『文豪ストレイドッグス』×青空文庫 勝手に応援#7
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カテゴリー:,青空文庫 | 投稿者:OKUBO Yu | 投稿日:2013年6月8日 |

どうもどうもこんにちは、この記事はマンガ雑誌「月刊ヤングエース」(角川書店刊)に連載中『文豪ストレイドッグス』(原作:朝霧カフカ/作画:春河35)をこれといって解説するわけでもなくネタバレを極力避けながらその月の掲載話に出てきた文豪由来の登場人物の作品なり人物なり何なりについてそれとなく書き連ねてみようと思いつつ今月はどちらかというとついに新世紀エヴァンゲリオンのマンガ版が終了したことについてひとつの感慨を隠せないエヴァ当時14歳のおっさんのしたためるつれづれ書き物になります。

梶井基次郎といえば〈檸檬・童貞・桜の樹〉ですよね。

……なんとひどい形容! とはいえ梶井は宮沢賢治と並ぶ日本近代文学における二大童貞文豪ですから(次点:田山花袋)、そのように言われてもまま仕方ない点もあるのですが、そういう意味でも、彼の作品の持ち味は童貞的な〈爆発しそうな妄想〉をぎりぎり可読なレベルに昇華させたものであったりするわけで。

青空文庫にあるもので行くと、「交尾」なんかは、いやこれ井伏鱒二に褒めてもらえたからいいものの(彼の好きそうな作品ではあるけれども)、感性の合わない人が読んだら本当にただ〈気持ち悪い〉だけで終わってしまいそうな、自己を美化せんとする中学生のような、そんなアレ。

自己というか自意識というか、直視したらもうそれでそれ自体の醜さに頭を抱えてしまいそうなものを、いかに美化し正当化していくのか。ある一瞬の妄想を、あとから思い返すたびに改変し、色を塗り立て飾り立て、作品に仕上げていく。今月の『文豪ストレイドッグス』に登場致しました爆弾魔である梶井基次郎も自己陶酔していらっしゃいましたが、文学好きの理系童貞三高生ってそんなもんなんじゃないですかね(わが母校たる京大総人の方を遠い目で見る)。

そうなってくると、「Kの昇天」みたいにKという自分の分身を妄想のなかで自殺させて、その原因の説明を想像内の仮の相手(自分)に向けて、Kと友人であったという設定の自分がする、という、自己をひたすらに仮構していく作品はただひたすらに梶井らしく思えます。

しかし梶井は夭逝しているために作品が少なく、そのなかでもうっかりするとすぐ作品の落ちが〈闇〉になってしまうので(わたくしはこれを勝手に〈オチ闇シリーズ〉と呼んでおります)、色々楽しめるという作家ではないのですが、昨今ネット界隈で盛んな猫萌えにもつながる「愛撫」とか、話のなかに突然赤面ものの純愛(?)挿話が挟まれる「雪後」というような小品もあったりで、そのあたりもすごい三高っぽい(偏見)。

なので個人的には、そういう三高生(京大生)と付き合ってるっぽい雰囲気を楽しみたい人が梶井を読むといいんではないかと思うわけですけれども、本気で梶井の素顔をのぞきたいとか思うあなたは周囲の人々が死後伝えまくった彼のプライヴェートなエピソードについてはどうか無視してあげてください。高校大学時代の写真とか手紙とか日記とか友人の思い出とか宇野千代と瀬戸内寂聴の対談とか見たり読んだりしないでください。おいやめろ、それは本物の爆弾なんだ、真っ黒な色のアレなんだよ、や、やめるんだぁああ……っ!


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