アクセスランキングの500位まで月間アクセス数合計がXHTML版で増加、テキスト版で減少という対称的な動きは、今月も続いた。新規公開作品数では野村胡堂「銭形平次捕物控」シリーズの公開が減少し、地味な作家・作品の公開が続くなかで、火野葦平「糞尿譚」の公開が目を引く。

既存作品のアクセス増率ランキングではXHTML版1位の長谷川時雨「柳原燁子《白蓮》」に注目。NHK連続テレビ小説「花子とアン」での仲間由紀恵演じる蓮子《白蓮》の絶縁状や、歌集『踏絵』中の短歌も読める。作者の長谷川時雨については、女性だと知らなかった。「花子とアン」の醍醐さんが蓮子のことを書いているので、醍醐さんのモデルは長谷川時雨かと思ったが、それは違った。「柳原燁子《白蓮》」は『近代美人伝』の中の1編、青空文庫では他に「樋口一葉」、「マダム貞奴」、「松井須磨子」などが読める。

■青空文庫 ’14/06 – ’14/07 XHTML版新規公開作品一日当たりアクセス数(200超過アクセス/日)ランキング

’14/07月XHTML版の新規公開42作品のうち、500位まで入った作品は12作品で、約29%と通常の月より少ない（一方、テキスト版では24作品、約57%）。

一日当たりアクセス数(200超過アクセス/日)のトップは、火野葦平「糞尿譚」(200超過アクセス/日は65.33)。2位は片岡義男「エルヴィスから始まった」(同32.72)、3位は長谷川伸「幽霊を見る人を見る」(同12.57)。

ん、火野葦平？　と思って没年を確認すると、1960（昭和35）年。青空文庫で公開されている作品はこれが2作目。2011年に公開されているのは、「日本の名随筆4　釣」所載の「ゲテ魚好き」だから、火野葦平の有名作の公開としては初めてということになる。

片岡義男はいうまでもなく存命の著名作家で、青空文庫で作品を公開している稀有な存在、青空文庫を豊かにしている存在。

■青空文庫 ’14/06 – ’14/07 XHTML版 アクセス増率ランキング

XHTML版アクセス増率1位は長谷川時雨「柳原燁子《白蓮》」（アクセス増率4.47）。2位 桑原隲蔵「支那人の食人肉風習」（アクセス増率2.68）、3位はまたまたの登場である芥川竜之介「谷崎潤一郎氏」（アクセス増率2.31）。

長谷川時雨「柳原燁子《白蓮》」については、NHKの連続テレビ小説「花子とアン」で新聞に絶縁状が載った時の放映時に「青空文庫ビューアのneo文庫で読める」とのtweetがあった時に作品があるのを知った。「柳原燁子《白蓮》」には『踏絵』のことも載っているので、もっと早くからアクセスが増えていても良かったのにようやく存在が知られ始めたということだろう。

15位の北条民雄「いのちの初夜」は、本名の七條晃司がこの6月に公開されたことから、注目されたのであろう。北条民雄の作品は青空文庫では23作品が読める。

■青空文庫 ’14/06 – ’14/07 テキスト版新規公開作品一日当たりアクセス数(200超過アクセス/日)ランキング

’14/07月の新規公開作品のうち、テキスト版で500位まで入った作品は24作品で、XHTML版の12作品のちょうど２倍。先月にも書いているが、テキスト版全体のアクセス数が減少している中で、新規公開作品は一定のアクセス数があるためランクインしている。とはいえ、22位以下では200超過アクセス/日がマイナスとなっていて、一定のアクセスは180以下ということになる。

1位は片岡 義男「エルヴィスから始まった 」(200超過アクセス/日は26.92）。2位、3位が野村胡堂「銭形平次捕物控」シリーズ。今月のが野村胡堂「銭形平次捕物控」シリーズの公開は2作品だけで、先月までほぼ3日に1作品公開されていたにと思って、公開予定を調べると、この後しばらくは「銭形平次捕物控」シリーズの公開はなさそうである。＜/p＞

XHTML版で1位の火野葦平「糞尿譚」は6位、7/29公開でランクインしているのはさすがだが、まだ公開されたことが知れ渡っていないようだ。

5位「幽霊を見る人を見る」、9位「奇術考案業」の作家の長谷川伸は、本年度パブリックドメインになった作家で、1月4日以来の再登場だ。

■青空文庫 ’14/05 – ’14/06　テキスト版 アクセス増率ランキング

1位は田山花袋「田舎教師」（アクセス増率1.94）、2位泉鏡花「天守物語」（同0.87）、3位夏目漱石「思い出す事など」（同0.78）。この3作品はXHTML版でもアクセス増率ランキングに入っている。

XHTML版で1位の長谷川時雨「柳原燁子《白蓮》」はランキング内にないが、菊池寛「真珠夫人」が6位に止まる。片岡義男作品は「夏と少年の短篇」が14位。

■アクセス数合計の推移

’14/07月のアクセス数はXHTML版550,934、テキスト版232,368。対前月比でXHTML版113%の微減、テキスト版94%の減少。

対前年同月比では、XHTML版112%の増加、テキスト版72%の減少。XHTML版が増加率、テキスト版の減少率は前月とほぼ同じ。対前年同月比でXHTML版が増加、テキスト版が減少という傾向が4月から続いている。これは何を意味しているのか。