久生十蘭という作家
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カテゴリー:未分類 | 投稿者:Horash Qudita | 投稿日:2012年4月30日 |

有名なのは「顎十郎捕物帳」「キャラコさん」のあたりだろう。「顎十郎捕物帳」(24本の短編からなる)は時代劇ながら本格推理を味わえる珍しい作品群。「キャラコさん」に出て来るキャラクターは、太平洋戦争間近の世相にあって、生き生きとしていて、そして力強い。

 久生十蘭は、初出から単行本収録までになんども書き直すようで、題名さえも違うことがある。読み比べてみると面白い。
 「野萩」(単行本収録版)/「ユモレスク」(初出)
 「姦(かしまし)」(単行本収録版、校正待ち)/「猪鹿蝶」(初出)
 題名は同じでも、「無月物語」のように内容がかなり変わっていることもある(「初出バージョン」、単行本収録版は校正待ち)。

 何故かこの作家は、漂流をよく扱うようだ。公開分では、「藤九郎の島」、未公開の分では、「重吉漂流紀聞」「ボニン島物語」「海難記」。長い旅という意味では、「新西遊記」もそうかもしれない。「新西遊記」は、「チベット旅行記」をもとにしたフィクションであり、「チベット旅行記」を先に読んでおくと、長い記録を短編に収める為にどうやって再構築したかを見る事が出来て面白い。短編にまで切り詰めた故の“歪み”を知る事が出来る。もちろん、「新西遊記」には久生十蘭特有のひねりが効いているので大変にすぐれたフィクションとなっている。

 推理小説というよりはハードボイルド寄りの「金狼」などの系譜の頂点に「魔都」(校正待ち)がある。12月31日夜中から1月2日早朝にかけての事件の推移を、いろいろな視点から読み解いて行く。久生十蘭の代表作と言えるのももっともな作品である。


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