そらもよう
 


2015年12月31日 石で作られた「遺跡」ではないけれども
寺田寅彦の命日(1935(昭和10)年)の本日、中谷宇吉郎「寅彦の遺跡」を公開します。

東京帝国大学理学部物理学科で寺田寅彦に教えを受け、後に理化学研究所にて寺田研究室の助手になった中谷宇吉郎は、寅彦について折々に回想を書いています。その内の一編「寅彦の遺跡」は「西日本新聞」1955(昭和30)年8月10日付夕刊に掲載されました。

昭和30年、高知を訪問した中谷は、戦災で遺物が失われてしまった寺田寅彦紀念館(今の「寺田寅彦記念館」)のありさまを記しつつも、寅彦の「遺跡」(=足跡)巡りをした折の発見を書き留めています。

> 寅彦の遺跡は、高知市及びその近郊の至るところにあるが、それは建物や銅像の形ではなく、人々の心の中にある、ということである。

中谷の筆で書き留められた「人々の心の中にある」三つの寺田寅彦の姿は「西日本新聞」での掲載後、翌年の『百日物語』(文藝春秋新社)、2001年の『中谷宇吉郎集 第八巻』(岩波書店)にて伝えられてきました。本日、新たな読者の心にも寅彦の姿が新たに記憶され、後世まで伝えられていくことを願います。(J)

追伸:
現在、高知県立文学館にて、
企画展「親愛なる寺田先生〜師・寺田寅彦と中谷宇吉郎展〜」が来年1月31日まで開催されています。
http://www.kochi-bunkazaidan.or.jp/~bungaku/


2015年12月31日 空気になった青空文庫
ある頃から我が家の年の瀬、大晦日の様子が変わった。夫、倫生が大掃除の手伝いをしなくなり、いつまでたってもパソコンに張り付いて作業をやめなくなったのだ。それまでも、そんな姿は見慣れていたが、さすがに年末は家の掃除や片付けを手伝ってくれた。「大事な作業が残っているんだ」という声に最初は文句を言いつつも、毎年のことになるにつれ、それが我が家の大晦日になった。

我が家の大晦日を変えたのは、著作権保護期間延長問題がきっかけだった。2005年1月1日から青空文庫は、新年を迎え新たに著作権が切れる著作者の作品を公開する現在の「パブリック・ドメイン・デイ」の形を取り入れた。それは著作権保護期間延長の愚かさを直感的に理解出来る形で示して反対を訴え続けていこうという決意のあらわれだった。

新しく「公有の宝」として青空に積みます作品の公開に向け、最後の確認作業を終えてようやく一息つく。そして新年のカウントダウンが始まる頃、二人で部屋の窓を開け、横浜港に停泊する船が一斉に鳴り響かせる汽笛を聞いた。

そんな大晦日が消えてから今年は三回目となる。あの日から、ずっと気持ちが揺れ動きさまよっていた。生き生きと仕事をする夫を自分の中に見つけられなかった。どうして苦しい姿しか見えないのか。

思えば我が家は青空文庫に染まっていた。私は直接関わっていたわけではないけれど、会話を通して、部屋のドア越し、夫の背中越しに、青空文庫があった。それはまるで家の空気にとけ込んでいるようだった。

空気に含まれる酸素が不足すれば息苦しくなるのと同じかもしれない。。。あの夏から2年が経とうとするころ、ようやくそんな風に感じられるようになった。心の窓をあけて空気を入れ替えようと、今年の夏に決意した。

その気持ちを青空文庫の人達に伝えた。そして秋に大阪で持たれた世話人オフ会に迎え入れてもらった。もちろん、すぐに何かができるわけではないけれど、青空文庫の活動に今度は直接関わって、できることからお手伝いを始めることに決めた。

著作権保護期間延長反対運動が「負けいくさ」なら、夫はもうひとつ、不治の病という「負けいくさ」を抱えていた。信じるところにしたがって最後まで力をつくした姿勢を誇りに思う。

とうとう力尽きる直前、海外での移植手術で得た新しい命で生きた5年間に触れ、青空文庫のことがたくさんできてよかったと感謝の気持ちを語ってくれたことが嬉しかった。青空文庫にとって2008年と2013年の5年間はどう違うのだろう。それをちゃんと知りたくて夫の活動記録をたどり始めた。

日々の膨大な通信記録に目を通し始めると、そこには、外部の様々な要請に対応し、著作権保護期間延長反対の活動を行い、青空文庫の日常作業で直面する課題にてきぱきと取り組む姿があった。注記一覧の公開など、技術的な仕様作りが進められていた。まるで今でも隣の部屋で作業をしている錯覚にとらわれた。

最後まで人生のやりがいを突き進めようという気概を感じると同時に、地道だけれどとても重要なファイル作成のルール作りや点検に共に取り組み続けている仲間の苦労や作業の緻密さをあらためて知る思いだった。微力ながら何か役に立ちたいという気持ちを強くした。

青空文庫に関わる数多くの人達の動機や思いは各人それぞれだ。そして小さな個人のさまざまな思いの総意が青空文庫を育ててきたし、これからもその営みは絶えることがないと信じている。信じるだけでなく、青空文庫を永続的な機関にするための基盤作りの試みにも参加したいと願っている。

窓を開け、青空に向かって深呼吸すると新鮮な空気が心にしみわたる。遺されたものの「青空のリスタート」。つたない書きぶりを承知の上で、この気持ちを伝えたい。
 * * * * * *
みなさま、これからよろしくお願いいたします。
強い気持ちがあれば、たとえ行く手が暗雲に覆われても、かならず一筋の光明を見いだすことができると信じて、新しい年を迎えたいと思います。
I wish you a happy new year! (晶)

2015年12月28日 室生犀星「老いたるえびのうた」「陶古の女人」「火の魚(新字新仮名版)」「蜜のあわれ」「われはうたえどもやぶれかぶれ」の入力をご担当いただいている方にお願い
室生犀星「老いたるえびのうた」「陶古の女人」「火の魚(新字新仮名版)」「蜜のあわれ」「われはうたえどもやぶれかぶれ」の入力をご担当いただいている方に申し上げます。

作業を引き継げないかとの打診を受けて、進捗状況とお気持ちの確認のためメールをお送りしましたが、お返事がありませんでした。
reception@aozora.gr.jp 宛に、ご一報をお願いします。

本日から一ヶ月、ご連絡を待ちます。
一月を経て、連絡を取り合えない場合は、これらの入力を引き継いでいただこうと思います。

作業の継続が難しくなった際は、皆さん、どうぞお気軽に、reception@aozora.gr.jp までご連絡ください。
メールアドレス変更の際は、reception@aozora.gr.jp 宛にご一報をお願いします。(J)

2015年12月22日 12月21日、定期更新が行われなかった件について
昨12月21日早朝、青空文庫の定期更新が行なわれず、予定されていた野村胡堂「銭形平次捕物控 281 用心棒」が公開されませんでした。
原因は青空文庫本体を置いているサーバーでの、外部要因による障害です。現在は復旧している模様です。
尚、本日22日の更新で、「銭形平次捕物控 281 用心棒」も公開されています。青空文庫トップ頁の「最新公開作品:」には表示されませんが、同作品の図書カードにて公開を確認することができます。

2015年10月23日 紹介とお知らせ:「オープンソースカンファレンス2015 Tokyo/Fall」にエンジニアコミュニティ aozorahack が参加
今月21日に報告を紹介した「本の未来基金」。当基金事務局は、今年5月30日に「Code for 青空文庫」アイデアソンを開催しました。そのアイデアソンをきっかけにして生まれたのが、エンジニアコミュニティの aozorahack です。
(参考:2015年05月15日「本の未来基金「Code for 青空文庫」アイデアソン実施のお知らせ」
現在、主として青空文庫トップ頁からもリンクされている「aozorahack」で共働を行っています。また、aozorahack に参加しているエンジニアの皆さんにより、一日で入力・校正を体験するイベント「シャッカソン」などを自主的に開催してきました。

さて、今月の24(土)25(日)の両日、明星大学日野キャンパス28号館で行われる「オープンソースカンファレンス2015 Tokyo/Fall」に、aozorahack はセミナーと展示ブースで参加し、活動報告を行います。開催が明日に迫っていますが、急ぎお知らせ致します。(J)

・セミナー「aozorahackの今までとこれから ~インターネット電子図書館「青空文庫」をエンジニアリングで支える~」

25日(日)13:00~13:45 6階 605
OSC2015 Tokyo/Fall 10/25(日)タイムテーブル

・展示ブース

24日(土)11:00~17:30
25日(日)10:00~16:00
展示ブース一覧

2015年10月21日 紹介:「本の未来基金」運営委員会のご報告とこれからの活動について
2013年、青空文庫呼びかけ人の一人だった富田倫生さんの逝去を機に「本の未来基金」が設立されました。基金は青空文庫の活動が持続し、そしてより便利になるような活動を進めるための資金として使われることを目的としています。
「基金について」によれば、基金の運営委員の任務として四半期に一度運営委員会を開催し、「本の未来基金」に寄せられた寄付を確認し、青空文庫に送っています。

今月の2日に行われた運営委員会の報告が「本の未来基金」サイトにて公開されました。報告者は運営委員の一人、富田晶子さんです。基金側から見た青空文庫の現状に付いても触れられています。後半では、家族の立場として活動を見守ってきた者としての思いも公開しています。(J)

「本の未来基金」運営委員会のご報告とこれからの活動について(本の未来基金)
http://honnomirai.net/committee20151002.html

2015年10月07日 TPP大筋合意との報に際して
10月5日より各種報道にて、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)について参加各国が大筋合意したとのニュースが流れております。

青空文庫では、これまで著作権保護期間のさらなる延長について反対し、またTPPに関しましても、文化に大きく影響を与えるにもかかわらず、国民不在のまま進められる議論に強く憂慮して、「TPP著作権条項に関する緊急声明」にも賛同するとともに、日々パブリックドメイン作品のデジタルアーカイヴを推進することによって、著作権の失効した本が社会で自由に活用されることの重要性を訴えて参りました。

青空文庫に関わるボランティアは、その多くが作家や作品のファンであり、また少なからぬメンバーが、自分たちの好きな本がいつまでも読み継がれ、世界じゅうで自由に分かち合われ、これから先も公有財産として大切にされてゆくことを強く願うだけでなく、共有された知や文化が社会に循環され、次の新しい創作物が生まれて未来の文化が育まれてゆくことを心から祈って、日々の作業に取り組んでおります。

その立場から見て、著作権保護期間がさらに20年延びることによって、これまで産み落とされてきた無数の本に、そして将来の世界の文化に、いったいどれだけ資することがあるのか、疑問を抱かざるを得ません。

もちろん、青空文庫は法律を遵守して活動することを旨とし、公正な利用と保護によって文化の発展を目指す著作権法の理念に基づいて、保護期間の満了した本を「青空の本」として、読む人にお金や資格を求めず、これからも豊かな本の数々を集めていきたいと考えております。さらに著作権者本人が公開を希望する本もまた、一定の条件のもとで継続的に受け入れていく方針です。

また報道以来、青空文庫へのご心配が数々寄せられておりますが、TPPの大筋合意のために明日すぐ当文庫が閉鎖されるとか、保護期間延長によって青空文庫の活動そのものがなくなるといったことはございませんので、その点はひとまずご安心ください。

TPPに関して今後、条約の締結や国内法の整備などが進められていくことでしょう。とはいえそのなかで、ひとりひとりが粘り強く声を上げ、自分たちの文化がどうあるべきなのか、あきらめずに議論を続けることも必要です。

今ようやく芽生えてきたパブリックドメインによる豊かで多様な共有文化が損なわれないような、柔軟な著作権のあり方を切に望みます。

2015年09月30日 石川欣一「針の木のいけにえ」「クレメンツ・ルッペン」の入力をご担当いただいている方にお願い
石川欣一「針の木のいけにえ」「クレメンツ・ルッペン」の入力をご担当いただいている方に申し上げます。

作業を引き継げないかとの打診を受けて、進捗状況とお気持ちの確認のためメールをお送りしましたが、お返事がありませんでした。
reception@aozora.gr.jp宛に、ご一報をお願いします。

本日から一ヶ月、ご連絡を待ちます。
一月を経て、連絡を取り合えない場合は、これらの入力を引き継いでいただこうと思います。また、同じく石川欣一の多数の作品の入力も一度白紙に戻したいと考えております。

作業の継続が難しくなった際は、皆さん、どうぞお気軽に、reception@aozora.gr.jpまでご連絡ください。
メールアドレス変更の際は、reception@aozora.gr.jp宛にご一報をお願いします。(門)

2015年07月28日 青空文庫の連絡先メールアドレスへの不達について
7月25日(土)の正午ごろから、info@aozora.gr.jp および reception@aozora.gr.jp の両メールアドレスにおいて、メールの受信ができない状態になっておりました。

現在は復旧できており、28日(火)未明までにお送り頂いたメールについては、順次受信が再開されている模様です。

25日以降にメールを送信した方にはたいへん恐縮ながら、お返事の方が遅れているかと存じます。(しばらくしてお返事のない場合は、ご再送願えると幸甚です。)

ご迷惑をおかけして、申し訳ありません。

2015年07月07日 18年めの7月7日に
ことしも青空文庫の誕生日、7月7日が無事にめぐってきた。18年めのきょうの公開作品は、片岡義男の長編小説『東京青年』。昨年に引き続き、青空文庫の記念の日に片岡義男の作品の公開を組み込んでくれた青空文庫と、躊躇なく公開を望んでくれた片岡さんに感謝している。ありがとう!

7月1日にはボイジャーで片岡義男の全著作電子化計画がスタートした。
http://kataokayoshio.com/

第一期として100作品の発売が予定されている。出版された単行本のとおりではなく、小説を一つの作品ごとにばらしての100作品だ。1日には50作が発売になり、月末には残りの50作が後を追う。

ある作家の作品がすべて揃っていて、その気になればいつでも読める状態にあるなら、それが無料であっても有料であっても、ありがたいことだと思う。だれもがそう思っていても、なぜだかそれを実現させているところはあまりない。「片岡義男の全著作電子化計画」はそうしたアーカイヴを作るという心意気の表明であるが、編集担当者のひとりとして、そのためにどのくらいの時間がかかるのかなど、よくわからないことは多い。でもそのためのドアは開いたのだ。青空文庫で公開されている作品はこれまで通り読むことができるし、片岡義男プロジェクトもこれまで通り、ゆっくりと続けていく。お互いにできることをしていけば、いつかどこかの時点で、補いあえるようになるかもしれないと夢想するのは楽しい。

5月の末には「本の未来基金」の香月啓佑さんの提案・呼びかけで、「「Code for 青空文庫」アイデアソン #1」という集まりがあった。青空文庫のサーバをどのように維持運営していくかという大きな問題を、「青空文庫をテクノロジーで支えることに興味のあるエンジニア」が集ってオープンに議論してみようという試みだった。
http://keisukekatsuki.hatenablog.com/entry/2015/06/02/203152

当日の報告は塚本牧生さんによるマガジン航の記事に詳しい。
http://magazine-k.jp/2015/06/23/toward-aozora-bunko-in-2018/

当日は午前中だけ参加して、受付を少しだけ手伝った。参加を予約してくれた若い人たちが次々と来てくれる。18年めを迎えた青空文庫は、たくさんの若い人たちに興味を持ってもらえ、何か関わってみたいという存在になったことがストレートに実感できた。これまでの18年間を経験していれば、この先が簡単な道のりでないことはよくわかっているけれど、それでも新しいドアが開いてふっと新しい風が入ってきた気持のよさは忘れがたい。

さらに、アイディアソンでのアイディアが実際に動き始めたことも報告しておきたい。「青空シャッカソン #1 〜青空文庫の入力ハッカソン〜」という。
https://atnd.org/events/67975

写経するように、入力+校正を体験してみようという試みのようだ。入力や校正は本来は孤独な作業だから、こういう機会に作業を共有することで、次のドアが開くのかもしれない。18年めの青空文庫は節目を迎えている。
(八巻美恵)

2015年06月27日 米国TPA法案可決をうけて、本日thinkTPPIPによる緊急生放送
先日の米国TPA法案の可決を受け、thinkTPPIP(TPPの知的財産権と協議の透明化を考えるフォーラム)から、TPP交渉の現状そしてTPPの知的財産条項に関してその問題点を解説するインターネット番組が、本日夜20:00よりニコニコ生放送にて実施されます。

詳細は、以下をご参照ください。
http://thinktppip.jp/?p=740

またthinkTPPIPでは、先だってアナウンスした通り、「TPP知財条項への緊急声明案の公開と、ご意見・賛同の呼びかけ」が行われています。
http://thinktppip.jp/?p=519
こちらもまた、ぜひご一読ください。

2015年05月15日 本の未来基金「Code for 青空文庫」アイデアソン実施のお知らせ
青空文庫をサポートする「本の未来基金」は、青空文庫をテクノロジーで支え、発展させるための新たな取組として、「Code for 青空文庫」を立ち上げ、アイデアソンを下記の要領で実施いたします。

青空文庫は現在エンジニアなしで5台のサーバを運用しており、またそれに伴うサーバの老朽化も問題となっています。そこで青空文庫が今後も発展を続けることができるよう、本アイデアソンを通して、青空文庫に興味をもっていただけるエンジニアの方を探し、安定した青空文庫の運営と、将来を見据えた青空文庫の形を模索して参ります。「Code for 青空文庫」の当面の大きなテーマはデータベースですが、今後も青空文庫を技術面でバックアップする活動を続けていく予定です。運営にかかる費用はこれまで本の未来基金に寄せられたみなさまからの寄付によって賄われます。また今回はアイデアソンの会場として、株式会社ブクログのご協力をいただけることになりました。

どうぞよろしくお願いいたします。(本の未来基金

        記

日時:2015年5月30日(土) 11:00〜17:00

会場:シナジーカフェ GMO Yours
東京都渋谷区桜丘町26番1号 セルリアンタワー11F
GMOインターネット オフィス内

実施概要:https://atnd.org/events/66230

2015年03月08日 「TPP著作権条項に関する緊急声明」について
先日来、国内各メディアからTPP(環太平洋経済連携協定)における知財条項案の妥結が近いとの報道がなされています。
その内容は、これまでにも過去の「そらもよう」や「aozorablog」でもたびたび触れてきたように、青空文庫および日本の文化に大きな影響を与えるものです。

そしてそうした動きに対して、TPPの知的財産権と協議の透明化を考えるフォーラム(ThinkTPPIP)が、「TPP知財条項への緊急声明案」を公開しました。

この緊急の声明について、ThinkTPPIPおよび本の未来基金から、連名で呼びかけを行うお誘いを受けました。そこで緊急性も求められることから、普段から作業の差配を担っているボランティアのなかで協議をし、以下の2点について、

  • 私たちは、わが国の文化・社会にとって重要な決定が国民不在の密室の中でおこなわれ、21分野一体のため事実上拒否できない妥結案だけが国民に提示される事態を、深く憂慮する。

  • 各国の利害対立の大きい知財条項を妥結案から除外して海賊版対策のような異論の少ない分野に絞り、さらに条項案を含む十分な情報公開を修正交渉が可能な段階におこなうことを、強く求める。


(保護期間延長への賛否など)個々人の著作権に対する考え方の違いはあったとしてもその憂慮に同意できるとして、またこれまでにもTPPに対する懸念をボランティア個々人からも発してきたことを踏まえ、まずは当文庫のなかに声明に賛同する人間がいることを示すため、「青空文庫有志一同」という名義で名を連ねることに決めました。

当文庫は2005年1月1日に「著作権保護期間の70年延長に反対する」と宣言し、以来サイトのトップページにも延長反対のロゴを掲げて活動してきました。
著作権法ではその第一条に、権利を定めて保護を図る一方で、作品が広く公正に使われることにも意を払うこと、保護と利用、双方を支えとして文化の発展を目指すことが謳われています。
だからこそ保護に期限を設け、社会の資産として広く活用されるよう願って、あるところで個人の手を離れるように定めています。
この文化の共有を公的に保証するあり方は、インターネットを得てはじめて、実効性のある仕組みとして機能しはじめ、そして簡便な電子端末を得てようやく、その益を広く享受できはじめています。
延長が現実のものとなれば、青空文庫含め、自分たちの文化を社会で共有していく試みが制約され、自由な文化は確実に狭くなっていくでしょう。
未来の文化を見据えればこそ、その可能性を減じてしまうような動きは看過することができません。

この緊急事態に青空文庫として全体で問題を共有したく、この「そらもよう」公開と前後して、青空文庫のボランティア作業に関わってくださったみなさまに対して、この記事とほぼ同内容のメールも一斉にお送り致しました。

そして工作員・耕作員・利用者としてTPP等今回の問題について発言したいことがある場合、また他のボランティアにも伝えたいことがある場合は、info@aozora.gr.jp まで、公表したい文章と「公開希望」の旨を届けて頂ければ(匿名でも結構です)、「aozorablog」に掲示いたしますので、忌憚なくご意見お寄せ頂けると幸いです。

また青空文庫は、各ボランティア間の協同活動を制限するものではありません。
具体的な活動・行動を起こしたいときにも、上記「aozorablog」の意見掲示を用いて、呼びかけることもできます。
青空文庫は、ボランティアひとりひとりの自発的な意思でもって活動している団体です。

現在の運営も、自分が広報をする、自分が点検をする、と手を上げたボランティアが担っています。これまでもそうでしたし、これからもそうです。
そして青空文庫に関係する今ある便利なアプリやサービスについても、利用者が自分から作ってきたものです。かつての署名運動や青空文庫DVDについても、ボランティアや利用者個人の自主的な活動から始まりました。
またThinkTPPIPの「TPP著作権条項に関する緊急声明」には、個人からも賛同できるようになりました。
そのほか必要だと思ったことについても、新たに自分から手を上げてくださるよう、期待しております。

2015年02月15日 萩原朔太郎「意志と忍従もしくは自由と宿命」ほか7作品の入力をご担当いただいている方にお願い
萩原朔太郎『虚妄の正義』を底本とする「意志と忍従もしくは自由と宿命」「芸術に就いて」「結婚と女性」「孤独と社交」「思想と争闘」「社会と文明」「著述と天才」の入力をご担当いただいている方に申し上げます。

作業を引き継げないかとの打診を受けて、進捗状況とお気持ちの確認のためメールをお送りしましたが、お返事がありませんでした。 reception@aozora.gr.jp宛に、ご一報をお願いします。

本日から一ヶ月、ご連絡を待ちます。 一月を経て、連絡を取り合えない場合は、これらの入力を引き継いでいただこうと思います。

作業の継続が難しくなった際は、皆さん、どうぞお気軽に、reception@aozora.gr.jpまでご連絡ください。 メールアドレス変更の際は、reception@aozora.gr.jp宛にご一報をお願いします。(U)

2015年01月01日 「エッセンス」としての本を残すために
ハッピー・パブリック・ドメイン・デイ! 本年も無事、この日を迎えることができました。

 尾崎 士郎「土俵の夢
 小杉 放庵「水墨
 斉藤 弘吉「私の飼った犬
 佐々木 邦「苦心の学友
 佐藤 春夫「オカアサン
 三遊亭 金馬「符牒の語源
 高群 逸枝「女性史研究の立場から
 辰野 隆「愛書癖
 光田 健輔「小島の春 03 序
 三好 達治「測量船

2015年1月1日、新たにパブリック・ドメイン入りした上記10人の著者の10作品を、青空文庫では公開致します。こうして今年も同じようにパブリック・ドメインを言祝げることを、ボランティアのひとりとしてたいへん嬉しく思います。

ただ、これまでと1つ変わったことがあります。というのも、例年であれば新年から新規に公開できるようになる作家の作品は、引き続き1月2日以降も公開しておりましたが、今年はその本格的公開を2月からにしたことです。
作業上の都合ではありますが、新規パブリック・ドメイン作品は、著作権法に厳密に解釈すると、新年にならなければファイルをデータベースに上げることができません。そのため1月に公開しようとすると、データベースを使わないで公開ファイルを作成することになるのですが、現行の作業バランスではこれを続ければどこかで必ず無理が生じると判断しました(すでにパブリック・ドメインになっているものの公開準備作業でも、今のところ作品の校了から公開まで半年ほどかかるのが通例です)。
青空文庫を継続していくためにも、やむをえないこととして、一時こうした措置を取りたいと思います。しばしお待たせして恐縮ですが、2月にはあらためて新規パブリック・ドメインの作品を公開して参りますので、あらかじめご容赦ください。

青空文庫は今年で活動開始から18年目となります。開設当初のころ、また運動を続けるなかで、同じようにテキストをアーカイヴする活動やサイトは、数多くありました。ですが振り返ってみれば、18年のあいだにその活動を停滞させたり、休止させたりしたものは少なくありません。

活動を続けるということはそれだけで難しく、点検チームはじめボランティアに従事している方々は(自分含め)、その困難さを日々痛感しております。それでも元旦にこうして数々の作品を、青空のもとで〈共有〉できるものとして送り出せるのは、ボランティアひとりひとりの尽力があってこそです。この年始にあらためて感謝申し上げます。

さてその〈共有〉という概念ですが、青空文庫を成立させる上での重要なキーワードでもあります。

既存の著作物の枠組みのなかでは、さかんに〈保護と利用〉という対立が持ち出され、(私たちも含め)各種デジタルアーカイヴでも〈著作物の公開〉というフレーズがよく用いられています。
しかし多くの場合、その〈公開〉という言葉には、自分たちの持っているものを一般に対して〈この場限り〉で〈見せてやる〉 〈読ませてやる〉といったニュアンスがつきまといます(さらに昨今、文化財の利用促進を目論んでなされるアーカイヴ論でも、こうしたある種の他人事めいた考え方の範疇を出ていないものが見受けられます)。

ですが青空文庫での〈公開〉は、けしてそのような意味ではありません。

むしろ〈自由〉に〈見てほしい〉 〈読んでほしい〉 〈残ってほしい〉、そして〈活用してほしい〉と、ボランティアひとりひとりが思った作品を自ら電子化し、青空という共有の棚へ並べているのです。同じ〈公開〉という用語でも、この場合の行為は〈公の場に開放している〉、と言い換えてもいいでしょう。

そして活用する側もまた、これに応じるように、自分から〈こう読んでみたい〉〈こう届けてみたい〉と考えて、自由なやり方でパブリック・ドメインを扱っていく。こうして18年のあいだに、様々な活用事例が生まれてきました。

今も青空文庫が続いているのは、早くにその〈共有のルール〉を定め、その存在が、当事者である電子化する人と活用する人に、自発的な共有の場所を提供してきたから、とも言えましょう。
公に広く開放された青空があって、そこにボランティアがそれぞれの考えから有名無名問わず〈共有したい〉と思った作品を集める――そしてそれを扱いやすいような形で、誰しもが楽しめるようにしておく――「青空文庫の提案」にもあるように、そこにこそ当文庫の存在意義があります。

もちろん、ここにあるのは、おそらくひとりひとりが愛しているであろう〈紙の本〉ではありません。
肌触りもなければ匂いもない、ただ自由なだけの〈電子の本〉です。
ですがそれはひとたび共有されれば、様々な場所で、いろいろな形で、読むことのできるものでもあります。

そうした自由なパブリック・ドメインの電子本とは、〈本〉という言葉が〈根本・本質〉を表すように、そもそもの〈エッセンス〉だけになった〈本〉とも考えられるでしょう。〈エッセンス〉だけであるからこそ〈自由〉でもある、とも言えます。

次の年始も、その〈自由な本〉へ新たに仲間入りをする作品たちをここでお知らせできるよう、心から願ってやみません。(U)


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