そらもよう
 


2022年12月23日 青空文庫の新サーバーおよび新システムの導入に際しての充電期間の設定について
日ごろ青空文庫の活動を支えて下さっているみなさま、また青空文庫のアーカイヴを日々お楽しみいただいているみなさまに、ご連絡差し上げます。

おかげさまで25周年を迎えました青空文庫は、この数年、これまでにないほどのご愛顧とご協力をたまわっております。心から感謝申し上げます。
とりわけ、コロナ禍にあっても、今までにないくらい活発な入力・校正活動と、数多くのユーザーのみなさまによるアーカイヴのご活用があり、たいへんありがたく思っております。

そのようななか青空文庫は、2022年1月1日および7月7日の「そらもよう」でも触れてきたサーバーおよびシステムの「式年遷宮」についても、各方面から多大なご協力を得ながら着実に進め、ようやくその検証と移行を行う目処もついてきました。
近々実施に向けての本格的な対応を始めますが、そのためには、現在運用しているシステムやサーバー、そしてボランティアの作業フローをいったん休止させる必要があります。

つきましてはその準備のためにも、たとえば文学館がリニューアルのための休館期間を設けるように、青空文庫でも、まずは新年1月1日から1年間の充電期間を設け、いったん入力・校正の新規受付とファイル受領点検業務を休止し、作品の新規公開についてもペースを落として対応したく思います。
直前の告知となりますが、ご理解とご協力のほどをお願い申し上げます。

その一方で、2020年7月7日以降、「そらもよう」でもお知らせしましたように、コロナ禍で一時お休みしていた受付・点検の制限付き再開を続けていますが、受付・点検チームはごく少人数で作業にあたっているため、現状として、活発化する入力校正と、それに対する受付点検のバランスがかなり大きく崩れており、通常の作業ペースが保てなくなっていることも事実です。
これから青空文庫は充電期間に入りますが、こうした問題を乗り越えてアーカイヴ活動を継続的に維持していくためには、その期間中に、ボランティア全体が協力して、崩れてしまったバランスを前向きに改善することが不可欠です。

充電期間中には、新たな特務チームを結成して、将来的により多くのボランティアが高品質のファイル作成や受付点検にも携われるよう技術面・管理面のトレーニングの機会を作り、また活動に関する情報交換や新システムの改善に向けてのコミュニケーションの場も設け、その間の活動の力を今後の発展のために振り向けられればと思っています。
以降の全面再開については、こうした活動の進捗やボランティアそれぞれの自主性次第で大きく変わってくるかと思いますので、長期的にボランティアに関わろうとお考えの耕作員のみなさまは、ぜひ積極的な参加のご検討をお願いします。

詳しいお知らせにつきましては、来たる新年元旦以降を予定しておりますので、今後も「そらもよう」からの告知をどうかご注視いただけると幸いです。

2022年07月07日 青空文庫の「式年遷宮」に向けて
本日、青空文庫は25歳を迎えました。1997年7月7日に「青空文庫の提案」がまとめられ、それから25年の月日が経ちました。
これまでボランティアとして入力校正作業やプログラム開発などで支えてきてくださった皆様、また青空文庫のテキストを楽しく活用してきてくださった皆様に、心から感謝申し上げます。

いちばんシンプルなかたちで変わらないものをお届けすることを題目に、主に扱うデータは「テキストファイル」であると定めて25年、ボランティアひとりひとりが「この作品を」と選び決めながら、その文字情報という素のままの言葉の連なりを青空文庫はずっと提供してきました。
そのために、「注記一覧」という工夫を用いながら、数々の文芸をデータ化してきましたが、今ではこの方式は青空文庫の外でも、さまざまに活用されてきています。

しかし、データの本質は変わらずとも、それを提供するハード面は日進月歩で進化し、そのかたわらで、青空文庫で用いてきた機材が日々消耗していくのもまた事実です。
そこで、ちょうど5年前、青空文庫20周年の節目の年には、老朽化したサーバをクラウドに移管する作業を行いました。
そして翌2018年の元旦そらもようで触れた青空文庫の次期サーバ開発とリプレイスメント、いわゆる「式年遷宮」は、この5年の間、「本の未来基金」(https://honnomirai.net/)経由の寄付金援助を後ろ盾に、「#aozorahack」(https://aozorahack.org/)をはじめとする多くの人たちの力も借りながら、今しっかりと形になりつつあります。

一方でまた、青空文庫のサーバから送信されるメールのやりとりの不調も、この数年続いています。
とりわけこのところ、新規のボランティアで gmail アカウントの方には、こちらからお送りする確認や依頼のメールが不達となったり、迷惑メール判定されてしまうなど、様々不都合をおかけしております。
(該当する方はぜひご自身のアカウントの設定も、再確認よろしくお願い申し上げます)
こちらについても、問題が解消できるよう優先課題として順位を上げて、具現化していく式年遷宮と並行して対応や改修も含めて検討しておりますので、(もうしばらくご面倒をおかけしてしまいますが)お待ちいただけると幸いです。

本年の元旦には、国内各種デジタルコンテンツの横断検索サイト「ジャパンサーチ」(https://jpsearch.go.jp/)とのメタデータ連携を目指して、「青空文庫収録ファイルの取り扱い規準」のライセンス案内を改訂しましたが(そらもよう「2021年12月1日付」「2022年1月1日付」)、こちらについても現在、各関係機関と書類の内容を詰めながら、折衝を進めています。
青空文庫としても、近いうちに明るいご報告ができることを期待しています。

そのほか、「青空文庫FAQ」および「直面した課題」のページに、新しい情報を追記しました。
「直面した課題」は、青空文庫が開設以来向き合ってきた様々な問題や、そのなかで見いだした発展の糸口などを、記録し保存しているページです。
今回触れた「式年遷宮」をめぐる取り組みについても、「「Code for 青空文庫」アイデアソン」、「Aozorahack Hackathon #1」、「青空文庫20周年記念シンポジウム「青空文庫の今とこれから」」などの項目で、青空文庫を技術面で支えるみなさんの尽力が報告されています(ありがとうございます)。
このページは、25年にわたる青空文庫の歩みが、(日々生まれる電子テキストそのもの以外では)最も凝縮された場所とも言えるでしょう。青空文庫の活動にご関心のある方々は、折に触れて目を通していただけると幸甚です。

このコロナ禍でかつてのように実際の会場で何かのイベントを行うのはやはりまだ難しくはありますが、せっかくの25周年、オンラインで何かしらささやかな催しができればと思っております。
詳細が決まりましたら、今日も晴れ渡っているこの「そらもよう」で、あらためてお知らせいたしますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。(U)

2022年02月28日 牧野富太郎「私の信条」の校正をご担当いただいている方にお願い
牧野富太郎「私の信条」の校正をご担当いただいている方に申し上げます。

作業を引き継げないかとの打診を受けて、進捗状況とお気持ちの確認のためメールをお送りしましたが、不達でした。
reception@aozora.gr.jp宛に、ご一報をお願いします。

本日から一ヶ月、ご連絡を待ちます。
一月を経て、連絡を取り合えない場合は、校正を引き継いでいただこうと思います。

作業の継続が難しくなった際は、皆さん、どうぞお気軽に、reception@aozora.gr.jpまでご連絡ください。
メールアドレス変更の際は、reception@aozora.gr.jp宛にご一報をお願いします。(門)

2022年01月01日 みんなで作るテクスト共同体のその先へ
長く険しいこの2年間を抜けて、2022年にたどり着くことができました。わたしたちの世界に残されたわざわいの爪痕のことを想いながら行く年に祈りを捧げつつ、この来る年を無事に迎えられたことを素直な心で言祝ぎたいと想います。

本年の青空文庫を始めるにあたって、3が日は以下の作品を公開いたします。

1月1日:円城 塔「鉄道模型の夜」、澤西 祐典「くじらようかん」、福永 信「三重塔にて
1月2日:尾崎 士郎訳「現代語訳 平家物語 01 第一巻
1月3日:鴨 長明、佐藤 春夫訳「現代語訳 方丈記

元旦に公開される福永信・澤西祐典・円城塔の三氏の作品は、2017年始に青空文庫に収録された「文学への誘い 別府を読む×別府を書く」における企画作品と同じく、著作者自身の希望によって登録されるものです。
三氏が全国各地を訪れ、その地域を題材に書かれた青空文庫収録作品を読み分析し、その上でその地を舞台に新たな創作を行うという一連のワークショップ企画は、別府ののちにも続けられ、これまでに富山・静岡・尾道・岡山・鴨川がその目的地となっています。
今回青空文庫に加わるのは、そのうちの尾道回。2018年12月8日に開催された「尾道を読む、尾道を書く。」(第10回おのみち文学三昧)をもとにして、『すばる』誌に「競作 尾道を書く」として発表された作品です。着実な積み重ねに感歎するとともに、再び作品を迎えられてたいへん嬉しく思います。ありがとうございます。

そして2日と3日は、作家による日本の古典作品の翻訳を新規公開いたします。大長篇や時代ものも得意とした尾崎士郎が晩年に訳筆を執った『現代語訳 平家物語』が2日の公開作品。そして3日に佐藤春夫訳による現代語訳が新着となる『方丈記』は、およそ24年前の1997年10月27日、その原文が青空文庫初の古典作品として収録されています。原文と翻訳の両方の響き合いが、青空文庫でも楽しめるようになりました。

こうした解釈や翻訳や創作を新たに重ねることで豊かになっていく文学空間について考えるとき、「テクスト共同体」という概念を思い出します。
この考え方はとりわけ古典作品に適用されるもので、すなわち作家や作品の固有名詞が指すのは、実際の本人やテクストそのもののみならず(ですらなく?)、むしろその人間やテクストを核として書写・編集・注釈・翻訳していった人々とその文章言説事物から成る相互に影響し合うテクストの集積である、とする見方です。
もちろん、現代であればそこに含まれるのはほかにも、読者の感想や思い出、作品から受けるイメージ、映画やゲームなどの翻案、本人の交友関係、ゆかりのある場所やモノ等々、ひいてはその履歴や社会的経験……青空文庫の活動もそのひとつに入るでしょう。
この本人やテクストの写像を作り出す共同体は、たとえばいわゆる〈文豪〉概念に言い換えてもいいでしょう。ある固有名詞を軸に集まる多種多様なテクストとその解釈と生産を続ける人々が、ひとつの共同体としてゆるやかに成立することで、さらなる参加者が生まれやすくなり、やがて再生産や再創造が繰り返され、テクスト共同体が生き延びていくことになります。それを強固にするのが〈文豪〉という概念の働きでもあるわけです。

先日、先に触れたワークショップの最新の鴨川回「鴨川を読む・書く 京都文学レジデンシーことはじめ」に聴衆としてオンライン参加しました。
そこでは、リストアップされた青空文庫収録の諸作品をもとに、作品内での鴨川という場所の使われ方やイメージが探られた上で、それをどう活用していかに新しい作品を、「鴨川」という場所の固有名詞と結びつく豊かなテクスト群に付け加えるかが模索されました。
たいへん刺激的な体験でしたが、これもまた、テクスト共同体の解釈と生産の現場そのものであるとも言えます。

青空文庫というデジタルアーカイヴが、それこそ〈文豪〉や〈土地〉など複数のテクスト共同体を絡み合わせながら活動させる媒体として機能することを、歓迎したいと思います。
さらなる作品と解釈が積まれていくことで、これからの将来、文学空間がどのように変容していくのかが、実に楽しみです。

さて、本年の青空文庫には、前年12月1日で予告しましたように、国内各種デジタルコンテンツの横断検索サイト「ジャパンサーチ」(https://jpsearch.go.jp/)とのメタデータ連携が控えています。
その前準備として、まずは今日付で、「青空文庫収録ファイルの取り扱い規準」内の記述と関連コンテンツにおけるクリエイティブ・コモンズ・ライセンスを「4.0 国際」へと更新します。
今後の進捗については、随時この「そらもよう」欄でもお知らせいたします。

そのほか、各種文書を現状に合わせて改訂しました。
「青空文庫FAQ」「青空文庫作業マニュアル」は、一部記述を修正追記しています。
「直面した課題」では、この2年のあいだの課題をまとめました。
また、長らく古いファイルのままだった「注記一覧」について、レイアウト等を見直し、一部説明文を現在の作業に合わせました。

青空文庫の作業をこつこつと続けるとともに、そのファイルがどのように活用されていくのかも自ら楽しみながら見守っておりますが、前年はVR空間内で青空文庫が読めるようになったり、小説を書くAIの訓練に用いられたり、音声合成用のコーパスに採り入れられたりと、技術の最前線でさまざまに使っていただいた1年でもありました。
今後も幅広くご利用頂けるよう、ガイドラインやデータ連携などを整備しつつ、社会におけるパブリック・ドメインの有効活用を推進して行ければと思っております。

ともに作業に励んでくださっているボランティアの皆様、いつも利用と支援をくださるユーザの皆様、今年もよろしくお願い申し上げます。
そして、2022年には青空文庫25周年が、すぐそこにあります。ちょっとした何かが、きっとあるはずです。ご期待ください。(U)


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