そらもよう
 


2014年11月09日 各種ビューワの不具合について
10月17日にミラーサーバーが完全停止したことに伴い、青空文庫のデータを利用した各種ビューワに、新着更新等にて不具合が生じているとの知らせをいただいています。
同ミラーサーバーが再開する予定は無く、完全な解決までにはもう暫く時間がかかる見込みです。
読者の皆様、ビューワの開発者の皆様にはご迷惑、ご心配をおかけして申し訳ございません。

また、先日ドワンゴに取得された「i文庫」シリーズについても、上記とは別の理由から新着更新ができなくなっているという情報が寄せられています。こちらにつきましては、新しいサービス元までお問い合わせいただけると助かります。

2014年10月09日 ミラーサーバーの停止
諸事情により、本日9日よりミラーサーバーを停止致します。
2001年の10月以来、TOLOT(旧OnTV Japan)様のご好意により運用提供いただいていました。(運用開始を伝えるそらもよう記事
13年間、青空文庫の重要なパートを支えていただきありがとうございました。

2014年09月16日 図書カードから縦書き読書サービスへリンク
本日公開分より、図書カードからウェブ上の縦書きサービスへリンクを貼ることになりました。今回新たにリンクしたのは、青空文庫の公開作品を縦書き化する、以下のふたつの無償サービスです。

青空inBrowsers」(株式会社ボイジャー)
えあ草紙・青空図書館」(佐藤和彦さん)

それぞれ図書カードに設置されたボタンをクリックすると、ご覧のブラウザ上で、当該サービスを用いて青空文庫のファイルが縦書きで閲覧できるようになります。読みやすくなるばかりでなく、様々な読書支援機能もついています。どうぞご活用ください。(どちらも、お昼までには当日の新規公開分が閲覧可能になるそうです。)両サービスの運営者・開発者のみなさまに、心から御礼申し上げます。

そして過去の公開作品については順次、図書カードを更新して参ります。

なお、図書カードからのリンクは、いずれも作品IDがキーになっています。今後、青空文庫を用いたウェブサービスをされる際には、同様に作品IDをキーにして頂けると、こうした連携も取りやすくなります。制作・展開の際、ご念頭に置いて頂けると助かります。(U)

2014年09月15日 TPPによる著作権保護期間延長が行われた場合の青空文庫の対応
 著作権保護の国際標準はヴェルヌ条約で定められた50年である。しかし、今TPPに対応して、保護期間を70年に延長しようとする動きがある。具体的に、70年に延長された場合の青空文庫の対応をのべておきたい。

 70年への延長が今年の年内に起ったとする。来年年頭、再来年年頭から公開可能になる作家(三好達治、江戸川乱歩など)の作業受付を停止する。来年年頭から公開可能な作家は2035年年頭から、再来年年頭から公開可能な作家は2036年年頭から公開可能になるからだ。現在、進行中の作業は一時、取りやめにすることになる。遡及されなかった場合には、現在公開しているファイルに変化はない。ただ、今後20年新規作家の追加は起らないことになる。

 法の精神からは遡及はない、という意見もある。しかし、EUの保護期間延長の際に、各国の協調という観点から遡及されたことがある。今回もTPP各国の協調を理由に遡及される可能性はある。では、遡及された場合に何が起るのだろうか。これも今年中に70年への延長、遡及が起ったと仮定する。今年2014年に公開が可能になる作家は、1943年までに亡くなった作家となる。現在、著作権切れの作家は572名を登録し、作品を公開している。保護期間が70年に延長、遡及されると、これが288名となり、現在の公開ファイル数、12513が5793となり、実に現在46%になる。70年延長で消える、50以上の作品を公開している作家は以下の通りである。上村松園、海野十三、小川未明、織田作之助、折口信夫、片山広子、菊池寛、岸田国士、北大路魯山人、楠山正雄、幸田露伴、坂口安吾、佐藤垢石、神西清、太宰治、豊島与志雄、戸坂潤、中井正一、永井荷風、野村胡堂、林芙美子、原民喜、久生十蘭、堀辰雄、宮本百合子、村山籌子、吉川英治。太宰治まで公開できないことになる。青空文庫ができた当時に作られた死せる作家の会にリストアップされている作家の著作権は全て復活し、公開できなくなる。著作権の消滅した作家名一覧も一部は、公開できなくなる。こういった作家のファイルを、延長の成立とともに、「校了」のステータスに変更し、データベースからファイルを削除することが青空文庫の対応である。また、2015年年頭には、中里介山(1885年4月4日〜1944年4月28日)、矢田津世子(1907年6月19日〜1944年3月14日)、蘭郁二郎(1913年9月2日〜1944年1月5日)の作品が新規公開となる。今後20年で失われるものは、20年遡及された場合と同等か、それ以上であると思われる。実に6000ファイル以上の作品が公開から遠ざけられるのである。

 再び言う、著作権保護の国際標準はヴェルヌ条約で定められた50年である。70年への延長が意味するものは、延長の長さの歯止めをなくすことでもある。国際標準が意味を持たなければ、次は100年、120年への延長が行われるだろう。TPP加盟国のメキシコの著作権保護期間は100年である。メキシコにあわせよう、という声が挙った時に、70年にとどめる理由はどこにもない。

 100年の著作権保護期間の意味を考える為に、100年に延長された時に青空文庫に何が残るのか、を考えてみよう。2014年に100年に延長され、遡及が適用されたとすると、1913年までに亡くなった作家のみを公開出来ることになり、作家数53、ファイル数659にまで落ち込む。実に現在の5%である。今年100年に延長されるのが極端な例ならば、20年後、70年の保護期間が切れそうになる頃に100年へと延長、遡及が起きた場合を考えてみよう。この場合、1933年までになくなった作家を公開することができる。作家数170、ファイル数2608で、現在の20%を公開出来るに過ぎない。また、三好達治、江戸川乱歩は、2065年、2066年の年頭から公開可能になる。

 最後にもう一度、著作権保護の国際標準はヴェルヌ条約で定められた50年である。保護と利用のバランスを考えることは必要であろう。しかし、TPPのついでのように、延長されることは避けなければならない。この国際標準を堅持することに何の恥じらい、ためらいがあろうか。

2014年08月08日 誤植指摘にともなうファイル修正ボランティアの募集
青空文庫では日々作品の電子テキストを細心の注意を払って新規公開しておりますが、ミスとは無縁ではありません。
読者のみなさまから、日々、誤記・誤植等のご指摘を頂いております。
これまで訂正・修正の必要なファイルが溜まるたびに、その都度、修正作業に携わって頂けるボランティアを募集して参りましたが、このたびも協力してくださる方を募りたく、告知致します。

参加をご希望の方は、以下のアドレスまでメールをお送りください。
aozora_teisei@ag-n.jp
耕作員・工作員経験者、そのほか未経験者の方(特に青空文庫のテキスト版注記にご興味をお持ちの方)も歓迎します。

今回、ファイル修正ボランティアを募集するのは、大きく分けて2つの理由があります。

  1. 頂いたご指摘を確認するためには、再度底本を調べなければなりません。しかし、図書館に所蔵されていない本も多く、確認までに時間がかかる事が多々あります。そこで多くの方のご協力があれば、底本に出会える機会も増え、その分作業が速くなるからです。

  2. またテキスト版を修正したあと、それをもとに XHTML ファイルを自動作成しております。その際、当該ファイルの制作時期が古い場合は、現行の注記形式に改めなければならないからでもあります。

作業の都合上、注記形式とにらめっこすることにもなりますが、必ずしも最初からマニュアルに習熟していなければならないわけではありません。
チームの者が指導致しますので、青空文庫への参加の有無にかかわらず、電子書籍のマークアップとしての注記形式にご関心をお持ちの方など、広くご協力して頂けると助かります。

みなさまのご参加を、aozora_teisei@ag-n.jp にてお待ちしております。

2014年07月16日 鳥取オフ会報告
さる7月12日土曜日に、鳥取市内でオフ会を開催しました。参加者は私を含めて四名です。
全員青空文庫のオフ会に参加した経験があるものの、中には最後にオフ会に参加したのが十年以上も前という方もいらっしゃいました。名前だけは知っていても会うのはお互い初めてという方も。

しかし、集合した瞬間から参加者の皆様は意気投合。市場の中の食堂・県立図書館の二階・公文書館のロビー・図書館近くのカフェ、そして地元産の魚を出すお店へと移動するその間も、
青空文庫収録作品の話からSFの話、映画の話、音楽の話、山陰の話、かつてお会いした方々の思い出、と話題は尽きません。

話が途切れたのは、地元産の魚を出すお店で焼きたての縞鯛を一斉に食べはじめた時ぐらいでしょうか。

参加者それぞれの好みがはっきりしているために、話していても意見が一致することがほとんどありませんでした。それでいて終始明るく和やかな9時間超でした。

最後に参加者の一人から寄せられたコメントを紹介します。
-----
楽しい会でした。幹事のJukiさんの思惑を思いっきりはずして、どこでも話し続ける4人(3人?)でした。Jukiさん、幹事ご苦労様でした、そしてありがとうございました。
-----
(Juki)

2014年07月07日 青空文庫の誕生日に
集団的自衛権の行使容認が閣議決定され、TPP交渉では著作権保護期間が70年に延長される見込みらしい。こんな先行きの暗い世の中でも青空文庫の誕生日はめぐってくる。

7月7日、記念すべき青空文庫の17回めの誕生日に片岡義男『エルヴィスから始まった』を公開した。「エルヴィスから始まった」のはロックンロールだが、同時にこの作品は書く人としての片岡義男が始まった記念すべき一冊でもある。

作品の公開予定はだいたい数ヶ月前に月ごとにきめている。それから公開に向けて各ファイルの素読みという最後のチェック作業がある。そこで改めて見つかる問題も多く、もう一度底本にあたって修正を加える。少なくとも毎日ひとつの作品がこうした作業の結果として公開されていく。きょうもそうした毎日のなかの一日であり、『エルヴィスから始まった』は公開されていく作品のひとつであって、そこに特別なことはなにもない。けれども、青空文庫としてはまだ異例の著作権存続中の作品の公開として、大事に見守られているということはいえるだろう。現役の作家である片岡義男さんの公開への意思にも感謝したい。

暗い時代にも小さくともる灯りはある。見えにくい灯りであってもそれを絶やさずにいくことは、この時代を生きている者のつとめだと思う。(八巻美恵)

2014年06月09日 鳥取オフ会のお知らせと、各地オフ会の情報募集について
過去の「そらもよう」を見ていただくと気づかれるかと思いますが、2003年以来ほぼ毎年、東京国際ブックフェアもしくは青空文庫誕生日(7月7日)に近い週末に、東京かその近辺でオフ会が開催され、工作員、読者、開発ツール作成者の皆様の交流を図ってきました。また、「そらもよう」では告知されないまでも、有志の皆様により、各地で小さなオフ会が開かれてきました。

しかしながら昨年はオープンなオフ会が開催されず、今年もブックフェアが近づいたのに関東方面は静かで、オフ会をしようという声が聞こえてきません。

ならば、余り大掛かりな事はできないけれど東京以外でもオフ会を開こう、と私は考えました。そう考えるようになったのは、来月、青空文庫工作員のお一人が、出張で私の住んでいる山陰地方に立ち寄られるのを知ったことからでした。大まかな予定は以下の通りです:

日時:2014年7月12日(土)
第一部:午後から夕方まで(はっきりした時間帯は参加者の状況によります。内容は未定です)
第二部:18時頃〜汽車が動いている時間内に終了予定
集合場所:第一部・第二部共に、鳥取駅改札口付近

第一部は、何をするのかは未定です。参加される方からのリクエストをお待ちしています。
第二部は、地元産のお魚主体のお店で夕ご飯の予定です。

お問い合わせ、参加ご希望の方は7月1日までに *** までご連絡下さい。第一部から参加される方は、第一部で何をしたいのかの希望も教えて下さい。
(7月2日追記:締切りが過ぎましたので、メールアドレスを削除しました。)


そして皆さまに提案です。自分の住んでいる県でオフ会を開いてみませんか。
この記事をお読みの工作員さんや読者の方、開発ソフト等を作ってらっしゃる方で、自分の所でも青空文庫関連のオフ会を開きたい、もしくは開く予定がある方はいらっしゃいませんか。

info@aozora.gr.jp まで、日時・場所・連絡先・(できれば)内容などの情報をお寄せ下さい。
「そらもよう」でお知らせ致します。(Juki)

2014年06月01日 村井 弦斎「食道楽 夏の巻」の入力をご担当いただいている方にお願い
村井 弦斎「食道楽 夏の巻」の入力をご担当いただいている方に申し上げます。

作業を引き継げないかとの打診を受けて、進捗状況とお気持ちの確認のためメールをお送りしましたが、お返事がありませんでした。
reception@aozora.gr.jp宛に、ご一報をお願いします。

本日から一ヶ月、ご連絡を待ちます。
一月を経て、連絡を取り合えない場合は、これらの入力を引き継いでいただこうと思います。

作業の継続が難しくなった際は、皆さん、どうぞお気軽に、reception@aozora.gr.jpまでご連絡ください。
メールアドレス変更の際は、reception@aozora.gr.jp宛にご一報をお願いします。(門)

2014年05月27日 著作権保護期間延長の動きに対する青空文庫としての対応、2013年まで
著作権保護期間延長の動きに対して、青空文庫は主に三つの活動を行なってきました。それは、「パブリックコメントの提出」と「署名活動」、そして「他団体との連携」です。青空文庫呼びかけ人の富田倫生さんが主な推進役として昨年まで活動を担ってきました。
(以下、丸括弧内の日付とリンクは、特に断り書きがない場合は「そらもよう」の記事公開日と記事へのリンク。)

1 パブリックコメントへの参加

・文化庁が2004年10月8日から21日まで受け付けていた「著作権法改正要望事項に対する意見募集」に、皆で意見を送ろうと富田さんが(初代)aozorablogで提案したのが、青空文庫としての最初の行動と思われます。

・2008年3月、「知的財産推進計画2007」見直しに際しての意見募集を紹介。(3月20日「著作権保護期間延長反対署名第二期の集計結果」)

・同年11月、文化審議会著作権分科会「過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会中間整理」に関する意見募集の紹介。
(10月13日「延長問題審議委員会のまとめにあなたの声を」、11月2日「私が送った「中間整理」へのメッセージ」)

・2009年11月、鳩山首相と川端達夫文部科学相が相次いで著作権保護期間70年への延長へ努力する旨の発言をしたのを受けて、当時の掲示板「こもれび」で民主党へ意見を送ることを提案。
(参考:11月19日「著作権保護期間50年を生かす!」、11月24日「青空文庫半減を憂うる民主党へのメール」)

・2013年7月9日、内閣官房TPP政府対策本部が募集していた「政府の交渉方針等に関する業界団体側の意見」に対して、富田さんは個人の立場でも意見を提出できると電話で確認し、Twitterと掲示板「こもれび」にて、同月17日(水)17時までに意見を寄せようと呼びかけ。
(参考:「各団体からの意見提出に関する情報(第1回)(関係団体への情報提供)」(内閣官房TPP政府対策本部))


2 署名活動

2007年元旦の「そらもよう」にて、一つの宣言が出されました。
「青空文庫は、今日から、延長に反対する署名活動を進める。」
この宣言の通り、「著作権保護期間の延長を行わないよう求める請願署名」を集め衆議院に提出する活動を二期に分けて行ないました。

署名の解説と状況を伝えるページを新たに作り、有志によるプロモーションビデオも同頁で公開しました。
請願署名の資格が無い海外の読者にも状況を知ってもらう為に、英語によるページも公開しました。

第一期の署名受付は2007年1月1日から同年4月30日まで。第二期は同じ年の7月7日から2008年2月29日まで。第一期第二期共、集計後には国会法第9章に定められている「請願」に則って民主党の川内博史衆議院議員に署名簿を添えた請願書を預け、衆議院議長への「紹介」を依頼しました。

第一期の署名簿と共に届けられた誓願「著作権保護期間の延長反対に関する請願」の結果は、
第166回国会(常会)、文部科学委員会において審査未了
第二期の署名簿と共に届けられた誓願「著作権保護期間の延長反対に関する請願」の結果も、第169回国会(常会)、文部科学委員会において審査未了でした。


3 他団体との連携

・2006年11月8日、「著作権保護期間の延長問題を考える国民会議(国民会議)」が発足。発起人の一人から声をかけられた富田さんは快諾、青空文庫呼びかけ人の立場として発起人に加わりました。(後に「著作権保護期間の延長問題を考える国民会議」は「著作権保護期間の延長問題を考えるフォーラム(thinkC)」と改名。)

次の日、富田さんは「国民会議」発足と発起人参加の報告、並びに12月11日の「国民会議」第一回公開シンポジウムの案内を「そらもよう」上で行ないました。
(11月9日「「著作権保護期間の延長問題を考える国民会議」発足」)

・2012年12月初旬、「一般財団法人インターネットユーザー協会」(MIAU)と thinkC、「クリエイティブ・コモンズ・ジャパン」合同で「TPPの知的財産権と協議の透明化を考えるフォーラム(thinkTPPIP)」が結成されました。
同フォーラムが出した「TPPの知的財産権と協議の透明化を考えるフォーラム 提言」の賛同者として富田さんの名前が入っています。

・2013年6月29日、thinkTPPIP 主催のシンポジウム「日本はTPPをどう交渉すべきか ~「死後70年」「非親告罪化」は文化を豊かに、経済を強靭にするのか?」に登壇者の一人として富田さんが参加。生前、富田さんが公開の場で意見を述べた最後のイベントでした。
当日の映像と、登壇者による当日のスライド資料が公開されています。

「今、TPPの枠内で扱われようとしている表現の自由、拡散、保存と参照の機会の確保の問題は、本来、経済の枠におさまらない。経済を越えた要素を含む問題を、経済の枠内で扱う羽目に陥っていいるのだと、交渉担当者には胸に刻んでほしい。」(原文ママ)(富田さんによる当日のスライド資料より )

・同年9月25日、『富田倫生追悼イベント』が開催され、第一部の記念シンポジウム「青空文庫の夢:著作権と文化の未来」で改めて著作権保護期間延長についての問題が話し合われました。青空文庫も共催に加わりました。

近日中に、小年代記風に記述し直した記事をaozorablogに掲載する予定です。
(2014年6月2日追記:
著作権保護期間延長の動きに対する青空文庫としての対応、2013年まで(クロニクル風)」の題名でaozorablogに公開しました。)(J)

2014年05月22日 TPPによる著作権保護期間延長の危機に際して
もうすでにご存じかもしれませんが、5月13日以後、各報道機関から環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の知財交渉について、著作権保護期間が著作者の死後70年で統一される方向で調整されているとのニュースが報じられています。

青空文庫は、呼びかけ人である富田倫生氏を旗振り人として、こうした保護期間の延長の動きに対し、以前より一貫して反対の姿勢を採ってきました。それは、保護期間の延長が、私たちの今後得るはずの共有財産の幅を狭め、それどころか現在共有している財産すらも多数失わせるおそれのあるものだからです。

具体的に言えば、もし死後70年になれば今後20年間、青空文庫は毎年元旦のパブリック・ドメイン・デイを祝うことができなくなり、少なくとも20年のあいだ(あるいは延長に延長が重なればそれ以上の期間)新たに公有に帰する作品が現れなくなります。そして万が一、その延長がこれまで公開されているものに対して、遡って適用されれば、今青空文庫で読める多くの作品が、ある日を境に青空の棚から消されてしまうでしょう。

もちろん、法律は遡って適用されることはないのが原則ではあります。ところが富田氏は、そのことはじゅうぶん承知の上で、遡及延長が「ありえる事態」として、警鐘を鳴らし続けていました。

青空文庫の実務に携わる者としては、どうしても本が棚からなくなる日のことを考えざるを得ません。保護期間が延長されれば(あるいは遡って保護が復活すれば)契約して許諾を取ればいいという人もいるでしょうが、出版社ならぬ青空文庫はそもそも利益のための活動をしておりませんから、契約料や印税を支払い続けることはできないでしょう。それに、その契約には共有され自由に活用されうることが想定されてはいないでしょうから、結局はまったく意味のないことです。

本が自由であることと、認められた人にしか読めないことは、計り知れないほどの大きな差があります。今後の情勢として、まだはっきりしたことがわかっているわけではありませんが、予断を許さない状況にあることはおそらく間違いないのでしょう。

青空文庫では、この問題についてこの「そらもよう」や「aozorablog」で、積極的に意見発信をしていきたいと考えています。TPPや著作権保護期間延長についてのさらなる懸念、これまでの延長反対活動や資料のまとめ、私たちに今できることの提案、個人的な想いや意見など、掲示していければと思います。耕作員のみなさまや大勢の協力者・利用者のみなさまからも、公に表明したいご意見があれば、info@aozora.gr.jp までお寄せ頂けると幸いです。

2014年01月01日 「青空文庫」が普通名詞化する未来に向けて
ハッピー・パブリック・ドメイン・デイ! 今日この日から、またほんの少し世界が変わります。

 石原忍「色盲検査表の話
 井上貞治郎「私の履歴書 ――放浪の末、段ボールを思いつく
 小津安二郎「ここが楢山 〈母を語る〉
 久保田万太郎「春泥
 河野広道「性に関するアイヌの習俗
 佐佐木信綱「芳賀博士
 野村胡堂「随筆銭形平次 14 捕物帳談義
 橋本多佳子「椎の実
 長谷川伸「カン
 山之口貘「詩とはなにか

青空文庫では2014年1月1日、以上、新たにパブリック・ドメイン入りした10人の著者の10作品が公開されます。

昨日まで自由に共有できなかったものが、今日からは文化の宝として、共に分かち合うことが法的に保障されるというわけです。
極東の島国におけるこの変化は、大きな政治や経済で見れば、あるいは大きな歴史や世界のなかでは、小さいことなのかもしれません。
いえ、この小さな国の固定化された〈文学〉というカノンのなかでは、忘れられた作家たちの作品群など、大きな枠組みを見るまでもなく小さいと、〈本物〉ではないと捨て置かれてしまうのでしょう。

しかし、年始のパブリック・ドメイン・デイを言祝ぐのは、その〈忘却〉に対して、今を生きる個々人が抵抗できるようになるからでもあります。

 先人たちが積み上げてきたたくさんの作品のうち、著作権の保護期間を過ぎたものは、自由に複製を作れます。私たち自身が本にして、断りなく配れます。
 一定の年限を過ぎた作品は、心の糧として分かち合えるのです。
 私たちはすでに、自分のコンピューターを持っています。電子本作りのソフトウエアも用意されました。自分の手を動かせば、目の前のマシンで電子本が作れます。できた本はどんどんコピーできる。ネットワークにのせれば、一瞬にどこにでも届きます。
 願いを現実に変える用意は、すでに整いました。

上のように記された「青空文庫の提案」を、今年は新たなるパブリック・ドメイン作品と同時に登録したいと思います。
この文章のなかでは、分かち合う本のことは〈青空の本〉と呼ばれ、その本を集める場所については〈青空文庫〉と名付けられています。今日この文章を単なる青空文庫の内部文書としてではなく、広く読める「作品」として改めて登録するのは、パブリック・ドメインを積極的に社会で共有していくという思想・理念について、今まで以上に知られてほしいと願うからです。

今でこそ〈青空文庫〉は特定のボランティア活動を指していますが、〈青空の本〉を集める場所をひとつに限定する必要はありません。
青空の本のための本棚は、いえ〈青空文庫〉は、理想を言えばいくつあってもいいのです。
特定の活動や団体にとらわれることなく、社会全体がパブリック・ドメインを適切に共有し、うまく活用していこうとして初めて、本当にパブリック・ドメイン・デイを言祝ぐことができるようになるのだと思います。

現在、検索サイトで〈青空文庫〉というフレーズを入力してみると、固有名詞とは違う用法が見つかることがあります。
広い意味での〈共有本棚〉という用例もあれば、パブリック・ドメイン作品の〈集成〉というニュアンスに用いられることもあるようです。
また昨今の電子出版の流れに目をやれば、パブリック・ドメインを活用した商品やソフトウェアにその名が冠されることもあり、青空文庫の書庫がそのまま別のサイトにコピーされて再配布される場合でも、同じく〈青空文庫〉と称されていることに気づかされます。

2014年の今から「青空文庫の提案」を振り返ると、冒頭にある同名の一節は、固有名詞を超えた普通名詞としての青空文庫を宣言しているようにも読めます。
パブリック・ドメインの共有を、普遍的に――

〈青空文庫〉という言葉が特定の活動を離れていくのであれば、この宣言もまた、いずれ社会へと還っていくのでしょう。
であれば、少数の人間の手元にとどめておくといった、そもそもの理念に反することを、どうしてできるでしょうか。
パブリック・ドメインの共有に携わる者として、まずはこの「青空文庫の提案」をクリエイティブ・コモンズのBYで、公開したいと思います。

そしてその作業と並行して、「提案」以外のトップページからリンクされているコンテンツの見直しも図りました。
(青空文庫サーバの外部にあるものは、用意してくださった有志の方々とのご相談の上)長らく更新できなかったものや維持に困難があるものについて、新年よりトップページからのリンクを外すことにしました。
おひとりおひとりここで名前を挙げられず恐縮ですが、これまでご協力いただいた皆様に、同じボランティアのひとりとして改めて感謝の意を表したいと思います。本当にどうもありがとうございました。

同時に、「青空文庫のしくみ」「青空文庫早わかり」については現状に合わせて更新しました。
とりわけ後者は、度重なる追記により〈早くわかれない〉という問題が生じていましたが、今回必要最小限の内容を残し、その項目の大半を旧「青空文庫Q&A」を改訂した「青空文庫FAQ」へと移しました。
「FAQ」にはそのほか、これまで青空文庫の活動のなかで重ねられた質問・疑問などを集約してあります。うまくご活用いただけると助かります。

青空文庫は前年、その活動の推進役であり要でもあった富田倫生さんを亡くしました。
富田さんと付き合いのあった人は誰しもお感じのことだと思いますが、彼の代わりになる人は、この世に誰もいません。
富田さんの不在を誰にも埋めることができない以上、(狭義の)青空文庫としてはひとまず今後、残された自分たちにも可能かつ存続に必要な活動に限定し、省力化していくほかないでしょう。
具体的には、ボランティア活動としての作業と差配、ファイルの点検・公開、有償校正の確立、サーバの管理などにしばらく専念することになると思います。
それでいてボランティアの育成や、入力・校正支援のためのツールの開発、存命作家の作品登録再開も、大きな課題として残っています。

しかし、富田さんの逝去を機に、「本の未来基金」も前年に設立されました。
昨年末、TPPの知財問題に関連した活動を基金が支援したように、かつて富田さんが担っていた活動は、(狭義の)青空文庫の外、ひとりひとりの意思によって引き継がれていくことになるはずです。
その意思さえあれば、あるいは基金のような大きな後ろ盾を得られれば、ボランティア活動の枠を超えた課題も、解決することができるかもしれません。
〈青空文庫〉という言葉の意味が広がっていくとすれば、そういったパブリック・ドメインの共有を育んでいく活動も、〈青空文庫〉と呼んでもいい未来がそのうちに来るのでしょうし、今からそういう未来を作っていくことは、きっと難しいことではありません。

生前の富田さんは、お願いごとをたくさん受けておられました。
彼がいなくなった今、お願いする個人を別に探しても、やはりひとりの人物としては誰も見つからないでしょう。
ただし、それぞれが富田さんのある部分を少しずつ、自分なりに引き受けてみることはできます。

そこで私は、青空文庫の〈子ども〉として、まずは2014年の元旦に深呼吸をして、叫びたいと思います。

ハッピー・パブリック・ドメイン・デイ!(U)


1997年のそらもよう
1998年のそらもよう
1999年のそらもよう
2000年のそらもよう
2001年のそらもよう
2002年のそらもよう
2003年のそらもよう
2004年のそらもよう
2005年のそらもよう
2006年のそらもよう
2007年のそらもよう
2008年のそらもよう
2009年のそらもよう
2010年のそらもよう
2011年のそらもよう
2012年のそらもよう
2013年のそらもよう
トップページへ