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タロットの絵解キ(アーサー・エドワード・ウェイト)
THE PICTORIAL KEY TO THE TAROT by Arthur Edward Waite with the illustrations by Pamela Colman Smith
星《ペンタクル》の組《スート》
星《ペンタクル》の王《キング》
この人物についてはとりたてて説明不要である。顔はやや色黒で、剛勇もありそうだが、いくぶん眠たげな印象である。王座にぐるりと配置された雄牛の頭がやはり目を惹く。この組《スート》の象徴が、五芒星の刻まれた護符として至る所に現れるが、その頂点は人間の4体液に加えてそれらを司るもの〔霊〕の5つに対応している。古タロットの多くでは、この組《スート》には通貨・金銭・ドゥニエ硬貨が示されていた。ここで五芒星符の代用品をこしらえるつもりはないし、こうした代替案を尊重する理由もとりたてて持ち合わせていない。ただし占意の含意については、多少の変更を採り入れよう。というのも、この組《スート》が金銭の問題をとりわけ扱うのは、ときたまのことではないからだ。占意:武勇、鋭い知性、商売や常識に関する知力、時として数学の才やこの種の技能。これらの方面での成功。逆位置:悪徳・虚弱・醜悪・邪悪・堕落・わざわい。
星《ペンタクル》の女王《クイーン》
その顔からわかることは、黒髪・色黒の女性で、その資質をまとめるならば、魂の奥深さをまさしく表すものであろう。それでいて知性なるものと真剣に向き合っている。抱えた星をじっと見つめ、その内に世界を見通しているのかもしれない。占意:富・気前・壮大・安泰・自由。逆位置:悪・疑念・緊張感・恐怖・不信。
星《ペンタクル》の騎士《ナイト》
速くはないが耐久力のある重量級の馬に乗る男。その馬こそがまさにこの人物のあり方を示している。その星のしるしを見せびらかしてはいるものの、自らその内をのぞいているわけではない。占意:実用性・利便性・功利性・信頼性・公正性など、見た目からふつう読み取れるものすべて。逆位置:ものぐさ・なまけ、その意味での休み、停滞。また、ひっそり・がっかり・うっかり。
星《ペンタクル》の従者《ペイジ》
星を一心に見つめるひとりの若者、その五芒星は掲げられた手の先にふわり浮かんでいる。動きはゆるやかで、周囲のものには目もくれない。占意:没頭・勉強・学問・熟慮。別の読みでは、最新情報《ニュース》・伝言《メッセージ》、その運び手。また制御・運営。逆位置:放蕩・浪費・大盤振る舞い・贅沢。好ましくない知らせ。
星《ペンタクル》の10
館と敷地の入口になっている拱道《アーチウェイ》の下の男女。子どもがひとり後ろについているが、二匹の犬をわくわくとながめている。その犬は、前庭に座している老人へじゃれついており、子どもの手がそのうちの一匹に添えられている。占意:儲け・富。家庭の事情、公文書・家系、一族の地所。逆位置:災難、不慮の死、喪失・盗難、賭けでの敗北。時として、贈り物・持参金・年金の意も。
星《ペンタクル》の9
ひとりの女性が、その手首に鳥を宿らせ、領主館の庭に実り茂る葡萄蔓の垣根のあいだに立っている。広大な敷地で、何もかもがあふれているとわかる。おそらくここは彼女自身の所有で、モノに恵まれ安定していることを示している。占意:安定志向・安全・成功・実績・確実性・見極め。逆位置:詐欺・ぺてん、中身のない計画、よからぬ信心。
星《ペンタクル》の8
仕事に励む石材職人。その作品で出来映えのよいものが飾られている。占意:仕事・雇用・職権・職人芸、工芸と商売の技能、場合によっては用意周到の意。逆位置:中身のない将来の夢、虚栄・強欲・恐喝・闇金。または、悪巧みと悪知恵に頭が回るという点で才能があるという意にも。
星《ペンタクル》の7
青年がひとり杖に寄りかかりながら、自分の右側にある青葉の茂みへ据えられた7つの星符を一心に見つめている。ある説では、その星々は青年の宝物で、心がそこにあるのだとか。占意:意味はきわめて一貫していない。主として金銭・商売・交易のカード。ただし解釈によっては、口論・口げんか――さらに別の読みでは、無垢・純真・浄罪。逆位置:金を借りる当てについて心を乱すことになるそもそもの原因。
星《ペンタクル》の6
商人の装いをした人物が、天秤で金を量って、困窮した貧乏人たちに配っている。これは自らの人生の成功を表すとともに、心の美徳のしるしでもある。占意:寄贈品・贈り物・心付け。異なる説によれば、注意・用心。現在では、わが世の春、今をときめく、などの意にも。逆位置:欲・強欲・ねたみ・そねみ・まやかし。
星《ペンタクル》の5
2名の物乞いが吹雪のなか、灯りのついた窓の前を通り過ぎる。占意:このカードはまずもって物欲がらみの面倒事を予言するもので、絵柄が示す通り(つまり貧乏)であるかどうかは問わない。タロット占い師によっては、愛と愛し合う同士(妻・夫・友人・妾ないしその類語・縁語)のカードだとする者もある。この両解釈はかみ合いようもない。逆位置:混乱・混沌・崩壊・不和・ふしだら。
星《ペンタクル》の4
冠をかぶった人物が、その冠の上に星符を1つ載せつつ、両手両腕でもう1つを抱き抱えている。2枚の星符が両足の下にある。自らの所有物をつかんで放さない。占意:財産の安泰、所有物への執着心、贈り物・遺産・相続。逆位置:不安・遅延・対立。
星《ペンタクル》の3
修道院で仕事に励む彫刻家。星《ペンタクル》の8に描かれた図案と比較せよ。そこでは徒弟ないし未熟者であったが、報われて今や熱心に仕事に励んでいる。占意:職人技・取引、熟練の仕事。とはいえ通常は、貴族・上流階級・名声・栄光のカードだと見なされる。逆位置:仕事などにおける凡庸、稚拙・瑣事拘泥・偏愛。
星《ペンタクル》の2
踊っているさなかの青年で、両手にそれぞれ星符があり、輪になった紐で横倒しの8の字のようにひっかけられている。占意:かたや図案の主題通り、浮かれ騒ぎ・気晴らし・その類のものを表すカードであるが、書面での最新情報・伝言や、邪魔・動揺・面倒・揉め事などにも読める。逆位置:浮かれ騒ぎの押しつけ、見せかけの楽しさ、文才・手書き・創作・文通。
星《ペンタクル》のA《エース》
例のごとく雲から突き出された手が、1枚の星符を押し頂いている。占意:心の完全なる充足、至福・恍惚。また即妙な知性。黄金。逆位置:財産の悪しき側面、邪悪な知性。また莫大な富。ともあれ繁栄や足りぬモノがない状態を示す。ただしその持ち主に利があるかどうかは、カードの位置の正逆次第である。
以上のことが、占術に関して小アルカナが暗示しているもので、それが事実と符合するかどうかはどうやら、扱いやすく簡潔に表現された各解釈のどれを取るか次第でもある。占術の資料というのは、経験に基づいた過去の発見を仮説として記したものにすぎない。その意味ではやはり暗記用の手引きであり、全要素を修得できるのなら、依然として仮説ではあるが、その基礎をもとに解釈も施せよう。それは正式かつ自動的な作業である。一方で、直観ないし第二の目または千里眼(どうとでも好きに呼べばよい)の才がある者なら、自己の能力で見つけ出したものから、過去の経験を補うこともあろうし、予言という建前で見てきたことを話すこともあろう。あとは、大アルカナにも同じ方法で占意を割り当て、また簡潔に示すだけである。
〔以下、占意の一覧表へと続く〕
訳者コメント
■今回は間があんまり開かずに続きができました。開くときと開かないときの差が極端ですね。
■次はいよいよ大アルカナ。一気にやるのは難しそうなので、適度に分割しながら進めます。