田んぼの水面に鳥影が走る。はっとして空を見上げると鳥は見えなかったが、一箇所白い雲が丸く抜け落ちていた。五月も半ばのいつもの風景の中、私はバスを一人待つ。
平日の昼のバスは、乗客も少ない。ゆったりと揺られ、見慣れた景色が後ろへと流れる。ぼんやりとした時間が十五分も経つと繁華街へ着く。
気温が二十度を越すと言っていたテレビの天気予報士の顔が浮かんだ。ブラウスではなく襟なしのものを着てくればよかったと少し後悔した。汗を拭いて、デパートへ入っても涼しくはない。
手際よく買い物を済ましてアーケード街へ出た。車での生活が主となり、郊外の大型店は繁盛し、古いタイプの繁華街は、人もまばら。両側あわせて三十件ほどの店舗には、「貸し店舗」の張り紙や、「閉店セール」の赤い紙が目に付く。いくつも細い通りがあるのだが、そこもまた同じだろう。
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校正に手が出しにくい理由の一つとして、間違いを拾いきれる自信がない、ということがあげられる。そうでなくとも、文字を間違いを拾うには訓練が必要と思われているようでもある。そんな懸念をなくす、または減らす為に、一つ機械を使った校正の方法を紹介したい。 (more…)
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この作品は、テクストにおける〈青空的な何か〉をそれとなく児童文学っぽいお話にしたものです。何年か前に書いたもの。全4話。ところどころにネット上にあるフリーテクストへのリンクが貼られてあって、その紹介を兼ねています。合わせてどうぞ。(ただいま挿絵がございません。なんだかさみしいですね。なお、当作品のご利用につきましては、お絵かきでも朗読でも、ブログ下部にもありますが、クリエイティブコモンズの範囲内でご自由にどうぞ。) ▼次話▼
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■XHTML版4月度アクセス増率ランキング
’12/04のXHTML版のアクセスランキングでの話題は、なんと言っても、ランキング1位の芥川竜之介「谷崎潤一郎氏」が66,362というアクセス数を得たことだった。1作品がこのようなアクセス数を得た初めてのようだ。
アクセス増率でも、順位こそ5位だが、アクセス増率27783%(今月から%表示にした)と新規公開作品の上位と同等の値を示している。3月はランク外なので、ここでは501位として、アクセス数が238あったこととして計算しているが、先月のアクセス数が174以下であれば、TOPだったということになる。
芥川竜之介「谷崎潤一郎氏」のこの突然のアクセス増は、Ceron.jpやはてなブックマークで話題になったためと推測されます。Ceron.jpやはてなブックマークからはXHTML版が直接アクセスされるようになっているので、それが積もり積もって、6万を超すアクセスになったと思われる。ちなみに、テキスト版での4月度のアクセス数は195だった。
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早稲田松竹でテオ・アンゲロプロス監督の追悼上映が行われている。5月5日から1週間は『旅芸人の記録』。早速、観に行く。一人で一番前の席に腰をかけて、画面に見入る。初めてこの映画を見たのは高校生の頃。キネマ旬報に書いてあった数十年に1本の傑作という言葉に惹かれて観に行った。
わからなかった。ギリシャのことも世界の歴史についても疎かった私にはストーリーも、アンゲロプロスが伝えたいこともわからず、なんどもウトウトとしながら必死で4時間耐えていた。
見終わって、あまりのわからなさに、もう一度続けてみた。当時は指定席入れ替え制ではなかったので、そういう見方が出来た。というわけで、もう一度見た。また分からなかった。眠るとか眠らないとかいう以前に、この作品を理解するだけの下地がないのだと思い知らされた。
あれから30年以上。やっとスクリーンで再会した『旅芸人の記録』はとても面白い映画だった。この映画が面白いといと感じられただけで、「ああ、少しは成長したのか」と思うことが出来た。不思議だったのは、主要な登場人物がときおりカメラ目線で語るというカットをすっかり忘れていたこと。そうか、そういうこともやる人だったのか、アンゲロプロス。とこれまた嬉しくなった。
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今晩は、月が大きいそうで。青空文庫で「月」に関する文章を探してみよう。簡単なのは「日本の名随筆58 月」から拾う事。
岩本素白「六日月」
上田敏「月」
大町桂月「月譜」
折口信夫「日本美」
川端芽舎「夏の月」
北原白秋「お月さまいくつ」
小島烏水「霧の不二、月の不二」
薄田泣菫「無学なお月様」
徳冨蘆花「良夜・花月の夜」
永井荷風「町中の月」
樋口一葉「月の夜」
與謝野晶子「月二夜」
和辻哲郎「月夜の東大寺南大門」
他に「月」が印象に残っているのは、泉鏡花「歌行灯」。場面場面にちらっと登場していて、まるで全てを見守っているようだった。
皆さんは、何か「月」が印象に残った文章がありますか?
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ロマン・ロランの「ベートーヴェンの生涯」が公開された。本文で言及されているベートーヴェンの楽曲は以下のサイトでほとんど聞く事が出来る。
http://classicalmusicmp3freedownload.com/ja/index.php?title=ベートーヴェン
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怪談の名作は古典に多い。つまり、青空文庫収録のものが多いことになる。暑くなるにはもう少し間があるけれど、怪談というもののレビューとともに“怪談”そのものを少し考えてみる。
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