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早稲田松竹でテオ・アンゲロプロス監督の追悼上映が行われている。5月5日から1週間は『旅芸人の記録』。早速、観に行く。一人で一番前の席に腰をかけて、画面に見入る。初めてこの映画を見たのは高校生の頃。キネマ旬報に書いてあった数十年に1本の傑作という言葉に惹かれて観に行った。
わからなかった。ギリシャのことも世界の歴史についても疎かった私にはストーリーも、アンゲロプロスが伝えたいこともわからず、なんどもウトウトとしながら必死で4時間耐えていた。
見終わって、あまりのわからなさに、もう一度続けてみた。当時は指定席入れ替え制ではなかったので、そういう見方が出来た。というわけで、もう一度見た。また分からなかった。眠るとか眠らないとかいう以前に、この作品を理解するだけの下地がないのだと思い知らされた。
あれから30年以上。やっとスクリーンで再会した『旅芸人の記録』はとても面白い映画だった。この映画が面白いといと感じられただけで、「ああ、少しは成長したのか」と思うことが出来た。不思議だったのは、主要な登場人物がときおりカメラ目線で語るというカットをすっかり忘れていたこと。そうか、そういうこともやる人だったのか、アンゲロプロス。とこれまた嬉しくなった。
私は、この映画を見たさに上京しました。まだ時間があるとあっちへふらふらこっちへふらふらしていたら、時間が来てしまっていて、岩波ホールの前に立ったときは札がでておりました。でもまだ上映されていないはずと「すいません、遠くから来たのです、入れください」と叫びましたが、だめで、結局4時間神保町をうろうろして本をかってしまって、重い荷物をよっこらしょと持ちながら岩波へ走りました。今度は入れてもらえました。
確か定点で撮影された映画でしたね。だから登場人物が画面からいなくなるんですよね。そしてこれは、アンゲロプロス独特のものなんですが、こんなところに?というのがありませんでしたか?旅芸人が雪の中鶏をおいかけていませんでしたか?あの鶏はどうやって生き延びていたんでしょうかねえ?(笑)「霧の中・・」もなんでここに馬がいるの?というところに馬が横たわっていたような・・そういったことは瑣末なことでアンゲロプロスがもうこの世にいないというのは現実です。
tenさん
僕も別の映画を見に上京して、岩波ホールに行ったことがあります。なんの映画だったのか思い出せないのですが、岩波ホールの前に立ち、「ここがあの岩波ホールか」としばし呆然としていたことを思い出しました。
ほんとに、アンゲロプロスもこの世にいないんですねえ。