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【凡例】
修正:▲草稿→修正▼
削除:▲削除→▼
加筆:▲→加筆▼
▲→6 ブタとコショウ▼
▲→ものの数分ぼう立ちでおうちをながめて、次に何をしようかと思っているうち、ふいにお仕着せのめし使いが森から走り出てきて――(そいつをめし使いだと見たのはお仕着せすがただったからで、そうでなかったら顔だけではお魚としかわからなかっただろうね)――それからにぎった手の角っこでドアをとんとん。するとドアが開いて、お仕着せのめし使いがもうひとり、丸顔で大きなお目々でカエルみたい。さらにめし使いはふたりとも、見たところ頭に粉《こな》をふいたくるくるまきのカツラをかぶっているようで。へんてこで一体全体何なのかわくわくしてきてね、森からそろりと少し身を乗り出して耳をすませる。
お魚めし使いがまずふところから取り出だしたるは大きなお手紙、自分の体と同じほどの大きさで、これを相手に手わたしながら大げさに言うんだ、「ごぜんさまへ。クイーンさまよりクローケーのおさそいなり。」カエルめし使いも同じく大げさにくりかえして「クイーンさまより。ごぜんさまへクローケーのおさそいでありますか。」
そのあとふたりとも深々おじぎをすると、まきまきカツラがからまりあう。
アリスは笑い転げてしまってね、さとられたかもと森のなかへかけもどるはめに。そうしてまた顔をのぞかせたときには、お魚めし使いはいなくなっていて、そのお相手がドアわきの地面にすわりこんで、空をぼんやり見つめていてね。
アリスはおずおずとドアのところへ行って、とんとん。
「ノックをしてもむだであります。」と言うめし使い、「そのわけはふたつ。ひとつは、わたくしめがあなたさまと同じくドアのこちらがわにおりますゆえ。もうひとつは、なかが相当さわがしいので、あなたさまがたたいても、だれにも聞こえちゃおりません。」してみるとたしかに内がわでは今も[#「今も」に傍点]とてつもない物音がしていて――ひっきりなしにどなる声とくしゃみの音、合間にいちいちがしゃんがしゃん、まるでお皿かやかんが粉々《こなごな》にわれたみたい。
「それでしたら、」とアリス、「入るにはいかがすれば?」
「そもそもノックしてしかるべきは、」とめし使いはこちらの話も聞かずに続けてね、「おたがいがドアをはさんでいればこその話。たとえばあなたさまが内がわ[#「内がわ」に傍点]にいて、ノックをしたなら、わたくしめは外へ出してさしあげます。」話しているあいだもずっと空を見上げていたので、アリスにはあからさまにおぎょうぎが悪く思えてね。「でももしややむをえないのかも。」とひとりごちて、「お目々がまさに[#「まさに」に傍点]頭のだいたいてっぺん。それにしても聞いたことに答えてくれてもいいんでなくて。――入るにはいかがすれば?」ともう1度大声。
「わたくしめはじっとここに、」とめし使いの言い分、「明日まで――」
そのせつな、おうちのドアが開いて、大皿がゆかすれすれを飛んできて、めし使いの頭へまっしぐら。ちょうど花をかすめて、後ろの木のひとつに当たって粉々に。
「――いやその次の日まで、か。」と続けるめし使いの話しぶりは、まったく何もなかったかのよう。
「入るにはいかがすれば?」とまたたずねるアリスはさらに声をはり上げていて。
「どうしても[#「どうしても」に傍点]なかへ入るのでありますか。」とめし使い。「まずそこのところどうなんです、ほら。」
言われてみれば。ただアリスもそれだけは言われなくなくって。「なんてはしたない。」とアリスはぶつぶつひとりごと、「そろいもそろってつっかかってくる。頭がおかしくなってもよさそうなものね!」
めし使いはさきほどの言葉をくりかえすには今しかないと思ったのか、言い方を変えてね。「わたくしめはじっとここに、やすみやすみ、来る日も来る日も。」
「でもあたくし[#「あたくし」に傍点]はどうすればよくて?」とアリス。
「お好きにどうぞ。」とめし使いは口笛をふきだして。
「もう、話していてもらちが開かなくてよ。」とやれやれのアリス。「まったくのうすのろね!」そうしてドアを開けてなかへお立ち入り。
ドアはそのまま台所に続いていてね、もくもくけむりがすみずみまでいっぱい。ごぜんさまはお部屋のまんなか、3本足のいすにこしかけ、赤ちゃんをあやしている。コックが火元にぐっとよって、大きなおなべでなみなみとしたスープをまぜまぜ。
「スープにこんなにコショウ、ぜったい入れすぎ!」アリスのひとりごとも、くしゃみのせいでこれがやっと。
コショウのひどさたるや、あたり[#「あたり」に傍点]にまんえんするほど。赤ちゃんはというと、ひっきりなしにかわるがわるくくしゅんおぎゃあ。台所にいてくしゃみをしていない[#「いない」に傍点]のはただふたり、コックと図体のでかいネコ、そのネコは火元のそばに丸まって、耳にとどきそうなくらいにこにこ愛想《あいそ》たっぷり。
「ごめんください、」とおそるおそるのアリス、そのわけはおぎょうぎとして、自分から話しかけていいものか自信がなかったから、「このネコちゃん、どうしてこんなに愛想がいいの?」
「こやつはチェシアのネコ、」とごぜんさま、「ゆえにな。ブタめ!」
しめにいきなりきつい言葉がでたので、アリスはもうとびあがってね、でもそのあとすぐ自分でなく赤ちゃんに向けたものとわかったから、気を取り直してまた話の続き。
「なるほどチェシアのネコは愛想《あいそ》よしってわけ。まさかネコがこんなに愛想よくできる[#「できる」に傍点]なんて。」
「みなできおる、」とごぜんさま、「大半がそうしおる。」
「思いもよらなくてよ。」とアリスは取りつくろうものの、実はお話できたのがたいそううれしくって。
「そちがものを知らぬだけ、」とごぜんさま、「世のことわりじゃ。」
アリスもそんなふうに言われるのは気に入らなくて、何かべつの話をふった方がいいと思ってね。何かと決めかねているうちに、コックはスープのおなべを火から外すと、いきなりあたりのものを手当たり次第にごぜんさまと赤ちゃんに投げつけだしてね――火元の金具がまず飛んできて、そのあと続いて小なべやお大皿小皿が雨あられ。ごぜんさまは自分に当たっても気にするそぶりさえなくって。赤ちゃんはずっとひどいくらいに泣きわめいてるから、ぶつかって痛《いた》いのか痛《いた》くないのかもよくわからない。
「ねえ、いいかげん[#「いいかげん」に傍点]気にしたらどうなの!」と声をはりあげるアリス、やきもきしてぴょんぴょん、「ほら、その子の大事[#「大事」に傍点]なお鼻が!」そのときばかでかいシチューなべがぎりぎりのところに飛んできて、あわや鼻を持っていくところ。
「みながひとにちょっかい出さぬようになれば、」とごぜんさまはガラガラ声でうなってね、「世の中は今よりずいぶん早く回ろうというのに。」
「そんなことのどこが[#「どこが」に傍点]いいの。」とアリスは知恵《ちえ》をひけらかすなら今だと得意満面《とくいまんめん》。「考えてもみて、そんなことをしたら昼と夜がどうなるか! いいこと、地球は自転するのに24時間ちょっきり――」
「ちょっきりとな、」とごぜんさま、「こやつの首をちょっきりだ!」
アリスはそわそわとコックに目をやってね、そのひとがまさか言うとおりにはと様子をうかがったんだけど、コックはせわしなくスープをかきまぜるばかりで、話を聞いていたそぶりもないから、また口を開いて、「24時間、かな[#「かな」に傍点]? あれ12時間? えーと――」
「ああ、だまらっしゃい[#「しゃい」に傍点]!」とごぜんさま。「数字なぞいらいらする!」そうしてさらにはまた子どもをあやしだして、それらしく子守歌みたいなのをうたうんだけど、1ふしごとにきつくゆすってね――
「小さな子どもはどやしつけろ
くしゃみをしたらぶったたけ
そいつはただのいやがらせ
わかってやってる、このクソガキァ」
コーラス
(コックと赤子がいっしょになって)
「わう! わう! わう!」
ごぜんさまが2つめのふしをうたっているあいだなんか、赤ちゃんをあらあらしく上へ放り投げるわ、かわいそうに赤ちゃんは泣きわめくわで、アリスには歌詞《かし》が大半聞き取れなくて――
「わが家のガキにはしかりつける
くしゃみをしたらぶったたく
放っておけばそのうちに
コショウだって楽しみやがる」
コーラス
「わう! わう! わう!」
「ほれ! よければちょっとあやしてみるがよい!」とごぜんさまはアリスに言って、しゃべりきらないうちに赤ちゃんを放り投げてくる。「わらわはそろそろクイーンさまとのクローケーのしたくじゃ。」と部屋をいそいそと出てゆく。去りぎわにコックが後ろからフライパンを投げつけたけど、ねらいは外れてね。
アリスがなんとか赤ちゃんを受け取ると、このけったいななりをした小さな生き物は、受け取ったときには汽車のように鼻からぶーと湯気を出していて、やたら身をくねらせたりそりかえったりしたので、とにかくまずものの数分はかかえるだけでせいいっぱい。
ちゃんとあやすコツ(むすび目を作るみたいにねじって右の耳と左の足をぐっとおさえてほどけないようにすること)がわかるとすぐに、かかえたまま表に出てね。「あたくしがこの子を連れ出さなければ、」と思うアリス、「ものの数日できっと殺《ころ》されてしまってよ。置き去りにするなんて人殺《ひとごろ》しも同然《どうぜん》じゃなくて?」おしまいのところはもう声にも出ていて、小さいのも何かぐずっていて(このときにはくしゃみもおさまっていてね)。「ブーブー言わないの、」とアリス、「ものを言いたいのならちゃんとはっきり。」
赤ちゃんはまたもやブーブー、そこでアリスはいぶかしげに顔をのぞいてね、何かあったのかと思って。するとどこからどう見ても、そこにあるのはまさしく[#「まさしく」に傍点]上向きの鼻、人の鼻というよりはもうブタの鼻、しかも耳は赤ちゃんにしてはひどく小さくなっていて、とにかくアリスはそいつの面《つら》がまったく気に入らない。「でもめそめそしてるだけかも。」と考えて、また目をのぞいて、なみだがないかたしかめてみる。
ない、なみだなんかちっとも。「ブタになったりしたら、まったく、」とアリスは真顔、「こんりんざいかまってあげなくてよ。めっ!」かわいそうにその小さいのはまたもや泣いて(というかブーブー、と言っていいものやら)、しばらくは何も言わずに進んでいってね。
アリスの頭にはよぎりはじめていたことがあってね、「ところでこの生き物をうちにつれかえって、あたくしはどうしようっていうのかしら。」するとそのときまたブーブーとうるさくするので、顔をのぞきこんでちょっとびっくり。今度はもう見まちがいのしようがない[#「ない」に傍点]、どこからどこまでもまったくのブタ、そうなるともはやつれていくのもとってもばからしくなってきてね。
そこでその小さい生き物を下ろして見守っていると、そそくさとっとこと森へ入っていったので、すごくほっとしてね。「大きくなったら、」とひとりごと、「ものすごくぶっさいくな子になりそうだったけど、ブタならちょっとはかっこよくなる、かも。」そうして今度は自分の知り合いのなかでもブタとしてならやっていけそうな子を思いうかべながら、ひとりごとを言おうとしてね、「ちゃんと化けるやり方を知ってたなら――」とちょうどそのとき、ちょっとびくっとしてね、目の前で、チェシアネコが数メートル先の木の大枝にちょこんといたんだ。
ネコは愛きょうよくにんまりするだけで、じっとアリスを見つめる。あいそのいいネコ、と思ったアリス。
しかもほんとに[#「ほんとに」に傍点]長いツメと、りっぱな歯がずらりとあるものだから、下手に出なければという気になってね。
「チェッシャにゃん。」とちょっぴりおずおずよびかけてね、だってそのよび方が相手のお気にめすかさっぱりわからなかったから。ところが向こうはさらにちょっとにやっとするだけ。「ふう、とりあえず気げんはいいみたい。」と思ったアリスは言葉を続けてね。「教えてくださいませんこと? ここからどちらに行った方がよろしくて?」
「そいつはやっぱりお前の行きたいところ次第だにゃ。」とネコ。
「べつにどこでもよくてよ――」とアリス。
「にゃら、どこへにゃりとも行けばいい。」とネコ。
「――ちゃんとどこか[#「どこか」に傍点]へたどりつけるなら。」とアリスは付け足しの言いわけ。
「そりゃそにょくらいできるとも、」と言うネコ、「それにゃりに歩けば。」
アリスはたしかにもっともだと思ったので、今度はべつのことを問いかけてね。「このあたりには、どんなひとがお住み?」
「あっち[#「あっち」に傍点]の方にゃ、」とここでネコは右の肉球をぐるっとふってね、「ぼうし屋が住んでる。そんであっち[#「あっち」に傍点]の方にゃ、」と今度は左の肉球をふって、「ヤヨイウサギ。好きにゃ方に行け。どっちもおかしなやつだ。」
「でも、おかしなひとのところに行くのはごめんでしてよ。」と言い出すアリス。
「まあ仕方のにゃいこと。」とネコ。「ここじゃみんなおかしいにゃ。にゃあも、お前も。」
「あたくしがおかしい? どうして?」
「そりゃそうにゃ、」とネコ、「でにゃきゃこんにゃとこに来ない。」
アリスはものも言いようだと思ったけど、とりあえず続けてね、「じゃあ、あなたがおかしいっていうのは?」
「まずもって、」とネコ、「犬はおかしくにゃい。これはいいにゃ?」
「まあそうね。」とアリス。
「にゃらわかるにゃ、」とたたみかけるネコ、「犬はおこるとうにゃって、うれしいとしっぽをふる。にゃのに、おいらはうれしいとうにゃるし、はらが立つとしっぽをふる。にゃから、おいらはおかしい。」
「それって、うなるじゃなくて、のどを鳴らすってことじゃにゃいの[#「にゃいの」に傍点]?」とアリス。
「どう言ってもおにゃじこと。」とネコ。「今日はウイーンとクローケーするんにゃにゃいのか?」
「ぜひやってみたくてよ。」とアリス、「でもおさそい受けてないし。」
「ではまたそこで。」と言うなりネコはぱっと消える。
アリスはこんなことにはもうわりと平気で、けったいなことが起きるのもなれっこ。それでもネコのいたところをじっと見ていたんだけど、するとまたぱっと出てきてね。
「ところで、赤んぼはどうにゃった?」とネコ。「聞くのをうっかりしてたにゃ。」
「ブタに化けてよ。」と事もなげに答えたアリスには、ももうネコがもどってきたのも当たり前みたいで。
「そうにゃろうと思った。」と言ってネコはまた消える。
アリスはどうせまた出てくると思ってしばらく待ったんだけど、どうも出てこないので、ものの数分するとヤヨイウサギが住んでると言われた方へと進み出してね。「ぼうし屋は見たことあるから、」とひとりごと、「ヤヨイウサギの方がきっともっとずっと面白いはず、でもまあ今は5月だから、そこまでおかしくはないかも――少なくとも3月ほどおかしくないかな。」こう口にしながら見上げると、なんとそこにはまたネコが木の枝にちょこん。
「『ブタ』にゃっけ、『ブナ』にゃっけ?」とネコ。
「だから『ブタ』。」と答えるアリス、「あの、そんなむやみやたらにぱっと出たり消えたりしないでいただけて? ひどくめまいがしてよ。」
「にゃるほど。」というネコ。なので今度はきわめてゆっくりと消えることにしてね、しっぽの先からじんわりと、おしまいには愛想《あいそ》だけが本体が消えたあとにもなごりとしてしばらくあって。
「まあ! 愛想なしのネコならよく見るけど、」と思うアリス、「ネコなしの愛想だなんて! 生まれてこのかたこんなへんてこなこと見たのはじめて!」
そんなに歩くわけでもなくすぐにヤヨイウサギのおうちが目に入ってくる。そのおうちにちがいないと思ったのは、えんとつが耳みたいな形で、屋根が毛なみふわふわだったから。大きなおうちだったので、はじめは近よりたくなかったけど、とうとう左手にあったキノコのかけらをもうちょっとかじって、背たけを60センチくらいに上げてね。そのあとでも近より方はこわごわで、ひとりごと、「やっぱりめちゃくちゃおかしかったらどうしよう! こっちじゃなくぼうし屋の方に行けばよかったかな?」▼
第6回訳者コメント
■真っ青! 真っ青ですよ! ということは、ここの部分は全部加筆。つまり有名なチェシャ猫は草稿段階になく、追記で出てきたキャラクタというわけですね。
■この章全体としては、文化的ジョークが目立ちます。英国流の召使い(というかふくらはぎの美しいフットマンですね)のやりとりや、子育ての苦手な貴族の存在、それからコショウでばかり使う〈味音痴〉の料理人(しかもそれが主人よりも偉そうにしている点)、そして英語の成句から生まれたキャラクタ。いずれもどこか英国を自虐的に茶化したところがあって、そもそもそういうタイプのネタは草稿には少ないです。
■草稿のネタは、どちらかというと実際のキャロルやアリスたちごく狭い範囲に通じる内輪ネタが多いわけですが、追記されるとその内輪の範囲が英国(特にイングランド)に広がります。でも広がってもやっぱり内輪は内輪。
■そしてここで(草稿も含めて)初出の形容詞が〈extraordinary〉。アリス研究者には知られていることですが、キャロルは〈変〉という意味の形容詞をニュアンスによって結構使い分けていて、たとえば〈curious〉が肯定的な含意の変(訳語は「へんてこ」)で、〈queer〉が否定的なニュアンスの変(訳語は「けったい」)。〈extraordinary〉とは「普通でない」「異常」(訳語では「とてつもない」)ということでもありますが、この言葉が出てくるのは丸々追記されたこの6章と次の7章だけ。類語の〈out of the way〉(訳語は「とんでもない」)が他のところでもありますが、内輪ネタじゃないこの2章だけにこの言葉を使うというのは、つまり〈ordinary〉なことを意識しているということでもあって、内輪の範囲が変わっていることも考えると結構意味深。
■笑いどころが英国限定すぎたのか(あるいはあまりに幼児虐待っぽいためか)、ディズニーの『ふしぎの国のアリス』では、召使い・公爵夫人・コック・赤ちゃん揃ってカット。
おまけ
■キャロルは、版によってアリス本編に色々と添え物をつけていたりするわけですが、多いのがイースターとクリスマスのごあいさつ。おまけとして毎回色々つけていこうと思います。はじめは、クリスマスの詩。『アリス』本編や、『えほんのアリス』などに添えられました。こうしたものは、キャロルがもともと真面目な牧師だということをたいへん強く感じさせてくれます。
クリスマスのごあいさつ
(ようせいから お子さまへ)
おじょうさん、 ようせいさんが
しばし ひどい いたずらや
おふざけを ひかえるとしたら
それは クリスマスだからだね
聞こえる 子どもたちの 声――
やさしい いとしい 子どものね――
「そのむかし クリスマスの日に
天から みことばが 使わされた」
そう クリスマスが めぐるたび
やっぱり なんどでも 思い出す――
ひびきわたる よろこびの声
「地に 平和を、 人に ごかごを」
でも むじゃきな その心にこそ
天からの 使者が 住まうもの
子どもたちには よろこびあれば
1年じゅうが クリスマス!
だから いたずらも おふざけも
しばし わすれて、 おじょうさん、
どうか きみに おとずれますように
すてきな クリスマスと 新年が!
クリスマス 1867年