タロットの絵解キ/杖の組(A・E・ウェイト/大久保ゆう訳)
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カテゴリー:,電子書籍 | 投稿者:OKUBO Yu | 投稿日:2019年12月25日 |

タロットの絵解キ(アーサー・エドワード・ウェイト)

THE PICTORIAL KEY TO THE TAROT by Arthur Edward Waite with the illustrations by Pamela Colman Smith

 

 §2 小アルカナ 別名、4組のタロットカード

 の説明を、これから各階級別に、それぞれに付された絵柄に沿って進めていく。1枚のカードにある意味は、あらゆる起源をもとに、絡み合ってできるものである。
 

 

 杖《ワンド》の組《スート》

 

 杖《ワンド》の王《キング》


 このカードに伴う心身面の特徴は、黒髪・情熱・柔軟・活発・熱烈・高潔である。王は、つぼみのついた棒を掲げ、残り3組の王と同じく、王冠の下に式帽と呼ばれるものをかぶっている。象徴としてのライオンに結びつきがあり、王座の背にその獅子の紋章が飾られている。占意:黒髪・色黒で朗らかな田舎の男で、ふつう既婚で正直・誠実。このカードには実直という意味が常に備わり、近いうち思わぬ遺産を相続する可能性も示している。逆位置:良いが厳しい。厳格ながらも寛大。
 

 杖《ワンド》の女王《クイーン》


 杖《ワンド》は組《スート》全体で必ず葉が付されているが、これは生気・活気の組《スート》だからだ。感情面でもその他の面でも、女王の特徴は王と同一だが、惹きつける魅力はこちらの方が上。占意:黒髪・色黒の田舎の女で、朗らかかつ貞淑、愛情深く尊敬されている。隣のカードに男が示された場合、この女の関心はそちらの男に向けられている。女の場合、相談者に関心を抱いている。また金銭への執着や、仕事面での確実な成功。逆位置:良・倹約・快諾・面倒見。ただしその位置と、向きの同じ隣のカード次第で、対立・嫉妬さらには欺瞞・不実の意にもなる。
 

 杖《ワンド》の騎士《ナイト》


 騎士は見たところ旅の途上で、短い杖を装備している。鎧をまとっているものの、用向きは戦ではない。丘かピラミッドを越えているところだ。馬の躍動感がその乗り手の特徴になっていて、大急ぎという情勢か、それに類する状況を示している。占意:旅立ち・不在・脱却・移住。黒髪・色黒の朗らかな若い男。引っ越し。逆位置:決裂・断絶・中断・不和。
 

 杖《ワンド》の従者《ペイジ》


 前カードと似た背景のもと、若い男がお触れを出そうと立っている。まだ名声はないが忠誠心があり、意外な知らせをもたらす。占意:黒髪・色黒の若い男、誠実・恋人・使者・配達人。男の隣に来れば、その人物について好ましいお告げを持ってくる。杯《カップ》の従者《ペイジ》が次に来ると、危険な競争相手。この組《スート》の主たる性質をみな持ち合わせている。家庭の知恵を意味することもある。逆位置:笑い話・暴露・凶報。躊躇、それに伴うどっちつかずの状態。
 

 杖《ワンド》の10


 自ら運ぶ10本の杖の重みにつぶれそうな男。占意:カードには複数の意味があり、かみ合わない解釈もある。名誉や敬虔と結びつけるものはここでは除外する。主な意味はそのまま圧迫だが、幸運や利益といったある種の成功でもあるとともに、あとになってこうしたものを重苦しく感じるということでもある。または偽りの仮面や偽装・裏切りのカード。この人物の向かう先の場所が、運ばれているこの杖のためにひどい目に遭うこともありえる。次に剣《ソード》の9が出るなら成功の意味は打ち消され、内容が訴訟案件なら確実に負けとなろう。逆位置:矛盾・困難・陰謀、それに類するもの。
 

 杖《ワンド》の9


 この人物は自分の杖に寄りかかり、敵を待ちかまえるかのように警戒の目つきをしている。背後に残り8本の杖があり、防御柵のごとく整然と並んで立っている。占意:カードは抵抗力を意味する。攻撃されれば、この人は猛攻にも果敢に対抗できよう。その体格から手に負えない敵であることがわかる。この主な意味合いから、たとえばさらに考えうる読みは遅延・停滞・延期。逆位置:障害・逆境・災難。
 

 杖《ワンド》の8


 このカードは、止め絵ながら動きを表している。つまり開けた田舎を飛んで通過していく複数の杖だ。ただしその軌道は終わりに近づきつつある。その意味するところは、間近。まさに、もうすぐかもしれない。占意:順調な仕事、速達と同じくらい順調で迅速な進捗。確実な成功に最後の一押しをする駆け込み、大きな期待、勢い。ふつうは進行中のもの。または愛の矢。逆位置:嫉妬の矢、内輪もめ、良心のうずき。既婚者にとっては家庭内不和。
 

 杖《ワンド》の7


 ごつごつした高台に立つ若い男が杖を振りかざしている。そして他6本の杖が下から男へ突き出されている。占意:武勇のカード。というのも表面上は、6人に攻撃されてもなお1人が優勢を保っているからだ。知的活動で言えば議論・口論での優勢になり、人とのやりとりならば交渉事・商売合戦・物々交換・競争における優位となる。さらには成功のカードでもある。闘士が上を取っているため、敵からは手が届かないからだ。逆位置:困惑・当惑・不安。優柔不断に対する警告でもある。
 

 杖《ワンド》の6


 月桂冠をかむった騎手がひとつの杖を手にし、その先も月桂冠で飾られている。杖を持った付添い役たちもそのわきにいる。占意:このカードは図案が巧みなため、解釈は複数にわたる。表面上は、凱旋中の勝者であるが、王の急使によって盛大に伝えられるほどの大きな知らせにも見える。自らの望みや希望の絶頂などが総仕上げとしてやってくるような、待望のものでもある。逆位置;勝利を確信した敵と門で相対する点で、危惧・恐怖。敵に対して開門するという点で、裏切りや不忠。遅れるのかどうかという焦燥。
 

 杖《ワンド》の5


 若者の一団が、競技や喧嘩だろうか、みな杖を振り回している。戦争ごっこであり、そのからつながるのが次の占意:まねごと、たとえば模擬戦など。ただし富や財を求めた激しい競争・闘争にもなる。この点から生存競争にもつながる。ゆえに付随する属性から、金・利益・富のカードとされることもある。逆位置:訴訟・もめ事・たくらみ・矛盾。
 

 杖《ワンド》の4


 前庭に植えられた4本の大きな杖から、立派な花飾りが吊されている。ふたりの女らしき人物が花束を掲げている。わきには堀に架かる橋があり、由緒ある領主の城へとつながっている。占意:今回はほとんど表面上の意味通りで、田舎暮らし、隠居先、地域内の収穫祭のようなもの、休息・和気藹々・調和・繁栄・平和、これらが万事うまく行くこと。逆位置:意味はそのまま変わらない。繁栄・発展・幸福・美・飾り気。
 

 杖《ワンド》の3


 落ち着いた威厳ある人物が、背中を向けて、崖の先から海を通り過ぎる船々をながめている。3本の杖が地面に挿され、そのひとつへわずかに寄りかかっている。占意;この者はゆるぎない権力・冒険心・努力・貿易・商業・発見の象徴である。見えているのはこの者の船で、彼の品を荷としており、今まさに海で運ばれている最中。このカードは商売上の強い味方を示してもいて、あたかも大成功した豪商が、自分の方からあなたへと目を向けて、手助けしようと見つめているようでもある。逆位置:困難の終わり、災難・苦難・落胆の一時休止・中断。
 

 杖《ワンド》の2


 背の高い男が、胸壁のついた屋上から海と岸を見渡している。地球儀を右手に持ちながら、左手の杖は胸壁の上へぴたり立てられている。もう1本の杖は輪で固定されている。薔薇と十字と百合のマークが左側に認められるはずだ。占意:様々な解釈の幅があって、一致はまず難しい。一方では富・財産・華美。他方では肉体的苦痛・病・苦悶・悲痛・屈辱。この絵柄からはひとつの暗示がある。ここにいるのは、代わる代わる自分の領地を見渡しては地球儀を見つめる支配者だ。壮大たるこの世の富のただなかにあるアレクサンダー王の病・無念・悲哀とも読める。逆位置;不意・驚異・魅了・情念・苦労・恐怖。
 

 杖《ワンド》のA《エース》


 雲から突き出た手が、頑丈な杖ないし棍棒を握っている。占意:創造・発見・挑戦、これらの源となる力。原理・起源・源泉。誕生・家族・家柄、ある意味でその裏にある精力。新しい挑戦の出発点。異なる説によれば、金銭・財産・遺産。逆位置:転落・退廃・崩壊・破滅、そこからの突然死。またつかみがたい喜びのようなもの。


訳者コメント

■ハッピー・ユールタイド! 絵本です(強弁)。

■いわゆるライダー=ウェイト=スミス版のタロット解説本(1911)の訳。文学テキストとしてのタロットを考えていた2015年くらいの時期に、既訳が英文解釈的にちょっとあんまりなのもあってカード解説の和訳を作ってあったのですが、もったいないので(?)ぼちぼちまとめ始めました。

■タイトルは例のごとく言葉遊び。絵とキー。図説とか図解だと「図で説明する」みたいな意味になりますが、この場合は「図を説明する」ですよね。

■まずは小アルカナのワンドから。次はカップかな。気長に進めます。

[次回:杯の組


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