タロットの絵解キ/杯の組(A・E・ウェイト/大久保ゆう訳)
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カテゴリー:,電子書籍 | 投稿者:OKUBO Yu | 投稿日:2020年2月6日 |

タロットの絵解キ(アーサー・エドワード・ウェイト)

THE PICTORIAL KEY TO THE TAROT by Arthur Edward Waite with the illustrations by Pamela Colman Smith

 
[前回:杖の組
 

 

 杯《カップ》の組《スート》

 

 杯《カップ》の王《キング》


 男が左手に短い笏《しゃく》、右手に大きな杯をつかんでいる。王座は海面にあり、わきには船が波間に見え、反対側ではイルカが跳ねている。言わずもがなだが、杯《カップ》という記号にはむろん水との関連があり、その点は宮廷札《コート・カード》のいずれにも現れている。占意:金髪・色白の男、実業家・法曹家・聖職者。恩義、相談者に対して心から恩返しをしようとしている。また分別、技芸と学知、科学・法律・芸術を専門とする人を含む。創造力のある知性。逆位置:不正直で二枚舌の男。詐欺・恐喝・不正義・悪徳・醜聞・強奪・大損害。
 

 杯《カップ》の女王《クイーン》


 金髪の美人がまどろんでいる――杯のなかを幻視しているかのよう。とはいえこれもこの女性の一側面にすぎない。見えるだけではなく行動にも移すので、その行動そのものが夢の糧になっている。占意:金髪・色白の善良な女。相談者の味方になってくれる正直で親身な女性。感受性のある知性、すなわち未来を見通す才能がある。成功・幸せ・喜び。または知恵・純潔。良妻賢母。逆位置:解釈はさまざま。善良な女。逆に、秀でているが信用ならない女性。性悪の女。悪徳・恥辱・堕落。
 

 杯《カップ》の騎士《ナイト》


 厳かだが戦地に赴く様子ではない。静かに馬を進め、羽根飾り付きの兜《かぶと》をかぶっているが、その点から優れた想像力の意にもなり、時としてこのカードの特徴ともなる。この男もまた幻視する者だが、こちらは感覚面のイメージがその未来像につきまとう。占意:到着・接近――使者の到着・接近の場合も。促進・提案・外向き・勧誘・後押し。逆位置:たくらみ・策略・狡猾・いんちき・二枚舌・まやかし。
 

 杯《カップ》の従者《ペイジ》


 どこか優男風のひょうきんな金髪・色白の従者で、勉強熱心で集中力があり、その男を見ようと杯から出てきた魚を見つめ返している。これは精神が具現化したカードである。占意:金髪・色白の若い男、助けようと躍起になってくれている人物で、相談者とこれから縁ができる人。熱心な若者。知らせ、言づて。熱中・熟慮・黙考。また仕事関連で上記のもの。逆位置:趣味・嗜好・傾倒・誘惑・詐欺・策略。
 

 杯《カップ》の10


 虹のなかに杯がいくつも現れている。その様子に、下にいる夫婦とおぼしき男女が、びっくりしつつもうっとり見とれている。男の右腕が女に回されていて、左腕が高く上げられており、女の右腕も上がっている。かたわらで踊っている子どもたちふたりは、この奇蹟を見てはいないが、自分たちなりに喜んでいる。奥の背景に自宅がある。占意:満足、心全体の安らぎ。その状態の達成。また人間愛・友愛の達成。絵札と並んだ場合は、相談内容を引き受けてくれる人物、または相談者の住む町・村・地域のこと。逆位置:かりそめの心の安らぎ、憤怒・暴力。
 

 杯《カップ》の9


 財力のある名士が心ゆくまで堪能したところ。嗜好物としての酒が、男の後ろにある弓なりの棚にずらりと並んでおり、将来もまた安泰であることを示すかのよう。この絵柄は物質面のみを指し示しているが、他の側面もある。占意:集団の和、満足感、身体面の健康。また勝利・成功・優越。相談者すなわち相談の対象となる本人の満足。逆位置:真実・忠義・自由。だが解釈はさまざまで、失敗・不備を意味することもある。
 

 杯《カップ》の8


 打ちひしがれた様子の男が今捨てようとしているのは、自分の幸運・挑戦・仕事やそれまでの関心事を意味する杯。占意:このカードは表面上、描かれたままの意味だが、まったく反対の解釈もある――喜び・温和・はにかみ・名誉・謙虚の意になることも。実際には、このカードが物事の衰退を示すこと、すなわち重要視されていたものが(良し悪し問わず)ごく小さな結果しか生まない、というふうに考えられるのが普通。逆位置:大きな喜び、幸せ、堪能。
 

 杯《カップ》の7


 ふしぎな聖杯が幻を見せているが、そのイメージはとりわけ架空の存在を表したものが多い。占意:架空の恵み、内省・感傷・空想のイメージ、ちょうど目についた杯のなかに見えるもの。ある程度はうまくいくが、長続きするものや実質的なものはないことが示されている。逆位置:欲望・願望・決意・仮託。
 

 杯《カップ》の6


 なじみの公園にいる子どもたち、その杯は花でいっぱい。占意:過去と記憶のカード、たとえば子ども時代を振り返るような。幸せ・楽しさ、ただしどちらかと言えば過去に基づくもの。消えてしまったもの。これとは逆の別の解釈もあり、新しい関係、新たな知識、新天地という意にもなり、だからこそ子どもたちがなじみのない境内ではしゃいでいるとも読める。逆位置:未来・再生、今にも起こりそうなこと。
 

 杯《カップ》の5


 マントに身を包んだ黒髪・色黒の人物が、横倒しの杯3つを横目で見ており、別の2つが背後に立てて置かれている。背景には橋があり、小さな砦または領地へと続いている。占意:これは、失いながらもまだ何かは残っているというカード。3つ取られてしまったが2つは残されている。遺産・家督・譲渡があるが、必ずしも期待通りのものではないというカード。結婚を意味するが、必ず苦痛や不満がつきまとうカードだという解釈もある。逆位置:知らせ・協力・良縁・血縁・先祖・見返り、誤ったものを託されること。
 

 杯《カップ》の4


 若い男が木陰に座り、目の前の草地に置かれた3つの杯を見つめている。雲から突き出た腕が、もう1つ杯を差し出している。にもかわかわらず、その表情は自らの境遇に不満げであるようだ。占意:うんざり・嫌悪・反感、この世の酒に呑み飽いてしまったとでも言うような、本来ならありえない悩み。妖精の贈り物の話と同じく、あらゆるものを楽しみ尽くした男に今もう1杯の酒が差し出されているが、そこに安逸は見いだせないようだ。喜んでいいのか複雑な気持ちを表すカードでもある。逆位置:新奇・予兆、新しい教え、新しい関係。
 

 杯《カップ》の3


 互いに乾杯を捧げるかのように、菜園で杯を高く掲げている乙女たち。占意:どのような問題もじゅうぶん完璧に明るく解決すること。幸せな出来事、勝利・完遂・慰め・癒やし。逆位置:遠出・出張・達成・終了。身体面の快楽が過剰である点、五感の官能も意味する。
 

 杯《カップ》の2


 青年と乙女が乾杯を捧げ合い、その杯の上にヘルメスの双蛇杖《カドゥケウス》が浮かび上がり、その大きな翼の中央に獅子の頭が現れている。この絵柄は、古くはこのカードでもいくつか例が見られた図案の変形。おかしな寓意の解釈がそこに付されることもあるが、今回本書では重要ではない。占意:愛・熱情・友情・好意・夫婦仲・人の和・共感、両性相互の関係性、そして――あらゆる占意とは離れた意にはなるが――自然にあらずともそのおかげで自然が清められるあの欲望。
 

 杯《カップ》のA


 池が下に、その水面に睡蓮がある。雲から突き出た手が、その手のひらで杯を支えており、その杯から4本[#ママ]の水流があふれ出ている。くちばしに十字印のついた祭餅をくわえたハトが、杯にその聖餅を供えようと降下している。水の雫が周囲に散り落ちている。それはこの小アルカナのおそらく裏にあるものを暗示している。占意:真実の心が宿るところ、喜び・満足・吉兆・滋養・富裕・豊穣。拝領台、そこから頂く至福。逆位置:偽りの心が宿るところ、盛衰・不安定・移り変わり。
 


訳者コメント

■予告通り小アルカナのカップ。

■少なくともこのテクスト、ちゃんと「20世紀初めごろの英文学テクスト」として読まないと的外れなことになっちゃうよなあ、と思う点がたくさんあるのですけれども。いかが。

■タロットを初めて買ったのは確か中学生のときで、AGミュラー社から出ていたまさにこのライダー=ウェイト=スミス版でした。小冊子と一緒にプラケースのなかにパックが入っている輸入もののやつ。もうそのときには「死神」のカードは「死」の意味じゃないよ、ということは知っていたはず。

■次はソード。またしばしお待ちを。


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