青空文庫 2011年-2012年の年間アクセス増分析
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カテゴリー:電子書籍,青空文庫 | 投稿者:POKEPEEK2011 | 投稿日:2013年1月12日 |

2011年-2012年の年間アクセス増分析では何が分かるのであろうか?

2010年-2011年の年間アクセス増分析はまだaozorablogでは発表しておらず、表を画像にしてtwitterで発表するという方法をとっていた。XHTML版 http://twitpic.com/856hdi テキスト版 http://twitpic.com/856i3f 。また、今回のようにその年度の新規公開作品だけを別分類にするということも、単純アクセス数増といく分類も行なっていなかった。したがって、2011年度と比較することは部分的にしかできないが、分かる範囲で比較してみよう。

新規公開作品でXHTML版で500位ランキングに入ったのは、2011年度で8作品、2012年度で10作品。テキスト版では2011年度で9作品、2012年度で10作品。共に同程度と言える。

アクセス増率ではXHTML版の2011年トップが伊丹万作「戦争責任者の問題」で5.56であったのに対し、2012年トップは芥川竜之介「谷崎潤一郎氏」で45.79だが、これはちょっと特別で、実質は3位の宮沢賢治「やまなし」の2.85となる。

テキスト版では2011年が実質トップのグリム「ラプンツェル」の2.55に対し、2012年トップは宮沢賢治「グスコーブドリの伝記」の3.37で、これはかなりのアクセス増だということになる。

まとめてみると、芥川竜之介「谷崎潤一郎氏」という例外を除けば、XHTML版でもテキスト版でも宮沢賢治作品がアクセス増率のトップということになる。

■青空文庫 2011年-2012年 XHTML版新規公開作品一日当たりアクセス数ランキング
年間のアクセス数合計なので、新規公開作品では公開日の早い作品がランクインするのであろう。第3位の与謝野晶子が最遅の3月31日公開で、4月以降の公開の作品は入っていない。

小川未明の作品では「赤い蝋燭と人魚」(ちくま文庫 文豪怪談傑作選 小川未明集 幽霊船所載)が一日当たりアクセス数のランク1位、「赤いろうそくと人魚」(講談社 定本小川未明童話全集 所載)が5位である。底本の違う同じ作品が元旦のパブリック・ドメイン・ディに公開されていたことも知らなかったので、その人気ぶりがうかがえる。どうやって、どちらの作品を選ぶのだろうか?

カフカ「城」、与謝野晶子「みだれ髪」は当然のランクインに思われる。南方熊楠「人柱の話」、永井荷風「断腸亭日乗 02 断膓亭日記 巻之一」、古川緑波「ああ東京は食い倒れ」はtwitter上で話題に取り上げられていたのを覚えている。しかし、宮沢賢治「詩ノート」は宮沢賢治の根強い人気がうがかえる。

9位の高山毅「福沢諭吉 ペンは剣よりも強し」は作者も作品についてもまったく知らなかった。何かで話題になったのであろうか。

青空文庫 2011 – 2012 XHTML版新規公開作品一日当たりアクセス数ランキング
No  作品名 副題   著者名   公開日   アクセス   ランク   アクセス/日   日 
1 赤い蝋燭と人魚 小川 未明 2012-01-01  6769   168   18.49   366 
2 カフカ 2012-01-18  5532   222   15.85   349 
3 みだれ髪 与謝野 晶子 2012-03-31  3960   318   14.35   276 
4 詩ノート 宮沢 賢治 2012-02-19  3794   344   11.97   317 
5 赤いろうそくと人魚 小川 未明 2012-01-01  3952   321   10.80   366 
6 断腸亭日乗 02 断膓亭日記
巻之一 大正六年丁巳九月起筆
永井 荷風 2012-02-18  3171   422   9.97   318 
7 人柱の話 南方 熊楠 2012-03-15  2856   469   9.78   292 
8 ああ東京は食い倒れ 古川 緑波 2012-01-07  2867   467   7.96   360 
9 福沢諭吉 ペンは剣よりも強し 高山 毅 2012-01-01  2886   464   7.89   366 

■青空文庫 2011年-2012年 XHTML版 アクセス増率ランキング
アクセス増率のランキングでは芥川竜之介「谷崎潤一郎氏」がダントツのTOPで10万アクセス以上を稼ぎ出し、ランクも496位から4位までになった。話題になったのは、4月度のアクセス数が6万6362で突然トップになったことだった。aozorablogでは http://www.aozora.gr.jp/aozorablog/?p=471 に原因の推測が書かれている。その後も、7月まで1万回以上のアクセス数を稼いだ。8位の堀辰雄「燃ゆる頬」もGoogleでの検索によればBL関連らしい。

宮沢賢治は2位に「やまなし」、4位に「グスコーブドリの伝記」、5位に「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」が入った。「グスコーブドリの伝記」はますむら・ひろしの描くネコのキャラクターの映画が公開されたし、「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」は「グスコーブドリの伝記」の前身と言えるそうだから当然であろう。アクセス増という点では「やまなし」が0.6ポイントほど上だが、これは「クラムボン」の正体が判明したと言われることと関係しているのだろうか。

3位の坂本竜馬「船中八策」、12位の文部省「あたらしい憲法のはなし」は12月になって実施された衆議院総選挙にいたるまでの長い政治動向の影響であろう。

9位ペロー「眠る森のお姫さま」は、9月からNHKで放映されている連続テレビ小説「純と愛」にからんでいる。

青空文庫 2011 – 2012 XHTML版 アクセス増率ランキング
No  作品名 副題   著者名   公開日   B:
2011 
 A:
2012 
 (A-B)/B %   B RANK   A RANK 
1 谷崎潤一郎氏 芥川 竜之介 2002-10-05  2415   112992   4579   496   4 
2 やまなし 宮沢 賢治 2008-05-24  11859   45605   285   83   19 
3 船中八策 坂本 竜馬 2004-11-26  6710   24641   267   159   39 
4 グスコーブドリの伝記 宮沢 賢治 2004-01-31  16271   52028   220   48   16 
5 ペンネンネンネンネン・
ネネムの伝記
宮沢 賢治 2010-03-06  2393   7128   198   501   157 
6 燃ゆる頬 堀 辰雄 2004-02-02  2580   7114   176   465   159 
7 駈込み訴え 太宰 治 1999-02-24  6771   16916   150   156   58 
8 セメント樽の中の手紙 葉山 嘉樹 1998-10-03  20323   49711   145   40   17 
9 眠る森のお姫さま ペロー 2006-03-10  2992   7263   143   390   152 
10 無人島に生きる十六人 須川 邦彦 2004-06-08  3335   7209   116   342   155 
11 古事記物語 鈴木 三重吉 2001-11-19  7589   16074   112   136   65 
12 あたらしい憲法のはなし 文部省 2004-08-02  8048   16157   101   126   63 
13 少女病 田山 花袋 2000-09-28  3412   6613   94   329   175 
14 草木塔 種田 山頭火 1998-04-10  2393   4450   0.86   501   280 
15 小さき者へ 有島 武郎 1999-02-13  6086   11202   84   174   103 
2011ランク外の作品は2011のアクセス数を500位のアクセス数-1として計算。

■青空文庫 2011年-2012年 XHTML単純アクセス増ランキング
単純アクセス増は、定番作品が強いなか、ここでも芥川竜之介「谷崎潤一郎氏」がトップ。過去のアクセス増のランクは不明だが、とりあえず11万0577アクセスが年間アクセス増のNo1として記録しておこう。他に注目されるのは、坂本竜馬「船中八策」。

7位の葉山嘉樹「セメント樽の中の手紙」はアクセス数の増減が波のような面白い動きをしているようだ。時間があれば詳しい分析をしてみたいが、筆者には増減の数値は計算できるが、その原因はトント浮ばない。

15位稗田 阿礼「古事記 03 現代語訳 古事記」は2011年10月の作品であるから、アクセス増の考え方によれば採用除外したほうがよいかもしれない。その場合は、来る。

青空文庫 2011 – 2012XHTML版 単純アクセス増ランキング
No  作品名 副題   著者名   公開日   B:
2011 
 A:
2012 
 A-B   B RANK   A RANK 
1 谷崎潤一郎氏 芥川 竜之介 2002-10-05  2415   112992   110577   496   4 
2 走れメロス 太宰 治 2000-12-04  90658   128511   37853   5   3 
3 〔雨ニモマケズ〕 宮沢 賢治 2006-09-19  149016   185887   36871   2   1 
4 グスコーブドリの伝記 宮沢 賢治 2004-01-31  16271   52028   35757   48   16 
5 やまなし 宮沢 賢治 2008-05-24  11859   45605   33746   83   19 
6 羅生門 芥川 竜之介 1997-10-29  60704   91981   31277   12   7 
7 セメント樽の中の手紙 葉山 嘉樹 1998-10-03  20323   49711   29388   40   17 
8 こころ 夏目 漱石 1999-07-31  159058   185650   26592   1   2 
9 吾輩は猫である 夏目 漱石 1999-09-21  86164   104558   18394   6   5 
10 坊っちゃん 夏目 漱石 1999-09-13  72712   90785   18073   8   8 
11 船中八策 坂本 竜馬 2004-11-26  6710   24641   17931   159   39 
12 注文の多い料理店 宮沢 賢治 2005-02-26  31075   48153   17078   21   18 
13 人間失格 太宰 治 1999-01-01  70894   84181   13287   9   11 
14 草枕 夏目 漱石 1999-02-17  47118   59689   12571   14   14 
15 女生徒 太宰 治 1999-02-16  19344   30111   11797   41   32 
1211ランク外の作品は1211のアクセス数を500位のアクセス数-1として計算。

■青空文庫 2011年-2012年 テキスト版新規公開作品一日当たりアクセス数ランキング
2012年度新規公開作品でテキスト版500位ランキングに入ったのは10作品。年間のアクセス数合計なので、XHTML版のように、公開日の早い作品がランクインする率が大きいのであるが、2、3位に8月公開の和辻哲郎「孔子」、折口信夫「死者の書」、5位に岡本綺堂「探偵夜話」が入っているのが注目される。これらはXHTML版ではランクインしていないので、テキスト版とXHTML版のこのアクセス傾向の差は相変わらず不思議である。

また、テキスト版では小川未明の「赤いろうそくと人魚」と「赤い蝋燭と人魚」とのアクセス数が逆転しており、その差も大きいのも謎だ。

青空文庫 12/11 – 12/12テキスト版新規公開作品一日当たりアクセス数ランキング
No  作品名 副題   著者名   公開日   アクセス   ランク   アクセス/日   日 
1 みだれ髪 与謝野 晶子 2012-03-31  9294   111   33.67   276 
2 孔子 和辻 哲郎 2012-08-02  4946   289   32.54   152 
3 死者の書 折口 信夫 2012-08-23  3294   423   25.15   131 
4 カフカ 2012-01-18  8022   144   22.99   349 
5 探偵夜話 岡本 綺堂 2012-08-17  2754   487   20.10   137 
6 六羽の白鳥 グリム 2012-06-04  2780   480   13.18   211 
7 人柱の話 南方 熊楠 2012-03-15  3620   389   12.40   292 
8 赤いろうそくと人魚 小川 未明 2012-01-01  4019   345   10.98   366 
9 ああ東京は食い倒れ 古川 緑波 2012-01-07  3256   425   9.04   360 
10 赤い蝋燭と人魚 小川 未明 2012-01-01  2781   479   7.60   366 

■青空文庫 2011年-2012年 テキスト版 アクセス増率ランキング
テキスト版のアクセス率増加では、増加の原因が推測できるもので、ほかの分類で述べなかったものだけについて述べることにする。
8、11、14、15位を占める「レ・ミゼラブル」はまずミュージカル映画「レ・ミゼラブル」の影響であることが確実である。

9位の作者不詳「平家物語」ぬきほ《言文一致訳》は、NHK大河ドラマ「平家物語」の影響だろうが、毎月のアクセス増では拾い上げられなかったので、静かな影響があったといえるだろう。ところで、「ぬきほ」というのは何のことだろう。

10位の日本国「日本国憲法」は、12月に行われた衆議院総選挙の改憲論議が原因と言えるが、論議があったときに、すぐにその基となるものを参照できることは、青空文庫の素晴らしい効用といえるだろう。

青空文庫 2011 – 2012テキスト版 アクセス増率ランキング
No  作品名 副題   著者名   公開日   B:
2012 
 A:
2011 
 (A-B)/B %   B RANK   A RANK 
1 グスコーブドリの伝記 宮沢 賢治 2004-01-31  6679   29220     337   142   19 
2 まざあ・ぐうす 作者不詳 1998-01-27  2689   7054   162   433   167 
3 よだかの星 宮沢 賢治 1998-08-20  4604   11433   148   216   85 
4 オツベルと象 宮沢 賢治 1999-02-06  3322   8108   144   329   142 
5 レ・ミゼラブル 01 序 豊島 与志雄 2007-02-24  2486   5883   137   476   221 
6 「平家物語」ぬきほ《言文一致訳》 作者不詳 2009-05-20  2745   6391   133   422   202 
7 日本国憲法 日本国 1998-09-17  3506   7451   113   302   161 
8 レ・ミゼラブル 04 第一部
 ファンテーヌ
ユゴー 2007-02-26  6141   13028   112   155   71 
9 こころ 夏目 漱石 1999-07-31  58232   115193   98   3   1 
10 レ・ミゼラブル 07 第四部 叙情詩と叙事詩
 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
ユゴー 2007-03-04  2891   5719   98   401   232 
11 レ・ミゼラブル 08 第五部 
ジャン・ヴァルジャン
ユゴー 2007-03-06  3011   5956   98   377   220 
12 愛撫 梶井 基次郎 1999-01-11  4004   7856   96   245   149 
13 或る女 1《前編》 有島 武郎 1999-10-28  4414   8662   96   218   127 
14 レ・ミゼラブル 06 第三部 
マリユス
ユゴー 2007-03-02  2962   5809   96   393   226 
15 武士道の山 新渡戸 稲造 2010-04-27  3558   6683   88   296   187 

■青空文庫 2011年-2012年 テキスト版 単純アクセス増ランキング
テキスト版単純アクセス増は、ランキング上位定番の作品がほとんどを占めている。「富める者ほど更に富める」みたいで、少々いやな気分になるが、読書に限らずランキングというものはこういうものなのだろう。

青空文庫 2011 – 2012テキスト版 単純アクセス増ランキング
No  作品名 副題   著者名   公開日   B:
2011 
 A:
2012 
 A-B   B RANK   A RANK 
1 こころ 夏目 漱石 1999-07-31  58232   115193   56961   3   1 
2 吾輩は猫である 夏目 漱石 1999-09-21  55426   85046   29620   5   3 
3 グスコーブドリの伝記 宮沢 賢治 2004-01-31  6679   29220   22541   142   19 
4 人間失格 太宰 治 1999-01-01  73829   94594   20765   1   2 
5 羅生門 芥川 竜之介 1997-10-29  28248   47536   19288   11   9 
6 注文の多い料理店 宮沢 賢治 2005-02-26  25730   44462   18732   14   11 
7 銀河鉄道の夜 宮沢 賢治 1997-10-29  47530   62127   14597   7   6 
8 銀河鉄道の夜 宮沢 賢治 2005-08-26  25259   39142   13883   15   14 
9 源氏物語 01 桐壺 紫式部 2003-04-21  35083   48747   13664   10   8 
10 それから 夏目 漱石 2005-04-30  19203   31919   12716   25   17 
11 蜘蛛の糸 芥川 竜之介 1997-11-10  27416   38968   11552   13   15 
12 走れメロス 太宰 治 2000-12-04  28017   39452   11435   12   13 
13 三四郎 夏目 漱石 2000-07-01  16638   25988   9350   35   23 
14 坊っちゃん 夏目 漱石 1999-09-13  73636   82964   9328   2   4 
15 モルグ街の殺人事件 ポー 1999-07-06  22829   30961   8132   16   18 

■アクセス数合計の推移
2012年の年間アクセス数はXHTML版が531万5515件、テキスト版が437万2411件で、合計968万7926件と1000万件をやや下回る件数となった。前年比でXHTML版19%、テキスト版28%、合計23%で、iPhoneを始めとするスマートフォン、iPadを始めとするタブレットでテキスト版をダウンロードする青空文庫ビューアでの利用が増えていることを示している。
下記の表では、アクセス数ランキングが掲載されている2009年度からのアクセス数推移と各前年比を示した。2012年度はテキスト版の増加が特徴とされると言える。過去に遡ってみてみると、2010年度の特徴は、PCのWebブラウザーでのXHTML版読書からスマートフォンでのテキスト版読書への移行であろう。2011年はXHTML版でのアクセスが盛り返しており、テキスト版でのアクセスも伸びたと言える。
2012年の月間のアクセス数でみると、XHTML版とテキスト版のアクセス数はテキスト版上位に転換したといえるが、年間ではまだそうなっていない。2013年度ではおそらく転換された結果となるだろう。

アクセス数合計推移
    2009 2010 2011 2012
XHTML版  4,170,320   3,629,498   4,453,633   5,315,515 
前年比     -13.0%   22.7%   19.4% 
テキスト版  1,246,585   2,846,051   3,406,976   4,372,411 
前年比     128.3%   19.7%   28.3% 
合 計  5,416,906   6,475,549   7,860,609   9,687,926 
前年比     19.5%   21.4%   23.3% 

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