
山海空悠丸さんの翻訳で、
『まだらの紐をめぐる冒険』を登録する。
『清貧譚 英訳版』で太宰作品の英訳を提供して下さった山海空悠丸さんから、今回届いたのは、おなじみコナン・ドイルの、シャーロック・ホームズものの和訳である。
シャーロック・ホームズといえば、シャーロッキアンという名の示すとおり、熱狂的なファンの支持を集めている名探偵。その存在は既に探偵小説の主人公という範疇を超え、歴史的研究の対象にまでなっている。岡本綺堂の半七捕物帳シリーズにも影響を与えたということだ。何でも探し出す名探偵ということで、近頃は検索システムの名前にも登場した。
誰もが一度や二度はホームズ作品を読んだことがあるのではないかと思うが、私自身、子供の頃に初めて読んだ「推理小説」は、雑誌に掲載されていたホームズ作品。しかも『まだらの紐』だった。この作品をコンピュータの画面で読める日が来て、自分がその紹介文を書くことになるなんて、その時にはもちろん思いもよらなかったことだけれど。
青空文庫には既に、大久保友博さんの翻訳で、『赤毛連盟』『ボヘミアの醜聞』の二作が登録されている。これからも、「ドイルと自分との合作」でホームズを紹介しようという人が現れ、青空文庫で読めるホームズ作品がどんどん増えていけば、きっと楽しいに違いない。(LC)



2000年3月1日
 真先芳秋さんが入力された
有島武郎『或る女(後編)』を登録する。校正は地田尚さんです。この『或る女』の初版本に収められていた巻頭のホイットマン(Walt Whitman、1819〜1892)の詩と、あとがきである「書後」を校正者の地田さんがテキスト化して下さいました。そちらもご覧下さい。(AG)



2000年2月29日
弾射音(だん・しゃのん)さんの、
『太陽が山並に沈むとき』を登録する。 身悶えする都市のイメージを中核にすえて、壮大な潰乱の情景を脳裏に浮かび上がらせてくる作品。〈身悶えする都市〉は、比喩ではない。作中で、巨大な建物は身をよじり、軋み、うごめきながら崩れていく。
椎名誠『アドバード』に現れる戦闘樹、シダレカズラとセイヨウシナノキの殲滅戦。ジェイムズ・P・ホーガン『未来の二つの顔』における人工知能、スパルタクスと人間との死闘…。SFの言葉には何度か、決して眼にはうつることのない、超絶的なシーンを見せてもらった。野田昌宏御大の著作権表示付き箴言に、「SFは絵だねぇ」がある。大元帥は、イラストが喚起するイメージが、空想科学小説の楽しみのいかに大きな要素であるかを指してこうおっしゃるが、言葉からはっきりと絵の見える作品も、「これぞSF」である。(倫)



2000年2月28日
 紅邪鬼さんが入力された
島崎藤村『船』を登録する。校正はしずさんです。(AG)



2000年2月28日
岡本綺堂『半七捕物帳』シリーズの一部で、図書カードを修正した。
『お文の魂』『勘平の死』『お化け師匠』『半鐘の怪』『奥女中』『帯取りの池』『春の雪解』『広重と河獺』が変わっている。
これまで半七の図書カードには、大久保友博さんによる「半七捕物帳 執筆順リンク」への案内を置いてきた。加えて今回、〈ぷんきゅのちち〉さんによる「半七捕物帳の世界」にリンクした。空白となっていた図書カードの「作品について」には、「…世界」にあった粗筋紹介を使わせてもらい、より詳しい解説とも結んだ。
今回の半七リンク強化のきっかけとなったのは、一週間前の朝日新聞だ。「インターネットの図書館『青空文庫』」と題して清水弟さんが書いてくれた記事の最後に、「『半七捕物帳』が面白くて。」と載った。これを読んで、「半七のページを作っている。リンクしたい」と連絡があった。
互いの独立した試みが、呼応のチャンスを得て、手と手が伸びた。
今後、「…世界」にコメントが追加されるたびに、図書カードを書き換えていこうと思う。生まれ変わった図書カードから、あなたも半七親分の世界へどうぞ。(倫)



2000年2月27日
本日の朝日新聞(都内版)、「仲間がインターネット上で『全集』を製作。『松平維秋の仕事』」からお越しくださった皆さん、ようこそ。「松平維秋の仕事」収録の経緯は、
こちらへ
作品の読み方は、「青空文庫早わかり」で、「どうすれば、作品が読めるのか。(作品を読む)」を参照してください。(倫)



2000年2月26日
 大野晋さんが入力された
海野十三『幸運の黒子』を登録する。校正はしずさんです。(AG)



2000年2月25日
 小林繁雄さんが入力された
三遊亭圓朝著、鈴木行三校訂『後の業平文治』を登録する。校正はかとうかおりさんです。この『後の業平文治』は、すでに登録済みの『業平文治漂流奇談』の続編です。『業平文治漂流奇談』が登録された経緯は、1月18日のそらもようをどうぞ。(AG)



2000年2月24日
 tatsukiさんが入力された
佐々木味津三『右門捕物帖 朱彫りの花嫁』を登録する。校正は菅野朋子さんです。(AG)



2000年2月24日
昨日、尾崎紅葉の
『金色夜叉』が登録されました。
私たちが今、広く使っている漢字コード(JIS X 0208)にない文字が、この作品には山ほど出てきます。これを、登録されたこの形に持ってくるまでには、並大抵でない努力が必要でした。入力にあたられた柴田卓治さん、校正のかとうかおりさん、ファイル作成に奮闘された野口英司さんに、あらためて心からお礼を申し上げます。

以下、同作品中の外字処理について、一言。
新JIS漢字コード(JIS X 0213)原案に対して、青空文庫からコメントを提出する際、『金色夜叉』に関しては、新潮文庫『明治の文豪』に収められたファイルを作業対象として、調査しました。ですから、今回、外字として処理したものは、「文学作品に現れた外字」リストに拾ってあり、規格の策定にあたった「符号化文字集合調査研究委員会第2作業分科会」に報告ずみであるはずです。
ただし、青空文庫版『金色夜叉』を今回まとめるにあたっては、二つの漢字に対して『明治の文豪』版と異なった処理をほどこしました。
・『明治の文豪』版は、「罠」をこのまま「罠」(区点コード70-11)として処理しています。ただし、底本はあみがしらの下辺がないものを用いているようなので、青空文庫版では外字とし、その形で作字しました。(エキスパンドブック版911頁最下段)
あみがしらの下辺のない「罠」は、JIS X 0213の表中には見つけられませんでした。おそらく、収録されていないはずです。
・『明治の文豪』版は、[「日」の下に「咎」]に対して、補助漢字で区点位置34-39を与えられた、「咎」の「人」の部分を、「ト」とつくったものをあてています。ただし底本は、[「日」の下に「咎」]を用いているので、この形で作字しました。(エキスパンドブック版914頁4行目)
なお、この字はJIS X 0213に1-85-32として収められ、補助漢字とは異なる[「日」の下に「咎」]の形が例示されています。

青空文庫の掲示板「みずたまり」では、しばらく前から、新JIS漢字コードに関する話題がしばしば取り上げられています。先日制定されたこの規格が普及すれば、「青空文庫のファイルも、これに準拠して作ろう」と決心できるでしょう。そうなれば、今回外字として処理せざるを得なかったものの大半を、普通の文字として扱うことができます。その日をできるだけ早く迎えられるように、青空文庫としてやれることを考えていきたいと思っています。
(このコメントは、「みずたまり」に書き込んだものの再録です。
新JIS漢字コードに関しては、小形克宏さんの「文字の海、ビットの舟」が参考になると思います。)(倫)



2000年2月23日
 柴田卓治さんが入力された
尾崎紅葉『金色夜叉』を登録する。校正はかとうかおりさんです。(AG)



2000年2月22日
朝倉克彦さんの
『シャドウ・ワーク』を登録する。
図書カードに内容の紹介をお願いすると、「学校で何が起きているかを表現した」と、一言返ってきた。すべては作品に語らせればよい、というお気持ちなのだろう。そんな朝倉さんにとって、私の読後感など、お節介以外のなにものでもない。だが、野暮は承知で、この作品から受け取ったものの大きさを、示したい。一読後、朝倉さん宛にお送りしたメールの一節を、以下にコピーする。
『いくつもの時間の川を、いくつもの人の心が流れていく…。
川は、時には長く沿い、時にはほんのそこまで近づき合いながら、交わることはない。互いに、けっして理解し合うことのない人という存在の滑稽と哀しみを思いながら、語りに引き込まれていきました。
きわめて明確に掲げられたテーマとは少しずれたところで、人という存在に対する乾いた諦念が通奏低音として響いているように思えてなりません。
誤読でしょうが、私はそこに、強く惹かれました。』
エキスパンドブック版を用意した。これもまた、受け取ったものの大きさの証。(倫)



2000年2月22日
 小林徹さんが入力された
水野仙子『白い雌鷄の行方』を登録する。校正は柳沢成雄さんです。(AG)



2000年2月21日
 大野晋さんが入力された
海野十三『地球を狙う者』を登録する。校正はしずさんです。(AG)



2000年2月19日
 小林徹さんが入力された
南部修太郎『霧の夜に』『女盗』『ハルピンの一夜』を登録する。校正は柳沢成雄さんです。(AG)



2000年2月18日
 野村裕介さんが入力された
山中貞雄『陣中日誌・他三篇』(「陣中日誌」「五題」「気まま者の日記」「雑録 前進座に就いて」)を登録する。校正は伊藤時也さんです。(AG)



2000年2月17日
昨年10月に急逝した松平維秋(まつだいら・ただあき)が遺した作品のほぼ全体を網羅し た、
『松平維秋の仕事』を登録する。
著者が愛娘はるかさんのためにスクラップブックにまとめておいた作品を中心に、複数の 方々から提供された雑誌記事等を加えて編集した1冊である。生前、ペンネームで発表し た小説1作を除いて、彼はついに著書を公にする機会を得ることがなかった。青空文庫で なら元気だった頃にまとめることだってできたのにと後悔しつつの作業だったが、充実し た1冊になったと思う。
内容的には、音楽エッセイを集めた「音の旅の記録」、旅のエッセイを集めた「風の旅の 記録」の二部から構成。音楽については、著者の造詣深かったブリティッシュ・トラッド 関係のものを軸に、1970年代のシンガー・ソングライターたちについて書かれたものを多 数おさめた。旅のエッセイの中心はエアーニッポンの機内誌『私の青空』に連載されたも ので、各地の伝統的な味覚めぐりが楽しい。これに著者が晩年まで愛してやまなかった渓 流釣りのエッセイを加えた。
「粋」を好んで「野暮」を蔑み、何よりも物狂いの現代日本を嫌った著者の真骨頂にぜひ ふれていただきたい。かつて東京・渋谷百軒店にあった、そして彼がレコード係をつとめ たロック喫茶〈ブラック・ホーク〉に通った体験のある人には、エキスパンドブック版・ HTML版の表紙やタイトル写真からよみがえる思い出も数多くあることだろう。(楽)



2000年2月16日
岡本綺堂『ゆず湯』を登録する。入力と校正は、『鳩よ!』編集部。青空文庫の約束事をチェックした富田の名前を、校正者に加えさせてもらった。
今回、鳩が青空に舞うに至った経緯は、言い出しっぺの同誌編集長からどうぞ。

『マガジンハウスの文芸誌「鳩よ!」の喜入です。
今度、4月号(3月17日売り)で岡本綺堂の特集をします。企画途中で青空文庫のことを知り、特集で再録する「ゆず湯」という名作を登録すると同時に、その過程をルポとして特集記事にすることにしました。ルポは「マルチメディアの巨人」などを書いたデジタル・ライターの歌田明弘さんが書いてくれます。
大正〜昭和初期の大衆小説には、いまのゲーム世代の人が読んでも十分に面白いものがたくさんあります。岡本綺堂もその1人で、だから特集を組んだのですが、残念ながら「半七捕物帳」以外のものは、手に入れづらくなっています。青空文庫は、絶版になった優れた作品を、その作品を好きな人が中心となり、みんなで力を出し合ってデータ化し読めるようにする運動として注目しています。この特集を買ってくれる人は、きっと青空文庫の活動に興味を持って、読者や工作員になるだろうと思います。同時に「鳩よ!」の読者も増えるとうれしいですね。本を読む人、コンピュータにリテラシーを持つ人は、決して背反ではないでしょうから。
本を読む楽しみを文化として失わないように活動していきたいものです。よろしくお願いします。』

ちなみに『鳩よ!』は、『本の雑誌』や『噂の真相』と同じサイズの、文芸誌らしい文芸誌に生まれ変わっている。
歌田さんが青空文庫をどうさばいてくださるか、私自身も発売日が待ち遠しい。(倫)



2000年2月16日
 tatsukiさんが入力された
佐々木味津三『右門捕物帖 京人形大尽』『右門捕物帖 毒色のくちびる』を登録する。校正はkazuishiさんです。(AG)



2000年2月15日
 舞さんが入力された
島崎藤村『二人の兄弟』と今泉るりさんが入力された鈴木三重吉『ぶくぶく長々火の目小僧』を登録する。校正は両作品ともJukiさんです。(AG)



2000年2月14日
 真先芳秋さんが入力された
森鴎外『阿部一族』を登録する。校正は進恵子さんです。(AG)



2000年2月12日
 tatsukiさんが入力された
佐々木味津三『右門捕物帖 曲芸三人娘』『右門捕物帖 毒を抱く女』を登録する。校正ははやしだかずこさんです。(AG)



2000年2月11日
 森下祐行さんが入力された
渡辺温『イワンとイワンの兄』『可哀相な姉』を登録する。校正はもりみつじゅんじさんです。(AG)



2000年2月10日
 tatsukiさんが入力された
岡本綺堂『半七捕物帳 白蝶怪』と柴田卓治さんが入力された太宰治『乞食学生』を登録する。校正は、『半七捕物帳 白蝶怪』がおのしげひこさん、『乞食学生』は小林繁雄さんです。(AG)



2000年2月9日
鶴岡雄二さんの
『モータウン・ミステリー』を登録する。
1960年代、黒人ミュージシャンの牙城として君臨したレコード会社、モータウンの音が、本当はどんな連中によって担われたのかという謎に迫る論考だ。

鶴岡さんを知ったのは、およそ15年ばかり前のことになる。当時、私たちに共通する関心の一つは、パーソナルコンピューターの出自だった。60年代後半のカウンターカルチャーを、パソコンは継いでいるという確信が、二人にはあった。鶴岡さんが仕切っていた雑誌で書いた記事を手がかりに、私は初代、旺文社文庫版の『パソコン創世記』を書いた。一方鶴岡さんは、パソコンがどこからきたかを示す本を次々と訳しはじめた。私たちはやがて、アラン・ケイやダグラス・エンゲルバートの仕事を知った。ちょっとした事情があって、鶴岡さんは別の名を立てて『ワークステーション原典』を訳し、『アラン・ケイ』の企画を実現させた。私も『パソコン創世記』を書き継いだ。
MacintoshやWindowsがどこからきたか、たどろうと思えば容易にたどりうる今となっては、パソコンの源流を見きわめたいと思ったあの頃の気持ちを、正直、少し遠く感じる。けれど、今私たちが見ているパソコンの形を、自分が決めたような口振りで語ろうとする下司が、あの頃には何人かいた。彼らに対し、私たちは少し腹を立て、意地にもなっていたのだろう。
その鶴岡さんが、今回は明らかに、心底怒っている。今度の相手は、おもてに掲げた神話を守るために、美しい音楽の真の担い手を抹殺しようとしてきた連中だ。
本稿のテーマであるモータウンの社名は、同社発祥の地、デトロイトの自動車産業に由来している。1903年、この地に生まれたフォードは、ベルトコンベアーから吐き出されるT型を大ヒットさせ、20世紀をリードする新しい産業の扉を開いた。デトロイトは、〈モーター・シティー〉として知られるようになり、たくさんの労働者を引き寄せた。人口における黒人の占める割合は高まり、この街は、1960年前後から台頭する公民権運動の拠点ともなった。
モータウンは、そのデトロイトから出て、公民権運動の昂揚と足並みをそろえて伸していったレーベルだ。1960年代半ば、ビートルズを先頭にイギリスのバンドがアメリカの音楽市場を席巻した時期、スプリームズ(私の古い頭には、「シュープリームス」で刷り込まれている、ダイアナ・ロスのいた、あのコーラスグループである)やスティーヴィー・ワンダー、フォー・トップスなどを擁して、モータウンはヒット・チャートの一角を守った。
極東の島国でラジオにかじりついていた少年には、〈芸能界〉の匂いをまき散らすモータウンは、公民権運動とは縁もゆかりもないもののように感じられた。運動の歌は、白人のピート・シーガーやマルビナ・レイノルズから教わった。けれど、あれから30数年を経てあらためて思い起こしてみれば、あのレーベルの隆盛もまた、黒人の台頭の大きな波にのっていたことは明らかだ。
「そのモータウンの音は、黒人の卓越したビート感覚に支えられてこそ生まれえた」
そんな神話が表に立てられ、夾雑物が慎重に排除されてきた過程には、アメリカの現代史の一側面がのぞいているように思う。

ここまで鶴岡さんを指して「私たち」呼ばわりしてきたが、90年代の半ばには、お互いの頑なさに嫌気がさしてそっぽを向いていた。彼は、ネットワークを毛嫌いして電子本を罵倒し、私はその双方に過剰に入れあげた。
その鶴岡さんが2年半ほど前に、ある目論見があってやむなく、ネットワークにマシンを繋いだ。本人が白状しているとおり、『モータウン・ミステリー』は、この接続体験から生まれた。その成果もまた、インターネット上に築かれた、優れた音楽への憧憬を録音された音の精査へと昇華させていく拠点、「Add More Music To Your Day」で公開された。弾き癖聞き分けの名人である、同サイトのオーナー、木村伸司さんのコメントには、今回ここにおじゃまするようになって、多くを教えられた。登録の件共々、今後は勝手に〈導師〉としてあがめていくことに決めた木村さんに、お礼を申し上げる。

このように生まれ、このように公開されるに至った『モータウン・ミステリー』は当初、鶴岡さんとインターネットとの融和のしるしに見えた。だが、久しぶりに言葉を交わす過程で、鶴岡さんの心のあり様は、そのような図式的な理解からはほど遠いことを痛感させられた。
素人芸の跳梁跋扈するネットは、『モータウン・ミステリー』のテーマでもあり、鶴岡さんが深く信頼する〈プロの手並み〉にとっては悪戦の場だ。プロの芸人を抹殺にかかる、そんな野放図な空間の水膨れにしびれを切らして、鶴岡さんはきっと、ダイナマイト一本ベルトにねじ込んで復讐にきたのだと思う。鶴岡さんの心の底には、ネットが提供したいくつかの幸せな体験でも埋め合わせのつかない、深い憂鬱がのぞく。
一方、共有だ公開だとわめき立てる当方が、気分爽快で心晴れやかかと言えば、そんなわけでもない。仕組みが壊れて芸が潰えることへの怖れと嫌悪の対極に控えているのは、勝手に広がりはじめた大風呂敷を前に途方に暮れ、背負った荷の重みに悲鳴をあげる弱い心だ。
『モータウン・ミステリー』を挟んで、私たちは結局、再会を楽しむよりは、互いの憂鬱を確かめあう結果となった。だが少なくとも私には、暗い腹の底をのぞきあうはめになっても、そっぽを向いているよりは向き合うことの方が、まだましに思えるのだ。そして、鶴岡さんの首をもう一段しめる所業かもしれないが、追加の提案も心に浮かぶ。
鶴岡さんには『45回転の夏』という、これもまた60年代の音楽が大切な要素となった美しい小説がある。あの珠を、私たちは今、どこで手に取ることができるだろう。お代は見てのお帰りの、〈スレイブ方式〉がある。〈投げ銭〉型のチャレンジもありうる。プロの仕事を、インターネット上に復権させようとする試みはありえて、青空文庫はその敵ではないと思う。あなたが望むなら、ブックは私が作る。集金の仕組みも、二人で工夫しよう。あの美しい物語への入り口の一つとして、この場を使ってもらうことはできないだろうか。(倫)



2000年2月9日
 tatsukiさんが入力された
岡本綺堂『半七捕物帳 妖狐伝』を登録する。校正は菅野朋子さんです。(AG)



2000年2月8日
もりみつじゅんじさんから、「
随筆計画2000をはじめるよ〜」と連絡をいただいた。
青空文庫の収録作品を利用して、テーマ別の随筆集を構成しようというこの計画の概要は、まず、ご本人からどうぞ。

「1日10分本を読みましょう。とまるでどこかの書店組合の宣伝だが、 5分で気軽に読めるエッセイがすぐにダウンロードできれば便利ではないか。しかしそんなページはあっただろうか……。紙の本なら作品社の「日本の名随筆」シリーズがある。各テーマ別に数ページの随筆を収集したもので100巻+別巻100巻が完結した。その日の気分に合わせたテーマを手に取ってみると新しい発見が!(笑) そんなページがあると嬉しいものだ。だが素人の選集はちと無理があるからして、手始めに「日本の名随筆」のテーマをもらい、青空文庫登録作品にリンクするのでどうだろう? とりあえず形になるのではないか。……サクサク(調査中)……うむ。思いの外。必要か。少ない。十倍の。弱点が。蔵書が。――――随筆リンクとしては少々実用にならぬが、調査結果を公開して青空文庫関係者諸氏の努力を応援したいと思う。」

皆さん、わかりましたね。
さて、随筆計画2000に行ってみると、一番上に「青空文庫(へ)提供 :-) 」と書いてある。
頂戴したこのページを、では、どう生かしていこう?
本来の狙い通り、ここからエッセイを読みにいくも良し。もう一つ、入力作品の候補選びにも、このリストは使ってもらえると思う。
「入力で協力したいけれど、何を入れようか思いつかない」ときは、このページを見てほしい。(今後に備えて、この際、ブックマークをよろしく。)
例えば「1.花 宇野千代編 」。
岡本かの子『五月の朝の花』 から、幸田露伴『花のいろ/\』に至る作品は、作品社版の中から抜き出された、著作権の切れた作家のものだ。
凡例にあるとおり、●の色代わりは、すでに青空文庫で公開されている。●の色抜きは、青空文庫の「入力中の作品」リストに記載されている、誰かが作業中のもの。そして○が、青空文庫では、未着手のものだ。だから、○に取りかかってくれると、印が●に変わり、公開の暁には図書カードへのリンクが仕込まれて、随筆計画2000が着々と進行することになる。
ちなみに、「はずれ……該当なし」とは、該当の巻に著作権の切れたものがなかったとの謂。もちろん作品社は、一冊1800円で売っておられるので、文庫で読めないものはそちらをどうぞ。

入力と校正でのご尽力に加え、もりみつさんにはこれまで、「青空文庫検索ページ」と「死せる作家の会」のリストを作ってもらった。今回の随筆計画2000でも、実にいいところを突いて、しっかり仕事をしていただいている。
もりみつさん、ありがとう。別れても(?)、返せなんて言わないでね。(倫)



2000年2月8日
 真先芳秋さんが入力された
菊池寛『吉良上野の立場』『船医の立場』『屋上の狂人』を登録する。校正は大野晋さんです。(AG)



2000年2月7日
 大野晋さんが入力された
田中英光『オリンポスの果実』を登録する。校正は伊藤時也さんです。(AG)



2000年2月5日
 柴田卓治さんが入力された
夢野久作(杉山萠圓)『白髪小僧』を登録する。校正は江村秀之さんです。(AG)



2000年2月4日
 柿澤早苗さんが入力された
夏目漱石『人生』とあきらさんが入力された宮沢賢治『ひかりの素足』を登録する。校正は両作品とも伊藤時也さんです。(AG)



2000年2月3日
 tatsukiさんが入力された
岡本綺堂『半七捕物帳 薄雲の碁盤』を登録する。校正は山本奈津恵さんです。(AG)



2000年2月2日
 大野晋さんが入力された
海野十三『宇宙女囚第一号』『生きている腸』と、もりみつじゅんじさんが入力された海野十三(丘丘十郎)『地球発狂事件』を登録する。校正は、『宇宙女囚第一号』『生きている腸』がしずさん、『地球発狂事件』が武内晴惠さんです。(AG)



2000年2月1日
 柴田卓治さんが入力された
夏目漱石『現代日本の開化』太宰治『嘘』『雀』『庭』を登録する。校正は、『現代日本の開化』が大野晋さん、『嘘』『雀』『庭』がもりみつじゅんじさんです。(AG)



2000年1月31日
泉井小太郎さんの入力で、
山村暮鳥『聖三稜玻璃』を登録する。
泉井小太郎さんと音座マリカさんは、六角文庫という創作工房を通じて、詩や絵画、陶芸などの作品を発表しておられる。ここを訪れるたび、時の流れが、少し歩みをゆるめるような思いにみたされる。淡い色彩にいろどられた本の数々は、コンピュータのディスプレイに表示されているのだということを忘れさせてしまうほどに、優しく美しい。
初冬に、泉井さんから、青空文庫の本棚にと、山村暮鳥の小さな詩集が届いた。選び抜かれ、するどく研ぎ澄まされ、確固たる信念を持ってそこに置かれた言葉が並ぶ。暮鳥が一篇の詩のおわりに、時には途中に、句点を打つとき、我々はそこで立ち止まって、詩人と共に、言葉に向かい合うことを求められる。そして、言葉が心のうちに染み込んでいくのを待つのである。
本を私たちの手元に置いたまま年を越してしまったことのお詫びと共に、きりりと冷たい冬の空気を添えて、みなさんのお手元にお届けしたい。泉井さんがお住まいの金沢には、雪が降っているだろうか。(LC)



2000年1月31日
 柴田卓治さんが入力された
夢野久作(海若藍平)『若返り薬』『虫の生命』『クチマネ』を登録する。校正はもりみつじゅんじさんです。(AG)



2000年1月29日
 柴田卓治さんが入力された
太宰治『令嬢アユ』『佐渡』を登録する。校正は青木直子さんです。(AG)



2000年1月28日
島田一郎さんの、
『随想 橡の木の葉』『自伝抄録・祖父の肖像』を登録する。両作品とも、「散歩者の夢想」と名付けられたメーリングリストへの連載をまとめたものだ。
ML運営に試行錯誤を重ねた結果、「散歩者の夢想」は、主宰者が随想を連載する場として設定されている。参加資格は50歳以上。いわゆるMLらしい話し合いの場は、別に設けられているらしい。珍しい仕立てと思うが、「ネチケットやルールは、自分で創り出すもの」と腹を決めた主宰者が、きっと悪戦苦闘だったのだろう運営体験の中からひねり出した、これが一つの答えだ。ここに至る経緯は、「嗚呼、管理人! 迷走の一年半・・・」にまとめられている。
『随想 橡の木の葉』は、父の最期を子の立場から描いた作品だ。島田さんが作品紹介に盛り込んでくれた、「夫婦の晩年は「誰にも」、壮健な生活者には思いもよらない「最高の美」が予定されている」と言う言葉が、すべてを言い尽くしていると思う。『自伝抄録・祖父の肖像』は、母方の祖父が1943(昭和18)年にまとめた自伝を、島田さんが抄録したものだ。日露戦争当時の世相や関東大震災の惨状など、時代を生きた人の証言を、興味深く読んだ。
『随想 橡の木の葉』の冒頭には、恋人か夫婦らしい男女が街を行く写真が置かれている。作品の最後に、この写真がもう一度出てくる。一度目はさっと見送った銀座通りの二人の姿に、二度目に出会ったときは、視線を吸い付けられた。

両作品のHTMLでは、フォントサイズが指定されていて、本文中に改行タグが使われていない。T-Timeで読む際は、メニューの「設定」から「タグ」と進み、「CR有効」をチェック、「文字サイズ」に付いているチェックは外すと読みやすいと思う。(倫)



2000年1月28日
 柴田卓治さんが入力された
太宰治『千代女』『服装に就いて』『みみずく通信』を登録する。校正は青木直子さんです。(AG)



2000年1月27日
 tatsukiさんが入力された
岡本綺堂『半七捕物帳 大森の鶏』ともりみつじゅんじさんが入力された新美南吉『川』『久助君の話』『嘘』を登録する。校正は、『半七捕物帳 大森の鶏』がはやしだかずこさん、『川』『久助君の話』『嘘』がゆうこさんです。(AG)



2000年1月26日
 柴田卓治さんが入力された
太宰治『火の鳥』、真先芳秋さんが入力された菊池寛『恩を返す話』『三浦右衛門の最後』を登録する。校正は、『火の鳥』が高橋美奈子さん、『恩を返す話』『三浦右衛門の最後』が鈴木伸吾さんです。(AG)



2000年1月25日
 柴田卓治さんが入力された
太宰治『酒の追憶』『フォスフォレッスセンス』『渡り鳥』を登録する。校正はかとうかおりさんです。(AG)



2000年1月24日
 柴田卓治さんが入力された
太宰治『おさん』『饗応夫人』『女類』『女神』を登録する。校正はかとうかおりさんです。(AG)



2000年1月23日
 柴田卓治さんが入力された
太宰治『グッド・バイ』『父』『母』『犯人』『眉山』『美男子と煙草』を登録する。校正はかとうかおりさんです。(AG)



2000年1月22日
 柴田卓治さんが入力された
太宰治『盲人独笑』と海美さんが入力された海野十三『恐龍艇の冒険』『透明猫』を登録する。校正は、『盲人独笑』が小林繁雄さん、『恐龍艇の冒険』と『透明猫』がもりみつじゅんじさんです。(AG)



2000年1月21日
 tatsukiさんが入力された
佐々木味津三『右門捕物帖 足のある幽霊』を登録する。校正はkazuishiさんです。
 それから、1月16日の登録ですが、太宰治『善蔵を思う』のところを太宰治『秋風記』としてしまいました。大変失礼いたしました。ご指摘いただいたkazuishiさん、ありがとうございました。(AG)



2000年1月20日
山本有二さんの作品
『日常生活の美学−モダニズムと『いき』』を登録する。
著者名に見覚えがある、と思った方がおられるのではないだろうか。実は、1月3日に登録された『清貧譚』英訳版 "A Tale of Honorable Poverty"を翻訳して下さった山海空悠丸さんは、実は山本さんのペンネームなのである。太宰作品の英訳に続いて、今回、英語で書かれたご自分の論文を、日本の読者に向けて、和訳して提供しようと申し出て下さった。
「いき」という概念は、明確に定義することが難しい。作品中でも触れられているが、状況に応じて、臨機応変に変化するものだからである。全てがマニュアル化され、他者の目を意識することが極端に少なくなったと言われる今の時代、なおさら「いき」という概念はとらえがたく感じられるように思える。この概念を支えているものは、今の私たちが二の次にしがちな、実用一点張りから一歩踏み出す余裕とでもいうようなものではないだろうか。青空文庫に収録されている作品の多くが、50年以上前に書かれたものだ。当時の日本の、ゆったりとした時の流れを感じ、その底にある美意識を楽しむとき、「いき」という言葉の持つ意味が、改めて実感されるように思う。
論文は「いき」という概念をめぐる考察だけれど、日本文学の底に流れるものを再発見するガイドとしても面白く読める。こんなふうに解説してしまうのは、それこそ「野暮」のきわみかもしれないが。(LC)



2000年1月19日
青空文庫をはじめた時に、私達呼び掛け人はほそぼそと、やれるだけの範囲でやっていこうといっていました。

しかし、企業や個人の人からの寄付などを受けるようになり、また、広告をおくことで寄付ではない、事業収入を得るようになりました。

青空文庫は人格のない法人として活動が始まっていました。そこで今回改めて青空文庫として事業開始届けを税務署に提出し、みなし法人として会計期間を定めなおしました。【9月1日〜8月31日】

活動が、たとえゆっくりでも、細く長く続ける為にも事務体制を整えていければと思っています。

会計担当  らんむろ・さてぃ



2000年1月19日
 柴田卓治さんが入力された夢野久作(海若藍平)『
青水仙、赤水仙黒い頭白椿』、夢野久作(萠圓)『正夢』夢野久作(無署名)『三つの眼鏡』を登録する。校正はすべて、もりみつじゅんじさんです。(AG)



2000年1月18日
三遊亭圓朝『業平文治漂流奇談』を登録する。入力は小林繁雄さん、校正はかとうかおりさん。加えて本作品では、お二人が協力して編集にあたられた。

今回の登録作品は、春陽堂から刊行され、後に世界文庫で復刻された、『圓朝全集』を底本としている。1900(明治33)年に没した圓朝の仕事を後に伝える上で、決定的な役割を果たした『全集』は、鈴木行三氏の「編纂、校訂」を得てなっている。
時代を超えて、圓朝を受け渡すバトンの役をになった『全集』に立ち返り、電子化を進めようと考えた時点で、私たちは二つの問題に突き当たった。一つは、『圓朝全集』に関する鈴木氏の権利を、どうとらえるかという点である。そしてもう一つ、旧字旧仮名で速記本の匂いを残した底本の文章を、どのようなスタイルで電子化するかも問題となった。

鈴木行三編纂、校訂の『全集』を底本にできるか否か、調査し、検討した結果は、内部的な意思確認を主目的として、半年ほど前に、レポートにまとめた。
その報告書を今回、「直面した課題」「圓朝全集は誰のものか」と題して置いた。本来、この手の報告書には、問題の所在と検討の過程、結論を導き出した根拠を、できるだけ手短に示すべきだろう。だが、今回のものには、著作権の所在確認を行う際の手順や情報源を参考に示そうと、あえて調査の経過を長々と盛り込んでいる。調査の過程で興味を惹き付けられた、立川文庫の成立過程にも、脇道にそれるのを承知で触れている。結果的に、きわめて冗長で、脱線を繰り返すみっともないものになったが、決心に至るまでの心の弾みを伝えたい気持ちが抑えられず、破れかぶれの心境でそのままアップした。
『全集』をもとにした電子化のもう一つの課題は、100年以上前の圓朝の言葉を、どのような形で仕立てるかという点だった。旧字旧仮名、総ルビの底本を現代表記にあらためたいという意向が小林さんから示され、呼びかけ人も、そうすることが適当だろうと判断した。青空文庫はそれまで、「底本に忠実な入力」を表に立ててきた。だが、圓朝のものに限らず、読みやすさを優先して現代表記にあらためたいという気持ちがわくのは、ごくごく自然なことだ。呼びかけ人の意向を越えて、一部にはすでに、書き換えが行われたものもあった。そこで、圓朝プロジェクトのスタートをきっかけの一つとして、現代表記への書き換えの指針をまとめることにした。
今回、公開する『業平文治漂流奇談』は、「現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、『全集』の表記に変更を加えている。同「指針」は前文で、書き換えを行う場合を、「旧字、旧仮名版しか存在しない」ときと、限定付けている。実は圓朝には、現代表記による『三遊亭円朝全集』(角川書店)がある。だが角川版では、表記がきれいさっぱり現代風にあらためられていて、口演を速記した匂いや、新しい文体が生まれようとする躍動感が伝わってこないと感じた。そこで、『圓朝全集』の息づかいを残しながら読みやすさを目指す作業に、新たに取り組んでいただくことにした。
大切ではあるが、実に悩み多きこの作業に、緊密な連絡を取りながら当たられたのは、小林繁雄さんとかとうかおりさんである。ルビはどの程度付けるか。踊り記号を使うか。「指針」に沿って、人名は旧字のまま、地名は新字に改めるとして、屋号はどうするか。表記の統一は行うのか。さらに個別の字句を前に、拗音を小書きするべきかを巡って、繰り返し検討のメールが行き交った。お二人は、「公開後、諸賢の批判を待つ」として編集作業を終えられたが、さまざまな点で実に意義深い仕事を成し遂げられたことに、まずは心からのお礼を申し上げる。あの時代に落語家として現れた偉大な物語作家の世界を、小林さんとかとうさんの導きを得て、一人でも多くの方が堪能されることを願ってやまない。(倫)

(「圓朝全集は誰のものか」を、ttz化してこちらに置きました。無償で公開されているT-Time機能限定版があれば、冗長な文章も多少は読みやすくなるでしょう。T-Timeの特徴はこちら。機能検定版のダウロードは、こちらから。)



2000年1月17日
 tatsukiさんが入力された
岡本綺堂『半七捕物帳 大阪屋花鳥』と柴田卓治さんが入力された夢野久作(萠圓山人)『猿小僧』を登録する。校正は、『半七捕物帳 大阪屋花鳥』がしずさん、『猿小僧』がもりみつじゅんじさんです。(AG)



2000年1月16日
 柴田卓治さんが入力された
太宰治『古典風』『善蔵を思う』を登録する。校正は小林繁雄さんです。(AG)



2000年1月14日
 真先芳秋さんが入力された
菊池寛『蘭学事始』とtatsukiさんが入力された佐々木味津三『右門捕物帖 闇男』を登録する。校正は、『蘭学事始』が丹羽倫子さん、『右門捕物帖 闇男』がkazuishiさんです。(AG)



2000年1月13日
 八巻美惠さんが入力された
太宰治『お伽草紙』と柴田卓治さんが入力された夢野久作『いなか、の、じけん』を登録する。校正は、『お伽草紙』が高橋じゅんやさん、『いなか、の、じけん』が江村秀之さんです。(AG)



2000年1月12日
 tatsukiさんが入力された
岡本綺堂『半七捕物帳 川越次郎兵衛』とryoko masudaさんが入力された夢野久作『少女地獄』を登録する。校正は、『半七捕物帳 川越次郎兵衛』が菅野朋子さん、『少女地獄』がもりみつじゅんじさんです。(AG)



2000年1月11日
オー・ヘンリー著、結城浩訳
『最後の一枚の葉』を登録する。同じく結城さん訳による『賢者の贈り物』同様、これも、山形浩生さんが言い出しっぺとなったプロジェクト杉田玄白の正式参加作品だ。
青空文庫は、翻訳作品を扱わないと決めているわけではない。だが、底本の検討をはじめると、一般の著作権同様、死後50年間保護される訳者の権利が生きているために、諦めざるを得ないケースがしばしばとなる。大久保友博さんの試みのような一部の例外はあるが、文庫ではこれまで、自由な公開を前提にした新たな翻訳を後押しできないできた。
こうした青空文庫の〈ていたらく〉を批判的に乗り越え、「ならばオレが訳す」と宣言したのがプロジェクト杉田玄白だ。青空文庫に対する山形さんの批判は、私たちが「収録ファイルの取り扱い規準」という成果を残す、きっかけも作ってくれた。誠実に働き、厳しく批判してくれるタフな連中の存在を肩先に感じていられることは、ありがたいことだと思う。今年、よりいっそう活発に生み出されていくだろう同プロジェクトの成果に向けて、青空文庫の図書カードからリンクすることを、課題の一つとしたい。
文庫でも去る3日には、山海空悠丸さんの訳で『清貧譚』英訳版 "A Tale of Honorable Poverty"を登録できた。日本語の青空文庫。和訳のプロジェクト杉田玄白。加えて、山海空さんのような、外国語訳を用意していく試みが一つの流れとなれば、ますます頼もしい。(倫)



2000年1月11日
 大野晋さんが入力された
海野十三『ある宇宙塵の秘密』『千年後の世界』を登録する。校正はもりみつじゅんじさんです。(AG)



2000年1月10日
秋野平「ロック、70年代―復刻CDに時代を聴く」を登録する。1991年、中日(東京)新聞の日曜版に9カ月にわたって連載されたコラムをまとめたものだ。70年代にリリースされたロックアルバムを中心に、「アルバム紹介の形をとりながら時代の動きと本質を探る」という視点で書かれたコラムである。筆者の秋野平は「松平維秋+浜野サトル」からつくったペンネーム。二人が1カ月交替で原稿を書いた。生前、作品を公にする機会に恵まれることの少なかった松平維秋を思いだしつつ、ファイルをまとめた。(楽)



2000年1月10日
 田浦亜矢子さんが入力された
海野十三『俘囚』と海美さんが入力された海野十三『予報省告示』を登録する。校正は両作品とももりみつじゅんじさんです。(AG)



2000年1月8日
 岡本正貴さんが入力された
宮沢賢治『ポランの広場』を登録する。校正は石川友子さんです。(AG)



2000年1月7日
高野敦志さんの
『漁火』を登録する。
モラトリアムの尾を引きずっていた青年による、佐渡への幻視行の物語。
青年を縛ってきた「世間から逃れよう」とする気持ち、「結婚して家庭をもつことへの恐れ」の根にあるものは、旅にある彼の眼前に、前世の悲哀なエピソードとなって現れる。二次元の平面として目の前にある〈今〉に、歴史、時間という奥行きを与える〈旅〉という場を設定し、自らを解き放つためのドラマを演出しようとする著者のたくらみは、読み返すたびに、実に計画的に思えてくる。一読した際は、ばらばらに配置された印象を受けた名所旧跡のいわれやルソーの箴言、観無量寿経の教える観想法を、著者は「ここ」と狙いを定めて配置したのだろう。

一つ一つ公開ファイルを積み重ねていけたことに加えて、昨年は「収録ファイルの取り扱い規準」を定め、「ここにある著作権切れ作品は、誰もが自由に使える」と宣言できた。これがきっかけとなって、青空文庫を使ってやろうと考える人が、一気にふえた。「規準」は、1999年の大きな成果だったと思う。
一方、文庫の試みが勢いを増すにつれて、呼びかけ人と称する世話役の力の限界が、浮き彫りになっていった。要の機能が相対的に低下する中で、呼びかけ人はかなりの大切な課題を手つかずのまま放置した。昨年の後半、厳しい指摘を受けた、書き残された言葉の中にある差別性に、青空文庫としてどう向き合うのかという問題もその一つだ。「表現の自由を守る」、あるいは「図書館は検閲を排する」と一言いって、後はたこつぼにこもって嵐が通り過ぎるのを待ってすむような問題ではないと思う。〈反駁権〉を保証する仕組みを作ろうと提案した私には、あの時提起された物事をもう一度整理して、約束を守る義務があるはずだ。
1999年のもう一つの大きな心残りは、「自分の作品を青空文庫に登録してほしい」と声をかけてくださった方に、まともに対応できなかったことだ。
作者の死後50年を経てなお、「みんなに読んでほしい」と思う気持ちを人に抱かせた作品については、登録をほとんどためらわない。一方、時のふるいを経ていない作品に対しては、青空文庫における最初の読者として、それぞれに正面から向き合いたい。「作品収録を望まれる方へ」に示した、ごく敷居の低い排除規準にだけ留意して、「どうぞどうぞ」とどんどん招き入れるような態度が取れない。
結果的には、じっくり読みたいという気持ちと、どんどん膨らんでいく著作権切れ作品に関わる作業に引き裂かれて、登録を望まれる方への対応がおろそかになった。「いずれ返事する」と申し上げたままになっている方に加え、「沈黙は拒絶のサインと受け取られてしまう」と意識しながら、返事もしていないこともあった。
問題の核心は、いかにして要を強化するか、あるいは我々が抱え込んでいる作業を、力をふるってくれる皆さんの手にいかにして委ねていくかであるだろう。そのための仕事を進めながら、メールボックスを見直して、登録を申し入れてくださった方々にご連絡をとっていこうと思う。
高野さんの『漁火』の登録を、その第一歩としたい。(倫)



2000年1月7日
 ゆうきさんが入力された
内村鑑三『デンマルク国の話』を登録する。校正は吉田亜津美さんです。(AG)



2000年1月6日
 柴田卓治さんが入力された
夏目漱石『道楽と職業』を登録する。校正は大野晋さんです。(AG)



2000年1月5日
 大野晋さんが入力された
佐々木味津三『右門捕物帖 青眉の女』を登録する。校正はごまごまさんです。(AG)



2000年1月4日
 tatsukiさんが入力された
岡本綺堂『半七捕物帳 ズウフラ怪談』を登録する。校正はしずさんです。(AG)



2000年1月3日
山海空悠丸さんの翻訳で
『清貧譚』英訳版 "A Tale of Honorable Poverty"を登録する。
去年の1月1日、太宰治作品の著作権が切れた。この日、青空文庫では、それまでに準備が終わっていた太宰作品を一挙に公開した。『清貧譚』も、そのときに公開したうちのひとつである。それから1年後、こんどは英語に姿を変えた太宰作品を、みなさんにお届けできることになった。
翻訳には、他の言語から日本語へ、そして日本語から他の言語へ、という二種類がある。青空文庫はこれまでにも、前者に該当する作品を登録してきた。著作権の切れた翻訳作品となると範囲が限られてくるが、それだけではない。「それなら自分が翻訳してやろう」と、イキのいい訳文を届けて下さる方が次々に現れて、現代の日本語で読める翻訳作品の数も、徐々に増えてきている。
ある日、山海空悠丸さんから「太宰治の『清貧譚』を英訳したので、登録してもらえないだろうか」というメールをいただいた。和訳の作品を提供していただいたことは何度かあるけれど、日本語で書かれた作品の英訳版は初めてだ。思えば、海の彼方から「読んでいます」というお便りをいただくこともしばしばある。地球のあちこちに住む読者のために、日本語で書かれた作品を外国語におきかえてひろく紹介していくことも、インターネットを使えば、簡単に可能となるのだ。大きな可能性を示していただいた申し入れに、私たちは「ぜひお願いします」とお返事した。そういった経緯で、初の英訳作品登録が実現したのである。
インターネットの力を借りて、本をめぐる輪が、少しずつ拡がっていく。新たな出会いに心ときめかせる場面が、今年もたくさんありそうだ。(LC)


2000年1月1日
 あけましておめでとうございます。2000年の始まりに、今日1月1日に著作権の切れた海野十三の作品を登録します。ミレニアムの区切りとして、日本SFの始祖である海野十三の作品が登録できるのは何となくぴったりのような気がします。登録する作品は、
『十八時の音楽浴』『放送された遺言』『人造人間殺害事件』です。入力は、『十八時の音楽浴』『放送された遺言』が大野晋さん、『人造人間殺害事件』は田浦亜矢子さんです。校正は、3作品とももりみつじゅんじさんです。(AG)
  いまのそらもよう
1997年のそらもよう
1998年のそらもよう
1999年のそらもよう
2001年のそらもよう
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