青空文庫と蔵書印
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カテゴリー:,青空文庫 | 投稿者:おかもと | 投稿日:2020年11月26日 |

蔵書印とは、その本の持ち主であることを示す印のこと。
くわしくはWikipediaを見ていただくとして、青空文庫の作者たちが、どんな蔵書印を使っていたか、国文学研究資料館「蔵書印データベース」(以下「蔵書印DB」)(2023年3月、人文情報学研究所の「蔵書印ツールコレクション」に継承)から調べてみました。(※1)

具体的な調査方法ですが、「公開中 作家別作品一覧」のデータから青空文庫の作者名を抜き出して、それを蔵書印DBの「蔵書印主」の項目に入れて検索して、ヒット件数を調べます。
その結果、青空文庫の作者のうち71人、計998件の蔵書印が蔵書印DBに収録されていることが判明しました。

蔵書印の件数が一番多かったのは、人間ではなく文部省で、337件。以下、市島春城が87件、坪内逍遥が72件、幸田露伴が71件、尾崎紅葉が64件と続いています。

以下は、作者名の五十音順に並べた一覧です。(※2)
表の「→青空文庫」「→蔵書印DB」をクリックすると、それぞれのサイトへジャンプします。

作者名 件数 青空文庫
へのリンク
蔵書印DB
へのリンク
会津八一 8 →青空文庫 →蔵書印DB
饗庭篁村 63 →青空文庫 →蔵書印DB
秋田雨雀 3 →青空文庫 →蔵書印DB
秋月種樹 2 →青空文庫 →蔵書印DB
淡島寒月 18 →青空文庫 →蔵書印DB
石井研堂 6 →青空文庫 →蔵書印DB
市島春城 87 →青空文庫 →蔵書印DB
伊藤左千夫 1 →青空文庫 →蔵書印DB
井上円了 3 →青空文庫 →蔵書印DB
巌谷小波 6 →青空文庫 →蔵書印DB
宇田川文海 1 →青空文庫 →蔵書印DB
内田魯庵 7 →青空文庫 →蔵書印DB
江戸川乱歩 3 →青空文庫 →蔵書印DB
大隈重信 1 →青空文庫 →蔵書印DB
小笠原長生 1 →青空文庫 →蔵書印DB
尾崎紅葉 64 →青空文庫 →蔵書印DB
小野梓 1 →青空文庫 →蔵書印DB
勝海舟 8 →青空文庫 →蔵書印DB
狩野亨吉 5 →青空文庫 →蔵書印DB
川上眉山 1 →青空文庫 →蔵書印DB
神田孝平 1 →青空文庫 →蔵書印DB
喜田貞吉 1 →青空文庫 →蔵書印DB
木村芥舟 2 →青空文庫 →蔵書印DB
陸羯南 1 →青空文庫 →蔵書印DB
慶應義塾 2 →青空文庫 →蔵書印DB
幸田露伴 71 →青空文庫 →蔵書印DB
小杉放庵 1 →青空文庫 →蔵書印DB
児玉花外 1 →青空文庫 →蔵書印DB
小村雪岱 1 →青空文庫 →蔵書印DB
西郷隆盛 2 →青空文庫 →蔵書印DB
斎藤茂吉 2 →青空文庫 →蔵書印DB
阪井久良伎 1 →青空文庫 →蔵書印DB
佐佐木信綱 4 →青空文庫 →蔵書印DB
佐藤一斎 1 →青空文庫 →蔵書印DB
山東京山 7 →青空文庫 →蔵書印DB
山東京伝 1 →青空文庫 →蔵書印DB
島崎藤村 1 →青空文庫 →蔵書印DB
島村抱月 1 →青空文庫 →蔵書印DB
白鳥庫吉 1 →青空文庫 →蔵書印DB
新村出 1 →青空文庫 →蔵書印DB
杉村楚人冠 2 →青空文庫 →蔵書印DB
相馬御風 1 →青空文庫 →蔵書印DB
谷崎潤一郎 1 →青空文庫 →蔵書印DB
田山花袋 4 →青空文庫 →蔵書印DB
津田左右吉 57 →青空文庫 →蔵書印DB
坪内逍遥 72 →青空文庫 →蔵書印DB
徳富蘇峰 19 →青空文庫 →蔵書印DB
内藤湖南 1 →青空文庫 →蔵書印DB
内藤鳴雪 1 →青空文庫 →蔵書印DB
永井荷風 5 →青空文庫 →蔵書印DB
中里介山 1 →青空文庫 →蔵書印DB
成島柳北 7 →青空文庫 →蔵書印DB
新渡戸稲造 1 →青空文庫 →蔵書印DB
野口雨情 2 →青空文庫 →蔵書印DB
福沢諭吉 2 →青空文庫 →蔵書印DB
藤野古白 28 →青空文庫 →蔵書印DB
牧野富太郎 1 →青空文庫 →蔵書印DB
正岡子規 4 →青空文庫 →蔵書印DB
松井須磨子 2 →青空文庫 →蔵書印DB
三田村鳶魚 11 →青空文庫 →蔵書印DB
宮武外骨 7 →青空文庫 →蔵書印DB
森鴎外 9 →青空文庫 →蔵書印DB
文部省 337 →青空文庫 →蔵書印DB
山田美妙 15 →青空文庫 →蔵書印DB
山本笑月 4 →青空文庫 →蔵書印DB
横瀬夜雨 1 →青空文庫 →蔵書印DB
与謝野晶子 3 →青空文庫 →蔵書印DB
吉田絃二郎 2 →青空文庫 →蔵書印DB
吉田松陰 4 →青空文庫 →蔵書印DB
吉野作造 1 →青空文庫 →蔵書印DB
和田万吉 1 →青空文庫 →蔵書印DB

青空文庫の作者は、全部で1,100名以上います。そのため、この71名という数は「たったこれだけ?」と感じられるかもしれません。
しかし、すべての作者が蔵書印を持っていたとは思えませんし、蔵書印DBが、すべての作家の蔵書印を網羅しているわけでもないようです。そうしたことを考えると、この数はそんなに悪い数ではないと思います。
なにはともあれ、「へ~、この人、こんなハンコ使ってたんだ~」と、まずは楽しんでみてはいかがでしょう。

なお、蔵書印DBの凡例には、次のように書かれています。

「本データベースは、広く “印” によって旧蔵者の姿なり伝来の有り様なりを浮かび上がらせることを目的とする。従って、いわゆる蔵書印 (コレクターが自らの蔵書に捺してその所有を示す印影) のみならず、仕入印や貸本印を含む書肆印、蔵書票・書肆票の類、また、写本等で作成に関わった人物の印記や書画等の落款印についても、可能な限り採録した。典籍の流通・来歴・出所・伝来を少しでも知る縁となれば幸いである。」(※3)

つまり、このデータベースを使えば、青空文庫の作者たちがどんな蔵書印を使っていたかだけでなく、どんな本を持っていたか、その本がどんなふうに伝わってきたか、といったことまで知ることができるようです。
「まずは楽しんで」などと気楽に書きましたが、蔵書印の奥には、さらに深い世界が拡がっているようですね。


※1 今回の調査のきっかけは、Twitterでのstarasenrivero /@starasenriveroさんや蔵書印/出版広告@NIJL_collectorsさんとのやりとりからでした。どうもありがとうございました。

※2 この表は、2023年4月3日現在のデータです。また、この表はGoogleスプレッドシートでも公開しています。

※3 蔵書印DB凡例 https://base1.nijl.ac.jp/~collectors_seal/explanatory_note.html より(2020-11-26参照)。


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