地底から不思議へ:ルイス・キャロルの加筆をたどる 第2回
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カテゴリー: | 投稿者:OKUBO Yu | 投稿日:2015年1月20日 |

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【凡例】
修正:草稿→修正▼
削除:削除→▼
加筆:▲→加筆▼


▲  *  *  *  *  *→2 なみだまり▼

「てんへこりん、てんへこりん!」と声をあげるアリス▲。→▼▲→もう▼びっくりのあまり、▲→一時《いっとき》▼ちゃんとした言葉▲→づかい▼をどわすれしてね▲、→▼▲→。▼「今度は身体が広げられてる、世界最大の望遠鏡をのばしてるみたい! ごきげんよう、あんよちゃん!」(だって足元を見下ろすと、どんどん遠ざかって、ほとんど見えなくなり▲→そうで▼。)「ああ、おいたわしや、あんよちゃん、こうなったらどなたにくつやくつ下をはかせてもらおうかしら、ねえ? ぜったいあたくしには無理▲→だからっ▼! あんまりにもはなれすぎて、こっちから▲お世話でき→めんどう見切れ▼なくてよ。できるだけご自分で何とかなさることね――でも気づかいはしてあげないと。」とアリスは思って、「でないと行きたい方に歩いてくれないかも! そうね、クリスマスごとに新しいブーツをさし上げてよ。」

頭のなかであれこれ、どうしようかとめぐらせ続け▲、→てね。▼「人に運んでもらわないと。」と考えて、「って、もうふきだしそう、自分のあんよにプレゼントだなんて! あて名だっておかしなものになってよ!▲→(改行)

だんろ前の[#「だんろ前の」に傍点]
(改行)
▲カーペット→しきもの▼にお住まいの[#「▲カーペット→しきもの▼にお住まいの」に傍点]
アリスの右足さまへ[#「アリスの右足さまへ」に傍点]
アリスから愛《あい》をこめて[#「アリスから愛をこめて」に傍点]

まったく! あたくしの話もすっからかんね!」

ちょうど▲そのとき→そこで▼、頭が広間の天井にごつん。なんとただいま背たけは2メートル75をややこえたあたり、たちまちちっちゃな金の鍵を取り上げて、お庭のドアへあわてて向かう。

ふびんなアリス! がんばってもできるのは、横向きにねそべって片目でお庭をのぞくだけ、向こうへ行く望みなんて、これまで以上にありえない。へたりこんでまた大泣き▲→のはじまり▼

「あなた恥《はじ》をお知りなさい。」とアリス。「あなたみたいな気高い娘が▲、→▼」(たしかにお高い)「こんな▲大→▼泣き▲→に泣いて▼! ▲すぐさま→ただちに▼おやめ、いいこと!」けれどもやっぱり▲泣いた→その▼まま、流すなみだはたっぷり大量《たいりょう》、しまいに▲→ぐるりと▼大きな池になって、深さおよそ10センチ、▲まわりにぐるり広がって、→▼広間▲を→も▼半分ひた▲し→っ▼てしまう。▲→
(改行)▼
しばらくして聞こえてくる遠くのぱたぱたという足音、▲→あわてて▼なみだをぬぐって近づくものに目をやると、そう、あの白ウサギがまた▲もど→帰▼ってきたんだ、おめかしして、白ヤギの手ぶくろを片手に、▲香《かお》る花束→大きなせんす▼をもう片手に持っていてね。▲→大わらわでどたばたやってきて、ぶつぶつ言いながらこっちへ来るんだ。「およよ! ごぜんさま、ごぜんさま! およよ! お待ちさせたらかんかん、そんなのいやで[#「いやで」▼▲→傍点]おじゃる!」▼まさにアリスは▲→すがる思いで、▼だれか助けてと言いたいところだったから、▲すがる思いで、→▼▲→近くを▼通りがか▲りの→った▼ウサギにおずおずと弱々しげに声をかけ▲→てみ▼る。「もし、よろしくて――」びくっとしたウサギは、▲声がしたとおぼしき広間の天井をあおぐなり、→▼はたと▲花束と→▼白手ぶくろ▲→とせんす▼を落として、全速力でぴゅーっと暗がりに消え去っちゃった。

▲花束→せんす▼と手ぶくろを拾い上げたアリス、その▲花束→部屋▼▲かぐわ→暑苦▼しいので、ずーっと▲におい→自分▼▲か→あお▼ぎながらひとりごとの続き――「もう、もう! 今日はけったいなことばかり! でも昨日は▲みんな→ずっと▼いつも通りだったのに。もしや夜▲→中▼のうちにあたくしの身に何か。待って。今朝起きたときのあたくしはちゃんと▲→[#「ちゃんと」に傍点]▼あたくし? ▲→どうも少し▼▲ちょっとち→▼ちがっていた気がしないでもなくてよ。でも▲今→▼あたくし▲があたくし→▼でないのなら▲→気になるのは▼▲→『今のあたくしは▼いったいどなた▲? →』ってこと。▼んもう、まったく▲→[#「まったく」に傍点]▼ややこしい!」そこで同い年▲な→の▼知り合いの子のことをみんな思いうかべていって、自分がそのうちのだれかになっていないかたしかめたんだ。

「あたくしが▲ガートルード→エイダ▼でないことはたしかね。」とつぶやく。「だってあの子の髪《かみ》はあんなに長いまき毛、あたくしはちっともまきがなくてよ――それときっと▲フローレンス→メイベル▼でもないはず、だってあたくしは物知りっていうのに、あの子、ふん! 知らないにもほどがあってよ! それにあの子[#「あの子」に傍点]はあの子、あたくし[#「あたくし」に傍点]はあたくし、だから――ああ、もう! なんてややこしいの! どうかしら、ちゃんと覚えてたこと覚えてる? ええと4×5=12、4×6=13、4×7▲=14→▼――ああ、もう! ▲こ→そ▼んな調子じゃいつまでも20にならなくてよ! ▲でも→とはいえ▼九九なんて大したことないわ▲――→。▼地理を試すの。ロンドンは▲フランス→パリ▼の都《みやこ》、▲→パリは▼ローマ▲はヨークシア→▼の都、それから▲パリ→ローマ▼は――▲ああ、もう! もう! どれも→ちがうそんなの▼[#「▲どれも→そんなの▼」に傍点]まちがいに決まってる! ▲フローレンス→メイベル▼になっちゃったにちがいなくてよ! だったら『がんばる▲→ぞ▼ミツバチ』のお歌はどう?」▲→そこでおけいこごとみたく、▼ひざ前に手を重ねて▲始め→、そらんじてみ▼たんだけど、声ががらがらでとっぴで、それに歌詞《かし》もいつも通り▲じゃ→で▼なくって。

びっくりだ わあにさん
しっぽがね ぴかーん▲!→▼
ナイルがわ ざあぶざぶ
うろこにね びしゃーん!

キバだして にいんやり
ツメひろげ じゃきーん▲!→▼
おいでませ さかなちゃん
にこにこ……がぶりっ!

「ぜんぜん歌詞がちがってよ。」とかわいそうにアリスは▲→また▼目になみだをいっぱいにためながら、▲こう思った→言葉を続けた▼。「やっぱりあたくし▲フローレンス→メイベル▼にちがいないわ、だったらあたくしあのせせこましい小屋にうつり住まなきゃいけないことになって、しかも遊ぶおもちゃもないの、うわあん! お勉強も山もりよ! いやあ! あたくし心に決めたわ、あたくしが▲フローレンス→メイベル▼なら、ここでじっとしててやるんだから! どなたかがのぞいて『▲→お▼上がりなさい!』なんて言ってもむだなんだから! あたくし上目で申しあげてよ、『ところであたくし何者? まずそれにお答えになって。それから、それがあたくしのなりたい方なら上がりますけど、ちがうようでしたらほかのどなたかになるまで、ここでじっとしております。』――でも、ああもう!」とアリスはいきなりわっと泣き出して、「そののぞいてくれるどなたかが、いてくださったら[#「いてくださったら」に傍点]どんなにいいか! もう▲→もう[#「もう」に傍点]▼うんざりよ、こんなところでひとりぼっちだなんて!」

こう言いつつ自分の手に目を落としてみるとびっくり、▲気づけば→見ると▼しゃべっているあいだにウサギさんの▲→白▼手ぶくろをはめていたんだ。「どうしてこんなことができて[#「できて」に傍点]るの?」と思ってね、「また小さくなってるにちがいないわ。」起きあがってテーブルまで行ってそれで背たけをはかってみると、だいたいしかわからないながらも、今はおよそ60センチで、大いそぎでちぢみつつあってね。▲→わけは▼すぐに▲わけは→▼わかった、▲手に→▼持ってい▲た花束→るせんす▼▲ため→せい▼なんだ。あわてて手放すと、まさにそのときからちぢみはすっかり▲と→おさ▼まって▲、→。
(改行)▼
▲気がつくとただいまの背たけはたったの7センチ→「まったく[#「まったく」に傍点]、命からがらね!」と言うアリスはいきなり変わったことにびくびくものだったんだけど、自分がまだちゃんとあるってわかってほっとしてね▲(改行)→▼▲→さて▼今こそお庭よ!」と▲声をあげたアリスはあわてて→いちもくさんに▼あの小さなドアへもどったんだけど、▲→なのに、ああ! ▼小さなドアにはまた▲鍵がかか→しま▼って▲→い▼て、ちっちゃな金の鍵も前と同じでガラスのテーブルの上、だから「▲→もう▼今までで最悪▲!→▼」と▲女→かわいそうにそ▼の子は思うしかない。「だってこんなちっちゃくなったの初めてなのよ、初めて! 正直ひどすぎてよ、ひどすぎ!」▲このしゅんかん→
(改行)
と口に出し
たとたん▼、足▲が→を▼すべ▲って→らせ▼▲→たちまち▼ぼちゃん! しょっぱい水に首までつかって。初めのうちは海▲→か何か▼に落ちたと思っ▲たんだけど、→てね。▼▲あとからここが地底だってことを思い出して、→「たしかこういう場合は、線路から引き返せばよくてよ。」とひとりごと。(アリスは生まれてこのかた1度だけ海辺に行ったことがあったから、ふつうにこう考えたんだ。イギリスでは海に行くと、かならず砂はまにたくさん車輪《しゃりん》のついた箱がたの着がえ部屋があってね、子どもたちは木のくま手で砂をほじっていて、あとはずらり海の家にその後ろが線路の駅。)▼▲そのあと→でも▼すぐにはっとした、▲→いるのは▼自分が3メートル近いときに泣いて作ったなみだまりなんだって。▲→

(改行)
「あんなに泣くんじゃなかったわ!」と言いながらアリスは水をかいて前に進もうとしてね▲、→。▼「罰《ばち》が当たろうとしてるのよきっと、自分のなみだでおぼれろってね! ▲待って! →▼そんなの▲→[#「そんなの」に傍点]▼けったいだわ、ぜったい! それにしても今日はけったいなことばっかり。」▲→
(改行)
▲とつぜん目の前→ふとそのとき▼すぐそばあたりで何かがばしゃんと池に▲→落ちる音、水をかいて近くで見きわめようとする▼。とりあえずセイウチかカバかと思ったものの、▲→今の▼自分がとっても小さいことを思い出して、たちまちはっとした、ただのハツカネズミが自分と同じようにすべり落ちただけだって。

「このネズミに声をかけて、」とアリスは考えごと。「何かになって? ▲→ここへ落ちてきてからというもの、▼▲でもあのウサギはどうも→▼▲きわめて→もう▼とんでもないこと▲になっていたし、ここへ落ちてきてからというもの、あたくしだってそう→だらけ▼なんだから、▲→どうも▼▲のネズミだって→れも▼話せ▲ないわけなくっ→そうな気がし▼てよ。とりあえず▲→だめもとで▼やってみ▲るつもりで→ようかしら▼。」▲(改行) →▼で、やってみた。「▲ねえ→▼そこ▲の→な▼ネズミ▲→よ▼、ごぞんじ? この池▲から→▼の出▲方→口▼。このあたりを泳ぎまわってへとへとなの、▲ねえ→▼そこ▲の→な▼ネズミ▲→よ▼!」▲→(アリスにはネズミにちゃんと正しく呼びかけなきゃいけないという頭があったので、1度もそんなことしたことなかったけど、そういえばお兄さんの古文の学習帳にあってね、『ネズミが――ネズミの――ネズミに――ネズミを――ネズミよ!』って。)そのネズミはどこか問いたげにその子を見つめて、小さなひとみで目くばせしてくれたみたいなんだけど、一言もなくって。

「こっちの言葉がわからないのかも。」とアリスは考えごと。「たぶん外国ネズミなのね、ウィリアムせいふく王についてわたってきた▲!→。▼」(その子の知ってるかぎりでは、何年前に何が起こったのかはうろ覚えだから、こんなことに。)で、またやってみる。「吾猫兮何在《わがねこいずくにかある》?」これは外国語のドリル▲から取った→にある▼初めの文。ネズミは▲池のなかで→水から▼いきなりとび▲上がり→出し▼▲→そりゃもう▼びくびくとふるえだしてね。「あら、ごめんあそばせ!」あわてて声を上げるアリス、このあわれな動物の気をそこねたかと気がかりで。「ネコお好きでないことうっかりしててよ!」

「お好きでねえよ!」とネズミのかん高く気持ちのこもった声。「こっちの身になりゃわかん[#「わかん」に傍点]だろ!」

「ええ、おっしゃる通りね。」とアリスの声は相手をなだめるよう。「そうお怒《いか》りにならないで。でもうちのネコのダイナに引き合わせられたらなあ、あの子をひと目見たならきっとネコさんのこともお気にめしてよ。かわいくておとなしいんだから。」と▲→続ける▼アリスはひとりごと半分で、池をゆったりとお泳ぎに。「▲→でね、▼だんろのそばにすわって、すてきにのどを鳴らして、お手々をぺろぺろ顔をごしごし▲、→――▼だっこするとほんとふわふわなんだから▲、→――▼それにつかまえるのも上手いのよ、ネズミを――あらごめんあそばせ!」と▲、やっちゃった→▼アリスはまた大声、だってそのときにはネズミも毛を全身逆立てていたから、ぜったい▲に→▼怒《おこ》らせ▲ちゃっ→▼▲→な▼と思ってね、「▲お気を悪くされた?→おいやなら、このやりとりはもうひかえますけど。▼

▲されたともよ!→やりとりだと?▼」と声をはるネズミは、▲どう見ても怒《いか》りに→しっぽの先まで▼ふるえていてね、「▲→こっちが話に乗ったみてえな言いぐさじゃねえか! ▼うちは代々ずうっとネコが大きれえ[#「大きれえ」に傍点]なんだ▲! →、▼いじわるで下品な乱暴《らんぼう》もの▲→め▼! ▲2度と→もう▼その▲話は→名をおれの前で出▼すん▲な→じゃねえ▼!」

「いたしませんとも!」とアリスはあわてて話▲→の中身▼を変えようとする。「あなた――あなた▲――→、▼あれはお好き――▲→その――▼犬は?」ネズミの返事がないので、アリスはこれはいいと続けてね、「お屋敷のそばのかわいい子犬、この子をお引き合わせしたくてよ! すんだ目のちっちゃなテリアで、ほら、あるのよ! もう長々とした茶色の巻き毛! それに物を投げるとひろってくるの、あとちんちんしてごはんをおねだりしたり、もう色々――半分も思い出せなくてよ――そう、かい主は地主さんで、▲→ほらお話でははたらき者で、金貨《きんか》100まい分のねうちものなの! それに▼お話ではみんなやっつけるって、畑のネズミを――ああっ!」▲→と大声をあげた▼アリス▲は→、▼やっちゃったというふう▲に、→で。▼「またお気を悪くされたかしら。」だってもう全力で泳いではなれていくネズミ、進むほどに池はばしゃばしゃと波打つ。

それで後ろからやさしく声をかけたんだ、「ネズミさん! おもどりになって、▲もう→▼犬ネコ▲→どっち▼のお話▲は→も▼しないから、お好きでないなら!」するとそれを聞いたネズミは、▲→くるっと▼回ってゆるゆる泳ぎもどってくる。顔は真っ青(怒《おこ》ってるんだなとアリス)、それから▲か細く→かすかに▼声をふるわせながら、「岸辺へ出んぞ、それからおれの昔話でもしてやっから、あんたもこっちがどうして犬ネコがきらいかわかるってもんだ。」

そろそろいい頃合《ころあ》い、だって池はもう落っこちてきた鳥なりケモノなりで▲いっぱいこ→ぎゅうぎゅうづめ▼になりかけてたからね。そこにはアヒルもドードーも、インコも子ワシも、そのほか色々かわった生き物がいてね、アリスがいちばん前に出て、みんないっしょに岸辺まで泳いでいったんだ。


第2回訳者コメント

■第2章も、追記・訂正・削除がたくさん。個人的には、「▲声がしたとおぼしき広間の天井をあおぐなり、→▼」のカットはびっくり。アクションをひとつ削ると、情景が結構変わってきてしまいますよね。

■内輪ネタの解説・変更もちらほら。お友だちの話とか、ラテン語の話とかは、アリスたちとのあいだではわかるけど、読者にはもうちょっと説明しなくちゃ、と思ったんでしょうきっと。

■とはいえ、”bathing machine”(箱がたの着がえ部屋)のところは、文学部の学生に読ませても、やっぱりわからないので、必ずしも「追記=わかりやすくなっている」ということでもありません。むしろ文化的特殊性が上がってしまっています。ごく素朴なお話の「わかりやすさ」や「普遍性」みたいな点だと、「不思議」よりも「地底」の方が高いような気もするほど。

■「訳しやすさ」も、体感的には「地底」の方が上。ということは「不思議」の翻訳には失敗がつきまとうっていうことなんだけれど、ミスがあってもなお「面白い」ということが伝わったりわかったりすることは、与太話の類ですが、翻訳とは別に言語差をものともせず異言語間を貫通せざるをえない「面白さ」なんかがあるんじゃないかと思ったりしてしまいますよね。


加筆のたどり方

■加筆をたどる際、どういう手順を執っているのかをごく簡単に。

■まずは書き換えた箇所の見当を粗くつけるために、電子テキストを使って「地底」と「不思議」の差分を取っています。できるだけ信頼できる正確なテキストを用いようとはしていますが、使用したテキストに思わぬミスがあったりもしますし、自分の依拠する底本とも差違がある場合もあるので、あくまで参考程度に。

■そのあと、Penguin Classicsの底本を使って、じかに目で確認。電子テキストの差分があるおかげで、かなり作業は楽になりますが、それでも目を皿にして。ちなみにこのとき、ペーパーバックは必要な部分をカッターで切り取り(つまり作品ごとに)分割して、製本テープでそれぞれまとめ直しております。その方が薄くて、扱いやすいし、並べて読めもするので。

■本をバラすって、日本の文庫本だと丈夫だし心理的な抵抗もあるんですが、ペーパーバックだとなんかこう割り切って、やってしまいます。実際、向こうのひとがそういうふうにペーパーバックを取り扱っているのを目にして、なるほどそれも合理的だな、と思ったところもありまして。

■ともあれ、まず原文の差分をはっきりさせて、それをプリントアウトした「地底」の訳文にがりがりぺけぺけ赤で追訳を書き込んでいきます。その過程で前回記したようなことにも気付いたりするわけですね。訳す際には以前訳したミュージカル版・絵本版の文章も横に置いて見たりします。(その章が「不思議」書き下ろしのものなら、「地底」の訳をするときに使っていたのと同じノートにぺけぺけ。)

■注は、だいたい追訳・補訳が終わったあとでチェック。そうして紙ベースで赤入れしたものから、手元の「地底」訳文のテキストファイルを書き換えて、また電子的に比較用の「地底」「不思議」訳稿を整えます。

■そして青空文庫ボランティア内ではおなじみ結城浩さん制作の「相違点チェッカー」に通して、ブログにぺたり。そのままだと▲▼の範囲ズレもあるので、もう1度自分の赤入れた紙をながめながら、こうした記事に整理しておしまい。


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