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青空文庫に作品を登録する過程で、青空文庫の運営側にもその作品の底本を入手する必要ができてしまった。もっとわりきった作業の流れにしてしまえば、このリアルな紙の本を青空文庫側で入手する必要を極力避けることが出来たような気もするけど、富田さんはそのようないい加減なことはしなかった。しっかりと青空文庫側で点検する作業を怠らなかったのだ。だから、富田さんや他の受付担当者の家の本棚には青空文庫で使った本がどんどんと溜まってしまった。
昨年の夏、富田さんが亡くなった時、これらの本をどうしようかと言う話しになった。ごく普通に考えれば、トランクルームやレンタルスペースに預ける選択肢を選ぶと思う。実際にそのような考えに傾きつつあったところ、瀬戸内海の豊島(てしま)に住むサウダージ・ブックスの浅野さんが本を引き取ってくれることを申し出てくれたのだ。
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