新規公開作品の中では、XHTML版で3月31日公開の西田幾多郎「読書」が1日当たりアクセス数(200超過分アクセス数/日)で44.00とずば抜けて高いわけではないが1位。指標の数値ではなく、公開1日だけでランキングに入ったことがちょっとした驚き。中島敦の新規公開作品も人気が高いことが分かる。野村胡堂、吉川英治の新規公開作品は軒並みランクインしており、今月は新規公開作品のランクイン率が高かった。XHTML版では吉川英治が、テキスト版では野村胡堂がより上位を占めているのが、XHTML版とテキスト版の違いである。が、例のごとく、その理由は私には不明である。
既存作品の中では、アンデルセン「雪の女王 七つのお話でできているおとぎ物語」がディズニーのドラマティック・ミュージカル映画「アナと雪の女王」の公開(3月14日)により、アクセス増率ランキング上位に入った(XHTML版アクセス増率2.97、4位、テキスト版1.13、2位)。ディズニーのアニメ映画の連関でグリム「ラプンツェル」も「雪の女王 七つのお話でできているおとぎ物語」の上下に位置する(XHTML版アクセス増率3.57、3位、テキスト版0.64、3位)。XHTML版、テキスト版のこの入れ違いも興味深い。
XHTML版のアクセス増率1位は19.68の久生十蘭「春雪」、テキスト版のアクセス増率1位は1.32の野村胡堂「銭形平次捕物控 082 お局お六」。「銭形平次捕物控 082 お局お六」は2月末日の28日公開で2月はランク外で計算上前月アクセスが202となっている作品、月後半に新規公開された作品によくあるパターンである。一方、久生十蘭「春雪」は、アクセス増率もかなりの高率である。
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新規公開作品の中では、XHTML版でもテキスト版でも野村胡堂の銭形平次捕物控シリーズが1日あたりアクセス数ランキングの上位を占めるが、テキスト版の方が集中度が高い。そのほか、強いて特徴を探すとすれば、XHTML版では泉鏡花「活人形」がトップだったり、正宗白鳥「吉日」、宮本百合子「日記 07 一九二一年《大正十年》」がランクインしていること、テキスト版では小川未明作品が4つランクインしていることであろうか。
既存作品の中では、XHTML版アクセス増率ランキングでは6位であるが、ランキング1位であった「走れメロス」(アクセス増は14301)が、印象深い。これは愛知教育大附属岡崎中学の2年生村田一真君の実に興味深いレポートが、話題を呼んだためと思われる。このレポートについては、例えば❝ねとらぼ❞の–「走れメロス」は走っていなかった!? 中学生が「メロスの全力を検証」した結果が見事に徒歩– http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1402/06/news071.html で解説されている。……検証した村田少年「メロスはまったく全力で走っていないことが分かった」。
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今年からパブリック・ドメインに仲間になった作家では、野村胡堂が一番人気があるが、昨年の吉川英治と比べると、アクセス数は10分の1ぐらい。それもあってか、テキスト版のアクセスは前年同月比36%とかなりの減少だ。1月には今年パブリック・ドメインになった著作家の作品中の重要作品が公開されるのであろうから、今年は全体的に同様の傾向が続くかもしれない。
既存作品の中では、センター試験の国語の問題に取り上げられた岡本かの子「快走」が、昨年の牧野信一「地球儀」に続いて、XHTML版で1位であった(19078アクセス)。テキスト版では747アクセス、99位なので、話題になったにしても、青空文庫リーダーでダウンロードして読もうとするほどのインパクトはなかったのであろうか。
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XHTML版とテキスト版では、アクセスされる作品がかなり異なるということは、これまでも何回も書いているけれども、2012年-2013年のアクセス増率でも同じである。
その中で、堀辰雄「風立ちぬ」「菜穂子」、織田 作之助「夫婦善哉」が共通してランクインしているのは、映画・テレビの影響である。テキスト版の「レ・ミゼラブル」も同じく映画の影響だが、こうした長編はXHTML版ではちょっと読みづらいのであろう。
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2012年-2013年の年間アクセス増分析を行うにあたって、今回はまず2013年新規公開作品のXHTML版・テキスト版の一日あたりのアクセス数のランキングを紹介する。
2013年度新規公開作品で500位ランキングに入ったのはXHTML版で31作品、テキスト版で56作品と、2011年度、2012年度と比べて圧倒的に多い(2011年度:XHTML版8作品、テキスト版9作品、2011年度:XHTML版10作品、テキスト版10作品)。2013年度の新規公開作品数は646であったから、500位までのランクイン率はXHTML版4.8%、テキスト版8.7%となり、こちらの割合は2011年度、2012年度と比べてもはるかに高い(2011年度:1137作品公開、ランクイン率XHTML版0.7%、テキスト版0.8%、2012年度:730作品公開、ランクイン率XHTML版1.4%、テキスト版1.4%)
ランキング表を見ていただければ一目で分かるが、これは吉川英治作品の人気が高かったことによる。ランキングから言えば、2013年は吉川英治イヤーと言える。
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12月のアクセス増は特に特徴がないように思える。しいてあげればXHTML版に季節ものと言える作品がランクインしていることであろうか。なかでも11月ランク外の太宰治「十二月八日」がXHTML版アクセス増率ランキング1位になったのは注目に値する。2010年以降、「十二月八日」が500位内に入っているのは、’10/08(222)、’10/12(293)、’11/12(2515)、’12/08(231)、’12/12(282)、’13/08(284)、’13/12(2612)である。2012年と2011年、2013年とでは、違う政治状況・世界情勢であることを示しているのかもしれない。
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吉川英治作品の新規公開が少なくなったので、アクセス増もやや落ち着いた印象を受ける。映画・テレビ作品の上映に伴う関連作品のアクセス増、社会的な事件に関連してのアクセス増があり、もう一方では原因のつかめないアクセス増もある。
前者は、例えば高畑勲監督作品の映画「かぐや姫の物語」の上映に伴う和田万吉「竹取物語」、山本太郎参議院議員の直訴事件に関連する田中正造「直訴状」のアクセス増である。
後者は菊池寛「アラビヤンナイト」、島崎藤村「夜明け前」のアクセス増である。こちらは、いつものように筆者の狭い見聞や検索で原因が分からないというだけで、なんらかのきっかけはあるのだろう。
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このコーナーは、青空文庫のアクセスランキングで、前の月の新規公開作品の1日当たりアクセス数(200超過アクセス/日)と、前々月から前月へのアクセス増率の2つのランキングを作成して、公開するというものである。
表計算ソフトで計算し、ソートして結果を得ているだけなのだが、時々びっくりするような結果が出ることがある。今月の結果で驚いたのは、テキスト版アクセス増ランキングの15位までのうち14位を吉川英治作品が占めたことである。掲載する表には収められなかったが、40位までの実に36作品を吉川英治作品が占めている。
一方、XHTML版のアクセス増率ランキングでは、その傾向は全く見られない。特に「私本太平記」はランキングの中に入っていないのである。
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今月は、アクセス増としては特別に大きな話題はなかったようだ。新規公開作品では、期待にそぐわず吉川英治の『三国志』が特にテキスト版で大きなアクセス数を出している。詳しい分析はしていないが、『宮本武蔵』『私本 太平記』より多いようだ。
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8/16日に青空文庫の中心的な呼びかけ人だった富田倫生さんが亡くなられた。ご冥福をお祈りします。
何年かのあいだ掲載されていなかったaozorablogの再開が始まったのが2012年3月。この青空文庫の月間アクセス増率の分析を初めてアップしたのが2012年4月のことでした。読みこなしてもいないランキング上位の定番作品に目を向けないで、赤丸急上昇的な作品はなんだろうと思って、twitter上で最初はテキストのtweet、ついでTwitpicの画像でつぶやいていたのを、富田さんが読んでくれていて、この場を与えられたのでした。
aozorablogの再開のきっかけの一つとなったのは、アクセス増(アクセスの変動)のこれらのツィートとその前にtwitter上で報告していた各種青空文庫ビューアの注記処理状況の報告であったと思います。アクセス増分析はなんとか続けていますが、注記処理状況の報告については、ブログ上である程度きちんと報告するには、いろいろ調査が必要となるので、富田さんの期待に添うことができないできました。2012年の夏に、『もうひとつの「リフローは難しい」、あるいは期待するリフロー』 http://www.aozora.gr.jp/aozorablog/?p=1052 と題した一連の調査があるきりです。
富田さんとの出会いは、青空文庫注記形式を利用して漢文の訓点テキストを作成し、青空文庫ビューアで読もうとしていて、再読文字の注記方法が分からなかったことをtwitterで呟いたいていたことからでした。再読文字の注記自体は、その時既に存在していて、“青空文庫[#「青空文庫」の左に「あおぞらぶんこ」のルビ]”のように注記すれば良かったのでした。再読文字に即して言えば、“未[#「未」の左に「ザル」のルビ]”のように注記すれば良いわけです。左につくルビは、調べると実にやっかいな注記(処理)で、Webkitでも、まだ実装されていません。青空文庫ビューアでちゃんと処理できているのは、えあ草紙/AIR草紙ぐらいなものです。
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